【バイオハザード】アンブレラ社に人生を狂わされた「悲しき悪役」リサ・トレヴァー【Biohazard】
『バイオハザード』のリメイクにおいてリサ・トレヴァーというクリーチャーが追加された。見た目は頭に人間の顔の皮を繋いだデスマスクを被り、手足に枷を付けた成人女性といったおどろおどろしいものだが、彼女はウィルス兵器を開発するアンブレラ社によって人体実験を繰り返された被害者である。度重なる人体実験によりもはや自我もほぼなく、両親を探して洋館を彷徨うだけになってしまった彼女の悲惨な境遇について記述する。
1967年11月13日
愛するリサへ
日に日に私が私で無くなっていく…。そんな感覚が確信に変わり始めています。
あの注射のおかげか、体のかゆみは幾分が収まってきたみたい。
今日も「栄養剤だ」と言われ、白衣の男たちに注射を打たれました。
注射をされると、意識がはっきりしてくる。意識が戻ってくると、何も考えられなくなっていた自分に気付いて、愕然としたの。
全てを忘れてしまう感覚に襲われ、あなたの事やあの人の事…、どんな性格で、どんな顔だったかすらも意識の闇に覆われてしまう。
ああ、リサ、私も今すぐでもあなたに会って、あなたを抱きしめて確かめたい。
そうしないと、あなたも、あの人も消えてしまいそうで、とても怖い。
…このままではダメね! 早く逃げ出さないと!
いい? リサ チャンスは多分、次に一緒にあの実験室に行く時!
二人して意識の無いフリをするの。
そしてあの白衣の男が隙を見せた時が逃げ出すチャンスよ!
外へ脱出したら、お父さんを一緒に探しましょう!
この手紙にあなたが気付いてくれます様に
ジェシカ・トレヴァー
1967年11月14日
スペンサー卿に館を案内してもらう。
彼の手によって開かれる扉。そして私の目の前に広がる数々の部屋。
それは豪華かつ見事な趣向が凝らされていた。
ダヴィンチの絵画。ラファエロの彫刻…。
ある部屋では剥製の獣たちが、その瞳から怪しい光を放ち、またある部屋では中世の騎士たちが、指揮官のもと、整然と居並んでいる。
すべて卿が今日までかかって蒐集したもので、さすがは世界的富豪だけのことはある。
「素晴らしいだろう。この館は新しく作る会社の保養施設にするつもりだが、社員だけではない。内外の客にも利用して貰おうと思ってね」
卿は近々国際的規模の薬品メーカーを設立する計画をもっているらしい。
会社の名前も『アンブレラ』と決めたそうだ。
しかし…会社の保養施設にするなら、なぜあのような秘密をこの館に用意させたのだろう。卿の気まぐれにしては大袈裟すぎるではないか。
1967年11月14日
注射で頭がボーっとする。
お母さんに会えない。どこかに連れていかれた。
二人で脱出しようって約束したのに私だけおいていくなんて…。
1967年11月15日
お母さんみつけた!
今日の食事は、お母さんと一緒! うれしかった。
…違う、偽者だった。外は一緒だけど中が違う。
お母さんを取り返さなくさなくっちゃ! お母さんに返してあげなくちゃ!
お母さんの顔は簡単に取り返せた。
お母さんの顔を取っていたおばさんの悲鳴が聞こえたけど、お母さんの顔をとったやつの悲鳴なんか気にしない。
お母さんは私のもの。誰にも取られないように私にくっつけておこう。
お母さんに会った時、顔が無いとかわいそうだもの。
19 7年11月17日
石の箱の中 お母さん 匂い
ここ お母さんがホント?
石の箱 かたくてイタイ
手のジャラジャラが邪魔をする
4つの石 つてるジャラジャラせで
お母さ 会えない
1967年11月18日
家族が戻らない。
エマ叔母さんの容体がよほど悪いのか。まだ電話が架設されておらず不便だ。
気を紛らわすため、2階のベランダへ出てみると、手すりに数羽のカラスが止まっていて、私の姿を見て、不気味な鳴き声を上げた。いやな予感がする。
そういえば、この数日、誰かに監視されているような気がしてならない。
中庭で、不思議なものを見た。流れ落ちる滝があったのだが、水のカーテンの向こうに地下へ下りる階段が見えたのだ。私の設計ではない。
いつの間にこんなものを…
そう思って見ていたら、突然、白衣を着た3人の男が現れ、
「誰だねあんたは?ここへ勝手に来てもらっては困るな」なじるように私を追い払った。
男たちの白衣から、わずかに消毒の匂いが漂っていた。
あの男たちはいったい何者だろう。
19
お父さん 一つ くっつけた
お母さん 二つ くっつけた
中身はやぱり赤く ヌルヌル
白くてかたかた
ホントのお母さ 見つからない
お父 ん分からない
また お母さ 今日見つけた
お母さ をくつけたら
お母 ん動かなくなた
母さんは悲鳴を上げていた
なぜ?
私は一緒に居たかただけ
4
お母さん
どこ?
会いたい
1967年11月20日
ライターがない…妻が誕生日に贈ってくれたもので、大切に使っていたのに。
あの壊れた猟銃のある部屋で一服して、置き忘れたのは間違いないのだ。
誰かが持ち去ったのだろうか。
妻と娘が戻ってこないのが、益々不安をかき立てる。
私の思い過ごしだと卿は笑ったが、いたたまれず、明日ふたりを迎えに行くと、卿へ伝えた。
1967年11月21日
荷物をまとめ、卿に別れの挨拶をすべく1階の肖像画が並ぶ大きな部屋へ行った。
すると卿はいず、白衣の男が絵を見ていた。中庭にいた3人のひとりだ。
「人生は、長いようで短い…」
そこに並んだ絵は、ひとりの男の誕生から、年老いて死ぬまでが描かれていた。
「君の家族も今ごろは…」
男は私を振り返り、ニヤリと笑った。
今ごろ?…どういうことだ!?
その刹那、私は後頭部に熱いうずきを感じ、その場に倒れた。
1967年11月24日
どうしてこんなことになったのだ。
この部屋に閉じこめられて三日がたった。
「気の毒だが、機密保持のためだ」粗末な食事を運んで来たあの白衣の男がいった。
そうか……そういうことだったのか。
この洋館の秘密を知っているのは、卿と私だけで、私が死ねば、秘密は彼ひとりのものになる。
だから……しかしなんのために……いや、考えてる暇はない。私は脱出を試みた。
ああ、なんてことだ。自分で作った罠に自分が落ちるとは。
私のすべてを注ぎこんだこの洋館は、一度迷いこんだら、誰にも脱出できないように設計したのだ。卿は、まずは私でそれを試したのだ。
そのとき、天井から何かが私の体にポタポタと落ちた。クモだ!無数のクモが私の体を、床をうごめいている。
私は思わず飛びのき、足で数匹を踏みつぶした。
1967年11月27日
なんとか私はあの部屋から出ることに成功した。
だがこの洋館の外へ出るのは、容易ではない。すべてのカラクリをとかなければ。
片目のタイガー……。黄金のエンブレム……焦って何も思い出せない。
1967年11月28日
これはなんてことだ!?
巨大で不気味な植物が部屋一杯に伸びている。こんな植物は見たことがない。
1967年11月30日
出られない。どうしても館から出ることができない。
ホルマリンが並んだ不気味な研究室……洞窟……
そして私は、ついに発見した。廊下に転がった見覚えのあるハイヒールの片方を。
ジェシカ!
妻も娘も、私と同じ運命をたどったのか!?
いや、ふたりともきっと生きている。
1967年12月5日
のどが渇いた。もう何日も食事をしてない……気が狂いそうだ。
なぜだ?なぜこんな死に方を……。
この館の異常な設計に心を奪われた私が悪かったのか。
1967年12月7日
暗い…じめじめした地下道だ。ここも行き止まりか。いや…何かある。
私は、震える指で最後のマッチをこすった。
墓だ…ああ、なんてことだ!そこに刻まれた名前は、『ジョージ・トレヴァー』、私ではないか。
奴は最初から、私がここで息をひき取るのを計算し、墓を用意していたのだ。
それにまんまと乗るなんて…
もう駄目だ…意識が遠のいて行く…
ジェシカ…リサ…私を許してくれ。
もうすぐだ。お前たちのいる天国へ私が行くのも…。
ジョージ・トレヴァー
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