彼氏彼女の事情(カレカノ)のネタバレ解説・考察まとめ
『彼氏彼女の事情』とは、津田雅美が1996年7月号から2005年4月号まで『LaLa』で連載していた漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。通称は、「カレカノ」。1996年2月号から4月号までの短期連載(全3話)として掲載された後、長期連載となった。進学校といわれる高校を舞台に、「仮面優等生」の宮沢雪野と本物の優等生・有馬総一郎が織りなす恋愛模様を描いている。過去やコンプレックスとの対峙、周りを取り巻く友人たちとの人間関係などに悩みつつも成長していく2人の等身大の姿が多くの読者の共感を呼んだ。
『彼氏彼女の事情』の概要
『彼氏彼女の事情』とは、1996年より津田雅美が『LaLa』 にて9年間連載していた人気少女漫画である。通称は、「カレカノ」。当初は1996年2月号から4月号までの短期連載(全3話)として掲載された後、連載作品となった。単行本は全21巻で、白泉社の花とゆめCOMICSから発刊されている。最終巻の21巻は2005年に発刊された。
1998年10月にはテレビ東京系列にて庵野秀明監督でテレビアニメ化された。1998年10月~1999年3月まで全26話放送されている。当時は連載が終了していなかったため、話を完結させない形での最終話となった。起用された声優は大規模なオーディションで選ばれ、ほとんどがTVアニメ初出演であった。
この時に起用された声優の多くが、のちに人気声優として成長している。雪野役の榎本温子は『ふたりはプリキュアSplash☆Star』シリーズでキュアイーグレットを、『カードファイト!!ヴァンガード』では先導エミを担当している。総一郎役の鈴木千尋は『新テニスの王子様』で神尾アキラを担当し、『とっとこハム太郎でちゅ』や『テイルズ・オブ・ジ・アビス』などの人気作品に出演している。池田一馬役を務めた石田彰は『機動戦士ガンダムSEED』のアスラン・ザラ、『新世紀エヴァンゲリオン』の渚カヲル、『銀魂』の桂小太郎など多くの人気作品に出演している。沢田亜弥役の本谷有希子は作家・劇団主宰として活動しており、2016年には『異類婚姻譚』で芥川賞を受賞している。
読者の間では「カレカノ」の略称が多く使われている。また、英語やドイツ語などの翻訳版では、「カレカノ」がメインタイトルとして使われている。
高校生の日常や恋愛、成長に加え、個々が抱えるコンプレックスや過去などと複雑に絡んだ人間関係が描かれている作品。連載当時はあまり表面化していなかった、虐待や育児放棄などの社会問題が登場人物の過去の経験として取り上げられている。しかし、作品自体の雰囲気は重たくなく、クスッと笑えるギャグ的要素もあり、テンポよく読み進められる作品となっている。
『彼氏彼女の事情』のあらすじ・ストーリー
県内随一の進学校県立北栄高校に通う宮沢雪野は、容姿端麗・成績優秀・人当たりの良さで羨望の眼差しを向けられる高校一年生。しかし実際には、人から認められるためだけに努力する「見栄っ張り」の優等生だった。入試トップで新入生総代を狙っていたものの、総代は同じクラスの有馬総一郎に奪われてしまう。成績優秀に加えて性格も良く、容姿端麗・運動神経抜群という育ちの良い総一郎。自分の理想を形にしたような総一郎に対して、雪野は異様なまでの対抗心を燃やしていた。しかし、些細なきっかけで雪野の本来の姿を総一郎に知られてしまう。
総一郎の育児放棄された過去や実の両親との再会、雪野が”仮面優等生”になった理由など、
弱みを握った総一郎は、自分が抱える委員会などの仕事を雪野に手伝わせるようになる。雪野と一緒に過ごすうちに総一郎は本来の自分に気付くものの、幼少期に実母に育児放棄された過去と育ててくれた養父母への気持ちが、その事実を受け止めることを阻んでいた。雪野が優等生の自分を捨て、ありのままの自分で生きることを決めたことで、総一郎も本来の自分と向き合う決意をする。雪野と総一郎はお互いの秘密を共有する友人となった。
そんな2人は些細なことをきっかけに惹かれ合い、次第に恋愛へと発展していく。総一郎は雪野と付き合うことで自分の過去に向き合えるようになり、少しずつ囚われていた考えから解放されていく。2人の交際も順調で、友人たちと楽しく高校生活を過ごしていた。
総一郎の前に突然実父・怜司が現れ、総一郎の平穏な生活や環境が一変する。怜司は世界的なピアニストとして活躍しており、日本での取材に総一郎を同行させた。その姿をテレビで見た総一郎の実母が2人の前に現れ、総一郎は再び幼い頃の記憶やトラウマに悩まされてしまう。トラウマで苦しむ総一郎を救ったのは雪野と怜司であった。実母との問題が解決した後、総一郎は怜司との再会を喜び、怜司もまた総一郎に対する父としての愛情を再確認していた。
怜司との再会でゴタゴタが続いたが、総一郎たちは大学入試に向けて動き始める。しかし、雪野と総一郎の未来は思わぬ形で変わり、それぞれが本当にやりたかった仕事を目指すきっかけとなる。また、2人の友人たちもやりたい事を見つけ、それぞれの道を歩き始める。
最終話では卒業後の16年後が描かれている。それぞれの生活が紹介され、総一郎と雪野の子ども達も登場している。また、予想外の恋愛も登場する。雪野と総一郎の葛藤や成長、2人を取り巻く友人たちとの友情、家族との絆が描かれている。恋愛学園ストーリーとは異なり、恋愛だけでなく、個人の抱える過去なども描かれた作品となっている。
『彼氏彼女の事情』の登場人物・キャラクター
主な登場人物
宮沢 雪野(みやざわ ゆきの)
CV:榎本温子
物語前半の主人公。
周りから褒められ、認められるために優等生を演じる「見栄っ張り」。しかし、有馬との出会いにより、ありのままの自分になることを決意する。高校3年間、有馬と学年トップを争っていた。高校生ながら株に投資をして、高校卒業時には生活に困らない程度の利益を上げている。
両親と2人の妹の5人家族。ペットは愛犬のペロペロ。
有馬 総一郎(ありま そういちろう)
CV:鈴木千尋
物語後半の主人公。
名家といわれる有馬家の名に恥じないよう、また養父母となった伯父夫婦のために優等生を演じていた。努力を重ねる優等生だが、その陰には実母に愛されず、虐待や育児放棄された過去を持つ。雪野と出会い、自分の内面の感情に気付くものの、養父母を悲しませたくないと葛藤を続ける。
浅葉 秀明(あさば ひであき)
CV:私市淳
雪野、総一郎の同級生。
総一郎とはタイプの違うイケメン。『女の子(人)はみな美しい』と、女性にはかなり優しい。周りとは異なった美的感覚の持ち主。
自らの野望達成のために総一郎を利用しようと近付き、雪野の存在を邪魔に感じていた。雪野とは様々な面で対立するものの、時間の経過とともに2人の最大の理解者となる。
芝姫 つばさ(しばひめ つばさ)
CV:新谷真弓
総一郎の幼馴染で同級生。
小柄で可愛らしい美少女だが、かなりの人見知り。また無愛想でぶっきらぼうと、見た目とのギャップが大きい。
中学生の時から総一郎に恋心を抱くが、何度も告白を試みてはできないままでいた。総一郎の彼女となった雪野への嫉妬から 、2人の関係を壊そうと画策する。雪野があしらうことなく向き合ったことで、徐々に打ち解けて友達になった。
父・俊春の再婚で、一馬の義姉となる。一馬との出会いで、それまでの孤独から救われていく。
芝姫 一馬(しばひめ かずま)
CV:石田彰
他の高校に通う同学年で、つばさの義弟。旧姓は「池田」。
母・裕美とつばさの父・俊春が再婚する際に設けた会食の席で、つばさと出会う。ロックミュージシャンの服装で現れた上、その見た目からつばさを小学生扱いしたことで、つばさが怒りのあまりに大暴れする事態に至った。その後、お互いの環境が似ていたことで共感し、姉弟となることを受け入れる。
ボーカルとしての才能を開花させ、のちにインディーズバンド陰陽を世界的なバンドへと導く。
井沢 真秀(いさわ まほ)
CV:野田順子
雪野の1年時のクラスメイトで、実家は老舗和菓子屋。
中学では常にトップの優等生だったが、高校では運動勉強ともに雪野に勝てず、元々のプライドの高さから嫉妬と敵対心を抱く。雪野が優等生を演じていることに気付き、一時はクラスの女子を味方につけて嫌がらせをしていた。その後、雪野たちと和解して友達になる。
本来の性格に加え、12歳年上の歯科医師と交際していることもあり、冷静で大人な考え方をしている。時は悩んでいる雪野へアドバイスを送ることもある。
佐倉 椿(さくら つばき)
CV:千葉紗子
つばさの幼稚園からの友人。
根っからの体育会系で、自由奔放な性格。バレー部所属で下級生女子からの人気が高く、可愛い女の子を侍らせるのが大好き。同じタイプの浅葉をライバル視していた。
小学生の時は男子よりも強く、同級生だった健史をパシリにしていた。北栄高校に転入してきた健史と再会を果たし、のちに彼氏彼女となる。
瀬名 りか(せな りか)
CV:福井裕佳梨
つばさの中学からの友人。
普段は温厚で女の子らしい性格で忍耐強いが、怒らせると佐倉や亜弥が怯えるほど怖いという一面もある。本人は取り柄がないと思っているが、手先が器用で周囲を驚かせるほどの刺繡作品を作っている。売れっ子デザイナーであるつばさの父に認められるほどの裁縫技術を持つ。
実家は洋食屋で、年の離れたトキとマキという小学生の弟と妹がいる。
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目次 - Contents
- 『彼氏彼女の事情』の概要
- 『彼氏彼女の事情』のあらすじ・ストーリー
- 『彼氏彼女の事情』の登場人物・キャラクター
- 主な登場人物
- 宮沢 雪野(みやざわ ゆきの)
- 有馬 総一郎(ありま そういちろう)
- 浅葉 秀明(あさば ひであき)
- 芝姫 つばさ(しばひめ つばさ)
- 芝姫 一馬(しばひめ かずま)
- 井沢 真秀(いさわ まほ)
- 佐倉 椿(さくら つばき)
- 瀬名 りか(せな りか)
- 沢田 亜弥(さわだ あや)
- 十波 健史(となみ たけふみ)
- 家族
- 宮沢 洋之(みやざわ ひろゆき)
- 宮沢 都香(みやざわ みやこ)
- 宮沢 月野(みやざわ つきの)
- 宮沢 花野(みやざわ かの)
- 有馬 総司(ありま そうじ)
- 有馬 志津音(ありま しづね)
- 有馬 怜司(ありま れいじ)
- 『彼氏彼女の事情』の用語
- 陰・陽(いん・やん)
- ペロペロ
- 『彼氏彼女の事情』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 雪野「うわべばっかりとりつくろって 優等生のフリをして 本気で人とつきあってこなかった私は こんなときどうすればいいのか わからない」
- 総一郎「もしかして 今まで『自分』だと信じてたものは 努力で創りあげただけの 『ニセモノ』だったんじゃなかったのか」
- 雪野「有馬はさ あなたはずっと人を、愛したかったんじゃないの」
- 真秀「心のバランスが取れなくなるから恋愛でしょ。カッコつけてうまくやってるうちは、まだ本当じゃない。それはまだ相手より自分の心を大事にしてるってことだよ。心のバランスが崩れるほどのひとに会った。だから心を「奪われる」っていうの」
- 洋之「勉強は、大事です。でも、高校時代の一日は大人になってからのひとつき分よりはるかに貴重な日々ですよ」
- 『彼氏彼女の事情』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 本作のアニメ監督は庵野秀明
- 原作にはない花野のオリジナルストーリー
- 各地の演劇部で実演された劇中劇『鋼の雪』
- 『彼氏彼女の事情』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):福田舞 「天使のゆびきり」(第6話、第8話 - 第26話)
- ED(エンディング):榎本温子/鈴木千尋 「夢の中へ」(第1話 - 第24話、第26話)
- ED(エンディング):渡邉由紀/山本麻里安 「風邪ひいた夜」(第25話)
- 挿入歌:渡邉由紀/山本麻里安 「S・O・S」(第6話)