魔人探偵脳噛ネウロ(松井優征)のネタバレ解説・考察まとめ

『魔人探偵脳噛ネウロ(まじんたんていのうがみねうろ)』とは、2005年2月から2009年4月まで週刊少年ジャンプで連載された漫画作品であり、それを原作とするアニメ作品。“謎”と呼ばれるエネルギーを主食とする魔人・脳噛ネウロ(のうがみ ねうろ)と、平凡な女子高生・桂木弥子(かつらぎ やこ)が探偵として様々な事件を解決していく。ストーリーを通して弥子の成長や、魔人の視点を通しての「人間の可能性」を描いていく。謎解きよりもその独特な画風や強烈なキャラクターが一部のファンにカルト的人を博している。

『魔人探偵脳噛ネウロ』の概要

『魔ひと探偵脳噛ネウロ』(概要内以下『ネウロ』)とは、2005年2月から2009年4月まで、週刊少年ジャンプで連載された少年漫画であり、それを原作としたアニメである。コミックスは全23巻、のちに文庫版が全12巻発売されている。作者は、実写映画化もされ大人気となった「暗殺教室」の作者でもある松井優征。
『赤マルジャンプ』2004 SUMMERと『週刊少年ジャンプ』2004年41号に同タイトルの読み切りを掲載。その読み切り版をベースとして、『週刊少年ジャンプ』2005年12号から2009年21号まで連載された。

本作はミステリー、謎解きものに該当するが、作者本人は「推理物の皮をかぶった単純娯楽漫画です」と、単行本1巻著者コメントにて語っている。そのコメントが指すように、基本的な構成は推理物のセオリー通り、事件が起き、主人公が現場に駆けつけ、謎を解き犯人を指し示す。そして犯人が動機や感情を吐露するというものだが、『ネウロ』においては読者へのヒントはほぼ皆無であり、ネウロの持つ『魔界777ツ能力(まかいななひゃくななじゅうななつどうぐ)』で解決するなど、魔人ならではの超能力を駆使することがほとんである。“謎”はそうした犯人が犯行(主に殺人)を行う際に練るトリックとほぼ同義であり、ネウロが事件を解決する、犯人が言い逃れできない状況にすることで“謎”を引きずり出し、それを喰うことができるようになるのである。

主人公・魔人脳噛ネウロ(まじんたんていのうがみねうろ)は“謎”を主食とする突然変異の魔人である。元々暮らしていた魔界の“謎”を全て食らいつくし、より良質な“謎”を求め人間界に降り立つ。時同じくしてもう一人の主人公である女子高生・桂木弥子(かつらぎ やこ)は、父親が殺されたことにより突然日常を奪われ、事件を覆う謎を憎んでいた。そこに“謎”の気配を感じたネウロが突如として現れ、混乱する弥子を尻目に自らの食事をする、つまり事件を解決していくのである。父親の事件をきっかけにともに行動するようになったネウロと弥子。ネウロは人間界で“謎”を食いたいが、魔人であるため目立った行動を避けたい。そのため弥子を奴隷人形改め傀儡(かいらい)とし、探偵として行動させる。そして探偵としての知名度を上げることで、事件解決の依頼が舞い込み、ネウロは食事に困らないようにするという狙いだ。そんなネウロの狙い通り、不本意ながら弥子の探偵としての知名度はどんどん上がり、事件解決の依頼が多くなる。そうした探偵として行動する弥子が、犯人や魔人と接するうちに人間として成長していくストーリーである。また弥子だけでなく、警察や犯人、作中登場する人間全体がネウロの影響で成長していく姿も描かれており、人間のしぶとさや強さを感じられる作品である。

『魔人探偵脳噛ネウロ』のあらすじ・ストーリー

父親の事件

ファミレスの事件

突然致死量の血を吐く男性。ネウロと弥子が解決した初めての事件。

突然父親を何者かに殺されてしまった女子高生・桂木弥子。好物のフルーツケーキさえ喉を通らず、解決を阻む事件の“謎”を憎み、泣いていた。そこへ「魔人」を名乗る脳噛ネウロが笑いながら現れる。「自分の親が殺されたから泣くのは当然」と言う弥子に、ネウロは「至近距離に美味しそうな“謎”があるのだから、笑わないのはおかしい」と言い放つ。そして、自分にとって唯一摂取できる食糧の“謎”を安定して喰べるため、弥子に手伝いを強制的に要求する。魔人であることを周りに悟られないよう身代わりが必要であるためだ。
供えてある花や父親の遺影を笑われ、突然、“謎”を喰べる手伝いを強制されて混乱する弥子。そんな弥子をよそに、「父親の事件の前に、前菜の“謎“を喰うからついてこい」と言い、ネウロは弥子を無理矢理ファミレスに連れ出す。到着したファミレスでネウロは「これから殺人事件が起きる」と宣言する。その言葉に驚き口にしていたコーヒーを噴き出す弥子。冗談だと思っている弥子の後ろで、毒を飲み致死量の血を吐き出すサラリーマン。ネウロの宣言通り殺人事件が起き、同時に“謎”が生まれる瞬間であった。

警察が到着し捜査を始めると、死んだサラリーマンの座っていた座席のソファから毒の瓶が発見される。そのため同席していた同僚が容疑者として扱われる。事件は同僚の犯行で解決かと思われたが、ネウロが弥子を警察めがけて投げつけ妨害する。「真犯人は他にいる」として、ネウロは弥子に探偵としての初仕事をさせる。弥子を「先生」と呼んで事件の真相を代弁し、体裁を保つ。ネウロは弥子の手を操り真犯人を指差させ、「犯人はお前だ」と言わせる。真犯人は被害者の席から遠い所に座っていた全く別の女性であった。ネウロは変装や不自然なほど長時間その席にいたことを問い詰める。そして敗北を悟った真犯人から“謎”が姿を現し、ネウロは人間界で初の食事を成功させるのであった。その場にいる人間には何も見えないが、弥子は「何かがこの場所から喪失した」と感じる。その後、“謎”を喰べられたことで女性は事件の動機を話し始めるが、ネウロはすでに一切の興味を失い、犯人の動機も満足に聞かずその場を立ち去る。弥子は一連の出来事に困惑するが、同時にネウロなら父親の事件を覆う“謎”を喰べてくれるのではないかと期待するのであった。

桂木誠一(かつらぎ せいいち)の事件

警察官でありながら被害者の悲しみの表情を見るために犯行に及ぶ竹田。

ファミレスでの“謎”を喰い終わったネウロは、約束通り弥子の父親が殺された事件の解決のため、弥子の自宅に戻る。自宅にいた警察官の笹塚(ささづか)と竹田(たけだ)そして母親の遥(はるか)に、ネウロは「弥子が30分ほどで事件を解決する」と宣言し、一同を驚かせる。ネウロは事件現場である誠一の部屋を物色し、『魔界777ツ能力(まかいななひゃくななじゅうななつどうぐ)』を駆使し情報を収集する。
そして宣言通りものの30分ほどで一同を部屋に集め謎解きを開始する。未だ半信半疑の一同と弥子。しかし真実を知りたい弥子はファミレスの時と同様、操られた指が差す犯人に向かって「犯人はお前だ」と言い放つ。その犯人は警察官の竹田であった。動機は「仕事柄見ることの多い悲壮感に満ちた被害者の顔を見たい」というものであり、一同は理解に苦しんだ。そしてその言葉の通り、悲壮感に満ちる弥子の顔を見ようとして、笹塚の静止を振り切る竹田。しかし、ネウロの“謎“の食事と魔力による精神干渉が行われ、竹田は弥子が見るも恐ろしい化け物になったと錯覚し、錯乱状態になってしまう。そして、“謎“を失った竹田は笹塚に逮捕され、事件は幕を下ろす。
弥子には平穏が訪れたかのように思えた。しかし、安定して“謎“を喰べたいネウロにとって、弥子は格好の隠れみのであるため、今後も探偵として行動するようネウロに命令されることとなる。

事務所強奪編

父親の事件以降、行動を共にするネウロと弥子。しかしネウロはいちいち弥子を呼び出し、待ち合わせに弥子が遅れることに不満を持っていた。今後の探偵活動を円滑に進めるためにも、ネウロは探偵事務所を構えることを思い付く。その思い付きに弥子は「事務所を構えるのは信用とかいろいろ大変だよ」と言うが、ネウロにはすでに目星をつけている物件があった。それは”謎”の気配がする雑居ビルの一室であった。

弥子が覗いてみるとそこには「早乙女金融(さおとめきんゆう)」という金融会社の事務所が存在しており、数人のチンピラが電話で暴力的な言葉を並べ取り立てをしていた。その中の一人、吾代 忍(ごだい しのぶ)に覗き見を気づかれてしまう。謝りながらその場を去ろうとする弥子だったが、ネウロがそれを許さず、さらには「ここで昔殺人事件があったでしょう」とチンピラたちに言い放つ。吾代を始め一同は驚く。それは事件が起きていたことは本当で、かつ犯人は捕まっておらず、警察にも届けていない秘密の情報であるためだった。社長の鷲尾(わしお)が情報の出どころをネウロに問いただすが、”謎”の話をするわけにもいかず、弥子が探偵として情報を掴んだとその場をごまかすネウロ。続けてネウロは、その事件を解決するから、事務所を明け渡すように言うのであった。突然のことに戸惑う吾代たちだったが、「解決できなかったら弥子を好きにしていい」というネウロの条件に乗り、事件の捜査を許可する。弥子はネウロが勝手に出した条件に不満を持ち、「解決できなかったらどうするの」と詰め寄る。しかしネウロは「吾輩は魔界の”謎”を喰いつくしたのだぞ」とこれ以上ない説得力で弥子を納得させた。
鷲尾は事件の内容をネウロたちに説明した。それは早乙女金融の前社長である早乙女 國春(さおとめ くにはる)が、首を切断されて殺されたというものだった。当時早乙女を除く金融会社の社員たちは近くの居酒屋で酒を飲んでいた。早乙女は「吾代のミスを精算したら行く」と鷲尾に言っていたが、いつまでも待っても店に現れなかった。それを不審に思った鷲尾が事務所に戻ると、早乙女の首が切断された状態で机に乗っていた。当時事務所の入り口、事務所内の窓には鍵がかかっており、完全な密室状態となっていた。早乙女は鷲尾にとってはいい上司であり、仕事を与えてくれた恩人でもあると鷲尾は話す。しかし吾代は「このまま事件が解決しなくてもいい」と不敵に笑い、鷲尾たちともめ始める。その状況を尻目にネウロは部屋を物色し、すぐにトリックをつきとめる。

ここでネウロは弥子を事務所に残し、トリックの再現に必要な物を揃えるため、1人買い物に出かけてしまう。取り残された弥子は怯えながらも、吾代から早乙女について話を聞く。頭の良くない吾代に腕っぷしだけでできる仕事、借金の取り立て方を一から教えたのは早乙女だった。やはり吾代にとってもいい兄貴分のような存在だった早乙女。その話を聞いた弥子は、吾代の印象を改める。事件の解決を望んでいないように振る舞うが、心では早乙女を想っている吾代に、弥子は「優しいんですね」と声をかける。その言葉に動揺する吾代だったが、弁解するよりも早くネウロが事務所に戻ってくる。
ネウロはワイヤーとロープを使い、早乙女を殺したトリックを再現した。強靭(きょうじん)なワイヤーは、人の首を切り落とせるほどであるが、細い形状から閉まっている窓のわずかな隙間からも回収できる。そのためドアや窓が閉まっていても犯行は可能であり、実行したのは鷲尾であることをネウロは突きつける。観念した鷲尾は豹変し、自分以外の人間がリーダーの座にいることが許せなかったことを話したのだ。それを聞き吾代は、「俺たちに仕事をくれた恩人を殺したのか」と鷲尾に詰め寄る。またしてもそうした状況に一切の興味を示さないネウロは、鷲尾の”謎”を喰い、同時に精神干渉も行い事務所から鷲尾を追い出すことに成功する。そしてネウロは吾代や他のチンピラたちに出ていくように優しく言うが、吾代たちが反抗したため実力行使に打って出る。強制的に追い出されたチンピラたちは路頭をさまようことになってしまった。ネウロは「今後使えるかもしれない」と言い、秘密裏に監視用の『魔界777ツ能力』を吾代に付ける。これにより吾代は今後ネウロの手足となり働くことになるが、まだそのことを吾代は知らないのであった。

事務所の強奪成功後、探偵事務所として本格的に運用するために、ネウロはコンピューターをいくつも使い情報収集をしていた。同時に宣伝用のウェブサイトも作り、順調に開業の準備を進めていた。すると壁の隙間から、三つ編みになっている女性の髪の毛が出てきていることに弥子は気づいた。さらにその髪の毛は動き出し、ペンを掴むこともできるため名前をホワイトボードに書き記した。名前を「あかね」と言い、昔事務所で起きた何らかの事件の被害者のようだった。壁には死体が埋まっているのだが、ネウロの放つ魔界の空気、「瘴気(しょうき)」に当てられ、髪の毛だけが中途半端に蘇生したのだ。ネウロは「いずれ貴様の”謎”も喰ってやるが、今は忙しいから事務所のスタッフとして働け」と命令し、あかねもそれを承諾した。
そうして事務所と奇妙なスタッフを手に入れたネウロと弥子は、「桂木弥子探偵事務所(かつらぎやこたんていじむしょ)」を開業した。

アヤ・エイジア事件

大勢のファンの前で歌うアヤ・エイジア。人間の脳を歌声のみで揺らすことができる。

弥子を探偵として売り出すための探偵事務所も手に入れた2人の前に、初めての依頼者がやって来る。それは日本人でありながら世界的な人気を博し、聴いた者を失神させてしまう歌声を持つ歌手、アヤ・エイジア。本名は逢沢 綾(あいざわ あや)。突然の世界的スターの依頼に取り乱す弥子は「警察に任せよう」と提案する。しかしネウロにとっては『探偵・桂木弥子』を売り出す大きなきっかけになるため、弥子の意向は無視し依頼を快諾する。
彼女の依頼は「2人のマネージャーが殺された事件を解決してほしい」というものであった。

1人目はアヤのデビューから彼女を支え続けていた音楽プロデューサー・台島。世界7ヵ国を回るワールドツアーのファイナルである東京公演当日、アヤはステージを終えて楽屋に戻った際、首を吊って死んでいる台島を発見する。警察の捜査により事件性はないと判断され、自殺と処理された。
2人目はアヤが新人の頃からの付き合いである同じ事務所の社員・大泉という女性。台島の事件以降、2年間音楽活動を休止していたアヤが、2年ぶりとなるアルバムのレコーディングを終え楽屋に戻ると、大泉は台島同様、首を吊って死んでいた。そして事件の処理も同様に自殺とされた。2人も立て続けに首を吊って死んでおり、そのどちらにも事件性がないことに違和感を感じたアヤが、5年経った今になり弥子たちに捜査を依頼しに来たのであった。

捜査を進めると、アヤには熱狂的なファンが多数おり、その中からストーカーになった男の存在が浮かび上がる。そしてネウロの提案により犯人をおびき寄せる作戦が実行される。アヤの自宅であるマンションの駐車場で、笹塚とその後輩石垣(いしがき)による待ち伏せを行い、ストーカーが現れたところを逮捕することに成功する。確保されてもなお男はアヤへの深い執着を見せ、「俺が縛ってあげる」という言葉は2人のマネージャーの絞殺をほのめかしていた。石垣だけでは取り押さえられないため、笹塚はストーカーの顔面に蹴りを一発放ち大人しくさせる。笹塚の、普段の落ち着いた雰囲気からはかけ離れた俊敏な動きに、石垣は感動した。事件はこのストーカーによる犯行として解決したかに思えた。しかし弥子が違和感を感じた「私は世界にひとりきり」というアヤの言葉が、今回の事件の真相にもつながっていた。ストーカー男の逮捕後、事務所で1人、ネットを使って調べを進める弥子は、トリックこそ解けずとも「アヤが犯人である」という確信を得る。そして弥子は、ネウロに「ゾウリムシからワラジムシへの昇格」をもらい、2人はアヤの元に向かう。
ネウロは弥子の知名度を上げるためにも、アヤが出演する音楽番組の生放送中に弥子を割り込ませる。久しぶりのテレビ出演で会場、テレビ放送ともに多くの人が視聴している場で、弥子はアヤを指差し「犯人はお前だ」と告げる。アヤの殺人の動機は「ひとりになりたかった」というものだった。どんな時も優しく接してくれた台島、大泉の温かさが逆に邪魔となり、音楽活動においてスランプの境地に陥ってしまったからだった。「ひとりでないと聞いたものの脳を揺さぶれない」と悩んでしまったアヤは、好きで大事だからこそ2人を殺害してしまったのである。大事な人を失う辛さを知る弥子は、ネウロの食事後も涙ながらにアヤにその悲しさを訴える。その涙を受け、アヤは「あなたに頼んでよかった」と笑顔でその場を立ち去るのであった。
そしてネウロの思惑通り弥子の知名度は鰻登りに増し、多くの依頼者はもちろん、メディアの取材も数多く受けるようになった。その中でも興味本位のメディアを弾くため、事務所強奪時に監視の目をつけておいた吾代を強制的に事務所に呼び、煤払いをさせるのであった。

怪盗X(かいとう さい)編

アヤ・エイジアの事件後、メディアの取材も多く落ち着かない日々を過ごしていた弥子たち。そのブームがひと区切り着いた頃、1人の依頼者が事務所を訪れる。依頼者は堀口 雄三(ほりぐち ゆうぞう)という会社員で、毎夜遅くに外出する息子の明(あきら)の行動を調査し、報告してほしいというものであった。アヤの事件に比べ小規模なものであったが、ネウロは快諾する。それはそこに“謎”の気配を感じるからであった。

時同じくして、竹田の事件以降、弥子を気にかけている刑事・笹塚はある出版社に来ていた。そこには『赤い箱』があり、それは世界的な知名度を誇る大泥棒『怪盗X(かいとう さい)』の仕業によるものである。Xは世界中で芸術品を盗んでおり警察も全く手がかりを掴めていない怪盗であるが、その名が知られている理由は他にある。それは盗みを行った現場に、人間1人をドロドロの液状にして、『赤い箱』に詰めて置いておくという恐ろしいものであるためだ。箱はガラスで作られており、その重さはガラスの分を引くと中にいるであろう人間の重さとピッタリ一致する。その悪魔のような所業と、公然と犯行を繰り返すにもかかわらず誰もその正体を知らないことから、『怪物強盗』を略した『怪盗』が付いた。そして『未知』を表す『X(エックス)』と『不可視』を表す『Invisible(インビジブル)』の頭文字を取り、繋げて読んで「怪盗X(かいとう さい)」と呼ばれるようになったのだ。警察官の国家試験前日に、家族を何者かに惨殺された笹塚は、その犯行をXによるものだと思っていた。そのためこの事件を足がかりに、逮捕までつなげたいと思うようになる。
一方ネウロたちは魔界能力を駆使し、明の尾行を行っていた。明の後を追うと、彼は使われていない廃墟へと入っていった。そこではペットとして飼われていた犬や猫などの動物が、『赤い箱』にされていた。その光景に思わず弥子は声を上げてしまい、尾行は失敗してしまう。その後、警察が現場に駆けつけたため、筒井(つつい)刑事に事の顛末を説明する弥子。すると、現場の状況を見て間違いなく『怪盗X』の犯行だと筒井は結論づける。そして、世界の警察が追い求めるXへの手がかりを掴んだとして、弥子たちは警察と協力することになるのであった。

一時は偽装したアリバイで警察の捜査を振り切った明であるが、ネウロたちの調査によってアリバイは崩され、現場を抑えられてしまう。現場の中心には、明の奇行を心配し声をかけていた祖母が、ナイフを心臓に突き刺され横たわっていた。それまで動物のみをターゲットにしていた明だが、ついに人間を殺してしまったのだ。「お前はXか?」と問う筒井刑事に対し、明はXへの憧れを喜びと共に吐露する。人を殺しても嬉しそうな態度を崩さない明に対し怒りを覚える弥子や筒井に反して、ネウロは明への興味を失っていた。それはXの正体を見破っていたからである。「正体を現せ」と言うネウロに対し、明は困惑し「ここにいる俺がその正体だ」と言うが、突然死んだはずの祖母の口から血が飛び出してきた。そしてゆっくりと体を起こし、祖母の老いた体は若い体へと変身する。その場にいたものはネウロ以外、誰も声を出すことができなかった。

死んだと思われた祖母が突然起き出し、怪盗Xに戻っていく。

怪盗Xはその突然変異の細胞を駆使し、細胞ごと他人に変身することで人の目を欺き続けていたのである。今回は体のサイズや性別を変え、明の祖母として生活していた。信じられない光景を目にするも、憧れ続けていたXが目の前にいることに興奮する明。「自分を一緒に連れていってくれ」とXに言う明だったが、Xは即刻却下し明を殺害する。そして、明の自分への憧れに敬意を表し、形だけでも『赤い箱』にするのであった。それを目の当たりにした弥子は恐怖のどん底へと叩き落とされる。明を殺害後、特に目立った抵抗をしなかったXは、筒井によりあっさりと逮捕されてしまう。当然ネウロは「先生が細胞の動きなどを見抜き自分に報告していた」という体裁で、事件の説明をする。しかし、手錠をかけられ連れていかれるXは、「あんただろ、俺の正体見破ったの」とネウロに囁くのであった。その後、警察署までの道中でXは筒井刑事を始め、同乗していた警察官を全員殺害する。そして相棒のアイに片づけを頼み、「ネウロに会いに行く」と告げる。

明の事件後、事務所でネウロと話していた弥子はタイミングを見計らって凶器を手にし、ネウロの背後に近づく。しかしネウロは「本物が出せるのは食い気だけ」と言い、弥子から発せられる殺気で本当の正体を見破っていた。正体がバレたXは、「自分の正体を知るために、人間を箱にして観察する」とネウロに説明する。X自身なぜ細胞の変身ができるのかわかっておらず、他者や人の想いが残りやすい芸術品を観察することで「自分の正体(なかみ)」を見つけるのが目的である。ネウロが人間ではないことを見破っているXは、「あんたのような化け物の中身を見れば、おれの正体もきっとわかるはずだ」とネウロに言い、いつか中身を見る、つまり殺すことを予告する。反対にネウロは自身が持つ『“謎”への食欲』こそが「自分の正体である」とXに言うのだった。ネウロはXのように自分がどんな存在であるかに興味はなく、当然Xの「ネウロを殺す」ことは承服しない。そしていつかXを打ち負かしその”謎”を喰うことをXに告げる。これによりネウロの中身を見たいXと、Xが生み出す”謎”を喰うネウロの奇妙な宣戦布告となったのだ。Xは「誰かになりすましてあんたを狙う」とネウロに言い残し、事務所を去った。

知らないところでXが自分に変身していたことを知った弥子は恐怖を感じる。いつどこで誰になっているかもわからないX。加えて人間を一瞬で殺せる怪力。それに対する魔人のネウロという怪物同士の異次元な領域に無力感を持ってしまう。そして「自分では力になれない」と言い、探偵を辞めることをネウロに告げる。しかしネウロは「人の悪意から生まれる“謎”も、全身を変身させる細胞も、全ては人間の可能性だ」と言い、人間の持つ可能性に期待していることを弥子に伝える。ネウロに「ボロ雑巾にはボロ雑巾の可能性がある」と言われた弥子は、腹を立てながらも自分には自分の可能性があることに気づかされる。そしてそれを信じる気持ちを持つことで無力感から立ち直る。そうして弥子は再び探偵として活動することを決意する。

電人HAL(でんじんはる)編

序章

見た人間の脳に異変をもたらす電子ドラッグ。

吾代から流れてくる“謎”の情報をもとに、ネウロと弥子は北関東連続放火事件を追っていた。いつものように放火犯を追い詰める2人であったが、犯人の様子がおかしいことに気づく。いつもは狂気とも取れるほどの強い悪意を持って犯人は犯行に及ぶのだが、なぜか放火犯は「なぜ火をつけたくなったかわからない」と言うのである。その放火現場には、事情聴取の時には場を騒ぎ立てないよう身分を隠していた警視庁の情報犯罪課に属する篚口結也(ひぐち ゆうや)が居合わせており、自分が追っている事件と内容が似ていると言う。犯人逮捕後本庁に戻った篚口は笹塚、そして2人の上司にあたる笛吹(うすい)、筑紫(つくし)に報告し、「ネット上に何かいる」と告げる。それは見たものの深層心理にある犯罪欲求を無理やりこじ開け、犯罪に走らせるというもので、篚口は「電子ドラッグ(でんしどらっぐ)」と名づけていた。その制作者は錯刄大学(さくばだいがく)で脳科学を研究している春川英輔(はるかわ えいすけ)という人物だった。
春川は「ある目的」のために電子ドラッグを作成し、同時に第2の自分をコンピューター内に別人格として据え置き、自分の研究室内でのみ研究を進めていた。しかしコンピューター内の春川は計算能力が人間以上であるため、自分たちの目的は人間春川の寿命内には叶えられないと判断した。そして自らを「電人HAL」と名乗り電子ドラッグを一般社会にばら撒き、人間春川には無断で独自に研究を進めていた。その行動が人間春川に知られてしまうが、電子ドラッグにより洗脳した大学の学生を利用し命を奪うことに成功する。

ネウロは弥子から得た電子ドラッグのわずかな情報を頼りに、「魔界777ツ能力」を使いコンピューター内を捜索していた。そしてHALのいる場所まで辿り着きはするが、その圧倒的なセキュリティによって魔人の能力すら通じず退散を余儀なくされる。その後人間春川の足跡を追うことにするが、すでに春川は亡くなっており洗脳された学生から攻撃を受ける。なんとか攻撃を逃れ事務所に戻った弥子たちだが、今度は工事現場の鉄球が事務所を襲う。ネウロは弥子を避難させ、自身もケガ一つ負っていない状態ではあったが、電人HALのコンピューター内・外に持つ大きな力を目の当たりにすることとなる。

スフィンクスとの戦い

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週刊少年ジャンプ連載作品で、2007年1号以降に終了した作品をすべて順に紹介します。『週刊少年ジャンプ』は、集英社が発行する日本の週刊少年漫画雑誌。略称は『ジャンプ』『WJ』 。1968年に『少年ジャンプ』として月2回刊誌として創刊し、翌1969年より週刊となり『週刊少年ジャンプ』に改名した。

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中間管理録トネガワ(アニメ全話)のネタバレ解説まとめ

中間管理録トネガワ(アニメ全話)のネタバレ解説まとめ

「中間管理録トネガワ」とは言わずと知れた「カイジ」作中に登場する宿敵、利根川幸雄のスピンオフアニメ作品である。 大勢の部下(黒服)達を束ねる幹部でありながら、帝愛グループ会長である兵藤和尊のご機嫌を常に最も身近で気にしなければならない、いわば中間管理職に位置する男、利根川幸雄の苦悩と葛藤を描いた物語である。

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中間管理録トネガワ(第1話『始動』)のあらすじと感想・考察まとめ

中間管理録トネガワ(第1話『始動』)のあらすじと感想・考察まとめ

「賭博黙示録カイジ」において主人公カイジと出会う前、日々の業務と会長のご機嫌を伺いながら仕事をこなす利根川を会長・兵藤和尊は突然呼び出し、自身の退屈を紛らわせる企画を利根川に命じる。週末の予定がなくなることに苦悩しながらも1、1人のメンバーと共に第一回の会議に利根川は臨んでいく。 今回は「中間管理録トネガワ」第1話『始動』の内容(あらすじ・ストーリー)と感想・考察を紹介。

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似てる!?暗殺教室、実写キャストをアニメ・原作絵と比較してみた【山田涼介ほか】

似てる!?暗殺教室、実写キャストをアニメ・原作絵と比較してみた【山田涼介ほか】

月の七割を破壊した最強生物「殺せんせー」と、殺せんせー暗殺の任務を負った椚ヶ丘中学校の落ちこぼれ「3年E組」の生徒たちの交流を描いた『暗殺教室』。原作の大ヒットを受けてアニメ化・実写映画化されており、ファンからは「似てる!」との声も上がっている。本記事では『暗殺教室』の実写版キャストを、アニメ及び原作の画像と共に紹介する。

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【暗殺教室】クライマックスに向けておさらい!作中の伏線まとめ(ネタバレあり)

【暗殺教室】クライマックスに向けておさらい!作中の伏線まとめ(ネタバレあり)

大人気作品の『暗殺教室』。アニメ化や実写映画化もされたことで話題になりましたよね。漫画はコミックスで全21巻あり、作中には様々な伏線が登場します。この記事では、そんな伏線や殺せんせーの正体、ラスボスが誰かについてまとめました。重要なネタバレを含んでいるので、まだ作品を読んでいない方はくれぐれもご注意を!

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【中二半】「暗殺教室」3年E組の生徒たちの神がかったコードネームまとめ【ジャスティス】

【中二半】「暗殺教室」3年E組の生徒たちの神がかったコードネームまとめ【ジャスティス】

アニメ化、実写映画化されたことで大きな話題になった『暗殺教室』。その主要人物たちが集まる3年E組には、神がかったコードネームを持つ生徒がいます。この記事では、そんな彼ら/彼女らについてまとめました。これだけの登場人物のコードネームを1人1人考えるなんて、大変だっただろうなぁ…。

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深夜枠放送名作アニメの悲喜こもごも

深夜枠放送名作アニメの悲喜こもごも

「何で深夜枠…何ですぐ終わる…」そう思わせる名作漫画「アニメ化作品」の数々。規制のせいか!?などと短絡的に思ってしまいましたが、カンタンに録画で見られる時代です。それに名作はアニメになったって名作…とは限らないのが、原作ファンにとっては哀しいところ。せっかく色や音、動きがつくのだから原作並みのクオリティで突っ走ってほしいものです。

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