Return of the Obra Dinn(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『Return of the Obra Dinn』とは、ルーカス・ポープの監督による謎解きアドベンチャーゲームである。白と黒のみの1ビットで表現されるグラフィックが特徴的だ。
舞台は19世紀初頭、5年間消息を絶っていた「オブラ・ディン号」が船員ゼロで帰港。保険調査官である主人公は、損害査定書の作成のため同船に派遣され、奇妙な懐中時計を使って乗客、乗員60人の死因や推定現在地を割り出す。懐中時計の特別な力で、主人公は死者の最期の場面を確認し、これを基に船上で起きた真実を紐解く。

『Return of the Obra Dinn』の概要

『Return of the Obra Dinn』(オブラ・ディン号の帰還)とはルーカス・ポープの監督の下、2018年に3909 LLC.から発売された謎解きミステリーおよびアドベンチャーゲームである。
乗員乗客60人を乗せた商船オブラ・ディン号は、イギリスのファルマス港から出発した後にそのまま消息不明となったが、5年後に突如無人で帰港する。本作で主人公は保険調査官として、オブラ・ディン号で何が起こったのかを探る。

本作の特徴は、独特なゲームシステムとビジュアルである。多くの残留思念や手記に残るヒントから60人を特定し、それぞれの安否確認や死因を調査するというゲームシステムは他に類を見ないようなユニークさがある。また、白黒の1ビットでありながら3Dのビジュアルも魅力的で、19世紀初頭という舞台背景ともマッチしている。

The Game Awards 2018のBest Art Direction部門、Titanium AwardsのBest Indie Game部門など5つの賞7つの部門にて受賞しており、また合計で10個の賞33部門にノミネートされている。ルーカス・ポープの監督作品としては、2013年発表の『Papers, Please』に続く2作目のゲームソフトで、前作『Papers, Please』も5つの賞と9つの部門にて受賞を果たしている。当初はWindowsとMacOS向けに本作はリリースされたが、2019年からPlayStation 4、Nintendo Switch、Xbox Oneに移植されている。

『Return of the Obra Dinn』のあらすじ・ストーリー

現在(調査前)

1802年、商船オブラ・ディン号はイギリスのファルマスから南アフリカの喜望峰へ向け出発するも、その航海中に消息を絶った。それから5年後の1807年、突然オブラ・ディン号はファルマス港に帰ってくる。しかし、当初乗船していた船員や乗客たちは1人もおらず、まるで幽霊船のようである。同船を管理・所持していたイギリス東インド会社は、船内を直接調べて損害査定書を作成するため、主人公である保険調査官を船に派遣した。主人公の手元にある「オブラ・ディン号の帰港」という題名の手記と奇妙な懐中時計「メメント・モーテム」を使用し、主人公は調査を開始する。

第I章 崩れた積荷

積荷移動中の不運な事故が、オブラ・ディン号の悲劇の始まりである。イギリスにて貨物甲板に積荷を下ろしている途中、ロープが切れて積荷が落下。積荷の下にいた船員1名が、落ちた荷物に潰され圧死する。その後すぐに、積荷の樽の中に隠れていた身元不明の密航者も落ちた衝撃で死亡する。なお、密航者については船員でも乗客でもないため、身元の特定は必要ではない。

第II章 死に至る病

原因不明の肺病

医師(右)から診察を受けるも肺病により船員(左)は死亡。

原因不明の病により、この章では船員2名が死亡する。船医はオブラ・ディン号乗船前に、インド人水夫の待機所でこの病気に感染したことを疑っている。また、この病気は肺病であるが結核ではなく、伝染病でもないと診断されており、真相は確かではない。この章では船員の特定に大きなヒントとなるハンモックが多くあるため、ゲームの進行に当たって重要な場面である。

牛の食肉処理

2人が病気に苦しむ一方で、食肉用の牛が船員により殺された。ここでは家畜番の指導下で3人の士官候補生が牛の食肉処理を学んでいる。牛が死亡したことを本に書き込む必要はないように思えるが、本章への足がかりと士官候補生たちの身元特定のヒントとして必要なシーンであった。

第III章 殺人

オブラ・ディン号には船員51名の他に一般の乗客も9名乗船しており、そこにフォルモサ(台湾)の王族たちも含まれていた。王族は光る貝殻を所持しており、その貝殻を二等航海士ニコルズが狙っている。

口封じ

航海士はフォルモサ王族の荷物番を殴り倒し、王族たちの荷物を漁っていた。不運にもそれを見かけてしまった別の乗客が、口封じのため殺されてしまう。殺人が行われた奥では、引き出しの中で貝殻が神々しく異様に輝いている。航海士はフォルモサ王族の宝を盗もうとしていたようだが、殺人を起こしてしまったためここでこの貝殻を盗むことはできなかった。

船上裁判

本章で殴り倒されていたフォルモサの荷物番が、乗客を殺したとして銃殺刑に処されている。どうやら航海士に罪を被せられたようだ。このシーンは「船上裁判」というタイトルで本にスケッチが載っている。船長の発言によると、この荷物番が殺人を自白したらしい。しかし、本章でわかるように荷物番は殺人をしておらず、また自分が人を殺してしまったと誤認するとも考えられない。おそらくこれには、フォルモサ人の通訳を任されていた中国人檣楼員(しょうろういん)が絡んでいる。ニコルズの一派にこの檣楼員は含まれており、この檣楼員が荷物番が自白したように見せた可能性がある。檣楼員とは、マストに上って帆や索具を調整する仕事に特化した、等級の高い甲板員のことである。

宝の強奪

窃盗に失敗した航海士は、船員数名とフォルモサの宝である貝殻を強奪、さらに王族たちを人質にボートでの逃走を謀る。
それに気づき止めに入った船員の1人が、航海士に銃で射殺されてしまう。
ここで死亡した船員の死体は、足にロープが絡まり一等航海士の部屋の窓外にずっとぶら下がっていたようだ。調査時点では靴と足の骨のみ残っており、その死体からこの第III章を遡ることができる。

第IV章 出現

人魚の襲撃

オブラ・ディン号から逃走した航海士ニコルズとその仲間はカナリア諸島へ向かっている。人質であるフォルモサの王族たちが箱(荷物)を気にしつつ、「魔物が現れたら」という会話をした直後、人魚の魔物が3体現れ襲撃される。
船員たちが攻撃を受け、航海士ニコルズは司厨手(しちゅうしゅ)から銃を撃つよう求められるも、肝心のニコルズは船底で頭を抱え、情けなくうずくまっている。司厨手とは、等級の高い乗組員の身の回りの世話をし、雇い主の快適な船上生活の実現に努める船員のことである。例えば、船長には船長付き司厨手、一等航海士には一等航海士付き司厨手がいる。

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