七福星(香港映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『七福星』とは、サモ・ハン・キンポー監督・主演のアクション・コメディー作品で、『福星』シリーズ第3弾。『あぶない刑事』の同時上映として公開された。前作『大福星』にてヤクザ撲滅に協力したキッド(演:サモ・ハン・キンポー)ら一同は、褒美としてパタヤ旅行へ行く事となった。またその先でも思わぬ魔の手が立ちはだかっていた。一方で香港警察の刑事マッスル(演:ジャッキー・チェン)やリッキー(演:ユン・ピョウ)達は香港で捜査に乗り出していた。ジャッキー・チェンやユン・ピョウは『福星』シリーズ出演最後となった。

戦いを目前にするラッキーとリッキー(写真左から順に)。

麻薬の密売組織に潜入するも、素手で戦う事となった香港警察刑事のマッスル、リッキー、ラッキーだったが、彼等の目の前には大勢の手下が待ち構えていた。手下達を前にしたリッキーは、先ず隣にいたラッキーに「やれるか?」と尋ねると、ラッキーは「相手が2人までならな」と答える。それに対しリッキーは「俺は3人ってとこだ」と告げ、それを近くで聞いていたマッスルが恐る恐る「残りは?」と尋ねると、リッキーが「9人まとめて頼むよ」と答え、マッスルは唖然とする。
リッキーの真っすぐ(過ぎる)性格が伺える言葉であり、真面目なマッスルは彼のせいで多くの手下と戦うハメになった。

金髪の殺し屋「英雄を気取ると早死にするぞ、俺はカネになる殺ししかしたくない」

割れたガラス瓶を突き付ける金髪の殺し屋。

マッスルがラウを殺害した一人である、金髪の殺し屋を住宅街まで追跡し、彼と激しい格闘を繰り広げる。しかしマッスルがスキを突いた瞬間に、金髪の殺し屋が割れたビンをマッスルの顔に突き付け、「英雄を気取ると早死にするぞ、俺はカネになる殺ししかしたくない」と告げる。そして、マッスルの腹を殴り、逃亡。
現実的かつ冷酷な殺し屋を見事に表現している様に思え、真顔でこの様に言われたら誰でもたじろぐのではないだろうか。

ジョニー、フラワー他一同「何てこった」「何なのこれは?」「何事だ」

エレベーターから出て来るフラワー、ベン(写真左から順に)その他一同。

殺し屋集団との戦いを終え、マッスル達が彼等を取り押さえ連行しようとした矢先、この部屋のエレベーターのドアが開く。中からフラワーやジョニー、香港警察のみならず多くの集団が続々と部屋に入って来た。よく見ると(当時の)香港の人気歌手や俳優が次々とやって来て、一同が「何てこった」「何なのこれは?」(広東語:「搞錯呀(ガウチョウア)!」)と叫んだ後、その部屋(撮影所)で打ち上げパーティーが行われるというエンディングで幕を閉じた。まるでテレビドラマ『太陽にほえろ!』(日本テレビ)での松田優作の「なんじゃこりゃ!」をコミカルにしたが如く、エンディングに相応しい、これにて一件落着と言うセリフである。

『七福星』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

貴重なジャッキーの敗北シーン

本作品の後半では、ジャッキー・チェンと倉田保昭との激しいバトルが繰り広げられているものの、ジャッキー・チェンが珍しく敗北する展開となっている。本作品の撮影当時、ジャッキー・チェンは他にも『ポリス・ストーリー/香港国際警察』『ファースト・ミッション』(1985年)等の作品も掛け持ちしているという過密スケジュール状態で睡眠時間もろくに取れていなかった。そのうえ、本作品の倉田保昭とのバトルシーンの撮影場所である、ゴールデン・ハーベストのスタジオは気温が40度近くあるという過酷な状況で行われた。
更にアクションに対し妥協を許さない監督のサモ・ハン・キンポーにより、撮影には二日間掛かり、(リテイクを含めて)計六十数回も撮り直した。そんな状況で既に疲労の限界に達していたジャッキー・チェンは撮影中、サモ・ハンに怒りを露にし「もう俺を殺してくれ」と告げ、結局サモ・ハンに頼んで「(ジャッキーが)銃で撃たれる」脚本に書き変えられたとの事。またアクションシーンは防具を付けて行なわれていたものの、パンチやキックを実際に当てた。撮影を終えた後、ジャッキー・チェンと倉田保昭は二人共、互いの指が曲がって骨折をしていた。ジャッキー・チェンは、倉田保昭に「僕が売れてから、負ける役を演じた作品は、この作品だけですよ。」と告げたとの事。

その後の『福星』シリーズ

『五福星』(1983年)で産声を上げた『福星』シリーズは、2作目の『香港発活劇エクスプレス 大福星』(1985年)も興行収入3000万香港ドルを越える大ヒット作となった。
3作目である本作品以降も、ジャッキー・チェンやユン・ピョウが出演しないものの、倉田保昭の内弟子である松井哲也(特撮テレビドラマ『仮面ライダーBLACK RX』(1988~1989年)のダスマダー大佐役等)がアンディ・ラウやサモ・ハン・キンポーらと対決する『十福星』(原題:最佳福星、英題:Lucky Stars Go Places、1986年)やサモ・ハン・キンポーも出演しない『福星闖江湖』(1989年)、「二枚目」役のチャールズ・チンの引退作となった『五福星撞鬼』(1992年)等、1990年代に入っても制作された。
しかし『ゴッド・ギャンブラー』(1989年)等の新しいタイプの作品や、チャウ・シンチーといった新鋭のコメディー俳優出演の作品が大ヒットとする等、香港映画界においても時代の変化が見られた。その影響もあってか、1996年制作の『運財五福星』(ブルース・リー作品でお馴染みの女優ノラ・ミャオがゲスト出演)を最後に『福星』シリーズは制作されていない。

『七福星』の主題歌・挿入歌

日本版主題歌:ジャッキーチェン『無問題』

日本版主題歌『無問題』。

日本版主題歌は、本作品に出演のジャッキー・チェンが手掛けたダンスミュージックソングで、1987年11月に発売された。翌12月には、この曲を収めたアルバムも発売された。

香港版主題歌:ケニー・ビー『夏日福星』

香港版主題歌:『夏日福星』

香港版主題歌を歌唱したケニー・ビーは、1970年代にアラン・タムらと音楽バンド「ウイナーズ」のメンバーとして活躍。1980年代以降は音楽活動の傍ら、俳優として『風にバラは散った』(1989年)や『金玉満堂/決戦!炎の料理人』(1995年)等、多くの作品へ出演。

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