劇場版 SPY×FAMILY CODE: White（スパイファミリー）のネタバレ解説・考察まとめ

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』の概要

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』（スパイファミリー コードホワイト）とは、遠藤達哉による漫画『SPY×FAMILY』の劇場版アニメ作品。
それぞれの事情や目的から仮初めの家族となったスパイの男と暗殺者の女と超能力者の少女が、己の素性を隠しながらも共に過ごす中で少しずつ家族としての絆を紡いでいく人気漫画『SPY×FAMILY』（スパイファミリー）の劇場版作品。監督は片桐崇が務め、原作者である遠藤自身が監修に携わった。

原作は2019年に連載開始されるなり、そのユニークな設定と波乱の展開、互いに利用するつもりで寄り集まった主要人物たちが“家族”として歩み始める微笑ましい姿で好評を博す。2022年にはアニメ化し、その高いクオリティで国内外から称賛の声を集めた。

敏腕スパイのロイド・フォージャーは、敵地である東国（オスタリア）での長期内偵任務オペレーション<梟>（オペレーションストリクス）の実行役として選別され、「カモフラージュのために家族を作れ」と命じられる。手っ取り早く家族という体裁を整えようと考えたロイドは、孤児院からアーニャという少女を引き取り、結婚相手を探していたヨル・ブライアと仮初めの夫婦となり、ミッション遂行の準備を整える。
しかし実はアーニャは「他人の思考を読み取れる超能力者」であり、ヨルは「その身分を世間から隠蔽するために結婚相手を探していた凄腕の暗殺者」なのだった。互いを利用するつもりで一緒になったロイド、ヨル、アーニャだったが、共に過ごす内に少しずつ家族としての絆を紡いでいく。

そんなある日、一行はそれぞれの理由からフリジス地方への家族旅行に出発。表向きの目的は名物料理メレメレの研究だったが、夫婦の危機や謎のチョコレート、ハプニングに次ぐハプニングにより、フォージャー家の初めての家族旅行は波乱に満ちた展開を迎える。

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』のあらすじ・ストーリー

これまでの『SPY×FAMILY』

世界屈指の大国である西国（ウェスタリス）と東国（オスタニア）は、ほんの10年ほど前まで凄惨な戦争を繰り広げていた。明確な決着がつかないまま終戦を迎えた後、両国は今度は熾烈な諜報戦争を開始。スパイたちが命懸けで機密情報を奪い合うようになる。
西国の諜報機関「WISE」随一のスパイである黄昏（たそがれ）は、ある日「東国に長期潜伏した上で、継続的に政府重鎮に関する情報を西国に流し続ける」という重要任務を命じられる。オペレーション<梟>（オペレーションストリクス）と名づけられたこの任務を遂行するため、黄昏は「ロイド・フォージャー」という仮の名前と戸籍を手に入れ、東国へと潜入。政府重鎮に近づくために不可欠な“家族”を用意するため、まずは手っ取り早く孤児院からアーニャという名の少女を引き取る。

実はこのアーニャ、他人の心を読み取ることができる超能力の持ち主だった。迂闊に自分の力について知られると危険なことになると承知しているアーニャは、超能力についてはロイドに秘密にする一方、彼の心の中を読み取って「この人は本物のスパイだ」と大興奮。幼いながらに娘として精いっぱいロイドに協力していく。
次いでロイドが探したのが、“妻に先立たれて娘を1人で育てるシングルファザー”である自分の伴侶となる女性だった。市役所で働くヨル・ブライアという女性と偶然出会ったロイドは、彼女もまた結婚相手を探していることを知り、それぞれの目的のため契約結婚する。

しかし実はヨルは「いばら姫」の異名を持つ凄腕の暗殺者であり、結婚相手を探していたのも「いい歳して独り身だと怪しまれる、暗殺者であることがバレるかもしれない」という懸念が理由だった。アーニャだけが両親の素性を知る中、3人は「自分はフォージャー家を利用するだけの立場だが、せめて良き家族の一員であろう」と務め、次第に本物の絆で結ばれていく。
ロイドの昔馴染みの工作員フランキー・フランクリン、ヨルの弟で国家保安局の若きエースユーリ・ブライア、WISEの敏腕スパイでロイドに熱烈な行為を抱くフィオナ・フロスト、そして少し先の未来を予知する力を持つ犬のボンド。様々な仲間たちと関わりつつ、フォージャー家の慌ただしい日々は続いていく。

フォージャー家の危機

ある時、オペレーション<梟>の担当からロイドが外されることとなってしまう。これが西国の上層部が手柄の独占を目論んで強権を発揮した結果だと知ったロイドは、「そんな連中に大事を任せられるか」と内心で反発。この決定を覆させるべく、オペレーション<梟>に一定の成果が出ていることを証明しようと考える。
折しもアーニャの通うイーデン学校で調理実習が開かれるらしく、ここで優秀な結果を出せば成績優秀者の証である星（ステラ）がもらえるらしい。名門のイーデン校で成績優秀と認められるということは、同校に子を通わせる東国（オスタリア）の重鎮とも近づけるということであり、オペレーション<梟>の成果として十分なものだった。

ロイドはこれに目をつけ、審査員を務める校長の好物だというフリジス地方の名物料理メレメレの研究を兼ねた旅行を家族に提案。初めての家族旅行にアーニャが喜ぶ一方、ヨルは出発前にロイドが見知らぬ女性と話しているのを見てしまい、「ロイドのこともアーニャのことも大切にしているが、結局この家族は仮初めの関係でしかないのか。もしロイドが他の女性に心惹かれたら、自分は離婚させられてフォージャー家の人間ではいられなくなるのではないか」と自分たちの関係の歪さに不安を覚える。
波乱の予感を残しながら始まった旅行の中、列車の中で怪しいトランクケースを発見したアーニャは、好奇心からこれを開けてしまう。中にはチョコレートが入っており、手に取って不思議がっているところに怪しい男たちが接近。焦ったアーニャは、中にあったチョコレートを咄嗟に飲み込んでしまう。

メレメレの材料探し

フリジスへとやってきたフォージャー家の面々は、早速美味しいメレメレを出すというレストランに向かう。しかしいざメレメレを食べようとしたところで、スナイデルという軍人が部下と共に店を来訪。この日用意された中では最後の1切れだったアーニャのメレメレを強引にに奪い取る。ロイドはこれに抗議するも、ならばと申し込まれた味覚勝負で後れを取り、スナイデルにメレメレを食べられてしまう。
このままではフリジスまで来た意味が無いと考えたロイドは、店主に「材料を集めてきてくれれば新しいメレメレを作る」との約束を取りつけ、アーニャやヨルと一緒に市場へと繰り出す。ロイドがテキパキと材料を集めていく一方、「ロイドは誰かと不倫していて、自分は間もなく捨てられるのでは」と案じるヨルは旅行を素直に楽しめないでいた。「理由は分からないが、ヨルが何か悩んでいる」と察したロイドは、彼女に市場で売られていたオレンジ色の口紅をプレゼントする。

「どうやら不倫されていたわけではないらしい」とヨルが胸を撫で下ろす一方、アーニャは「せっかくの旅行なのに全員で楽しむことができない」と宿で寂しさを持て余していた。メレメレの材料集めは順調に進むも、オレンジのリキュールだけがどうしても手に入らず、ロイドは顔馴染みの情報屋であるフランキーに「お前の人脈でリキュールを手に入れてフリジスまで届けに来てくれ」と無茶な依頼を伝える。
その頃、アーニャは「ボンドの予知を自分が超能力で読み取る」という形で、オレンジのリキュールが駅前の店にあることを突き止めていた。超能力のことを両親に悟られるわけにもいかず、この情報を直接ロイドたちに伝えることはできないと考えたアーニャは、こっそり宿を抜け出してリキュールを買いに出掛ける。その頃、ようやく宿に戻ってきたロイドは、密かに彼を追いかけてきたフィオナから「スナイデルが西国との戦争の引き金を引こうとしている」との情報を得る。

マイクロフィルムの行方

強硬派の軍人であるスナイデルは、西国との融和策に舵を切る東国政府に見切りをつけ、再び両国を開戦させようとしていた。そのために彼が選んだのが、独自に開発した飛行戦艦による西国への単独攻撃だった。これには中立国を経由しての安全な飛行ルートの確保が不可欠で、スナイデルはこのデータが入ったマイクロフィルムをチョコレート菓子で包んで自分の下へと運ばせていた。このチョコレート菓子をアーニャが食べてしまったことを突き止めたスナイデルは、部下に命じて彼女を捕まえ、マイクロフィルムを手に入れようとする。
概ね事情を察したロイドは、アーニャを救出するべく飛行機を操って飛行戦艦を追撃。猛烈な対空砲火を必死に掻い潜り、半ば体当たりするような形でなんとか飛行戦艦に乗り込む。実はこの飛行機にはロイドとアーニャのことを案じたヨルもこっそり乗り込んでおり、彼女もまた「どうして空の上にいるのか」と首を傾げつつ飛行戦艦の内部を探索していく。

何者かが侵入したことを知ったスナイデルは、タイプFという強化処置を施した兵士を彼らの迎撃に向かわせる。タイプFは全員に武器を備え、肉体の強度も異常なレベルにまで高めた、一種のサイボーグ戦士だった。アーニャを探して飛行戦艦の中をさまよっていたヨルが彼に捕捉され、激しい戦闘を繰り広げる。
一方、スナイデルの部下に捕まって飛行戦艦の中に連れ込まれたアーニャは、「マイクロフィルムを食べてしまったなら、出すまで待てばいい」との理屈から早くうんちをするよう執拗に迫られていた。ロイドたちの介入でいったんは逃げ出すアーニャだったが、便意には勝てずにトイレで出すものを出したところで再び兵士たちに確保され、「もはや用済み」と甲板まで連れていかれる。

家族の絆

スナイデルは「マイクロフィルムはまだアーニャの腹の中かもしれない」と考え、彼女を生きたまま解体するつもりでいた。もはや万事休すとアーニャが絶望したその時、敵兵に変装したロイドが彼女を助けに現れる。スナイデルは軍人として培ったその並外れた勘の鋭さと指揮能力でロイドを追い詰めていくが、「この男を騙すのは困難だ」と考えたロイドは“スナイデルに変装して彼に襲い掛かる”という奇策で対抗。「どちらが本物なのか、どちらの指示に従えばいいのか」と敵兵が戸惑う中でスナイデルを叩き伏せ、あくまで“自分こそが本物のスナイデルである”という体裁で飛行戦艦からの退避を命じる。
この頃には、ロイドたちの工作でついた火が飛行戦艦のほぼ全体を覆っており、墜落は不可避な状態だった。タイプFの恐るべき性能に苦戦していたヨルだったが、彼が弾薬を体内に仕舞いこんでることに気付き、口紅を利用してこれに引火させることで撃破する。

甲板で再会するフォージャー家の面々だが、飛行戦艦の墜落はすでに始まっていた。このままではフリジスの市街地に落ちて大変なことになると考えた3人は、協力してなんとか飛行戦艦の進路を変更し、巨大な湖へと着水させる。フォージャー家のあまりにも慌ただしい家族旅行は、こうしてようやく初日を終える。
上層部の横暴に辟易としていたのはロイドだけではなく、WISEのスパイたちは協力して新たにオペレーション<梟>を担当する予定だった西国の軍人を失脚させる。アーニャの歯の裏側にくっついていたマイクロフィルムを回収したロイドは、この顛末を伝えられると共に引き続きオペレーション<梟>を進めるよう正式に命じられる。

一方、集めた材料でメレメレを作ってもらい、レシピも教わったアーニャだったが、事故で調理実習そのものが延期となったことで彼女の努力は徒労に終わる。大いに落胆するアーニャを見て、ロイドは「次の審査員である教頭は南部地域の菓子が好きだと聞いた」と思い出し、今度は南への家族旅行を提案。フォージャー家は2度目の家族旅行に出発する。
この頃、フリジスではオレンジのリキュールをなんとか調達して駆け付けたフランキーが、「黄昏は何をやっているんだ」と寒空の下でぼやいていた。

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』の登場人物・キャラクター

ロイド・フォージャー／黄昏（たそがれ）

CV：江口拓也

西国（ウェスタリア）の諜報機関WISE（ワイズ）に身を置く敏腕スパイ。オペレーション<梟>遂行のため、孤児院からアーニャを引き取り、結婚相手を探していたヨルと契約結婚し、表向きは家族として共同生活を送るようになる。
自身がスパイであることは家族には秘密にしている。スパイとしての技量はWISEの中でもトップクラスに高く、それだけにオペレーション<梟>の傍ら様々な追加任務を押し付けられている。

ロイド・フォージャー／黄昏（SPY×FAMILY）の徹底解説・考察まとめ - RENOTE [リノート]

renote.net

ロイド・フォージャーとは遠藤達哉による漫画『SPY×FAMILY』（スパイファミリー）の主人公で凄腕のスパイ。コードネームは「黄昏」で本名は不明。東国の大物政治家ドノバン・デズモンズとの接触を目的とした任務・オペレーション〈梟〉（ストリクス）を遂行するため、精神科医ロイド・フォージャーを名乗り偽装家族を形成する。スパイとしての能力は超一流で、戦闘能力だけでなく変装技術、人心掌握術と様々な技能に長けている。スパイらしく常に冷静で合理的な性格だが、本質的には平和を愛する心優しい青年である。

ヨル・フォージャー／いばら姫

CV：早見沙織

東国（オスタリア）の伝説的暗殺者組織ガーデンに所属する凄腕の暗殺者。普段は市役所で働いているが、同僚から「ヨルくらいの年齢で結婚していないのは怪しい」と吹き込まれ、暗殺者としての身分を隠すために結婚相手を探していた。
暗殺者としての顔を別にすればおっとりとした優しい女性で、やや天然気味。アーニャのことは「ロイドの連れ子」だと認識しており、しっかり愛情を注いで大切に接している。

ヨル・フォージャー／いばら姫（SPY×FAMILY）の徹底解説・考察まとめ - RENOTE [リノート]

renote.net

ヨル・フォージャー（旧姓：ブライア）とは『SPY×FAMILY』（スパイファミリー）の登場人物で、バーリント市役所に努める女性事務員。裏の顔は〈いばら姫〉というコードネームの暗殺者で、「店長」という人物から指令を受けて東国に害成す売国奴を暗殺する。非常に高い戦闘能力を持つが浮世離れした性格で、嘘をついたり人と話を合わせたりするのが苦手。利害の一致からロイド・フォージャーと偽装結婚することになり、アーニャの義母となった。自分の正体を隠しながら、慣れない子育てに奮闘していく。

アーニャ・フォージャー