おもひでぽろぽろ(ジブリ映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『おもひでぽろぽろ』とは、1991年公開のスタジオジブリ作品である。監督・脚本は高畑勲。制作プロデューサーとして宮崎駿も参加している。ひとり旅に出た27歳の私が“小学5年生のワタシ”と一緒に、それまでの歩みを振り返るストーリー。
声優として今井美樹や柳葉敏郎が参加していることも上映当時には話題となった。
キャッチコピーは「私はワタシと旅に出る」。
ナオ子
CV:渡辺昌子
カズオとキヨ子の娘で中学生。
割と流行には敏感なようで学校で流行っていたPUMAのスニーカーを欲しがる。
タエ子にもよくなついており、年は離れているがタエ子もナオ子には何でも話せる友達のような感じ。
『おもひでぽろぽろ』の名言・名セリフ
分数の割り算がすんなりできた人はその後の人生もすんなりいくらしいのよ
農業体験の合間にトシオとデートしているときに主人公のタエ子がポロリとこぼした一言。
タエ子はあまり勉強のできなかった友達が分母と分子を入れ替えて計算したことにより分数のテストは100点をとったことをトシオに話した。タエ子はその子とは違って、考え方を理解できずに「こういうものだ」と割り切って考えることができなかった。
その友人は今では2人の子供を持つお母さんになっており、素直に割り切って考えることができなかったタエ子はいまだに独身だった。
理屈で物事を考え出すとうまくいかない。逆に、理屈とか理由とか求めなければ、すんなり生きていけるという事がわかるセリフである。
あ、あめの日と!…くもりの日と晴れと、どれが1番好き?
タエ子のことが好きだった広田が会話のきっかけを作るために問いかけるシーンで使われた一言。
本来ならばスケベ横丁に書いてあった広田とタエ子の名前の落書きについて弁明したかった広田だったが、いきなり核心を突くのを遠慮し、とっさに出た可もなく不可もない一言だった。
タエ子が戸惑いながら「く…くもり」と応えると広田は嬉しそうに「あっ、おんなじだ!」と言って走り去ってしまう。
夕焼けを背にうつむきながらの広田の姿が初々しさを醸し出している。
大変大変っていうけど、一生懸命やってる仕事なら大変でない仕事なんてないでしょう?
出典: pbs.twimg.com
元サラリーマンのトシオが有機栽培農業の話をタエ子にしていた時に、タエ子が「農業は今、減田とかで大変なんでしょ?」と言ったことに対してのトシオの返事。
確かにトシオの言う通りである。しかし、仕事が生きがいであるという人は減ってきているから一生懸命にやっているかどうかという点ではすべて同じではないとタエ子は思っていた。
トシオからタエ子はどうなのかと聞かれたときにタエ子は自分の仕事についても考えることになる。
トシオのこの言葉がなければ、タエ子はただ目の前にある仕事を黙々とこなすだけの日々を今後も送る事となる。
農業は一生懸命できそうだというトシオが自分の意思を確実に持っていてかっこよく見える布石となる一言である。
『おもひでぽろぽろ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
制作手法はプレスコ
プレスコとはプレスコアリング (prescoring) の略で、台詞や音楽・歌を先行して収録する手法である。
日本のアニメーションでは主に「アフレコ」(アフターレコーディング)と呼ばれる作成された画面にタイミングを合わせて台詞を収録する手法がとられるのがごく一般的であるが、この作品はプレスコにより作成されている。
収録された台詞や音楽に合わせて絵を描き、作成するプレスコはキャラクター達の表情がより人間味溢れるものになっている。
興味を示さない高畑勲に宮崎駿が激怒
この映画は、前作の『火垂るの墓』で「公開日までに間に合わない」という大失態をやらかしてしまった高畑監督のために、宮崎が自らプロデューサーを引き受けた企画であった。
ところが、肝心の高畑は全く興味を示さず、業を煮やした宮崎は鈴木敏夫と高畑の自宅に押し掛け、「やろうよパクさん!」と必死に説得。
それでも高畑は「そういう映画を作る意味はあるのだろうか?」などと否定的な意見ばかり並べた高畑に対し宮崎が怒りを爆発させ、「いい加減にしろ!やる気がないならないと言ってくれ!」と大激怒。そのまま出て行ってしまった。あまりの剣幕に驚いたのか、高畑は残った鈴木と『おもひでぽろぽろ』の打ち合わせを始め、結局この映画をやることになり、その夜、鈴木が宮崎に「OKもらいましたよ」と連絡すると、「すぐにやるって言えばいいのに、もったいつけて!」とまだ怒っていたらしい。
「トシオ」は鈴木敏夫
映画版では27歳の岡島タエ子が主人公だが、原作漫画では小学生のタエ子しか出てこない。当時、高畑の娘がそれぐらいの年齢だったので思い付いたらしいが、「農家の青年」は初期の脚本にも出てこなかった。
そこで鈴木敏夫が「女性の一人旅だと寂しいから、男性キャラと出会わせましょう」と提案。すると高畑監督は「え?そういうもんなの?」と驚きつつ、「農家の青年」というキャラクターを作ったが、いい名前が思い付かなかったのか、発案者の「トシオ」になったらしい。
ジブリのなかでも群を抜いて難解な作品
『おもひでぽろぽろ』は理論家・高畑勲によってこまかな演出がなされており、タエ子の「旅」という非日常を通すことによって、日常の自分の中にあるかつての自分を相対化して見つめ直す、つまり「私はワタシと旅に出る」という構図を浮かび上がらせている。
この作品が難解になっているのは、非常に論理的な対話がなされており、一種の哲学的な問いがずっと語られているためである。
タエ子の「田舎に行きたい」というのは、「田舎=自然」、「田舎=非論理」の世界だという認識がタエ子にあったからではないかと考えられる。つまりタエ子は、自然:人口、非論理:論理、非合理:合理といった二元論を頭に描いていた。
「田舎の風景」だが、田舎の住人はそれが何世紀もかけて人の手によって作り上げられたものであり、本来の自然ではないことを知っている。まさにこの話によって、監督があらゆる過度の単純化や二元論のような紋切り型の結論を退けようとしていることがわかる。
自然対人間(人工)という二項対比は今まで何の問題もないようにまかり通ってきたが、よく考えると「果たしてそんなに簡単に考えることができるのか?」ということである。「自然は~」、「人為は~」といったような単純な考え方、さらに言えば二項対比にするという物事の捉え方そのものへのアンチテーゼと言える。高畑は作中において、タエ子の思い出が断片的な記憶のフィルターによって美化され、選別されていることを巧みに示しているのだ。
作中では小学5年生の頃の思い出がノスタルジックに現れるが、子どもの頃のタエ子の思い出すべてがノスタルジックなのではない。
いくつかの思い出は軽いトラウマにさえなっており、むしろつらい思い出として成人した今でも大きな影をひいている。そのような思い出によって、タエ子は自分が今も子どもの頃と変わっていないことを少しずつ自覚するのである。
作中のエピソードとして、農作業を手伝ったタエ子は「嫁に来ないか」と持ちかけられる。その時、気候の良い時期にたかだか1週間ばかり農作業を手伝った程度で、田舎や農業を知った気になっていた自分の浅はかさ、偽善性に気付かされている。作中でも、「厳しい冬も農業の現実も知らずに“いいところですね”を連発した自分が恥ずかしかった。私には何の覚悟もできていない」 と語っている。
さらに、このエピソードはタエ子の小さい頃の、貧乏で不潔なクラスメートあべくんのこととも共鳴する。
タエ子は、不潔で嫌われ者だったあべくんの悪口こそ言わなかったものの、心の中では自分が誰よりも嫌っていた。その当時の偽善さから、今の自分も全く変わっていないということに気づかされるのだ。
タエ子の“自分さがし”の話
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目次 - Contents
- 『おもひでぽろぽろ』の概要
- 『おもひでぽろぽろ』のあらすじ・ストーリー
- 『おもひでぽろぽろ』の登場人物・キャラクター
- 岡島タエ子(27歳)
- 岡島タエ子(10歳)
- トシオ
- タエ子の父
- タエ子の母
- ナナ子
- ヤエ子
- タエ子の祖母
- 谷ツネ子
- 広田秀二
- あべくん
- ばっちゃん
- カズオ
- キヨ子
- ナオ子
- 『おもひでぽろぽろ』の名言・名セリフ
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- あ、あめの日と!…くもりの日と晴れと、どれが1番好き?
- 大変大変っていうけど、一生懸命やってる仕事なら大変でない仕事なんてないでしょう?
- 『おもひでぽろぽろ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 制作手法はプレスコ
- 興味を示さない高畑勲に宮崎駿が激怒
- 「トシオ」は鈴木敏夫
- ジブリのなかでも群を抜いて難解な作品
- タエ子の“自分さがし”の話
- 『おもひでぽろぽろ』の主題歌
- 「愛は花、君はその種子」都はるみ