葬送のフリーレン名勝負「一級魔法使い試験」のネタバレ解説・考察まとめ

『葬送のフリーレン』の概要

『葬送のフリーレン』とは、原作：山田鐘人、作画：アベツカサによる、“勇者による魔王退治”の後日談を描いた漫画作品。
2020年から『少年サンデーコミックス』で連載され、その独創的な設定と秀逸なキャラクターは読者のみならず同業の漫画家からも高く評価されている。『マンガ大賞2021』大賞、『このマンガがすごい！2021』オトコ編2位、『全国書店員が選んだおすすめコミック2021』2位、『第25回手塚治虫文化賞』新生賞など、多くの賞を受賞している。

勇者ヒンメルと共に魔王を倒したエルフの魔法使いフリーレン。彼らの冒険は10年もの長きに渡るものとなったが、1000年以上の時を生きるエルフにとってはほんのわずかな時間に過ぎなかった。
50年後、ヒンメルがあっさりと寿命で息を引き取った時、フリーレンは自分と比べてあまりに短い時間しか生きられない人間の儚さを改めて思い知り、苦楽を共にした彼のことを自分がほとんど何も知らないという事実に愕然とする。人とは何か、自分にとってのヒンメルとは何者だったのかを今度こそ理解するため、フリーレンは新たな仲間たちと共に旅立っていく。

葬送のフリーレン（FRIEREN）のネタバレ解説・考察まとめ - RENOTE [リノート]

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『葬送のフリーレン』とは、原作山田鐘人、作画アベツカサによる、“勇者による魔王退治”の後日談を描いた漫画作品。
勇者ヒンメルと共に魔王を倒したエルフの魔法使いフリーレン。その50年後、ヒンメルがあっさりと寿命で息を引き取った時、彼女は自分と比べてあまりに短い時間しか生きられない人間の儚さを知り、苦楽を共にしてきた彼のことを自分が何も知らないという事実に激しく後悔する。人とは何か、自分にとってのヒンメルとは何者だったのかを今度こそ理解するため、フリーレンは新たな仲間たちと共に旅立っていく。

「一級魔法使い試験」について

「一級魔法使い試験」とは、『葬送のフリーレン』で繰り広げられた名勝負の1つ。原作37話から60話にかけて描かれた長編エピソードで、一級魔法使い試験に臨む世界有数の魔法使いたちによる熾烈な戦いや様々な駆け引きを描いている。
旅の途中で一級魔法使いの資格を欲したエルフの魔法使いフリーレンは、弟子のフェルンと共にこの試験が開催されるオイサーストへと向かう。宮廷魔法使いデンケン、北部魔法部隊の隊長ヴィアベル、殺戮に忌避感を抱かない危険な魔法使いユーベル、精神操作魔法の専門家エーデルといった猛者たちもこれに参加し、時に争い、時に協力しながら試験を突破していく。

「一級魔法使い試験」までの経緯・因縁

大陸魔法協会の創立

物語の中で描かれた一級魔法使い試験が開催される半世紀ほど前、人間社会にゼーリエというエルフが現れる。彼女は神話にも等しい古の時代から生きてきた大魔法使いで、1000年近く前に取った弟子のフランメという人間の魔法使いから「自分の後を継いで、人間たちに魔法を教え広めてくれ」との遺言を託されていた。
方針の違いからフランメとケンカ別れしたゼーリエは、長いこと彼女の最期の願いを無視していた。しかし自身の孫弟子でもあるエルフのフリーレンが人間の勇者ヒンメルと共に魔王を倒したのを見て考えを改めたのか、今になって隠者然とした生活を捨て、人間の魔法使いを直接指導しようとし始めたのである。

ゼーリエは「全知全能の女神に近い」とまで称される圧倒的な力を示して才能ある魔法使いを集め、大陸魔法協会を発足。協会に所属する魔法使いを階級ごとに分けて分類し、最高位にあたる一級魔法使いには「自分の知る魔法を1つ、どんなものでも譲渡する」と触れ渡る。
一級魔法使いは危険な魔族がはびこる大陸北部への通行資格も兼ねており、これを求めて実力派の魔法使いが次々と一級魔法使い試験に挑戦。その最初の1人となったレルネンを皮切りに、ゲナウ、ブルグ、ゼンゼといった世界屈指の魔法使いたちがゼーリエの下に集うようになった。

異端の才女

2年前、オイサーストで二級魔法使い試験が開催された。その二次試験の試験官を担当したのは一級魔法使いのブルグで、防御に特化した魔法の使い手である彼を「一歩でも退かせれば合格」という内容だった。
幾重にも防御魔法が施された彼の外套を前に、何人もの試験参加者が挑戦しては失敗していく。そんな中、三級魔法使いになったばかりのユーベルという少女が、ブルグをあっさりと斬殺するという事態が発生する。

これを見ていた一級魔法使いのゼンゼは驚愕し、ユーベルを呼び出して失格を伝えると共に「どうやってブルグの防御を突破したのか」を尋ねる。大陸魔法協会の試験は参加者が命を落とすことも珍しくない過酷なもので、逆に試験官が犠牲になることも想定された事態ではあった。このためユーベルがブルグを殺したこと自体は不問とされるも、彼女がどうやってそれを成したのかはゼンゼにもまったく分からなかった。
ゼンゼの問いに、ユーベルは「布は切れるものだから切った」とあっさり回答する。いくら防御魔法で守りを固めようが、外套は布の塊でしかなく、それが切れるのは当たり前だというのがユーベルの認識だった。魔法の源はイメージの力ではあったが、実力ある魔法使いであればあるほどブルグの防御が堅牢であることは理解できるはずで、それを無視して自分の認識のまま彼を切り裂いたユーベルの才覚にゼンゼは戦慄。髪の毛を操る魔法を得意とする自分も、彼女には相性の問題で決して勝てないだろうとの予感を抱く。

「魂が眠る地」への旅路

かつて勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼンと共に魔王を討伐した英雄の1人にしてエルフの魔法使いフリーレンは、ヒンメルの死を経て自分と人間の生きる時間の違いを改めて思い知り、「人とは何か、自分にとってのヒンメルとは何者だったのか」を学ぶために新たな旅に出る。その中で人間の魔法使いの少女フェルンを弟子に取り、アイゼンの弟子であるシュタルクを仲間に加えたフリーレンは、大陸の北の果てにある「魂が眠る地」（オレオール）に行けば死者の魂と会話できることを知る。
「魂が眠る地」に行けばヒンメルともう1度話すことができるのではないかと考えたフリーレンは、この地を目的地として旅を続けていく。しかしそこはかつて魔王軍の本拠地があった場所でもあり、今でもその残党が勢力を保ち、資格の無い者は立ち入ることさえ禁止されていた。

現在その資格を出しているのは大陸魔法協会であり、目的地に向かうために一級魔法使いになる必要があると知ったフリーレンは、その試験が開催される魔法都市オイサーストへと向かう。
1000年以上の時を生きるフリーレンにとって、人間たちの組織の隆盛は「短い間に次々変わって面倒臭い」といった印象のものでしかなく、彼女は数百年前に使われていた力ある魔法使いの証明品である「聖杖の証」というものしか持っていなかった。このため現在の魔法使いとしての正規の資格を持つフェルンに試験への挑戦を任せるつもりだったが、たまたま試験への挑戦を受け付ける会場にいたレルネン一級魔法使いが聖杖の証の価値を理解していたことで、自身も参加者として登録される。

宮廷魔法使い最後の挑戦

大陸北部にある城塞都市ヴァイゼは、元魔王軍幹部「七崩賢」の生き残りであるマハトによってその土地と民ごと黄金の塊へと変えられ、黄金郷と呼ばれるようになっていた。マハトは「人間との共存」を本気で探求し、そのために魔族の持たない“悪意”や“罪悪感”という感情を学びたいと望み、ヴァイゼの領主の片腕として働いていた。しかしその領主が老境に差し掛かった時、「友人にも等しい仲となった領主を裏切れば、自分を心から信頼してくれるヴァイゼの民を滅ぼせば、自分にも“悪意”や“罪悪感”が分かるのではないか」と考え、これを実行したのだった。
結局マハトはヴァイゼを滅ぼしてもなお目的の感情を得ることができず、駆け付けたゼーリエや一級魔法使いたちによってヴァイゼごと封じられる。しかしマハトの力を完全に抑えることまではできず、黄金郷は少しずつ拡大していった。

ヴァイゼの領主の娘婿だったデンケンは、若い頃に妻と死別した後は故郷に戻らず、大陸北方のとある国で宮廷魔法使いとして働いていたため黄金郷に飲み込まれずにすんだ。「故郷を救いたいがマハトには勝てない」と冷静に判断したデンケンは、諦観と己への失望と決して消せない望郷の念を抱えつつ、ただ出世と自己研鑽に励み続けた。
やがて人生の最晩年に差し掛かったデンケンは、旧友のレルネンから「ヴァイゼから程近い場所にあった自分の生家が黄金郷に飲み込まれた」ことを知らされる。ここに至って「故郷に帰ろう、今は亡き妻の墓参りをしよう」と考えたデンケンは、封鎖されているヴァイゼに赴くために一級魔法使いの資格を得ようと考え、そのための試験が行われる魔法都市オイサーストを目指す。

「一級魔法使い試験」の展開・流れ

一次試験

今回の試験には、総勢57名の魔法使いが参加した。試験に参加する魔法使いたちは一堂に集められ、一次試験の試験官であるゲナウの指示で3人ずつのパーティー（チーム）を組むこととなる。「即席のパーティーで連携して目的を達成できるか、初めて出会う者同士で互いの力を活かすことができるか」を試すためのものだった。
主なパーティーの編成は以下の通りである。これ以外のパーティーについてはメンバーの名前が明かされておらず、詳細は不明。

第1パーティー：メトーデ、トーン、レンゲ
第2パーティー：フリーレン、ラヴィーネ、カンネ
第4パーティー：フェルン、ラント、ユーベル
第8パーティー：ヴィアベル、シャルフ、エーレ
第13パーティー：デンケン、リヒター、ラオフェン
第17パーティー：エーデル、ブライ、ドゥンスト

参加者たちに課せられた試験内容は、「パーティーに1人の脱落者もいない状態で、結界で閉ざされた一定の空間の中で制限時間までに隕鉄鳥（シュティレ）を確保する」というものだった。隕鉄鳥は魔力探知に引っかからず、一方で魔力に非常に敏感で、さらには極めて頑強かつとんでもなく素早いという特徴があり、捕まえるとなると非常に厄介な存在である。
試験会場を覆う結界はゼーリエが張ったもので、それほど手をかけたわけではないにしても森を丸ごと覆うほど広域かつ水も通さぬ頑強なものだった。このため内部では川の水も途切れてしまい、その注ぎ口となっていたいくつかの湖が普段より水かさが増す状態となっていた。

試験開始

試験が始まると、ほとんどのパーティーはそれぞれに森の中に散って隕鉄鳥の捜索に取り掛かる。第2パーティーのフリーレンは、共に試験に臨むこととなったラヴィーネとカンネがまだ実力的にも精神的にも未熟な魔法使いであることを見抜き、まずは彼女たちと交流して信頼関係を醸成しつつ、隕鉄鳥の性質の確認に時間を費やす。ラヴィーネは氷、カンネは水を操る魔法の使い手で、幼馴染でもある彼女たちの連携は見事なものではあったが、2人とも魔法学校を卒業したばかりで実戦経験はほとんど皆無だった。
一級魔法使い試験はもともと死者が出ることを前提とした過酷なもので、今回の試験会場となったこの森も狂暴な魔物が徘徊する危険な場所だった。初日の夜にはカンネが鳥型の魔法に襲われるも、フリーレンが「鳥を捕まえる魔法」という民間魔法を心得ていたことで事無きを得る。ここで「魔物であっても鳥型であればこの魔法で捕まえられる」との確信を得たフリーレンは、隕鉄鳥の確保のための作戦を思いつく。

同じ頃、第4パーティーは師であるフリーレンから「鳥を捕まえる魔法」を教わっていたフェルンのお陰もあって無事に隕鉄鳥を確保。しかし相応に実戦の経験のあるユーベルとラントは、「試験はここからが本番」と言ってフェルンに警戒を促す。「捕まえた隕鉄鳥をどこかに持っていく」のではなく「制限時間まで確保したままにする」ということは、“他のパーティーが捕まえた隕鉄鳥を奪ってもいい”ということに他ならず、これこそが一次試験の真の試練なのだった。
初日の夜から周囲には雨が降り始めていたが、ゼーリエの結界によってこれは森には届かず、フェルンたち第4パーティーは「試験参加者たちも水を求めて水辺に集まる、そこを離れて潜伏しよう」と話し合う。そんな中、フリーレンたちは森の中の最大の水場である湖を魔法で派手に凍らせて、「隕鉄鳥も生き物だからいつか水辺に近づいてくる、そこを待ち構えて捕まえよう」と考えていた他のパーティーの魔法使いたちを驚愕させる。

策略と混戦

最大の水場である湖で派手に魔法を使ったことで、隕鉄鳥は魔力の残滓を警戒して当面ここに近づかなくなる。「なんでこんなことを」と他のパーティーの面々が慌てふためく中、第13パーティーのデンケンは「第2パーティーには隕鉄鳥を確実に確保する作戦がある」と看破。その隙を突いて隕鉄鳥を奪取しようと、リヒター、ラオフェンと共に第2パーティーを密かに追跡する。
果たしてデンケンの予想は当たっており、フリーレンは「森の中の主だった水場の全てで派手に魔法を使い、“魔力の残滓の無い水場”へと隕鉄鳥を誘導し、そこで待ち構えて捕まえる」という作戦を進めていた。これは成功し、第2パーティーは首尾よく隕鉄鳥を確保した。

デンケンはここを狙ってフリーレンたちを急襲。高速で移動する魔法を得意とするラオフェンに隕鉄鳥を奪取させてそのまま離脱させ、追撃しようとする第2パーティーをデンケンとリヒターが足止めする。この時リヒターは「フリーレンがとんでもなく強いのは分かるが、残りの2人はようやく一人前になった程度でしかない」と判断し、ラヴィーネかカンネのどちらかを殺して第2パーティーを失格させようとデンケンに提案。しかしデンケンは「たかが試験で無為に若者の命を奪うべきではない。もっとも手強いフリーレンは自分が相手をするから、お前は残りの2人を戦えない程度に痛めつけろ」と言葉を返し、彼女が魔王討伐の英雄の1人であることを承知で敢然とフリーレンに挑む。
一方、なるべく水場を離れて潜伏しようとしていたフェルンたち第4パーティーは、第8パーティーの襲撃を受けていた。狙いはもちろん第4パーティーの確保した隕鉄鳥である。その豊富な戦闘経験から第8パーティーの事実上のリーダーを任されているヴィアベルは、フェルンたちに「隕鉄鳥を置いていけ」と要求する。

最後の大魔法使い

ユーベルが隕鉄鳥の譲渡を断ったことで、第4パーティーと第8パーティーは交戦。ヴィアベルは傭兵でもある北部魔法部隊の隊長としての力量を遺憾なく発揮し、ユーベルを追い詰める。しかし第8パーティーで技術と魔力においては最強の存在であるエーレを降したフェルンがここに駆け付け、「エーレを殺した」と宣言。これはただのハッタリに過ぎなかったが、確かめる術もないヴィアベルは「それが本当なら自分たちの失格は確定で、戦う意味は無くなった」と撤退する。
その後ヴィアベルは魔力を使い果たして立つこともできないエーレ、ラントに敗れて動けないシャルフを発見。「騙された」と悟るも、今さら取って返して単身戦うわけにもいかず、他のパーティーに攻撃される可能性を考えるとこの状況を放置することもできず、やむなくエーレとシャルフを運んで安全圏へと避難する。この時のヴィアベルの行動を見たエーレとシャルフは、「この男は言動は荒っぽいし、必要だと判断すれば殺しも厭わないが、意外と優しくてお人好しだ」と彼への信頼を強くしていった。

フリーレンとデンケンの戦いは、一次試験においてもっとも壮絶な激突となった。竜巻を起こし、これを炎に変えて敵を燃やし尽くすというすさまじい魔法を見せつけるデンケンだったが、フリーレンはこれさえも凌ぎ切って反撃。逆にデンケンを魔力切れに追い込む。この時ラオフェンは、フリーレンに魔力の残滓を探知されることを避けるためにまだ近くに潜伏しており、「デンケンが危ない」と思って咄嗟に飛び出した結果2人まとめてフリーレンに捕まってしまう。
この顛末を見たリヒターは、「デンケンが失敗した以上は仕方がない」とラヴィーネとカンネの殺害を決意。戦意は失わないまでも格上の魔法使いを相手に2人が戦慄する中、フリーレンが試験会場に張られた結界を解除。昨晩から降り続けていた雨が森に降り注ぐ。「水を操る魔法使いに地の利を与えた」とリヒターが焦る中、ラヴィーネとカンネはそれぞれの得意魔法の連携でこれを返り討ちにする。

世界最強の魔法使いであるゼーリエの結界が破られたこと、それを成したのが魔王討伐の英雄の1人であるフリーレンであることを知ったゲナウは、彼女を「最後の大魔法使い」と評して感嘆するのだった。

その後の顛末