劇的な恋愛だけが映画じゃない。
この映画には劇的なシーンはありません。恋人の死はないし、ドロドロ三角関係もない、身分の違う叶わぬ恋もない。でも、恋ってこういうことだよね、と気づかせてくれます。
偶然出会った山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)はあっという間に恋に落ち、幸せな時を過ごします。そして、いつしかすれ違い、別れることに……。
ストーリーはこれだけ。でも、そこには恋のドラマの全てが凝縮されています。些細なことで笑ったり、喜んだり、些細なことで怒ったり、悲しくなったり。少しずつ、だけどリアルに重ねられていく描写に胸打たれ、2人の想いがまるで自分のことのように感じられていきます。
特に終盤の別れ話のシーンは今までどんな映画でも見たことない、でもどこかで見たことあるような、そんな絶妙なシーンです。
脚本は『東京ラブストーリー』『カルテット』の坂元裕二さん。恋愛ドラマの名手による巧みなテクニックとユーモラスなセリフが満載です。そして、2015年~2020年を象徴する数々のサブカルチャーが登場(本人役の出演も)。まさに1つの時代を切り取った記録のような映画です。
「何気ない毎日が私たちの映画なんだ」、そんな気持ちにさせてくれる作品です。