からくりサーカス(Karakuri Circus)のネタバレ解説・考察まとめ

『からくりサーカス』とは、藤田和日郎によって小学館『週刊少年サンデー』にて1997年~2006年にかけて連載されたアクション漫画。人間と自動人形(オートマータ)、そして懸糸傀儡(マリオネット)を操る人形破壊者「しろがね」の間に巻き起こる戦いを描いた物語。同時に才賀勝という少年が成長していく姿も描いており、敵との攻防だけではなく、様々な人間模様が同時並行的に進んでいる作品である。

サイガ

時計・家電・コンピュータ・ゲームなどの各分野に進出する日本の大企業。創業は勝の祖父才賀正二と、フェイスレスこと才賀貞義が「才賀機巧社」を設立した明治にまで遡る。正二と貞義が歳をとらず、周囲の人間から不自然に思われることを防ぐため、二人が交代でトップを務め続けた。また、しろがねに対し、長きにわたって「自動人形」用の「懸糸傀儡」を作って提供してきた。これらの知見を活かし、様々な業種で成功をおさめたため一大企業へと成長した。「しろがね」であるフウは似たような経緯で会社を経営している。

黒賀村(くろがむら)

村全体で人形繰りを伝統とし、村人すべてが人形を扱える。また、人形祭りといった伝統的な祭も存在している。明治からは才賀正二と才賀貞義の依頼により、サイガが製作した人形の調整に協力していた。才賀正二に村の危難を幾度か救ってもらったことから才賀家に対する敬愛の念は強いが、才賀貞義(フェイスレス)にはひどい仕打ちをされたため、貞義のことは嫌悪している。近年では人形繰りの技術を生かした殺し屋も輩出しており、阿紫花英良もここの村の出身である。
勝がフェイスレスとのゲームに際し、自らを鍛えるため黒賀村で特訓を受け、一人前の人形使いへと成長を遂げることができた。

『からくりサーカス』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

勝の覚醒

勝と阿紫花との契約が決まったシーン。

善治の屋敷に誘拐された勝は、まだ人に助けてもらうことばかりの泣き虫な子供であった。しかし、戦いを通して急速に成長し、鳴海やしろがねのことを助けるために自ら行動を起こすまでになった。
そんな中、つかまっていたの窓から逃げ出し、高さ数十メートルはあろうかという森まで落下した。そこに偶然いた殺し屋阿紫花に対し、僕がお金を出すから雇わせてとビジネスの話を切り出す。これまで恐怖で逃げ回っていた勝が、鳴海やしろがねのため、独り立ちしようとした最初のシーンであった。

しろがねOジョージの死

子供たちへの想いを抱きつつ、無念の死を遂げたジョージ。

しろがねOという集団は、戦闘のためだけに体を改造したため、人間的な要素が欠落している。そのため、感情などが極端に少なく、ジョージもその最たる例であった。
初めてレイ疫病研究所を訪れた際、子供たちを怖がらせるような言動ばかり取っていたジョージは、常に子供たちから恐れられる存在であった。
しかしその後法安たちと再び訪れた際、法安が子供たちを楽しませるために行った曲芸に合わせてピアノを弾くことがあり、それによって子供たちと打ち解けることができた。子供たちから曲のリクエストを受け、それに答えることで子供たちの笑顔を見ることで、徐々にジョージの心が変わってきた。
そんな中、自動人形たちの襲撃によってレイ研究所が襲われてしまう。そこで子供たちを守るべく戦いに向かったジョージであったが、敵と相打ちとなり命を落としてしまう。その際自分の死への恐怖よりも、生きて次に子供たちのために何の曲を弾いてあげようかと考え、その想いを抱いたままジョージは死んでいくのであった。

コロンビーヌの夢

死の間際に勝から抱きしめられるコロンビーヌ。

最古の四人の中で唯一女性型自動人形のコロンビーヌ。それもあってか、自動人形にも関わらず人間の恋愛を描いた恋愛小説を読むことを好んでいた。
サハラの決戦にて、女性のしろがねファティマが瀕死の中好きな男性に抱きしめられたことを嬉しそうに語っていたのを聞き、より一層恋愛に興味を抱くようになった。
そんな中、勝と出会う。勝はもちろん敵ではあったが、しろがねのために一生懸命になっている姿に心をうたれ、人形であるコロンビーヌは徐々に惹かれていった。
コロンビーヌがディアマンティーナと戦った際、ディアマンティーナの攻撃を防ぐために、空気中のゾナハ虫を使ったガードを強いていた。それがないと、致命傷を負いかねないくらいの破壊力を持っており、コロンビーヌがその虫のガードを解除するという選択肢は持ち得ていないはずであった。しかしその戦いと時を同じくして、勝がフェイスレスと戦っており、そんな勝がはるか上空から落ちてくるのが見えた。このままでは勝が地面に打ち付けられて死んでしまう。そう思ったコロンビーヌは、自分の体をガードしていたゾナハ虫を勝の元へと向かわせ、彼の命を救った。それにより、コロンビーヌは再起不能な体へとなってしまった。
その状況を知った勝は、急いでコロンビーヌの元へと向かった。そして、優しくコロンビーヌのことを抱きしめた。コロンビーヌは、死ぬ間際に男性に抱きしめられるという夢をかなえることができたのであった。

ギイのおもい

しろがね(エレオノール)のことを最後まで思い続けたギイ。

ギイはアンジェリーナからしろがね(エレオノール)を預かってから、ずっと彼女のことを想い、そして守り続けてきた。
そして、いつか彼女のことを自分の代わりに守り、一生寄り添ってくれる人が現れるのを待っていた。
そんなときに現れたのが鳴海であった。日本での生活を見守っていたギイが鳴海としろがねのことを見て、彼ならばしろがねのことを一生大事にしてくれると確信したのもあり、鳴海を助けしろがねの道へといざなったのだ。
そんなギイも、自らの命の限界を悟った。最後の役目として彼らのために命をはって自動人形の討伐を行い、最後は自らの命と引き換えに、3000体の自動人形を破壊しつくしたのであった。
その際、ふとある日のことを思い出した。偶然見かけた協会での結婚式。新婦が父親とバージンロードを歩き、新郎へと新婦を引き渡すシーン。そこにいた新婦の父を自分に、新婦をしろがね、新郎を鳴海に見立て「この世での自分の役割は、しろがねの父親として、鳴海にバトンを渡すことなのだ」と思った。
そして自分の役目を終えたギイは、しろがねへの言葉を最後に、自らの人生に幕を下ろしたのであった。

アルレッキーノ「なんだ…見ている……じゃない……か……」

人間とほぼ同一の機能を備えた機械人形、オートマータ。敬愛する人のため、唯一人間にあってオートマータに無い「笑顔」を探し求めていたパンタローネたち。彼が死の間際に見たのは愛する人の美しい笑顔。そして、彼もまたそれを見て同じように笑顔を浮かべていた。

『からくりサーカス』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

自動人形のアイデア

作者である藤田が、アシスタントに自動人形のデザインをやってみるように言った。それにやる気を出した3人のアシスタントは意気揚々とキャラクターのデザインをし、かなりの時間をかけ、自分のが一番強いと言わんばかりの人形を作り上げた。ところが3体ともに出演コマ数が2~3コマと極端に少なく、あっという間に藤田のキャラクターに蹴散らされ、結局一番強いのは藤田のキャラクターとされてしまった。

『逆境ナイン』でのオマージュ

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