ゲット・アウト(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ゲット・アウト』とは2017年に公開されたアメリカのサイコ・スリラー映画である。監督・脚本を務めるのはジョーダン・ピール。主人公の黒人男性をダニエル・カルーヤが演じた。アフリカ系アメリカ人の写真家、クリス・ワシントン。白人の恋人であるローズ・アーミテージの実家を訪れたことで、常軌を逸脱した悍ましい陰謀に巻き込まれていく。大勢の白人が集うパーティーが開かれ、クリスは次のターゲットに選ばれていた。本作はアメリカに深く根付いている人種差別の社会的な問題に、映画で踏み込んでいった作品である。

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ナショジオ

ナショナルジオグラフィック協会が発行する雑誌や関連メディアを指す通称。アメリカ合衆国ワシントンD.C.に本部を置き、幅広い分野の研究や調査、探検などを支援する非営利科学・教育団体。

『ゲット・アウト』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ローズ・アーミテージ 「私の男を守っただけ。」

ローズの運転でアーミテージ家に向かっていた際、鹿を轢き警察からの事情聴取を受けたローズとクリス。運転していたのはローズであったが、警察はクリスにも免許証も提示するよう要求した。警察の対応に、その必要はないときっぱり断ったのがローズであった。結果クリスは身分証を提示することなく、その場は収まる。引き下がらなかったローズに感心していたクリス。そんな彼にローズは「私の男を守っただけ。」と取り立てて言うほどのことでもないように言ってみせた。自身が脳移植のターゲットになっているなど、クリスがまだ知るはずもなかった時のことである。だが守られるだけでなく恋人を守ることのできる女性の魅力が映し出されており、クリスにとってローズのような存在は心の支えとなっていた。

ジム・ハドソン「その通り。人生はフェアじゃない。」

盲目の画商であるジムはパーティーの最中、クリスと2人で会話をしていた。ジムのことをクリスが知っていたこともあり、2人はすぐに打ち解ける。ジムはクリスに盲目になるまでの経緯を話した。彼の境遇に同情するクリス。人生は不公平であると、クリスはジムの話に白人による差別から逃れられない自身の人生を重ねていた。そんなクリスにジムも同調し「その通り。人生はフェアじゃない。」と言い切る。どのような境遇にあっても生きることを諦めていない彼らの会話は、盛り上がりを見せるパーティーの中で異質な雰囲気を纏っていた。

ロッド・ウィリアムス「おれはTSA野郎だぞ。困難に立ち向かう。それが任務だ。」

一人でもクリスを救出しようとアーミテージ家にパトカーで向かったロッド。彼は親友であるクリスのためにアーミテージ家の陰謀を調べ、警察にも協力を仰ぎ、断られたら一人で恐ろしい場所へも向かうほど彼を大切にしていた。自身が次の犠牲者になる可能性があるにも関わらず、敵の拠点へ向かったのだ。パトカーにクリスを乗せ無事に救出が完了した後、よく見つけたなと話すクリスに向かい「おれはTSA野郎だぞ。困難に立ち向かう。それが任務だ。」とロッドはサラッと言ってみせる。親友のために真実を突き止めることを諦めなかったロッドがいなければ、クリスは怪我を負ったまま道端でのたれ死んでいた可能性もある。互いに諦めなかったことで再会が叶った2人の絆が描かれていた。

『ゲット・アウト』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

クリス・ワシントンの身分証から足跡が辿られることを防ぐために身分証の提示を断っていたローズ・アーミテージ

鹿を轢き殺し、駆けつけた警察に免許証の提示を要求されたクリスとローズ。そこでローズはクリスの免許証提示を断った。

ローズの家に向かう道中でローズの運転する車が鹿を轢き殺したことにより、駆けつけた警官から身分証の提示を求められた2人。そこでクリスは運転していないため身分証の提示は必要無いとし、一見ローズはクリスを庇っているように見える。そんな彼女にクリスは感心していたが、そこには別の意図が含まれていた。その後、クリスが脳移植の施術により世間的に行方不明となることが決まっていたためである。身分証の提示から警察に足跡が辿られることを防ぐために、ローズはクリスを庇っていたのであった。

元オリンピック選手であるローマン・アーミテージの脳が移植されていたために毎晩走っていたウォルター

深夜に目を覚まし庭に出たクリス。すると遠く離れた場所からクリスへ向かって全速力で走ってくるウォルターの姿が見えた。

不気味なシーンの一つに夜中の庭をウォルターが、そばで立って見ていたクリスに向かって全力疾走してくるところがある。ぶつかるスレスレのところでウォルターは急旋回し違う方向へと走っていった。これはウォルターに脳を移植したローマン・アーミテージが、元オリンピック選手であったことが関係している。ローマンはジェシー・オーエンスに敗れていたのだ。ジェシーは1936年のベルリンオリンピックに出場し、金メダルを4つ獲得しているアフリカ系アメリカ人の実在していた陸上選手。ウォルターの身体であればジェシーの記録を抜けるかもしれないと、ローマンは練習していたのであった。

綿によって催眠術から逃れたクリス・ワシントン

出典: renote.net

捕らえられ地下室で拘束されていたクリス。座っている古びたソファから綿が出ていることにクリスは気付いた。

アーミテージ家の地下室でソファに縛り付けられていたクリス。彼はそこでも催眠術により数回意識を失っていた。しかしジェレミーが移植手術のため迎えに来た際、クリスには催眠術が効いておらず、彼は手錠が外れた隙をついてジェレミーの頭部を殴りつけている。クリスに催眠術が効いていなかった理由は、彼が両耳に詰めていた綿にあった。クリスはソファの表面を掻きむしり、中の綿を手に入れていたのだ。これは19世紀初頭から後半にかけて奴隷制度が廃止されるまでの間、黒人奴隷が綿栽培をアメリカのプランテーションで行っていたことを象徴しており、綿によって催眠術から逃れたクリスが描かれている。

『ゲット・アウト』の主題歌・挿入歌

主題歌:マイケル・エイベルス「Sikiliza Kwa Wahenga 」

アメリカの音楽家であり、映画やドキュメンタリー作品の音楽も手がけている。アフリカ系の音楽に特に力を入れており、学生時代には西アフリカのパーカッション演奏技術を学び、アフリカ系アメリカ人のルーツを知るために教会の聖歌隊に入った経験を持つ。本作の他にも『アス』(2019年)、『NOPE/ノープ』(2022年)でマイケルはジョーダンとタッグを組んだ。

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