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ある1つの恋の物語
この映画は、5年間に渡るある2人の男女の物語です。
出会いから付き合うまで、同棲して、就職して。
あまりにも普通でありふれた話を、まるで日記のように、男女それぞれの語りで進んでいきます。
この映画には、どちらかがが亡くなったり、意地悪なライバルが出現したり、世界が滅びたり、時間が巻き戻ったりなどという映画によくある事件は起きません。
しかし、だからこそ、この2人の物語はあまりにも身近であるのかもしれません。
誰にでも起きる恋愛の始まり。
付き合いたての高揚感。
そして、月日が経ち大人になるための一歩である『仕事』という一種の現実。
誰しもがこれから経験し、もしくは経験済みだからこそ、2人に徐々に生じる気持ちに共感が生まれます。
それは、男性側なのか、女性側なのかは見る人の人生で変わる気がします。
彼女との生活のために仕事に邁進する彼。
彼とずっと現状維持でいたい彼女。
どちらが正解なのか、見ているこちら側が試されているような、問われているような気がしました。
しかし、この映画の凄さは、そんなこちら側の気持ちをまるで手のひらで転がすように、フワリと風に乗せてしまうかのように、軽やかな気持ちで終了を迎えるところです。
『花束みたいな恋』というタイトルの意味を、見終わった後もずっと考えさせられる上質な一本でした。