NG(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『NG』とは、2018年にエクスペリエンスから発売された、PlayStation Vita向けホラーアドベンチャーゲーム。『心霊ホラーADVシリーズ』の第2作目。同シリーズ作品の『死印』や『死噛 ~シビトマギレ~』と世界観を共有している。
物語の舞台は1999年の東京都神座区。主人公・鬼島空良(きじま あきら)が、少女人形の怪異・かくやによって巻き起こされる怪異事件に、協力者と共に立ち向かっていく。
ジャパニーズホラー的恐怖を織り込んだストーリーラインと、個性的なキャラクターが作品の魅力だ。

『NG』の概要

『NG』とは、2018年9月13日にエクスペリエンスによって発売された、ホラーアドベンチャーゲーム。発売プラットフォームはPlayStation Vitaのみであったが、2019年2月21日にはPlayStation 4、2019年10月10日にはPCとNintendo Switchでも発売された。同社のホラーゲームシリーズである『心霊ホラーADVシリーズ』の第2作目と位置付けられる。
物語は前作である『死印』や3作目の『死噛 ~シビトマギレ~』とは繋がりがないものの、世界観は共通。しかし時系列的には最も未来に位置する作品となっていた。

物語の舞台は1999年の東京都神座区。喧嘩が強いことに定評がある不良高校生・鬼島空良(きじま あきら)は、ある日突然少女人形の姿をした怪異・かくやに目をつけられてしまう。かくやは空良の家族であり、従妹でもある鬼島愛海(きじま あみ)を連れ去り、彼女の身柄と引き換えに、彼に自分との命がけの「あそび」を行うことを強要した。
空良は大事な家族である愛海を取り戻すため、かくやがけしかける怪異に、仲間とともに対峙していくこととなる。

本作は『心霊ホラーADVシリーズ』に共通する、ジャパニーズホラー的な恐怖に重点を置かれた演出が特徴。湿り気を帯びたようなじっとりとした雰囲気や、人の情念を前面に押し出したような物語が魅力となっている。
特に『NG』は「日常に浸食する恐怖」がテーマとして据えられていた。キャラクターが普段生活している場や近辺で怪異事件は発生し、主人公らは怪異が潜む見知った土地を探索していくことになる。見慣れた風景が怪異の影響と恐怖によって歪み、徐々に安寧の場所が奪われていく焦燥感や嫌悪感を体感することが可能だ。
システム面は前作である『死印』のものを踏襲しているものの、より緊張感に溢れたものへと進化している。特に怪異との決戦時に行われる「サバイバルエスケープ」は、ただ選択肢やアイテムを選ぶだけであった前作のそれより強化され、より考えなければ切り抜けられないようになった。
また、キャラクターごとに好感度が設定され、好感度の度合いによって一部シナリオの文章が変化するなどのお楽しみ要素も実装されている。

Nintendo Switch版とPC版発売から長らく音沙汰がなかったものの、2023年1月26日に3作目『死噛 ~シビトマギレ~』とのコラボシナリオ「マッハ姫の噂」が、『死噛 ~シビトマギレ~』内で配信。それを皮切りに、2023年9月15日にはオリジナルストーリーのボイスドラマ、2024年3月27日には本編をノベライズした小説版が発売された。
更に2024年6月26日に、第1作目と第3作目と共に『心霊ホラーADVシリーズ』3作品を全て収録した『心霊ホラーADV全集』がNintendo Switchにて発売。他のシリーズ作品と共に一気に遊べるようになっている。

『NG』のあらすじ・ストーリー

『NG』の物語は基本一本道だが、第3章終盤にて、二者択一の選択が存在する。選ばなかった方は以降同行者選択に登場することはない。シナリオの大筋は変化しないが、同行者によって反応などは変化してしまう。
以下ストーリーでは、第3章選択肢で天生目聖司(あまのめ せいじ)を選んだ場合の内容を記載する。

プロローグ

舞台は1999年の夏、東京都神座区。都立神座高等学校に通う少年・鬼島空良(きじま あきら)は、高校生活最後の夏休みを無為に過ごしていた。
そんなある日、空良は従妹の少女・鬼島愛海(きじま あみ)と共に、自宅の前で奇妙な黒い葉書を拾う。子供が好むような簡単な暗号で隠された言葉を読み解くと、葉書には「あそぼうよ」と書かれていた。悪質な悪戯だと思った空良と愛海は、それを意にも介さず、いつも通りの日常を過ごしていく。
しかし、この黒い葉書が、空良の退屈な日常を破壊することにとなるのであった。

第1章「日常の終わり」

翌日、空良はバーの経営をしている叔母・鬼島那津美(きじま なつみ)から愛海を預かり、自宅に向かう。
その最中、空良は愛海の友人である高村ゆり(たかむら ゆり)が死亡したという交通事故現場を通りかかる。「彼女に花を供えたい」という愛海の希望を聞き、空良は翌日愛海と共に花を購入すると、高村が事故に遭った現場へ向かう。しかし、花を供えた空良と愛海の前に、突如高村の亡霊が現れ、無人のトラックで彼らを轢き殺そうと襲い掛かる。
間一髪で難を逃れ、自宅アパートへと帰宅した空良と愛海。それも束の間、愛海は愛用のヘッドホンを残して姿を消してしまった。
突然の出来事に混乱する空良の耳に、不意に届いたのは澄んだ笛の音。笛の音の聞こえる方へ駆け出した空良を待っていたのは、人形の少女であるかくや。かくやは空良に遊びを持ちかけ、受けなければ空良も愛海のように消え、愛海も帰らないと宣告する。
空良はかくやが言う「うらしま女(うらしまおんな)遊び」に付き合うことになるのだった。

第2章「死の遊び 葉月・天生目編 ~うらしま女の噂~」

空良は愛海が消えてしまったことを那津美に伝えると、かくやの遊びに挑む決意をする。
そんな空良に協力を申し出たのは、空良の親友にして暴力団・天生目組の組長の息子、天生目聖司(あまのめ せいじ)と、愛海の友人であり、アイドルの葉月薫(はづき かおる)。2人の協力者と共に、空良はかくやが探せと言っていた怪異・うらしま女を探すため、神座区にある八真都神宮へ向かうのだった。
八真都神宮は先日不可解な殺人事件が起こって封鎖されていたが、空良一行は機転を利かせて封鎖を突破し、調査を進めていく。調査の最中で、うらしま女の怨念の源や、彼女が被害者となった事件の詳細を知った空良たち。怪異となってしまった魂に決着をつけるために、八真都神宮内にある浦島池中央のお堂・玉手堂へ赴いた。うらしま女の抱く無念と悲しみを紐解き、彼女の魂を救済することに成功した空良一行。
しかし、怪異は消滅したものの、愛海は戻ってこない。かくやは一度の遊びでは満足できず、再び空良に遊びの誘いをするのであった。次なる遊びは「金時の首太郎(きんときのくびたろう)遊び」。空良は此度のことで多大な危機に2人を晒したことから、天生目と葉月を危険に晒すわけにはいかないと決意し、独りでかくやの遊びに挑むことを決意する。

第3章「死の遊び 葉月・天生目編 ~金時の首太郎の噂~」

翌日から空良は独りで怪異・金時の首太郎の情報収集を進めるも、上手くいかず苛立ちを覚えていた。そんな空良の元に天生目と葉月が現れ、結局は彼らの協力を仰ぐことになってしまう。更に、天生目組に所属する若衆・丸橋満(まるはし みつる)も協力者となった。4人で挑むことになったかくやの遊びの次なる調査地点は、神座区吉走寺北部にある住宅街、金時町である。
金時町では近年なぜかやたら犬が殺される事件が頻発しており、町内では警察官の巡回が行われていた。警察官の監視を掻い潜り、情報収集を進めるうち、金時の首太郎の正体と、その成り立ちを知った空良一行。怪異と対峙するために金時町に向かうものの、先に現場へ行っていた丸橋が金時の首太郎に殺されてしまう。次いで空良たちが金時の首太郎の標的となってしまうが、集めた情報から彼女の心残りを読み解き、その魂を救済することに成功する。
しかし、直後かくやの力によって、天生目と葉月、空良に落雷が襲い掛かった。かくやはその状況で空良に「せいじくんと…かおるちゃん…どっちが…大事?」と選択を迫る。空良はひとまず天生目に駆け寄り、彼の無事を確認するが、直後に騒ぎを聞きつけたパトカーのサイレン音を聞き、その場から逃走せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。意識を取り戻した天生目に促され、空良は後ろ髪を引かれつつもその場を離れることになった。

第4章「死の遊び 番・ロゼ編 ~おたけび作家の噂~」

騒動の翌日に、天生目から連絡を受けた空良。天生目は全治1週間の怪我を負った挙句、丸橋の件で謹慎処分になり、協力ができなくなったと言う。更に共に落雷を受けた葉月は未だ意識を取り戻さない、という事態に陥っていた。そんな中でもかくやの遊びは容赦なく続けられ、次は「おたけび作家(おたけびさっか)遊び」なるものを突き付けられる。空良は怪異・おたけび作家の調査を、怪異を追う記者・番直政(ばん なおまさ)と、同じく怪異を追う謎の女性、ムーラン・ロゼと共に進めていくことに。
おたけび作家の手掛かりは、神座区吉走寺郊外にある、ホラー絵本作家・弥勒夜雲(みろく やくも)の邸宅に存在すると推定され、空良一行は弥勒邸へ向かった。弥勒邸の調査を進めるうち、弥勒は少女をかどわかし、人形に改造するという異常な行動をしていたことが判明する。が、当の弥勒自身は少女の手足が胴体に縫い付けられた腐乱死体となっており、その真意を知ることはできなかった。不可解な謎に包まれた弥勒邸の調査を継続していた空良たちは、とうとうおたけび作家の正体を突き止め、怨恨を断ち切ることに成功する。
おたけび作家と決着をつけ、バーに戻った空良一行を待っていたのは那津美。那津美は空良が愛海を取り戻すために危険を冒していることを知り、今後は自身も協力者となることを持ち掛けるのだった。

第5章「死の遊び 番・ロゼ編 ~殺人桃の噂~」

おたけび作家と決着をつけた翌日、空良は笛の音に導かれ、かくやと邂逅すると、次なる遊びは「殺人桃(さつじんとう)遊び」だと宣言される。怪異・殺人桃の調査を空良が進めている中で、那津美は愛海を取り戻す手段の手掛かりを得て実行し、かくやに呪いをかけられて昏睡に追い込まれてしまう。倒れた那津美を救急車で搬送した後、空良の前に現れたのは、愛海の失踪事件を追っていた女刑事・大江麗奈(おおえ れいな)だった。大江は空良がここ最近発生している不可解な事件に深く関わっていると睨んで追求するが、空良は逆に彼女の興味をそそるように情報をちらつかせ、協力体制を敷くことに成功する。新たな協力者を得た空良は、番とロゼ、そして大江と共に、怪異・殺人桃が関わると考えられる殺人事件が多発しているというムーンタワーへ向かった。
調査を進めるうち、ムーンタワーを建造した大手建設会社・住井グループが隠した不都合や、それに関わる事件を追った末に命を落とした、殺人桃の正体の真実を知る。集めた情報から殺人桃の無念や怨恨を読み解き、彼女を退けることには成功するのだが、どこかすっきりとしない結果に終わってしまう。彼女が消えた場所には、真っ黒に塗りつぶされた謎の火災原因判定書が落ちていた。この火災原因判定書を大江に預けて事件は収束に向かうが、空良には殺人桃の討伐の他に、まだやることが残っている。
那津美が呪いを受ける前に口走っていた言葉の断片から、何をすべきか推理を進めた空良は、愛海が消えた現場でそれを実行した。すると、かくやの仕業で姿を消していた愛海を取り戻すことに成功するのだった。

第6章「遊びの落とし前 ~ツクヨミ鬼の噂~」

かくやから取り戻された愛海から情報を得ようとする空良だったが、愛海からはかくやが口走っていたという、ツクヨミ鬼(つくよみおに)なる怪異のことしか知ることはできなかった。懸念の材料はあるものの、今は愛海の生還を素直に喜ぶ空良。そんな報告を空良より聞き、謹慎処分となっていた天生目がバーを訪れる。彼は愛海の無事を喜ぶと同時に、自身に対してここまでした怪異に落とし前をつけると息巻くのであった。
愛海生還から数日間はかくやの登場も、怪異の発生もなかったのだが、ある日大江から謎の火災原因判定書の内容について話を聞いていた最中で、突如かくやの遊びの予兆が空良に現れる。かくやの登場もないのに現れた予兆に戸惑いを覚えつつ、空良と天生目、大江は、次なる遊びの相手となった怪異・ツクヨミ鬼の手掛かりを求め、再びムーンタワーを訪れるのだった。
ムーンタワーの調査を進めるうち、空良一行は突如10年前に火事で焼失したという百貨店・桃井デパートに迷い込む。過去の世界を映し出す謎の空間で調査を進行していくと、そこでかつて放火事件があったこと、その放火魔が都市伝説にあるツクヨミ鬼を呼び出す儀式をしていたことを知った。また、放火魔の正体が、ムーンタワーを建造した住井グループの会長・石丸昇(いしまる のぼる)の次男坊、石丸将(いしまる まさる)であることも判明する。そして、ツクヨミ鬼と対峙した空良一行は、その核となっている放火魔の魂を消滅させることに成功し、かくやの遊びから幾度目かの生還を果たす。

ひと時の日常に戻った空良だが、愛海を助けてから一度も姿を現さないかくやの存在が引っかかっていた。そんなある日、昏睡した際に、事件性があると押収されていた那津美の身に着けていたものが、大江によって返還される。その衣服から情報を読み取った空良は、那津美を昏睡させたのは愛海であるという真実を知ってしまった。なんと愛海はかくやによって乗っ取られており、真実を知った空良を自らの棲家である幽世へと引きずり込んでしまう。
幽世でかくやに思考を支配され、かくやを探す空良。かくやは空良の心を挫いて自分のものにするために、彼から大事なものの記憶を奪っていく。しかし、空良は最後の最後まで屈服しないように抗い続けた。そんな空良に、かくやは異形の姿を現して迫るが、空良はかくやを「俺はてめぇが大嫌いだよ!」と強く拒絶する。強いショックを受けた影響と、愛海の機転で、空良は幽世から脱出することができた。
しかしかくやは未だ空良のことを諦めず、彼を再び幽世へ引きずり込もうとする。そんなかくやと決着をつけるため、空良は今まで様々な場所から手に入れた情報から、彼女を幽世へ封印する儀式・夏越しの戯を実行した。空良が行った夏越しの戯は成功し、かくやは幽世の中へ消えていく。残されたのは、生き残った空良と、正真正銘本物の愛海であった。

エピローグ

かくやを幽世に封印した日から、空良の周囲からは非日常の気配はすっかりと消え失せてしまった。
那津美と葉月は昏睡から回復し、愛海も日常を取り戻している。番は新たな事件を追い、ロゼは近々海外に飛ぶのだと語っていた。大江はすっかり怪異事件に興味を持ったようで、怪異事件担当の部署を警察内で立ち上げようと奮闘しているのだという。
そんな退屈な日常の中で、天生目が空良の自宅に訪れ、自分と共に再び非日常へ足を踏み入れないかと誘いをかけるのだ。非日常で輝く空良の能力に目を付けた天生目の言葉に帰ってきた答えを聞くと、天生目は悪い笑みを浮かべ、こう言う。
「君と僕が組めば、恐れるモノなんて何もない。」「2人で天下を取ってみないか、相棒」

『NG』のゲームシステム

基本情報

メインとなる探索画面の様子。ライトはカーソルで、対応したボタンを押せば各種メニューが開ける。

『NG』のゲームジャンルは、ホラーアドベンチャー。
主人公である空良を操作して、マップ上に点在している調査ポイントを調べて情報を集め、待ち受ける怪異との対決に備えていくのが目的となる。視点は常時一人称で、一枚絵で表示される背景からカーソルで調査ポイントを選び、手がかりとなる情報やアイテムを手に入れていく。
マップの移動は十字キーで行う。シーンごとに必要な情報やアイテムを手に入れた時点で物語は進行し、最終的に章のボスとして登場する怪異と対決。この怪異を打ち破り、迫り来る危機を回避することで、次章へと移行する。
物語は6章まであり、エンディングは3種類。

主にテキストを読んで物語を進めるタイプのシンプルな作品であり、アクション要素はなし。ただし、操作を急かされる時間制限のある選択肢システム「クライシスチョイス」が存在。
じっくり考えて進めるべき部分と、咄嗟の判断力がモノを言うシーンがあり、メリハリのついた作風となっている。

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