犬岡走(ハイキュー!!)の徹底解説・考察まとめ

犬岡走(いぬおかそう)とは、『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載されていた古舘春一原作のバレーボール漫画『ハイキュー!!』に登場する人物である。主人公・日向翔陽の所属する烏野高校のライバル・音駒高校で1年生ながらレギュラーを取る実力者。高身長でありながら俊敏な動きで日向の速攻を止めた最初のプレーヤーである。日向の同ポジションであるミドルブロッカーとして登場するも、その後新人プレーヤーである灰羽リエーフにレギュラーの座を奪われ、ウイングスパイカーへ転向しレギュラーに返り咲いた。

犬岡走の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「ナメてねーよ全然!」

烏野高校との練習試合で、バレーボール選手としては低身長となる日向と初対面した際の犬岡の言葉。
犬岡は162.8cmの日向を相手に「小っこい」と驚いてみせ、それに対して日向は「ナメるな」と食って掛かった。
大抵の場合は身長が有利に働くバレーボールという競技において、低身長であることは「不利」に直結するため、それだけで舐めてかかることが多い。しかし、犬岡は「ナメてねーよ全然!」との言葉で爽やかに返し、日向の意表を突いた。
これは「日向の体格の小ささに油断させて相手を翻弄する」ことを有効打とする烏野にとっては、「1番日向とマッチアップする相手=犬岡の警戒心を削がなかった」ことを意味する非常に厄介な発言である。このやりとりに意表をつかれた日向はもちろん、日向を囮として上手く使いこなすことを求められている影山も、犬岡のこの発言には、多いに警戒した。
犬岡は非常に単純明快な人物であり、この発言に特別な意図はなく、バレーボール選手としての日向の体格に驚いてみせただけである。そういった彼の人間性を、読者が伺い知れる重要なセリフにもなった。またこの犬岡が後年、「小さいからといって相手を侮ることのない人物」として最も本領を発揮する「保育士」として活躍しているのも説得力のある配役であり、まさに天職であると言える。

「やっと捕まえた!!!」

烏野高校との初練習試合にて、初めて日向の速攻を止めた際の犬岡の達成感に満ちたセリフ。
日向・影山コンビの速攻の弱点が”慣れ”であると見抜いた孤爪の指示で、徹底的に日向をマークし挑み続けた犬岡が、第1セット最終盤にて止めることに成功する。そして達成感を顕に「やっと捕まえた!!!」と、崩れ落ちる日向に宣言した。これにより、音駒高校は1セット先取に成功する。さらに第2セット以降、立て続けに日向の速攻を阻止しチームの勝利に大きく貢献した。
神業のような素早さで繰り出されるこの速攻は、烏野高校にとっては攻撃としても囮としても非常に大きな役割を果たしていた。当然ながら、この日向の攻撃は作品の中核をも担っていた。そのため、作中初となる犬岡のブロックは”日向・影山の速攻が通用しない”という、大きな壁となって立ちはだかったのである。物語が進むにつれて、相手の技術もパワーも戦略も段違いに高くなっていくため、公式戦を前にこの事実を突きつけられた日向は、以降自身の進化のために様々な試行錯誤を繰り返していくことになった。
このことから、犬岡は作中の終盤に至るまで「初めて日向を止めた人物」として、何度かさらなる防御の思考材料の例にあげられていることからも、犬岡のこのセリフ・シーンは非常に有名である。。

「”怖い”と気付いてしまった 気付いてしまったから もう立ち向かう以外無い」

徹底的に鍛えなおしたレシーブで応戦する犬岡

犬岡がWSへポジション転向のためレシーブを鍛え直し、守備の大切さについて気づいた時のモノローグ。
犬岡は上述のとおりMBだったポジションを転向するため、改めてレシーブを強化しなおした。この時犬岡は高校からバレーボールを始めたばかりの灰羽にポジションを奪われ他と感じ、1度は悔しさを覚えた。しかし全国大会を目指す音駒高校や、梟谷学園高校などの同グループ学園の全国大会レベルのサーブやスパイクを受けているうちに、1本目となるレシーブを成功させなければ失点に繋がる恐ろしさに改めて気づいたのである。そしてその怖さを、「”怖い”と気づいてしまった 気づいてしまったから もう立ち向かう以外無い」と独白し、レシーブの鍛え直しに熱心に取り組んだ。
犬岡はこれにより春高全国大会という大舞台でWSとして開花し、”護りの音駒”の名に恥じぬ数々の良プレーやレシーブを披露した。

犬岡走の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

主人公・日向翔陽の初代ライバル

主人公・日向翔陽の公式のライバルは、烏野高校でセッターを務める影山飛雄が最も有名である。しかし、作中の殆どの場面を日向の相棒として切磋琢磨し続けているのもまた、事実である。
作中では日向の強靭な足腰から生まれる超高速攻撃「変人速攻」が物語の中核を担っており、強力なライバル達がこれをどのように攻略していくか、そして烏野高校が彼らをどう対策していくか、を中心に試合が進行していく。初見でこの動きに圧倒される選手が多い中、犬岡は熱心に食らいついていき、最終的には日向を止められるようになっていった。その日向は、何度も攻撃を止められたことで自信や気力を削がれることなく、むしろ「ワクワクする」と表現し、お互いを高め合うライバルを得たことに歓喜していた。
犬岡はその後も「日向を止めることができた」という事実に慢心することなく研鑽し、決戦前の烏野対稲荷崎高校の試合を観戦した際にも「レシーブを磨いていかなきゃ日向には勝てない」と懐述している。
作中でこういった描写が施されたことから、犬岡は影山を除く日向の初めてのライバル、或いは「日向・影山コンビ」に立ちはだかる初代ライバルとして、読者に広く認知されることとなった。

犬岡は「常に日向の一歩先を行っていた男」

犬岡は、GW合宿の後にポジションをMBからWSに転向しないかと猫又監督に打診されている。そして実際に、春高の舞台ではWSとして選手登録され、新たな「盾」として日向ら烏野高校の前に立ちはだかった。このWS転向にあたって、犬岡はレシーブを徹底的に鍛え直されており、春高での対烏野戦ではセッターがかまえた位置に正確に返す「Aパス」でないにしろ、良いコースへ返球するレシーブを披露した。
実は物語の最終章で、プロのバレーボール選手となった日向は高校1年時に苦手だったレシーブを徹底的に鍛え直し磨き上げ、WSに相当するOP(オポジット)へポジションを転向しているのである。そのため、作者の古館は犬岡のことを「常に日向の一歩先を行っていた奴」と評している。経緯は違えど、両者はMBからWSやOPに転向し、レシーブを強化して攻守ともに強力な選手となったことからも、この評価はまさにその通りと言える。

名前「走」の由来は「人のために奔走できる人になるように」

犬岡は、「猫のようにしなやか」なプレーを得意とする音駒高校に所属するキャラクターである。それゆえ、監督の猫又育史の苗字から「ネコ」、主将の黒尾鉄朗が「黒ネコ」を連想させるような名づけが行われている。
犬岡は、「ネコでありながらイヌ」と称される姓を持つが、これはイヌの生物学分類がネコと同じく「ネコ目(食肉目とも呼ぶ)」にあるためであると考えられる。また名前の「走」は、その持ち味である俊敏さをよく表している。この名づけにあたっては、「人のために奔走出来る人に」という意味もあったよう。

本誌掲載315話ラストのアオリ文「2枚の盾、装備―!!」

週刊少年ジャンプ掲載時の315話は、春高全国大会での対烏野戦の最中であり、孤爪が猫又監督に打診したことで、犬岡が投入されて終了した。この時、次号に向けてつけられたアオリ文は「2枚の盾、装備―!!」となっていた。これは、作者の古舘がコミックス内で当時の編集者が挿入したものであることを明かしている。
この掲載話では孤爪はバレーボールの試合をテレビゲーム等に例えて、数々の攻略方法を検討しており、犬岡は「さらなる物理攻撃の1つ」であるとともに「前衛を高くし防御を上げる手段」としても投入された。そのため、孤爪の前には犬岡とともに灰羽が描かれており、まるで孤爪が大きな盾2枚を装備したかのように描写されていたのである。
このアオリ文について、古舘は「やられた」と悔しがっていた。実は古舘自身「犬岡を防御の要」と意識しつつも、「盾」という表現は構想・原稿作画中に発想できずにいたよう。このため、自身のゲーム心の衰えを感じたとコミックス内で明かしている。

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