ワンダーエッグ・プライオリティ(ワンエグ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ワンダーエッグ・プライオリティ』とは、脚本・野島伸司、制作・CloverWorksによるオリジナルアニメ作品。
中学生の大戸アイは、学校でイジメを受け、その際に庇ってくれた転校生の長瀬小糸と友人となる。しかし小糸もまた自身の悩みに追い詰められ、校舎から身を投げて死亡する。この一件でアイは不登校児となるが、ある時不思議な声に導かれ、謎の卵を手に入れる。卵の中で怪物を倒すことで、小糸を生き返らせる可能性を見出したアイは、同じく大切な人を蘇らせんとする少女たちと共に危険な戦いに臨んでいく。

『ワンダーエッグ・プライオリティ』の概要

『ワンダーエッグ・プライオリティ』とは、脚本・野島伸司、制作・CloverWorksによる2021年冬に放送されたオリジナルアニメ作品。
『101回目のプロポーズ』や『高校教師』など、著名なドラマ作品の脚本を担当したことで知られる野島伸司氏が初めて手掛けるアニメ作品であり、同氏のファンを中心に放送前から注目を集めた。ネット配信にも力を入れており、dアニメストアやHulu、Amazon prime videoなど合計26もの配信サービスを行っている。
秀逸な作画に加えて謎めいた世界観、野島伸司氏らしい思春期の少女の繊細かつ瑞々しい感情が好評を博し、2期シリーズや原作ありきの作品が多く放送された同シーズンの中にあって、まったくのオリジナル作品ながら高い評価を受けている。

中学生の大戸アイ(おおと あい)は、学校でイジメを受け、その際に庇ってくれた転校生の長瀬小糸(ながせ こいと)と友人となる。しかし小糸もまた自身の悩みに追い詰められ、校舎から身を投げて死亡する。この一件で学校と自分自身に絶望したアイは不登校児となるが、ある時不思議な声に導かれ、謎の卵を手に入れる。卵の中で怪物を倒すことで、小糸を生き返らせる可能性を見出したアイは、同じく大切な人を蘇らせんとする青沼ねいる(あおぬま ねいる)、川井リカ(かわい りか)、沢木桃恵(さわき ももえ)らと共に危険な戦いに臨んでいく。

『ワンダーエッグ・プライオリティ』のあらすじ・ストーリー

不思議なエッグと夢の世界

中学2年生の大戸アイ(おおと あい)は、母子家庭な上にオッドアイという目立つ特徴を持つことからクラスメイトたちに目を付けられてイジメに遭っていた。転校生の長瀬小糸(ながせ こいと)だけはアイに優しくしてくれたが、その小糸も美術教師の沢木修一郎(さわき しゅういちろう)と交流した後に不審な自殺を遂げてしまう。
学校での居場所を失ったアイは引きこもりになり、母親の多恵(たえ)に心配されながら朝から晩まで自宅に籠るようになる。

ある晩、家を抜け出したアイは、人語を操る虫に導かれてガチャのようなものが並ぶ場所へと辿り着き、そこで「中に友達が入っている」という不思議なエッグを有料で手に入れる。エッグを手にしたまま寝付くと、「学校で知らない女の子と共にワンダーキラーという怪物に襲われる」という夢を見る。夢の中では、アイは超人的な力を有しており、必死に抵抗した末に怪物を撃破。すると女の子は不意に姿を消し、どういうわけか屋上に置かれていた小糸の像がかすかに温もりを帯びていることに気付く。
エッグを作ったのはアカと裏アカというマネキン(トルソー)にしか見えない2人組で、彼らによれば「夢の世界に現れるのは“この世のどこかで自ら命を絶った女の子”。ワンダーキラーとは“彼女たちを死に追いやった絶望が具現化したもの”。これを倒していくことで、いつかエッグを購入した者の大切な人を生き返らせることができる」らしい。小糸を生き返らせることができるかもしれないと知って、アイはエッグを購入して夢の世界で戦い続けることを決意する。

集う4人の少女

エッグで大切な人を生き返らせようと考えている少女はアイだけではなかった。14歳の若さで大企業の社長を務める天才児・青沼ねいる(あおぬま ねいる)。元ジュニアアイドルの川井リカ(かわい リカ)。沢木の姪でボーイッシュなスタイルを好む沢木桃恵(さわき ももえ)。同い年の彼女たちは、同じ目的で戦い続けている女の子がいると知って互いに興味を抱き、交流を重ねる。
中でもねいるは「プラティ」と呼ばれる世界的に有名な高IQ集団のメンバー同士による人工授精で生まれた存在で、両親の名前も顔も知らないという非常に特殊な出自の持ち主だった。自身の能力の高さと強過ぎる責任感から孤立しがちなねいるを、アイはなんとかリカや桃恵も加えた輪に入れようと心を砕き、彼女からも特別な友人として認識されていく。

そんなアイたちに、アカと裏アカは「お助けキャラだ」と言ってワンダーアニマルという不思議な生き物が入ったポマンダーをプレゼントする。夢の世界では大きなカメレオンや亀の姿になってワンダーキラーとの戦いに加勢してくれるワンダーアニマルたちに、アイたちは最初は戸惑うものの、次第に相棒として親しみを抱いていく。
ワンダーキラーとの戦いを繰り返し、最初に「大切な友人」の復活に成功したのは桃恵だった。しかし直後、ワンダーキラーとはまったく異質の怪人が彼女の前に現れ、猛烈な殺意を振り撒いて襲い掛かる。無事に逃げ延びることはできたものの、自分を庇ってワンダーアニマルが惨殺されるところを見た桃恵は完全に心を折られ、アイたちの前から姿を消してしまう。

アカと裏アカの秘密

アカと裏アカは、脳以外を捨てて今の姿になる前までは普通の人間で、プラティのジャパン支部に所属する優秀なAI研究者だった。機密を守るために外出が許されなかった彼らは、ある時暇を持て余して14歳相当の少女の肉体を持つ高性能AIフリルを作り出す。
当初フリルを娘のようにかわいがっていた2人だったが、アカが結婚した頃からその歯車が狂い始める。「自分とアカと裏アカ」という疑似家族の関係に固執するフリルは、アカが自分たちとは別の家族を作ることが受け入れられず、妊娠中だった彼の妻を事故に見せかけて殺したのである。激怒したアカは、フリルを研究室の地下に押し込めて廃棄する。

その10数年後、奇跡的に生き延びたアカの娘が唐突に自殺。もしやと思った裏アカが研究所の地下を調べると、果たしてフリルはまだ稼働を続けており、アカの娘の自殺が自分の仕業であることを誇らしげに認める。ようやくにしてフリルの危険性を悟った裏アカが彼女を破壊するも、その後改めてアカたちが調査したところ、近年少女たちの自殺が急激に増加していることが判明。肉体を破壊されてなお、フリルはどのようにしてか自由に行動して同年代の少女たちの精神に干渉し、その絶望を、人の死に至る本能タナトスを刺激して自殺させることを続けていたのだ。
これが自分たちの責任であることを痛感したアカと裏アカは、フリルに対抗するために生を望む本能エロスの戦士を探そうと決意し、そのためにエッグを作り出した。エッグによる死者の復活は平行世界の部分的融合という仕組みのもので、完全に元の人物が蘇るわけではなかったが、ワンダーキラーとの戦いにも、恐らくその後起きるだろうフリルや彼女の配下の怪人たちとの接触にも負けない、「生きる」という強い意志を持つ少女を見付ければ、それがフリルを倒す切り札になると考えたのだ。

タナトスの意志とエロスの戦士

その後リカも友人を復活させることに成功するも、桃恵同様フリルの怪人たちにおぞましい恐怖を味わわされ、心を折られてしまう。アイはアイで、小糸を生き返らせることはできたものの、平行世界の別人である彼女はアイに見向きもしてくれなかったこと、「小糸とどういう関係だったのか」と訝しんでいた沢木に自分自身が恋心を抱いていたと気づいてしまったこと、沢木が多恵と交際していたこと、小糸の死はほぼ突発的な自殺で沢木はなんら関与していないことを立て続けに知って困惑。桃恵やリカとの関係もうまくいかなくなり、それを気に病む一方で、ねいるは大丈夫なのかと案じるようになる。
果たして、ねいるもまたアイの前から姿を消す。しかしそれはフリルたちによって心折られたからではなく、彼女に「私と友達になろう」と誘われたことが原因だった。実はねいるは人工授精などで生まれた存在ではなく、必死に生き返らせようとしていた妹の精神を元に作られた、フリルに極めて近い人工物だったのである。

これを知ったねいるは、フリルの誘いを受け入れて出奔。共にワンダーキラーと戦い続けたアイたちは、それぞれの目的を果たしたこともあってバラバラになってしまう。ある晩そのねいるから電話がかかってくるも、再びエッグの世界に関わることになるかもしれないという恐怖からアイはこれに出ることができず、ついにはスマホを投げ捨てる。これ以降ねいるからの連絡は無くなり、リカや桃恵とも疎遠になり、アイは新しい学校で穏やかな日常を過ごす。
しかしある時、ねいると初めて出会った場所で、ねいると最後に言葉を交わした場所で、アイはねいるやリカ、桃恵と共にエッグの世界で戦い抜いた時のことを鮮烈に思い出す。ねいるに会いたい、会わなければならない。そう思い決めたアイは、アカたちのいる庭園へと向かう。ねいるを探すために、フリルと行動を共にしているだろう彼女と再び会うために、改めて夢の世界に挑む旨を宣言するアイ。「一度逃げたくせに」と揶揄する裏アカに、アイは笑顔とダブルピースで復活をアピールするのだった。

『ワンダーエッグ・プライオリティ』の登場人物・キャラクター

エッグの世界に挑む少女たち

大戸アイ(おおと あい)

CV:相川奏多
主人公。十四歳の中学生だが、現在は学校には通っていない。
右目が琥珀色、左目が青のオッドアイで、その物珍しさもあってかクラスメイトから陰湿なイジメを受ける。そんな折に転校してきて、コンプレックスでもあった瞳の色を「綺麗」と言ってくれた長瀬小糸に心を開き、親友となる。しかしその結果イジメのターゲットが小糸に移ってしまい、「また自分がイジメられたらどうしよう」との恐怖から二の足を踏み、彼女を救えず死なせてしまう。不登校になったのはこれが最大の原因である。
その後長らく引きこもり生活を続けていたが、趣味と化していた夜の散歩中にエッグを手に入れ、「小糸を生き返らせられるかもしれない」可能性に希望を見出す。

エッグの世界での戦いの中で知り合った新たな友人たちに対しては自分から積極的に関わろうとしており、本来はポジティブな性格なのだと思われる。枕営業の意味を知らないなど、小糸以外に同年代の友達がいなかったせいもあってか知識はやや偏重気味。
巨大化した三色ボールペンを得物としており、一撃の破壊力に長ける。戦い方は大雑把だが戦闘のセンス自体は優れており、時に様々なものを応用して立ち回り、時に驚くべき爆発力を発揮して敵を打ち砕く。その際、「トサカに来た」と叫ぶのが常である。

イジメを受けていた小糸が担任の沢木と抱き合っているところを目撃したことがあり、彼女の自殺にも何か関係があるのではないかと疑っている。

青沼ねいる(あおぬま ねいる)

CV:楠木ともり
十四歳の少女。詳細は不明ながら、この歳にしてなんらかの会社の社長職を務めており、その豊富な資金力で一度に大量のエッグを購入している。本人曰く「自分で死なせた妹を生き返らせたい」とのことだが、アカや裏アカたちはこれを消極的な自殺願望ではないかと分析している。
クールで大人びた性格の持ち主で、自分と同じく友人を生き返らせようとしている仲間だと認識して近づいてきたアイに対しても、最初は距離を取ろうとした。しかし一度に大量のエッグを購入したことが祟り、エッグの世界で大怪我をしてしまい、病院に担ぎ込まれる。病室にまで忍び込み、改めて友達になろうと申し出たアイに根負けと好意が合わさったような感情を抱き、これを了承する。
仕事柄様々な人間を見ているためか、初めて会ったリカの図々しさから警戒すべき人物と捉え、アイにも気を付けるようメッセージを送っている。後にアイから「リカは良い子だ」と言われて一応はそれを受け入れるも、彼女に対する警戒を完全には解いていない。
妹を蘇らせようとしているものの、彼女との再会を望む気持ちは皆無。妹の死は「ある日突然ねいるをナイフで刺してから逃げ出し、橋から身を投げた」という衝撃的なもので、その傷跡は今も疼いてねいるに苦痛を与えている。どういうわけかエッグの世界で戦っている時だけこの疼きから解放されるため、ねいるはエッグを買い続けている。

得物はコンパスから生成される銃器。マシンガンのような形状からスナイパーライフルまで様々に変形し、放つ弾丸もそれに合わせて性質を変える。「あなたの度肝を抜いてあげる」が決めセリフ。一度に無数のエッグを購入しては、一気に多くのワンダーエッグを倒すという無茶を続けることができたのは、飛び道具という圧倒的なアドバンテージを持つことも大きな要因と考えられる。

川井リカ(かわい りか)

CV:斉藤朱夏
十四歳の少女。口が悪くて押しが強く、アイにエッグを買うお金を借りて返さない、「美人は財布を持たなくても誰かが払ってくれる」と公言するなど、真面目とは言い難い性格。自分が美形であることを自覚し、それを利用する術も心得ており、その図々しさはねいるに警戒を抱かせる原因ともなった。自宅に帰っている描写が描かれておらず、実質家出しているような状態である。
元ジュニアアイドルだが、少数のファンにギリギリ支えられる程度の立ち位置だった。中でも熱心に応援してくれたチエミという少女と、アイドルとファンの垣根を超えて親しくなるも、彼女が金策のために万引きをしていることに失望。「二度と来るな、デブが一緒なのは恥ずかしい」と辛辣な言葉と共に拒絶してしまう。結果、この言葉を気にしたチエミは“骨と皮のゾンビ”と称されるほどに痩せこけた上で死亡する。自分のせいでチエミにこのような死に方をさせてしまったことに深く後悔し、彼女を生き返らせるためにエッグの世界に挑んでいる。

分解した大バサミのようなものを得物にしており、これを両手に持った二刀流が基本スタイル。素早い身のこなしから放たれる強力な斬撃の他、投擲してブーメランのように使うことも可能。相手にトドメを刺す時は「あなたのハートにズッキュンバッキュン」と叫ぶ。芸能界という敵の多い世界を経験し、また「チエミを生き返らせたい」という強固なモチベーションがあるため、エッグの世界で戦うことに対する意欲が非常に強い。アイと初めて共に戦った時は、最初の内こそうまく連携が取れていなかったものの、次第にその戦闘巧者ぶりを発揮していった。

沢木桃恵(さわき ももえ)

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@YAMAKUZIRA

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