劇場版ポケットモンスター ココとは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『劇場版ポケットモンスター ココ』の概要

『劇場版ポケットモンスター ココ』は、2020年12月25日に公開のテレビアニメ『ポケットモンスター』の劇場版映画第23作目の作品。
2019年11月にTVシリーズが『ポケットモンスター（新無印版）』に移行してから最初に制作された作品。『劇場版ポケットモンスター キミにきめた！』や『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』と同様に、放送中のTVシリーズとは繋がりのないオリジナルストーリーとなっている。また、元号が令和に変わってから初の完全新作でもある。
本作では人里離れた森を舞台に、ポケモンに育てられた少年・ココと幻のポケモン・ザルードの親子関係を描いたストーリーとなっている。本当の親子とは何か、育てるとは何かをテーマにした本作は幅広い年代から高い評価を得た。TVアニメ版主人公・サトシはココとダブル主人公というポジションであり、その影響かサトシの活躍の場は歴代作品と比べるとやや少なめ。
「夏はポケモン！」で知られる毎年恒例のポケモン映画だが、新型コロナウイルスの影響で公開日が延期され、当初の予定である2020年7月10日には公開されなかった。後に同年12月25日に改めて公開された。
また、今作では次回作の予告は無かった。これは『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ ビクティニと黒き英雄 ゼクロム / 白き英雄 レシラム』以来のことである。2022年4月時点まで、ポケットモンスターの映画作品は制作されていない状態が続いている。

『劇場版ポケットモンスター ココ』のあらすじ・ストーリー

ココとザルードの出会い

人里離れたジャングルの奥地にあるポケモンの楽園「オコヤの森」。そこではわるざるポケモン・ザルードが森を支配していた。

今から10年前。1匹のザルードが、川辺に流れ着いた揺りかごの中から人間の赤ん坊を発見する。赤ん坊を見捨てることができなかったザルードは、ひとまず赤ん坊を仲間たちの元に連れ帰った。
しかしよそ者を連れてきたザルードに群れの仲間は激昂し、長老ザルードはポケモンと人間は共存することはできないと告げる。ザルードは赤ん坊を実の親の元に連れていくために群れを離れることを決める。しかしそれは掟に反することであり、ザルードは結果的に群れを追放されることになってしまった。
懸命に赤ん坊の手がかりを探すザルードだったが、寂れた建物から赤ん坊が両親と一緒に写っている写真を見つけただけで、それ以上の手がかりは見つけられなかった。意を決したザルードは赤ん坊を自分の子として育てることにし、赤ん坊に“ココ”と名づけた。

そして現在。成長したココはザルードを実の父のように慕い、オコヤの森で暮らしていた。幼い頃から森のポケモンたちと仲良くしていたココとは対照的に、ザルードは自分に心を開いてくれるほおばりポケモン・ホシガリス以外の森のポケモンたちとは距離を置いていた。
ザルードはかつての仲間たちから裏切り者呼ばわりされ、酷い仕打ちを受けていた。ある時、食料の木の実をかつての仲間たちに食い荒らされたココとザルードは、自分たちで木の実の種を植えて育て、収穫すればいいと思いつく。ザルードの両腕にはツタが生えており、植物の成長を促す養分を出すことができるからだ。
ある時、ココはポケモンたちの喧嘩をなだめ、怪我をしたせいれいポケモン・フライゴンを「治癒の泉」に連れていった。この泉は傷を回復させる力があるが、ザルードの群れの縄張りでもあった。ココは他のザルードに見つかってしまい、逃げる途中で川に転落して流されてしまう。

ココとサトシの出会い 明かされるココの正体

同じ頃、ポケモンマスターを目指して旅を続けるサトシと相棒ポケモン・ピカチュウは、オコヤの森近くの町「ミリーファタウン」に来ていた。母・ハナコと電話をしたサトシは、珍しいポケモンが生息しているというオコヤの森に向かう。サトシとピカチュウは森の中で、「ビオトープ・カンパニー」の研究員であるカレンと出会う。カレンは研究所所長のゼッド博士の助手であり、「治癒の泉」の在り処を探していた。
一方、ロケット団（TVアニメ初期からサトシやピカチュウらと対立を繰り広げる、ポケモンの力を悪用しての世界征服を企む悪の組織）のムサシ、コジロウ、ニャースも珍しいポケモンを追ってオコヤの森に来ていた。サトシとカレンのやり取りを盗み聞きしたロケット団一味は、研究員になりすまして「ビオトープ・カンパニー」の研究所に潜り込んだ。

森の中でうのみポケモン・ウッウを追っていたサトシは、川に流されていたココを助ける。サトシはココをポケモンセンターに連れていったが、ココは人間の言葉を話したり理解することができなかった。それでもサトシはココとコミュニケーションを取り続け、次第にカタコトながらも意思疎通を図れるようになってきた。街で過ごす中で、自分はザルードだと思い込んでいたココは実は自分は人間なのではないかと思うようになっていった。
この日、ミリーファタウンでは花火の打ち上げが行われる予定だったが、じんけいポケモン・タイレーツの1匹が花火職人の邪魔をしていた。ココはタイレーツたちの異変に気付き、花火の筒の底に入り込んでいたタイレーツの仲間を救い上げたことで、花火は予定通り打ち上げられる。町長は協力してくれたお礼に、オコヤの森にはかつて森の守り神である幻のポケモン・セレビィがいたことを教えてくれた。

自分の正体に疑念を抱いたココは、サトシと共に森へ向かい、ザルードに自分はポケモンなのか、人間なのかを問い詰める。ザルードはココを人間と認め、二人を寂れた建物に案内した。そこでココに、彼が赤ん坊だった頃に持っていたブレスレットを渡してその場を去っていった。サトシは建物のマークが「ビオトープ・カンパニー」のものであることに気付き、ココの両親の手がかりを掴むために「ビオトープ・カンパニー」へと向かった。

一方、一足先に「ビオトープ・カンパニー」に潜入していたロケット団は、ゼッド博士が隠している研究データを狙っていた。「ビオトープ・カンパニー」はかねてから治癒の泉について研究していたが、10年前に発生した事故をきっかけに一度研究所を閉鎖していた。この閉鎖された研究所こそが、ココの両親の写真があった場所であった。そしてゼッド博士は自ら新所長に就任すると、治癒の泉の研究を再開していたのだった。

「ビオトープ・カンパニー」を訪れたサトシとココはゼッド博士と面会した。博士はココが生きていたことに驚き、彼の正体のことを話す。ココの本名は「アル・モリブデン」といい、かつて治癒の泉の研究の第一人者だった前所長のクロムとリンのモリブデン夫妻の一人息子だった。そしてモリブデン夫妻は10年前に交通事故で死亡しており、ココも同じ頃に行方不明になっていたのだった。
また、ココの持つブレスレットの中には、治癒の泉の源泉であるオコヤの森の大樹のデータが入っていた。未だに場所が判明していなかった大樹の居場所だが、ゼッド博士はココの身に発信器を取り付けてその後を尾行し、遂にその在処を突き止める。
態度を豹変させたゼッド博士はサトシ、ピカチュウ、ココを捕らえて監禁し、研究員らと共に大樹を調査する。その結果、この大樹こそが治癒の泉の力の源であることを突き止めたのだった。

その頃、引き続き研究員に変装していたロケット団はサトシたちが閉じ込められていたトラックの見張りを買って出る。ゼッド博士の所長室に入るためのカードキーをウッウに飲み込まれてしまっていたからだ。ロケット団はトラックからサトシとピカチュウを逃がすと、ピカチュウを利用してウッウからカードキーを吐き出させることに成功する。
再び「ビオトープ・カンパニー」内のゼッド博士の部屋に侵入したロケット団は、そこで思いがけない真実を知ることになる。
10年前、モリブデン夫妻は既に治癒の泉の源泉である大樹の場所を特定していた。しかしそこがザルードの縄張りであることに気付き、ザルードたちとオコヤの森を守るために研究を中断することにしたのだった。しかし研究の中断に反対したゼッド博士は、邪魔者であるモリブデン夫妻をカーチェイスで追い回した末に死に追いやった。死の間際、モリブデン夫妻はココに大樹のデータが入ったブレスレットを託し、揺りかごに乗せて川に逃がしていたのだった。

ゼッド博士との決着とココの旅立ち

ゼッド博士は治癒の泉の力を人間のためだけに用いることを考えており、森やポケモンたちのことは見向きもしていなかった。博士は重機を操り、大樹を守ろうと飛び出してきたザルードやサトシたちと抗争を繰り広げる。オコヤの森を守るため、ザルードはかつての仲間たちに加勢し、これまで距離を置いてきた森のポケモンたちには頭を下げて協力を要請した。
しかしザルードは戦いで深手を負ってしまう。ココはザルードを治癒の泉に連れて行ったが、泉は博士の攻撃で水が溢れ、治癒の効果が薄まっていた。それでも必死に父を想うココは、本来なら使えないはずのザルードたちの技「ジャングルヒール」でザルードを回復させた。
暴走するゼッド博士は遂に仲間からも見限られ、カレンたち研究員は離反してサトシたちに味方する。サトシはピカチュウを重機の背面に向かわせ、ピカチュウはザルードたちのアシストを受けながら「アイアンテール」を炸裂させる。重機を破壊され、逃げようとしたゼッド博士はココに取り押さえられる。その後、ロケット団が世間にゼッド博士の悪事を暴露したことにより、ゼッド博士は逮捕された。

カレンはザルードらにゼッド博士の行いを謝罪し、研究員やポケモンたちと協力して森を元に戻すと誓った。やがて森は徐々に美しさを取り戻し、掟を見直した群れの判断により、ザルードとココは群れに戻ることを許可された。
しかしココは今回の件をきっかけに、自分は人間とポケモンの架け橋になりたいという思いを抱くようになっていた。独り立ちして旅に出たいと告げたココに対し、ザルードは「無理だ」「勝手にしろ」と言い放ち、ココの元を離れる。しかしココのバッグにはかつて二人で育てた木の実を忍ばせ、大樹からは噴水を打ち上げてココを見送ったのだった。
サトシとピカチュウ、ココが旅立ち、平和が訪れた森にはピンク色のセレビィが現れていた。

『劇場版ポケットモンスター ココ』の登場人物・キャラクター

メインキャラクター

サトシ

声：松本梨香
主人公。ポケモンマスターを目指す10歳の少年。TVシリーズとは時系列が繋がっていないため、服装はオリジナルで手持ちポケモンはピカチュウのみ。本作ではこれまでのTVシリーズでいっさい明言されてこなかった父親の存在について言及しており、「パパ」と呼んでいることが判明する。

ピカチュウ

声：大谷育江
技：10まんボルト、アイアンテール、でんこうせっか
サトシの相棒ポケモン。本作では探検帽にホエルコの水筒を掛けた姿で登場。

ムサシ

声：林原めぐみ
ロケット団の女性団員。今作では悪巧みの発案が多い。

コジロウ

声：三木眞一郎
ロケット団の男性団員。今作ではコンピュータを操作するなどの活躍を披露。

ニャース

声：犬山イヌコ
ばけねこポケモン。ロケット団のポケモン団員。人語を話せるスキルを活かしてポケモンの通訳もできるが、今作はそのような場面がない。