文豪とアルケミスト(文アル)のネタバレ解説・考察まとめ

『文豪とアルケミスト』(略称:文アル)とは、「文豪」を題材にした育成シミュレーションゲームである。開発・運営は、ゲームプラットフォームのDMM GAMESである。2016年11月にブラウザ版がリリースされ、翌年の2017年6月にスマートフォン版の配信が開始された。大正ロマンとスチームパンクを基調にした現実とは異なる歴史を歩んだ日本を舞台に、物語を展開していく。侵蝕者と呼ばれる敵から文学を守る為、プレイヤーは文豪達を転生させ、彼らと共に侵蝕者達と戦っていく事となる。

坪内逍遥(つぼうち しょうよう)

CV:関俊彦
明治から大正にかけて活躍した文豪・坪内逍遥をモデルにしたキャラクター。純文学の作家であると同時に、評論家や翻訳家、戯曲作家としても活躍した。代表作に『小説神髄』『当世書生気質』などが存在する。また、オリジナル作品以外にも、イギリスの劇作家であり詩人のウィリアム・シェイクスピアの全集の翻訳を行った事でも有名である。潜書時の武器は刃。通常衣装時の属性は火となっている。精神状態は安定。
穏やかな気質で、人から頼られるのを好む青年キャラクターとなっている。翻訳家であった事が起因し、英語を交えた不思議な話し方をする特徴がある。同じく、戯曲作家として活躍していた事が起因してか、芝居や歌舞伎の鑑賞が趣味とのこと。ほかにも「羊に関する物を集める」ことが好きだそうで、これはモデルの坪内逍遥が羊好きであった事が元ネタである模様。また、公式いわく「先生と呼ばれることを嫌う」側面もあるとの事で、頼りにしてほしい反面、尊敬の眼差しなどを向けられるのはあまり得意じゃない事がわかる。
文豪・森鴎外と関係の深い文豪として実装された事もあり、『文アル』作中では彼らの間で行われた文学論争『没理想論争』が度々話題にあげられている。また、自身と同じく小説家であり翻訳家としても活躍していた文豪・二葉亭四迷(ふたばてい しめい)とは、親友同士として転生後も仲が良好。たびたび文学について語り合っている。そのほか多くの文豪達から慕われているが、文豪・山田美妙(やまだ びみょう)に対してだけは生前の因縁から、当たりが強く白けた態度だ。

二葉亭四迷(ふたばてい しめい)

CV:安元洋貴
明治時代に活躍した文豪・二葉亭四迷をモデルにしたキャラクター。純文学の作家であると同時に翻訳家としても活躍した。代表作に『浮雲』『其面影』『平凡』などが存在する。潜書時の武器は刃。通常衣装時の属性は土となっている。精神状態はやや不安定。
威圧的な外見の完璧主義な青年キャラクターとなっている。威圧的な外見はモデルとなった二葉亭四迷が高身長であった事や、ロシアのスラブ民族に憧れていた事が元ネタとなっている模様。海外にいる事が多かったからか、常に時差ボケ気味で低血圧気味で機嫌が悪い。だが、決して人当たりは悪くなく、むしろ礼儀は正しいので喋りやすい人物だ。完璧主義が災いしてか自己に厳しく、公式いわく「文学についても一男児のやることなのか」と常に悩んでいるとのこと。
自身を文学の世界に導いてくれた師であり親友でもある文豪・坪内逍遥の事を、心の底から尊敬している。転生後も一緒に過ごしている事が多い。なお、「二葉亭四迷」というペンネームは、この親友との関わりから生まれた。坪内逍遥の本名を借りてデビュー作『浮雲』を出版した際に、彼の名を借りてしまった己を卑下した二葉亭四迷が「くだばってしまえ」と罵った為、それをもじる形で本ペンネームを作ったという。
かつて、ともに同じ新聞社で小説を書いていた文豪・夏目漱石との交流も続いている様子。夏目漱石いわく、転生後の二葉亭四迷は「明るくなった」とのことだ。また、文豪であった頃の付き合いはなかったものの、労働者達の過酷な現状を書き続けてきたプロレタリア文学の文豪達に対しては、その姿勢に敬意を払っている。なかでも、徳永直とは仲がいいのか、「直くん」と呼んでいる姿が『文アル』作中で描かれている。ほかの文豪達とも比較的良好な仲だが、親友の坪内逍遥を貶した事がある文豪・山田美妙とだけは唯一相容れない。人当たりのいい彼にしては珍しく、冷たい態度を取っている。

中島敦(なかじま あつし)

CV:石川界人
昭和時代に活躍した文豪・中島敦をモデルにしたキャラクター。教師として働きながら、純文学の作家として活躍した。代表作に『山月記』『弟子』『光と風と夢』などが存在する。潜書時の武器は刃。通常衣装時の属性は火となっている。精神状態は不安定。
二重人格の青年キャラクターとなっている。片方は礼儀正しい反面羞恥心が強く、片方はどんな悪も厭わずに行える好戦的な性格だ。普段は前者の人格が表に出ており、後者は戦闘時に現れる。かけている丸眼鏡を外す、もしくは壊す事が人格の切り替えの合図らしく、かけている時は礼儀正しい方の彼、かけていない時は好戦的な彼といった外見の差を持つ。そのほかにも、かけていない時は前髪があがっている。礼儀正しい方の彼は人格が入れ替わった時の記憶はぼんやりとしかないが、好戦的な彼はどちらの人格の記憶もはっきりと持っている模様。性格が真反対の為、お互いに相手に対して複雑な心境ではあるようだが、敵である侵蝕者達によって文学が危機に晒されている現状に対しては、お互い真面目に向き合う姿勢を見せている。
戦闘時以外は礼儀正しい方の彼が表にいる為、文豪間での交流はそこまで悪くはない。ただし、彼自身が少々人見知りの気質であるので、あまり多くの文豪と交流は持っていない様子。友人の文豪・吉川英治とは、転生後も付き合いが続いている。もう片方の人格とも、そこそこ付き合いがあるようだ。また、文豪・江戸川乱歩が二重人格である中島敦に興味があるらしく、一方的に彼を付け回している。その執着の凄まじさは、両方の中島敦から苦手意識を持たれるほどだ。
尊敬している文豪は、泉鏡花。これは、モデルとなった中島敦が大の泉鏡花ファンであった事が元ネタと推測される。好戦的な人格も、彼に対してだけは素直な態度を見せている。

小泉八雲(こいずみ やくも)

CV:内田雄馬
明治に活躍した文豪・小泉八雲をモデルにしたキャラクター。日本に帰化したギリシャ人で、ギリシャ名はラフカディオ・ハーンという。小説家以外にも、随筆家・紀行作家・日本研究家としても活躍した。代表作に『怪談』『骨董』『日本の面影』などが存在する。潜書時の武器は鞭。通常衣装時の属性は風となっている。精神状態は安定。
カタコトで喋るのが特徴の青年キャラクターとなっている。これは、彼がギリシャからやってきた文豪で、その後日本人として日本に帰化した事が元ネタの模様。日本に来たばかりの頃は、ギリシャ人としての名前を名乗っていた為、昔から彼の事を知る者はヘルン先生と、彼を愛称で呼ぶ。喋る日本語はどこで覚えてきたのか、時代錯誤にも思える古い言葉を交えながら喋っており、非常に独特な口調となっている。しかし、喋る事はできても書く事は苦手らしく、なかでも漢字が上手くかけずにいる様子だ。
穏やかでおちゃめな性格の人物で、それ故に多くの文豪達から慕われている。特に弟子である小川未明(おがわ びめい)を含めた童話作家の文豪達とも仲がいい。そのほか、推理作家として有名な文豪・江戸川乱歩とも馬が合う様子。こちらは、自身のモデルとなった小泉八雲が『雪女』や『貉』(または『のっぺらぼう』)などの怪談を作り上げた文豪であるため、オカルティズムとミステリーという分野で話が合いやすいのが理由にある。また、数いる文豪達の中でも年長者にあたる為、その事も慕われている理由と推測できる。得意な怪談で、よく皆の怖がる顔を見る為に、談話室などで怪談を語って聞かせている。
また、作中での直接的な交流が多いわけではないが、文豪・夏目漱石とも深い縁がある。これはモデルの文豪・小泉八雲が、かつて教鞭を取っていた学校に、彼の後任としてやってきたのが夏目漱石であった事が理由だ。

若山牧水(わかやま ぼくすい)

CV:宮下栄治
明治から昭和にかけて活躍した歌人・若山牧水をモデルにしたキャラクター。代表作に『別離』『黒松』『路上』などが存在する。酒豪であった事で有名で、酒を題材にした歌を200以上生み出した。潜書時の武器は銃。通常衣装時の属性は水となっている。精神状態はやや安定。
常にお酒を飲んでいる酒豪の青年キャラクターとなっている。豪快さと仙人のような浮世絵離れをした不思議な雰囲気を併せ持つ独特な性格で、悩みも特にない為、転生後はお酒を飲みながらフラフラと暮らす日々だ。しかし、酒が好きだからこそ無茶な飲み方は決してしないと心に決めているので、ほかの酒飲みの文豪よりも常識的な範囲での酒豪となっている。また、文豪として活躍していた頃には情熱的な恋をした事があるとの事で、度々「恋」について語る時がある。これはモデルとなった文豪・若山牧水が、学生時代に人妻と恋愛関係にあった事や、後の妻・太田喜志子(おおた きしこ)に一目惚れし、手紙を送り続けたという逸話が元ネタと推測される。なお、かつての恋はあくまでも過去の出来事であり、本人いわく「今は酒に恋している」とのことだ。
明星派に関係する歌人達と知り合いである場合が多く、なかでも石川啄木からは「ぼっさん」と呼ばれ慕われている。若山牧水の方も石川啄木の事を親しく思っており、転生前は短い生涯であった彼に対して「元気に長生きすればいい」といった言葉を述べた事もある。
そのほか、酒を好む文豪達との付き合いも多くある模様。そのなかには、石川啄木の歌が好きだった詩人・中原中也の存在もある。

国木田独歩(くにきだ どっぽ)

CV:増田俊樹
明治時代に活躍した文豪・国木田独歩をモデルにしたキャラクター。純文学の作家で、代表作に『武蔵野』『忘れえぬ人々』『春の鳥』などが存在する。詩人やジャーナリストとしても活躍した。また、国木田独歩名義以外にも、「孤島生」や「鏡面生」など数多くのペンネームを持つ。潜書時の武器は弓。通常衣装時の属性は土となっている。精神状態はやや不安定。
浮き沈みが激しい性格の青年キャラクター。一度気が落ちるととことん落ち込んでしまう。しかし、基本的には熱意のある姿勢で、ジャーナリストや作家として活動をしている。ジャーナリストであった事が起因してか、新しいものや話題性があるものが好きな様子。スクープになるものがないか常に探し歩くほか、侵蝕者に関しても倒すというよりはデータ収集をしているような姿勢で戦っている。
また、思った事をストレートに相手に伝えられる性格であるため、公式からは「人たらし」と紹介された。親友の文豪・田山花袋、取材仲間である島崎藤村を筆頭に、気が合う者とは積極的に交流をはかっており、一緒にいる事が多い。自分の事を苦手とする相手にも、持ち前のジャーナリスト精神で「取材」という名目のもと積極的に接していく。文豪として活躍していた頃からこのような姿勢なようで、こうした彼の姿勢を尊敬している文豪も多い。歌人の若山牧水がその代表にあたる。また、こうした交流とは別に、文豪として活躍していた時に「文豪・有島武郎の妻をモデルに小説を書いた」という経緯から、転生後も有島武郎との付き合いがある。
唯一の不満は、文豪であった頃に自分の作品が世間に受け入れられなかったこと。文豪・尾崎紅葉と幸田露伴の名が馳せた「紅露時代」のなか、彼らの作風とは異なる作風で作品を書いていた為、世間に作品が受け入れられなかった模様。その事を転生後も引きずっており、落ち込みやすい性格もこの部分が大きく影響していると推測される。「誰にも理解してもらえない」ことがトラウマである様子だ。

幸田露伴(こうだ ろはん)

CV:子安武人
明治から昭和にかけて活躍した文豪・幸田露伴をモデルにしたキャラクター。大衆文学の作家で、代表作に『五重塔』『運命』『風流仏』などが存在する。文豪・尾崎紅葉と共に肩を並べて活躍した時代を代表する文豪として有名で、彼らが活躍した時代を「紅露時代」という。潜書時の武器は鞭。通常衣装時の属性は水となっている。精神状態は安定。
迫力のある筋骨隆々な見た目が特徴的な青年キャラクターとなっている。しかし、性格は以外にも生真面目で、家事も完璧にこなせるマメな人物だ。自他共厳しい人物でもある為、迫力のある見た目とあって威圧的な印象も拭えないが、実はとても情熱家で他者思い。言動の厳しさも、この相手への思いやりが来ている模様。怠けている者がいると呼び出し、独自の努力論を説くという噂もある。しかし、文豪として活躍していた頃から弟子は取らない主義である為、1人の人物に深入りする事はない。あくまでも相手の間違いを正す・諭すだけの姿勢で、適度な距離を保ちながら接している。
なお、1人だけで考え事をしたい時は「釣り」に行く。これはモデルの幸田露伴が「釣聖」と呼ばれるほどに釣りが好きで、釣りに関連した作品をいくつも出している事が元ネタと推測される。
かつて時代を代表する文豪としてともに肩を並べて活躍していた尾崎紅葉とは、転生後もよきライバルとしてあり続けている。またその延長線で、彼の弟子である文豪・徳田秋声と泉鏡花の事も気にかけている様子だ。自分が文学に携わるきっかけになった文豪・坪内逍遥に対しても、転生後も変わらぬ敬意を払っている。友人であった森鴎外とは転生後も友人として付き合っており、時々一緒に酒を飲んでいる模様。

吉川英治(よしかわ えいじ)

CV:阿座上洋平
大正から昭和にかけて活躍した文豪・吉川英治をモデルにしたキャラクター。大衆文学の作家で、代表作に『宮本武蔵』『三国志』『鳴門秘帖』などが存在する。歴史をテーマにした大衆文学で多くの人に親しまれた事から、「国民文学作家」とも呼ばれた。潜書時の武器は鞭。通常衣装時の属性は火となっている。精神状態は安定。
公式いわく「我以外皆師也」をモットーにしている青年キャラクターである。勉強熱心な勤勉家かつ自己鍛錬を怠らない、インドア派の多い文豪の中では珍しい運動好きな人物だ。その延長線か健康オタクでもあり、やたらと身体を鍛える事に強いこだわりを持つ。文豪はもちろん、図書館で働く司書達にも身体を鍛える事をやたらと薦めてくる節があるのが玉に瑕だ。逆に人から教えられた嘘の健康法を信じ切ってしまう事もある。しかし、これらの欠点を除けば頼りがいのある人物である為、他の文豪からは比較的好印象を持たれている。
歴史ものを多く書いてきたからか歴史が大好きで、なかでも名将や剣豪と呼ばれた者達の名言について詳しい。自分と同じく歴史や時代ものを書いていた文豪・中島敦とは馬が合うようで、暇があると歴史について語り合っている。また、文豪として活躍していた頃から付き合いがある文豪・直木三十五(なおき さんじゅうご)とは、彼も歴史小説を書いていた事もあり、常に侍や剣士について議論している。そのほか、同じく文豪として活躍していた頃からの友人である文豪・菊池寛との交友も続いている様子。ベースボールが大好きな歌人・正岡子規とも運動好き同士仲良くしているようで、彼の行うベースボールにもよく参加している。

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