SPY×FAMILY（スパイファミリー）のネタバレ解説・考察まとめ

『SPY×FAMILY』の概要

『SPY×FAMILY（スパイファミリー）』は、遠藤達哉によるアクションコメディ漫画。
『少年ジャンプ+』にて2019年3月25日より隔週月曜更新で連載中。
本作の連載開始と同日発売の『週刊少年ジャンプ』（集英社）2019年17号には、本作の予告漫画が掲載された。1巻発売直後の32号、2巻発売後の47号にも読切の出張掲載が行われた。
閲覧数・コメント数・発行部数における最高記録を次々と更新するなど、『少年ジャンプ+』でも歴代屈指のヒット作。
次にくるマンガ大賞2019 Webマンガ部門1位、このマンガがすごい!2020 オトコ編1位、第24回手塚治虫文化賞ノミネートなどの受賞歴を誇る。
スパイアクションとホームドラマの融合によるコメディという異色作。
物語は架空の国である東国（オスタニア）にて活動する西国（ウェスタリス）の凄腕スパイである男が、東西平和を脅かす危険人物デズモンドに近づきその動きを探る任務を受けることから始まる。デズモンドは大変用心深く慎重な男で唯一姿を見せるのは彼の息子が通う名門イーデン校の懇親会だけだった。そのためスパイの男は急遽家族を作ることになる。
スパイの男は何も知らずに、超能力者の娘、殺し屋の妻という普通とはかけ離れた家族を作ってしまう。
そんな彼女達と普通の家族を演じながら、任務の成功へ向け尽力しつつ、家庭で起きるトラブルや世界平和を守るための別任務をこなし、お互いの秘密を隠しながら奮闘するホームコメディである。

『SPY×FAMILY』のあらすじ・ストーリー

オペレーション<梟>の発動

西国（ウェスタリス）と東国（オスタニア）の間で繰り広げられていた、壮絶な戦争が終わって10年。両国は火種を残しながらも交流を重ね、表向きは平和を謳歌していた。
しかしその裏で西国と東国は自己の利益と外交的優位のために熾烈な情報戦を繰り返しており、世界は「一歩間違えれば再び大きな戦火が巻き起こる」という危うい均衡の中にあった。自国のため、名誉のため、あるいは「2度と戦争を起こさせない」ため、両国のスパイたちは命がけの暗闘を続けていた。

西国の諜報機関「WISE」（ワイズ）に所属する、「黄昏」（たそがれ）のコードネームを持つ敏腕スパイは、ある時上層部から「新たな戦争を画策しているとされる東国の政府要人ドノバン・デズモンドに接触できる身分を獲得し、長期的かつ持続的に彼から情報を取得できる状況を作れ」と命じられる。「オペレーション<梟>」（オペレーション・ストリクス）と命名されたこの作戦は、その目標を達成するために「東国で家族を作る」という無茶にも程がある計画を前提としていたが、黄昏は「それが平和の礎となるならやってみせよう」と意気込んで東国に向かう。
「精神科医のロイド・フォージャー」という仮初の立場を手に入れた黄昏（以降、本記事では黄昏のことを“ロイド”と表記する）は、手っ取り早く家族を作るために孤児院へと赴く。そこで「アーニャ」と名乗る少女と出会ったロイドは、彼女を引き取った上で「亡き妻との間に生まれた一人娘」という形で戸籍を偽造する。

しかしそのアーニャは、実は他人の心を読むことができる超能力者であり、かつては東国の極秘機関に囚われて研究対象にされていた存在だった。研究所を逃げ出して孤児院に転がり込んでいたアーニャは、自身の能力でロイドがスパイであることを見破り、「スパイなんておもしろそう」と興味津々で自らを売り込み、彼の娘となったのである。
ドノバンは東国の名門であるイーデン校に自分の子を通わせており、ここの優等生とその家族だけが参加できる懇親会にのみ定期的に出席していた。ドノバンと接触するには自分も「イーデン校の優等生の親」になるしかないと考えたロイドと、そんな彼を父として気に入って力になりたいアーニャは、なんとかイーデン校の入学テストをクリアする。しかし入学するにはテストで既定の学力を示すだけでなく、“父母がそろった状態での家族面談”が必須であることが明らかとなり、今度はフォージャー家に母親を作る必要に迫られる。

フォージャー家の誕生

東国の首都バーリントの市役所で働くヨル・ブライトは、同国において伝説ともされる暗殺者組織ガーデンに所属する殺し屋でもあった。しかし「いい歳した女が結婚していないのは怪しまれる」という同僚たちの噂話を耳にしたヨルは、「殺し屋を続けるためにも結婚相手を探さなければ」と焦るようになる。
そんなある日、ヨルは“フォージャー家の母親”になってくれる女性を探していたロイドとアーニャに出会う。アーニャはその超能力でヨルが殺し屋であることに気づき、「父がスパイ、母が殺し屋なんてきっとおもしろい」という理屈で2人を近づけようと画策する。

ロイドにとってもヨルにとってもこの流れは渡りに船で、2人は「“何も知らない一般人”である相手を利用させてもらっている」と互いに思い込みつつ偽装結婚。周囲どころか結婚した相手にも自身の正体を隠したまま、同居人として暮らし始める。それでも「正体を知られるわけにはいかないが、自分の目的のために善良な一般人を騙すなんて」との罪悪感から双方が積極的に良き妻良き夫であろうと努力し、アーニャもアーニャなりに時に2人をフォローし、時に素直に甘えた結果、フォージャー家は次第に家族としてのまとまりと強い絆で結ばれていくようになる。東国の動物実験で生まれた“近未来の出来事を予知する”超能力を持つ老犬ボンドも一家に加わり、家族の一員として大切にされていく。
ヨルが裏社会の大規模な抗争に巻き込まれた際は、彼女は「なんとしても家族の下に、ロイドとアーニャと暮らす家に戻る」との強い決意と共に戦い抜いており、3人にとってフォージャー家は“自分の仕事や正体を隠すための隠れ蓑”ではなく“自分たちの帰るべき場所”としての側面を強くしていった。

一方、ロイドに熱烈な慕情を寄せるWISEの女スパイ「夜帷」（とばり）ことフィオナ・フロスト、ヨルの弟で猛烈なシスコンのユーリ・ブライアは、ロイドとヨルの結婚に不満を持ち、様々な形で一家の生活に干渉。ある時は新たな事件を起こし、ある時はフォージャー家の面々と共に事件を解決するなど、騒がしくも頼れる隣人として振る舞っていく。

イーデン校の生徒たち

イーデン校に入学したアーニャは、優等生の証である「星」（ステラ）という勲章を授与されることを目指して奮闘を重ねていく。同年代の新入生より実年齢が低いアーニャは学業面では大いに苦戦するが、一家で暮らすアパートの隣人となった元大学教授のジークムント・オーセンに勉強を見てもらったりしながら、少しずつ成績を伸ばしていく。
一方、ロイドは「アーニャの努力は見守ってやりたいが、新たな戦争を防ぐためには星を獲得していく以外のドノバンとの接触方法も検討しなければ」と考え、ドノバンの次男であるダミアン・デズモンドに注目。彼とクラスメイトになったアーニャに、ダミアンとは仲良くするよう伝える。

そのダミアンは、破天荒なアーニャに振り回される内に、次第に彼女に惹かれるようになる。やがてダミアンの母親であるメリンダ・デズモンド、ダミアンの兄のデミトリアス・デズモンドもフォージャー家の面々と関わるようになっていき、「ドノバンとの長期的かつ持続的接触」というロイドの目的は少しずつ近づいていく。
ロイドのために奮闘を続けるアーニャだったが、幼い彼女にはダミアンが自分に抱く感情がなんなのか分からなかった。それでも交流を重ねる内に、ダミアンが決して家族から無条件に愛されるような家庭で育ってはいないこと、自分たちフォージャー家の結束を「羨ましい」と口にしたのを聞いたことで、彼が本質的には孤独であることを察する。そんなダミアンに、研究所時代の自分を重ねたアーニャは、ロイドやヨルにも明かしていない「自分は他人の心が読める」という秘密を彼だけにこっそり伝えるのだった。

ヘンリーとマーサの物語

イーデン校の教師であるヘンリー・ヘンダーソンは、学生時代にはマーサ・マリオットという後輩の少女と親しく交流していた。ヘンリーの卒業により2人の関係はいったん断絶するも、彼が新人教師としてイーデン校に戻ってきたことで再び交流を再開する。
しかしこの頃、東西両国の戦争は泥沼化していた。敵国の攻撃は東国の首都にあるイーデン校の周囲にまで及ぶようになっており、マーサが「いつかここで踊るダンサーになる」と憧れていた劇場も爆撃により崩壊。夢見た未来を失ったマーサは、半ばヤケになって軍人になる道を選ぶ。それでも「戦争に行く前にヘンリーに自分の気持ちを伝えよう」と考えていたマーサだったが、アクシデントにより失敗し、2人は擦れ違ったまま別れることとなった。

マーサは戦場から手紙を送り続けるが、前線に配備されて命の危険を感じ始めると次第に弱音を吐いていく。ヘンリーはこの時になって初めて「自分の手でマーサを守りたい、生きて帰ってきてほしい」という自分の本心に気づくが、“マーサの所属する部隊が壊滅した”という報せを聞いて絶望。諦観を抱えたまま、家の都合で結婚する。
しかしマーサは死んでおらず、西国の民間人に救助されて手当てを受けていた。東西両国の戦争が小休止を迎えたタイミングで、彼女は長い昏睡状態から目を覚まし、恩人に別れを告げて母国を目指す。

『SPY×FAMILY』の登場人物・キャラクター

フォージャー家

ロイド・フォージャー

本作の主人公。
東国で諜報を行う、西国組織WISEの敏腕スパイ。「黄昏」はコードネームで、本名はスパイになった時に捨てた。コードネームの「黄昏」は顔も名前もわからない「誰そ彼」の意味でもある。カバー裏のプロフィールでは出身地・年齢などの個人情報は全て黒塗りにされていた。
変装が得意。オペレーション〈梟〉ではバーリント総合病院勤務の精神科医「ロイド・フォージャー」の偽装身分を用いる。病院関係者や患者からの信頼も厚い。
並外れた戦闘力・記憶力・情報処理能力を持ち、任務ごとに様々な顔・名前を使い分ける。元戦災孤児で、「（幼いころの自分のような）子どもが泣かない世界」を作るためにスパイとなった。
普段は冷徹だが、本来は人間味溢れる性格で、作戦に巻き込んでしまったヨルとアーニャの日常生活や任務終了後の生活にも気を配っている。
しかし、スパイらしく合理的な考えに至りがちで、一般的な考えからズレることがある。
任務のため正体を隠してアーニャやヨルと偽装家族になり、予想外の行動をとる彼女らに振り回されつつ任務をこなす。なお、ヨルには「死別した前妻（架空）のためにも、アーニャを名門イーデン校に入学させ良い人生を送らせようと」妻役を探していたと説明している。
考えがまったく予測できない子供のアーニャに悪戦苦闘する日々だが、アーニャと一緒に寝てても気づかなかったり、ボンドによってズタボロにされたアーニャのぬいぐるみを「ちちもらったやつだからだいじ」と言われて縫い合わせてあげた。更にはスパイは目立ってはいけないという信条を破って目立つ行為も何度もしてしまっているくらいにアーニャのことを大事にしている。
偽装妻であるヨルに対しても彼女の機嫌が悪くなればデートに誘いフォローをしていた。しかし偽装妻であるヨルも予想外の行動をとるため上手くいくことが少ない。
フォージャー家では料理を担当しており、敵対心を抱いていたユーリですら黙らせてしまう腕の良さ。
フランキーに対しては素に近い態度で接しており辛辣な態度をとることが多いが、彼が恋した時はなんやかんや会話のパターンを作成したり会話の練習に付き合ったりもした。その恋は残念な結果になってしまったがフランキーを慰めるため一緒に酒を飲むなど面倒見の良い一面もある。

ロイド・フォージャー／黄昏（SPY×FAMILY）の徹底解説・考察まとめ - RENOTE [リノート]

renote.net

ロイド・フォージャーとは遠藤達哉による漫画『SPY×FAMILY』（スパイファミリー）の主人公で凄腕のスパイ。コードネームは「黄昏」で本名は不明。東国の大物政治家ドノバン・デズモンズとの接触を目的とした任務・オペレーション〈梟〉（ストリクス）を遂行するため、精神科医ロイド・フォージャーを名乗り偽装家族を形成する。スパイとしての能力は超一流で、戦闘能力だけでなく変装技術、人心掌握術と様々な技能に長けている。スパイらしく常に冷静で合理的な性格だが、本質的には平和を愛する心優しい青年である。

ヨル・フォージャー

バーリント市役所の女性事務員。裏の顔は凄腕の殺し屋。27歳。旧姓はヨル・ブライア。
幼少期に両親を亡くし、殺し屋「いばら姫」として弟のユーリを養った。「店長」なる人物から指示を受け、「売国奴」を暗殺する。ロイドには勿論だが、唯一の肉親である弟のユーリにも秘密にしている。
純粋な戦闘力・身体能力では黄昏をも凌ぐが、天然な性格で、突飛な妄想に陥ることがある上、嘘が下手など心理的な駆け引きは苦手。幼少期にユーリをハグして肋骨を2本折ったことがあった。
アーニャがピンチに陥った時必ず相手を戦闘不能にしてくれる頼れる母である。例え相手が車に乗っていても、暴れ狂う牛相手でも。
かなり酒癖が悪く、少量の酒で前後不覚に陥る。ロイドも蹴り飛ばされ気絶し顎を奇妙な形で腫らさせた。翌日に記憶をすっかりなくしてしまうこともある。
本人は無自覚だが整った容姿の美人。人間関係の問題や怪しまれることを回避するために、妻役を探していたロイドと偽装結婚しアーニャの義母となる。ロイドの工作により戸籍上では1年前にロイドと入籍したことにしている。
暗殺の後始末に慣れているため掃除は得意だが、それ以外の家事は苦手。特に料理は壊滅的で、手料理を食べた者は悶絶する。そのため、フォージャー家の食事は基本的にロイドが担当する。
好物はりんご、嫌いなものは虫。
お互いの利益のために始めた偽装家族だったが、最近ではこの生活を手放したくないと思っている。