文豪とアルケミスト(文アル)のネタバレ解説・考察まとめ

『文豪とアルケミスト』(略称:文アル)とは、「文豪」を題材にした育成シミュレーションゲームである。開発・運営は、ゲームプラットフォームのDMM GAMESである。2016年11月にブラウザ版がリリースされ、翌年の2017年6月にスマートフォン版の配信が開始された。大正ロマンとスチームパンクを基調にした現実とは異なる歴史を歩んだ日本を舞台に、物語を展開していく。侵蝕者と呼ばれる敵から文学を守る為、プレイヤーは文豪達を転生させ、彼らと共に侵蝕者達と戦っていく事となる。

後日、動けなくなってしまったアカに代わって、今度はアオがプレイヤー・文豪達と共に文学書の中に潜り込む。また、文豪のメンバーも、アカの看病をする織田作之助と堀辰雄に代わって、芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)と佐藤春夫(さとう はるお)、そして中野重治(なかの しげはる)の3人が調査についてくる事となった。
織田作之助から「アカが『文学にしかないものを探せ』と言っていた」ことを聞いたプレイヤー達は、まずはその言葉の意味から考える事にする。しかし、そう簡単に意味はわからず、「そもそも文学とは何か」という話題に発展。そこで彼らは「文学とはなんであるか」についてヒントを得る為、文学書内の侵蝕者を倒しつつ、他の文豪達にも話を聞いてみる事にする。

第十四話 自然主義

文学について話し合う為、佐藤春夫(茶髪の青年)とアオ(白髪の少年)に集められた自然主義派の文豪・国木田独歩(ピンク髪の青年)と田山花袋(金髪の青年)。

まず初めに彼らが話を聞いたのは、自然主義と呼ばれる文学を主流としていた文豪・田山花袋(たやま かたい)と国木田独歩(くにきだ どっぽ)だった。自然主義は人間のあるがままの姿を描く文学となっており、それまでの小説にあった「典型的な登場人物ばかり出る」「お固く決まったご都合主義の展開」を大きく変えたのだという。
だが、あるがままの姿を描くあまり、自分の中にある「変態性」までをも素直に表現した自然主義の在り方に、アオは理解が出来ずドン引く。そんなアオに、自然主義の代表者である文豪・田山花袋は「自分を偽らずにそのままでいい」という考えが己の目指した文学であった事、結果としてそれが真の文学として認められるまでになった事を話す。アオはよくわからないままにも彼の話に納得した素振りを見せ、「変態が世界を救ったのだな」と結論づける。

第十五話 耽美主義

文学について話し合っていると聞いて佐藤春夫(画面左端の青年)とアオ(画面真ん中の少年)のもとにやってきた、耽美主義の文豪・谷崎潤一郎(画面右端の青年)。

次にアオ達の前に現れたのは、耽美主義と呼ばれる文学の代表格である文豪・谷崎潤一郎(たにざき じゅんいちろう)だった。彼は田山花袋の考えを「ロマンスが足りない」と一蹴する。谷崎潤一郎は女性の描き方、特に女性の足に強いこだわりを持つ足フェチの文豪で、艶めかしい官能の世界を綴る事を得意としていた。しかし、彼いわく「ただエロスを書くのではなく、その先にある愛を書いている」とのこと。続けて、「どんな愛なのか」と尋ねてきたアオに答えるべく興奮気味に理想とする女と男の姿を語ろうとするが、長くなると察した佐藤春夫によって止められてしまう。最後に「文学とは人間を肯定し、美を追求するもの」というのが己の考えであるとアオに告げると、彼は静かにその場を去ったのだった。

第十六話 言葉でできた芸術/絶不調

自然主義と耽美主義の文豪達の話を聞いて思った事を佐藤春夫(画面左の青年)に話すアオ(画面右の少年)。

文学についてはまだ上手く理解ができないものの、2人の文豪の話から、「どちらも文学は人間を肯定するもの」としていた事に気づくアオ。しかし、これまで現れた文豪達の趣味嗜好が変わっていた為、彼の中での文豪のイメージに「変態」の言葉がつきかけていた。
それを払拭する為、佐藤春夫はアオに促される形で自分にとっての文学を語り始める。「文学は言葉でできた芸術」だと語る佐藤春夫。彼も「文学とは何か」という問いに対する正解を見つける事はできずにいたが、「人間は言葉でものを考える」「だから、言葉で相手の感情を揺さぶる文学は、言葉でできた芸術」という答えを考え出す。するとそこへ、突如として佐藤春夫に縁が深い文豪・太宰治(だざい おさむ)が現れ、彼の答えに激しく同意し始める。「文学とは何か」という面白い問いを佐藤春夫達が調べてると知って、居ても立っても居られなくなり、ここまで来た太宰治。そんな彼の行動力に佐藤春夫が呆れたその時、侵蝕者が現れ、彼らに襲いかかってくる。
プレイヤー達はどうにか侵蝕者を倒す事に成功するが、侵蝕者に影響を受けた太宰治の精神が不安定になってしまう。「何しても上手くいかない気分」「帰りたい」と気だるげに言う太宰治に、アオは文豪の中でも侵蝕者の影響を受けやすい者とそうでない者が居る事に気づく。

第十七話 私小説

「小説の神様」として文学について話し合う場に呼ばれた志賀直哉(画面右端、黒髪の青年)。

小休憩を挟み、どうにか太宰治のテンションを元に戻したプレイヤー達。するとそこへ、一旦文学書の外に行っていた中野重治が、文豪・志賀直哉(しが なおや)を連れて戻ってくる。彼は、かつて簡潔で読みやすいシンプルな文章が評価された事で、「小説の神様」とまで呼ばれた文豪だった。
「文体は作者の考え方や感じ方そのもの」だという志賀直哉。しかしそれに対し、文豪として活躍していた頃に彼と因縁があった太宰治が、その考えにケチをつける。それをきっかけに、言い争いを始める2人。見かねた佐藤春夫が止めようとした時、これまた見計らったように侵蝕者が現れ、プレイヤー達に襲いかかってきたのだった。

第十八話 見解の相違

仲間達に向けて自分が書いていた「私小説」について説明し始める志賀直哉(画面左端、黒髪の青年)。

侵蝕者を倒したプレイヤー達は、改めて志賀直哉の「文学」に関する話を聞く。志賀直哉はかつて自分が書いていた「私小説」について、プレイヤー達に語る。自分の周りで起こった経験、そこから感じた事を基に書く私小説は、一見すると自然主義に近しく聞こえるが、それよりももっと生産的な作品となっているとのこと。大事なのは「自分の経験で作られたものを読んだやつの人生が変わること」だと考える志賀直哉は、「文学は『人間的な成長』を描いたもの」であると結論づける。しかし、それを聞いた太宰治が「文学はそんな高尚なものじゃない」「弱い人間にも寄り添うものだ」と反論。場が再び、剣呑な雰囲気に包まれてしまう。
その後、佐藤春夫とアオの2人に諌められた太宰治は、一人で先に文学書を後にする。志賀直哉も「話すことはもう終わった」と言って、図書館に戻ろうとする。だが、その直前、ふと「文学」について語るのであれば決して外せない文豪の存在を思い出し、その事をプレイヤー達に告げるのだった。

第十九話 文学のはじまり

文豪を代表する人物として声をかけられた文豪・夏目漱石(画面左端の老紳士)。

志賀直哉の助言に従ったプレイヤー達が声をかけたのは、文豪・夏目漱石だった。事情を把握した夏目漱石は、プレイヤー達に自分が生きてきた時代について話す。文豪として活躍したのは明治に入ってからの事であったが、生まれは江戸時代と、2つの時代を跨いで生きていた夏目漱石。江戸時代の頃は、子どもは親の職を継ぐものと相場が決まっており、自由に仕事を選べなかったという。しかし、明治になり時代が変わった事で、人々は自由を手に入れる。だが、突然与えられた自由に、多くの人が戸惑いどうするべきか答えを出せずにいた。そうした悩みや葛藤が出始めた頃に小説という言葉が生まれたが為に、小説の主人公の大半は「生き方に悩む青年」であり、「だからよい文学は時代が変わっても読者の心をうつ」のだと、夏目漱石はプレイヤー達に説明する。
文学と人間は切っても切り離せないものなのだと、そう理解したアオ。同時に、先の志賀直哉と太宰治の喧嘩が、彼らの「生き方」が異なる為、そのような事に発展したのだと気づく。「それだけ皆、自分の作品に真剣なのだ」と説く夏目漱石に、アオは「芸術家はバカばっかり」という結論を口にする。それを聞いた中野重治は、「こればっかりは反論できない」と苦笑するのだった。

第二十話 生き方の文学/不穏な足音

夏目漱石の話を聞いて、自分達文豪がどのような思いで文学を綴ってきたのかを思い出した佐藤春夫(画面真ん中の青年)。

夏目漱石の話のおかげでその場に居た文豪達は、自分達がどんな思いで文学を書いていたかを思い出し、気持ち新たに文学と向き合う姿勢を見せる。その横でアオは「文学書は錬金術に近しい概念」なのではないか、と仮説をたてる。いわく、文豪達の強い思いといった精神エネルギーが込められた文学書は、それ故に他の精神エネルギーにも影響を及ぼしやすく、感情の塊である侵蝕者に狙われやすくなっているのではないか、とのことだった。答えを得られたプレイヤー達は、ひとまずこの仮説を館長のもとに持ち帰る事にする。
侵蝕者達を倒しながら図書館に帰ろうとするプレイヤー達。すると、突然図書館にいるアカから通信が入る。「大変なことが起こった」と焦った様子のアカに驚きつつ、プレイヤー達は急いで図書館に戻る事にする。

新プロローグ

新プロローグは、後続で実装された海外文学「悪ノ華」を浄化し終えた後から話がスタートする。「悪ノ華」を浄化後、プレイヤーである特務司書は長期休暇を取っていたが、それが終わり図書館に戻ると、これまで見た事がないアイテムを手にしていた文豪・徳田秋声と泉鏡花(いずみ きょうか)と出会う。
さらにプレイヤーは、新種の侵蝕者を前に敗退してきた文豪・芥川龍之介の姿を見る。プレイヤーがいない間に侵蝕者には「火」「水」「風」「土」の4つの属性が誕生しており、それに対抗する為、文豪達にも属性つきの衣装をまとう必要が出てきていた。徳田秋声と泉鏡花が持っていたアイテムは、この属性を宿した衣装を作る為に使うアイテムだったのだ。
こうしてプレイヤーは文豪達と共に、新しい能力を手に入れた侵蝕者と戦いながら、その実態について調査していく事になる。

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