デンケン（葬送のフリーレン）の徹底解説・考察まとめ

デンケン（葬送のフリーレン）の概要

デンケンとは、原作：山田鐘人、作画：アベツカサによる漫画『葬送のフリーレン』の登場人物。一兵卒の立場から宮廷魔法使いへと成り上がった傑物で、北側諸国においてもっとも大きな権力を持つ魔法使いである。
城塞都市ヴァイゼの領主グリュックの親戚筋の家に生まれ、幼くして魔族に両親を殺される。その後デンケンは両親の冥福を祈り続ける日々を送っていたが、生きがいを見つけてほしいと考えたグリュックにより黄金郷のマハト（おうごんきょうのマハト）を師として紹介される。マハトは魔王軍幹部「七崩賢」最強の存在にしてその生き残りだったが、「魔族と人間の共存」を本気で目指しており、そのために「人間だけが持つ“悪意”や“罪悪感”という感情を知らなくてはならない」と考える変わり者でもあった。

マハトの下で魔法使いとして成長したデンケンは、ヴァイゼを離れて軍人となり、後の一級魔法使いであるレルネンといった同僚と共に活躍。出世して相応の地位を手に入れた後、グリュックの娘で以前から恋仲だったレクテューレと結婚する。レクテューレは生まれた頃から病弱な女性で、彼女の治療のために大金を欲してさらなる出世に邁進するが、結局は先立たれることとなる。
そのしばらく後、グリュックが老いによって人生を終えようとしていることを察したマハトが、「長年共に過ごしてきたグリュックとヴァイゼの人々を裏切れば“罪悪感”を感じられるかもしれない」と考え、ヴァイゼの土地と民を黄金へと変える事件が発生。デンケンは「故郷を救いたいがマハトには勝てない」と判断し、ヴァイゼごと封じられることとなったマハトを静観する。

愛する妻も故郷も救えなかった絶望を抱えつつ、惰性のように手柄を挙げ続け、ついには大陸北部にある大きな国の宮廷魔術師となる。国のため民のため働き続けた後、デンケンは人生の最晩年になって「妻の墓参りをしよう」と思い立つ。
そのために必要な通行証を兼ねた一級魔法使いの資格を得るため魔法都市オイサーストへと赴き、魔王討伐を果たした英雄の1人であるエルフの魔法使いフリーレンを始めとする猛者たちと競いながら試験に臨む。これを突破して一級魔法使いとなった後、妻が眠るヴァイゼへと向かったデンケンは、応援としてやってきたフリーレンと共にヴァイゼの解放のためにマハトと激しい戦いを繰り広げた。

デンケン（葬送のフリーレン）のプロフィール・人物像

CV：斉藤次郎

理知的で忍耐深く、計算高い一方で情に篤い人物。歳を重ねた今ではそこに経験と老獪さが加わり、一筋縄ではいかない老練の魔法使いとなっている。妻のレクテューレによれば、諦めの悪いところは子供の頃から変わっていないらしい。
「北方諸国でもっとも大きな権力を持つ魔法使い」として広く知られ、様々な美談を残している。レルネンはかつて同じ国に仕えていた際、デンケンが失脚した自分を最後まで庇おうとしてくれたことを深く感謝しており、今でも彼と強い友情を結んでいる。

マハトとは師弟の関係にあり、デンケンはその生涯を通して「いつかマハトを倒す、マハトを超える」ことを目標に己を鍛え続けてきた。マハトは「師であり魔族である自分を殺すことを目標にするとは、こんなにおもしろいことはない」とデンケンの姿勢を好意的に捉えており、彼が自分の下を離れる前の未熟な子供だった頃から熱心に彼を育てていた。
幼馴染でもある妻のレクテューレとは、世間的には政略結婚だったが、実際のところは「領主の娘に見合う立場になるようデンケンが出世を重ね、結果として“成り上がり者と落ち目の貴族の娘の結婚”という形になった」だけで、実質的には恋愛結婚だった。若い頃は同期だったレルネンの前でごく淡々と惚気話を語るのが常で、彼を辟易とさせていた。レクテューレのことが忘れられないのか、デンケンは彼女の死後も再婚せず、子供もいなかったため完全に独り身である。

デンケン（葬送のフリーレン）の魔法・能力

叩き上げの軍人であり、若い頃は軍人として様々な戦争や魔族の討伐で活躍。大魔族であるマハト仕込みの高い技術と本人の才能、幾多の経験によって「人間の魔法使い」という区分においては最高峰の人物の1人。二級魔法使いという扱いになってはいるが、これは「今まで宮廷魔法使いとしての仕事が忙しくて試験を受けていなかった」というだけで、実力的には一級魔法使い相当のものを持つ。
「一級魔法使いに質などいらない、ただ権威の象徴でありさえすればいい」との持論を持ち、あくまで“魔法使いが人間社会の中で果たす役割”を重視している。しかし「魔法は探し求めている時が一番楽しい」との思想も持っており、相応の地位を得て前線を退いてからもいつかマハトと戦うことを考えて鍛錬を欠かさないなど、魔法という技術そのものを愛好している節がある。

竜巻を起こす魔法（ヴァルドゴーゼ）

巨大な竜巻を生み出す魔法。人間を軽々と上空に吹き飛ばすほどの威力がある。この魔法自体に攻撃能力は無いが、相手が飛行魔法を使えない場合落下による大怪我は免れない。

風を業火に変える魔法（ダオスドルグ）

風を業火に変える魔法。「竜巻を起こす魔法」と合わせて使うことで、“空中に巻き上げて動きの取れない相手を業火で包む”という凶悪な連携技となる。
魔法使いなら防御魔法で身を守ることは可能だが、「消耗の激しい防御魔法を展開し続ける負担」、「炎による高熱」、「炎の燃焼による酸欠」と三重のダメージを与える。

裁きの光を放つ魔法（カタストラーヴィア）

「竜巻を起こす魔法」と「風を業火に変える魔法」による連携でも相手にトドメを刺し切れなかった時に使う魔法。無数の光の矢を放ち、一切反撃できない中でこれを防御させることで相手の魔力切れを誘う。通常の攻撃魔法としても優秀だが、速射性に特化している分威力は比較的弱め。
デンケンを上回る魔法使いであるフリーレンには通じず、無数の弾幕の隙を突いて反撃されることとなった。

人を殺す魔法（ゾルトラーク）／一般攻撃魔法（いっぱんこうげきまほう）

「腐敗の賢老」の異名を持つ高位魔族クヴァールが開発した魔法。見た目は“魔力によって生成した五芒星から放つ光線”といった形で、人体を容易に貫通する威力と速射性を備え、魔力効率もいいため連射も可能と極めて優れた性能を持つ。
フリーレンが勇者ヒンメルたちと魔王討伐のための旅をしていた頃は防御法が確立されておらず、“当たれば即死”の攻撃が“高速の弾幕”として展開するこの魔法は、人間側にとって恐るべき脅威となっていた。

しかしヒンメル一行によってクヴァールが封印された後、その優れた性能から人間の魔法使いたちによって徹底的に解析され、「クヴァールのオリジナルの魔法」から「魔法使いなら誰でも使える“一般攻撃魔法”」へと変貌。逆に「防御法の確立された一般攻撃魔法を使わない戦い方」が研究されるようになった。
デンケンはマハトからこの魔法を学ぶ一方、人間の魔法使いの間ですさまじい技術開発が行われていく様も見届けている。「人間という種」そのものが改良に改良を重ねた一般攻撃魔法は、マハト曰く「もはやオリジナルとは別物」というほど洗練されており、彼を大いに驚かせた。

防御魔法（ぼうぎょまほう）

「人を殺す魔法」を防ぐために開発された魔法。六角形の防壁を生成して放たれた魔法の魔力に干渉し、それを減衰しながら威力を分散させる。
単純な魔法攻撃に対しては絶対的な防御力を誇るが、消耗が激しいため張り続けることが難しいのと、「魔法による攻撃」への防御に特化しているため大量の水や岩塊のような質量攻撃に対しては相性が悪いのが弱点。

飛行魔法（ひこうまほう）

空を飛ぶための魔法。元々は魔族の魔法で、原理が完全には解明されていない。その有用性から物語のメインとなる時代では魔法使いたちに当たり前のように使われているが、自分の肉体（＋持って運べる荷物）以上の重量を持ち上げようとすると一気に効率が悪くなるのが難点。

呪い返しの魔法（ミスティルジーラ）

魔族のみが使う魔法の中でも、「原理が不明」かつ「対象に肉体的な変化を発生させる」ものを作中では「呪い」と称している。この魔法はその呪いを強制的に相手に跳ね返すもので、発動中は呪いによる攻撃に対して絶対的な防御力を発揮する。
マハトと戦うことを想定したデンケンが、彼の使う「万物を黄金に変える魔法」（ディーアゴルゼ）への対策としてゼーリエから譲り受けた。

デンケン（葬送のフリーレン）の来歴・活躍

父母と師と恋人

大陸北方の城塞都市ヴァイゼで生まれる。この地の領主であるグリュックの遠縁ではあったが、デンケンの生家はそれほど位の高い家ではなく、その分家族として強い絆で結ばれていた。
しかしある時、両親が魔族に殺されてしまう。その後教会に通い詰めて日々両親の冥福を祈るようになり、「とても健全な状態ではない」と考えたグリュックによって黄金郷のマハト（おうごんきょうのマハト）という魔族に引き合わされる。マハトは魔王軍幹部「七崩賢」最強の存在にしてその生き残りだったが、「魔族と人間の共存」を本気で目指しており、そのために「人間だけが持つ“悪意”や“罪悪感”という感情を知らなくてはならない」と考える変わり者で、この頃はグリュックの部下としてヴァイゼで暮らしていた。

デンケンはマハトを師として、また目標として魔法の修行に励むようになり、少しずつ以前の明るさを取り戻していく。この頃のデンケンはグリュックの保護下で暮らしており、以前から交流のあった彼の娘のレクテューレとさらに親しくなっていった。
成長したデンケンは、ヴァイゼを離れて軍人となる道を選ぶ。これは魔法使いとしての栄達を望むと共に、それなりに身分に差のあるレクテューレとの結婚のために地位を欲したのが理由だった。後に史上初の一級魔法使いとなるレルネンといった同僚たちと競うようにしつつ出世を重ね、相応の立場を手に入れたデンケンは、レクテューレと結婚。2人で魔法都市オイサーストを訪れた際には美味しいレストランで一緒に食事を楽しむなど、人生の絶頂期を迎える。

妻と故郷の喪失