魔人探偵脳噛ネウロ(松井優征)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『魔人探偵脳噛ネウロ(まじんたんていのうがみねうろ)』とは、2005年2月から2009年4月まで週刊少年ジャンプで連載された漫画作品であり、それを原作とするアニメ作品。“謎”と呼ばれるエネルギーを主食とする魔人・脳噛ネウロ(のうがみねうろ)と、平凡な女子高生・桂木弥子(かつらぎやこ)が探偵として様々な事件を解決していく。ストーリーを通して弥子の成長や、魔人の視点を通しての「人間の可能性」を描いていく。謎解きよりもその独特な画風や強烈なキャラクターが一部のファンにカルト的人気を博している。

『魔人探偵脳噛ネウロ』の概要

『魔人探偵脳噛ネウロ』(概要内以下『ネウロ』)とは、2005年2月から2009年4月まで、週刊少年ジャンプで連載された少年漫画であり、それを原作としたアニメである。コミックスは全23巻、のちに文庫版が全12巻発売されている。作者は、実写映画化もされ大人気となった「暗殺教室」の作者でもある松井優征(まついゆうせい)。
『赤マルジャンプ』2004 SUMMERと『週刊少年ジャンプ』2004年41号に同タイトルの読み切りを掲載。その読み切り版をベースとして、『週刊少年ジャンプ』2005年12号から2009年21号まで連載された。

本作はミステリー、謎解きものに該当するが、作者本人は「推理物の皮をかぶった単純娯楽漫画です」と、単行本1巻著者コメントにて語っている。そのコメントが指すように、基本的な構成は推理物のセオリー通り、事件が起き、主人公が現場に駆けつけ、謎を解き犯人を指し示す。そして犯人が動機や感情を吐露するというものだが、『ネウロ』においては読者へのヒントはほぼ皆無であり、ネウロの持つ『魔界777ツ能力(まかいななひゃくななじゅうななつどうぐ)』で解決するなど、魔人ならではの超能力を駆使することがほとんである。“謎”はそうした犯人が犯行(主に殺人)を行う際に練るトリックとほぼ同義であり、ネウロが事件を解決する、犯人が言い逃れできない状況にすることで“謎”を引きずり出し、それを喰べることができるようになるのである。

ネウロは人間界で“謎”を喰いたいが、魔人であるため目立った行動を避けたい。そのため桂木弥子(かつらぎやこ)を傀儡(かいらい)とし、探偵として行動させる。そして探偵としての知名度を上げることで、事件解決の依頼が舞い込み、ネウロは食事に困らないようにするという狙いだ。そんなネウロの狙い通り、不本意ながら弥子の探偵としての知名度はどんどん上がり、事件解決の依頼が多くなる。そうした探偵として行動する弥子が、犯人や魔人と接するうちに人間として成長していくストーリーである。また弥子だけでなく、警察や犯人、作中登場する人間全体がネウロの影響で成長していく姿も描かれており、人間のしぶとさや強さを感じられる作品である。

『魔人探偵脳噛ネウロ』のあらすじ・ストーリー

ネウロと弥子の出会い

突然父親を何者かに殺されてしまった女子高生・桂木弥子(かつらぎやこ)。好物のフルーツケーキさえ喉を通らず、解決を阻む事件の“謎”を憎み、泣いていた。そこへ「魔人」を名乗る脳嚙ネウロ(のうがみねうろ)が、「至近距離に美味しそうな“謎”があるのだから、笑わないのはおかしい」と言いながら現れる。そして、自分にとって唯一摂取できる食糧の“謎”を安定して喰べるため、弥子に手伝いを強制的に要求する。魔人であることを周りに悟られないよう身代わりが必要であるためだ。
動揺する弥子をよそに、「父親の事件の前に、前菜の“謎“を喰うからついてこい」と言い、ネウロは弥子を無理矢理ファミレスに連れ出す。到着したファミレスでネウロは「これから殺人事件が起きる」と宣言する。冗談だと思っている弥子の後ろで、毒を飲み致死量の血を吐き出すサラリーマン。ネウロの宣言通り殺人事件が起き、同時に“謎”が生まれる瞬間であった。

警察が到着し捜査を始めると、同席していた同僚が容疑者として扱われる。事件は同僚の犯行で解決かと思われたが、ネウロが弥子を警察めがけて投げつけ妨害し、弥子に探偵としての初仕事をさせる。ネウロは弥子の手を魔力で操り真犯人を指差させ、「犯人はお前だ」と言わせる。真犯人は被害者の席から遠い所に座っていた全く別の女性であった。ネウロは変装や不自然なほど長時間その席にいたことを問い詰める。そして敗北を悟った真犯人から“謎”が姿を現し、ネウロは人間界で初の食事を成功させるのであった。“謎”を喰べられたことで女性は事件の動機を話し始めるが、ネウロはすでに一切の興味を失い、犯人の動機も満足に聞かずその場を立ち去る。弥子は一連の出来事に困惑するが、同時にネウロなら父親の事件を覆う“謎”を喰べてくれるのではないかと期待するのであった。

ネウロは約束通り父親の事件解決のため、弥子の自宅に戻る。自宅にいた警察官の笹塚(ささづか)と竹田(たけだ)そして母親の遥(はるか)に、ネウロは「弥子が30分ほどで事件を解決する」と宣言し、一同を驚かせる。ネウロは事件現場である桂木誠一(かつらぎせいいち)の部屋を物色し、『魔界777ツ能力(まかいななひゃくななじゅうななつどうぐ)』を駆使し情報を収集する。
そして宣言通りものの30分ほどで一同を部屋に集め謎解きを開始する。未だ半信半疑の一同と弥子。その犯人は警察官の竹田であった。動機は「仕事柄見ることの多い悲壮感に満ちた被害者の顔を見たい」というものであり、一同は理解に苦しんだ。その言葉の通り、悲壮感に満ちる弥子の顔を見ようとして、笹塚の静止を振り切る竹田。しかし、ネウロの“謎“の食事と魔力による精神干渉が行われ、竹田は弥子が見るも恐ろしい化け物になったと錯覚し、錯乱状態になってしまう。そして、“謎“を失った竹田は笹塚に逮捕され、事件は幕を下ろす。
弥子には平穏が訪れたかのように思えた。しかし、安定して“謎“を喰べたいネウロにとって、弥子は格好の隠れみのであるため、今後も探偵として行動するようネウロに命令されることとなる。

アヤ・エイジア事件

弥子を探偵として売り出すための探偵事務所を、元々サラ金の事務所だったものを強奪し手に入れた弥子とネウロ。その時出会っていた会社スタッフの1人である、チンピラの吾代忍(ごだいしのぶ)を新たな下僕として確保していた。そんな折、事務所に初めての依頼者がやって来る。それは日本人でありながら世界的な人気を博し、聴いた者を失神させてしまう歌声を持つ歌手、アヤ・エイジアであった。本名は逢沢綾(あいざわあや)。突然の世界的スターの依頼に取り乱す弥子だが、ネウロにとっては『探偵・桂木弥子』を売り出す大きなきっかけになると考え、弥子の動揺を無視し依頼を快諾する。
アヤの依頼は「2人のマネージャーが殺された事件を解決してほしい」というものであった。

被害者はアヤのデビューから彼女を支え続けていた音楽プロデューサー・台島(だいじま)と、台島の死後マネージャーとして支えてくれた大泉(おおいずみ)である。どちらもアヤがライブやレコーディングを終えて楽屋に戻ると首を吊って死亡しているのが発見されている。警察には自殺と結論づけられたが、事件性がないことに違和感を感じたアヤが、5年経った今になり弥子たちに捜査を依頼しに来たのであった。

捜査を進めると、アヤには熱狂的なファンが多数いた。その中からストーカーになった男の存在が浮かび上がり、ネウロの策略により逮捕される。確保されてもなお男はアヤへの深い執着を見せ、被害者2人の絞殺をほのめかしていた。事件はこのストーカーによる犯行として解決したかに思えたが、弥子はネットを使って調べを進め、感覚的に「アヤが犯人である」という確信を得る。ネウロの賛同を得て、アヤの元に向かうのだった。

アヤは数年ぶりに地上波の歌番組に生出演していた。そこでネウロは弥子の知名度を上げるためにも、アヤの歌唱直後に弥子を割り込ませ「犯人はお前だ」と告げる。アヤは動揺もせず、事件の主犯が自分であることを認めた。どんな時も優しく接してくれた台島、大泉の温かさが逆に邪魔となり、音楽活動においてスランプの境地に陥ってしまい、好きで大事だからこそ2人を殺害してしまったのである。大事な人を失う辛さを知る弥子は、ネウロの食事後も涙ながらにアヤにその悲しさを訴える。その涙を受け、アヤは「あなたに頼んでよかった」と笑顔でその場を立ち去るのであった。

そしてネウロの思惑通り弥子の知名度は鰻登りに増し、多くの依頼者はもちろん、メディアの取材も数多く受けるようになった。その中でも興味本位のメディアを弾くため、下僕として確保していた吾代を強制的に事務所に呼び、煤払いをさせるのであった。

怪盗X(かいとう さい)編

アヤ・エイジアの事件後、メディアの取材も多く落ち着かない日々を過ごしていた弥子たち。そのブームがひと区切り着いた頃、1人の依頼者が事務所を訪れる。依頼者は堀口雄三(ほりぐちゆうぞう)という会社員で、毎夜遅くに外出する息子の明(あきら)の行動を調査し、報告してほしいというものであった。アヤの事件に比べ小規模なものであったが、ネウロは快諾する。それはそこに“謎”の気配を感じるからであった。

時同じくして、竹田の事件以降、弥子を気にかけている刑事・笹塚はある出版社に来ていた。そこには『赤い箱』があり、それは世界的な知名度を誇る大泥棒『怪盗X(かいとうさい)』の仕業によるものである。Xは世界中で芸術品を盗んでおり警察も全く手がかりを掴めていない怪盗であるが、その名が知られている理由は他にある。それは盗みを行った現場に、人間1人をドロドロの液状にして、『赤い箱』に詰めて置いておくという恐ろしいものであるためだ。その悪魔のような所業と、公然と犯行を繰り返すにもかかわらず誰もその正体を知らないことから、『怪物強盗』を略した『怪盗』が付いた。そして『未知』を表す『X(エックス)』と『不可視』を表す『Invisible(インビジブル)』の頭文字を取り、繋げて読んで「怪盗X(かいとうさい)」と呼ばれるようになったのだ。警察官の国家試験前日に、家族を何者かに惨殺された笹塚は、その犯行をXによるものだと思っていた。

一方ネウロたちは魔界能力を駆使し、明の尾行を行っていた。明の後を追うと、彼は使われていない廃墟へと入っていった。そこではペットとして飼われていた犬や猫などの動物が、『赤い箱』にされていた。その光景に思わず弥子は声を上げてしまい、尾行は失敗してしまう。その後警察が現場に駆けつけ、筒井(つつい)刑事は現場の状況を見て間違いなく『怪盗X』の犯行だと結論づける。そして、弥子たちは警察と協力することになるのであった。

一時は偽装したアリバイで警察の捜査を振り切った明であるが、ネウロたちの調査によってアリバイは崩され、現場を抑えられてしまう。現場の中心には、明の奇行を心配し声をかけていた祖母が、ナイフを心臓に突き刺され横たわっていた。明はついに人間を殺してしまったのだ。「お前はXか?」と問う筒井刑事に対し、明はXへの憧れを喜びと共に吐露する。人を殺しても嬉しそうな態度を崩さない明に対し怒りを覚える弥子や筒井に反して、ネウロは明への興味を失っていた。それはXの正体を見破っていたからである。ネウロの「正体を現せ」という言葉に、突然死んだはずの祖母の口から血が飛び出してきた。そしてゆっくりと体を起こし、祖母の老いた体は若い体へと変身する。

怪盗Xはその突然変異の細胞を駆使し、明の祖母として生活していた。信じられない光景を目にするも、憧れ続けていたXが目の前にいることに興奮する明。しかしXに『赤い箱』の目的をわかっていないことを理由に殺されてしまう。それを目の当たりにした弥子は恐怖のどん底へと叩き落とされる。明を殺害後、Xは筒井によりあっさりと逮捕されてしまう。当然ネウロは「先生が細胞の動きなどを見抜き自分に報告していた」という体裁で、事件の説明をする。しかし、手錠をかけられ連れていかれるXは、ネウロが見破っていたことをわかっていた。警察署までの道中でXは、パトカーに同乗していた警察官を全員殺害する。そして相棒のアイに片づけを頼み、「ネウロに会いに行く」と告げる。

明の事件後、事務所でネウロと話していた弥子はタイミングを見計らって凶器を手にし、ネウロの背後に近づく。しかしネウロは正体を見破っていた。正体がバレたXは、「自分の正体を知るために、人間を箱にして観察する」とネウロに説明する。X自身なぜ細胞の変身ができるのかわかっておらず、他者や人の想いが残りやすい芸術品を観察することで「自分の正体(なかみ)」を見つけるのが目的である。ネウロが人間ではないことを見破っているXは、いつか中身を見る、つまり殺すことを予告する。反対にネウロは自身が持つ『“謎”への食欲』こそが「自分の正体だ」とXに言うのだった。ネウロの中身を見たいXと、Xが生み出す”謎”を喰うネウロの奇妙な宣戦布告となったのだ。

電人HAL(でんじんはる)編

吾代から流れてくる“謎”の情報をもとに、ネウロと弥子は北関東連続放火事件を追っていた。いつものように放火犯を追い詰める2人であったが、なぜか放火犯は「なぜ火をつけたくなったかわからない」と言うのである。その放火現場には、事情聴取の時に場を騒ぎ立てないよう身分を隠していた、警視庁の情報犯罪課に属する篚口結也(ひぐちゆうや)が居合わせていた。そして今回の放火事件は自分が追っている事件と内容が似ていると言う。犯人逮捕後本庁に戻った篚口は笹塚、そして2人の上司にあたる笛吹(うすい)、筑紫(つくし)に「ネット上に何かいる」と報告する。それは見たものの深層心理にある犯罪欲求を無理やりこじ開け、犯罪に走らせるというもので、篚口は「電子ドラッグ(でんしどらっぐ)」と名づけていた。その制作者は錯刄大学(さくばだいがく)で脳科学を研究している春川英輔(はるかわえいすけ)という人物だった。
春川は「ある目的」のために電子ドラッグを作成し、同時に第2の自分をコンピューター内に別人格として据え置き、自分の研究室内でのみ研究を進めていた。しかしコンピューター内の春川は計算能力が人間以上であるため、自分たちの目的は人間春川の寿命内には叶えられないと判断した。そして自らを「電人HAL」と名乗り電子ドラッグを一般社会にばら撒き、人間春川には無断で独自に研究を進めていた。その行動が人間春川に知られてしまうが、電子ドラッグにより洗脳した大学の学生を利用して、春川の命を奪うことに成功する。

ネウロは弥子から得た電子ドラッグのわずかな情報を頼りに、「魔界777ツ能力」を使いコンピューター内を捜索していた。そしてHALのいる場所まで辿り着きはするが、その圧倒的なセキュリティによって魔人の能力すら通じず退散を余儀なくされる。その後人間春川の足跡を追うことにするが、すでに春川は亡くなっており洗脳された学生から攻撃を受ける。なんとか攻撃を逃れ事務所に戻った弥子たちだが、電人HALのコンピューター内・外に持つ大きな力を目の当たりにすることとなる。

2度に渡ったネウロとHALのコンピューター内での攻防は、どちらもHALの圧倒的力量を前に、ネウロが敗北で終焉する。HALは魔人に対して勝利を収めたことにより大きな自信を持つ。そして自らを守るコンピューターセキュリティを3つに分け、破壊されるリスクを分散させていた。ネウロは弥子を引き連れHALに洗脳された手下と戦闘を繰り広げ、次々にセキュリティを破壊していく。HALの目的は「1と0の間で生きること」であった。しかしその言葉だけではHALの目的の全容は不透明であるため、弥子は理解できずにいた。

そしてHALは米国から日本に送られた原子力空母を洗脳し、セキュリティを完璧なものにした。さらに外部のセキュリティが破壊された時の事を想定し、最終の防御策としてパスワード入力を準備した。HALの目的すら理解できない弥子にとって、そのパスワードも検討がつかない。しかしネウロは人間的な思考が深く絡むパスワードを、弥子に解かせるよう指示する。

HALから与えられたヒントはパスワード入力欄に「/(スラッシュ)」が一つあることと、答えが「春川・電人HALの目的そのものである」ことであった。弥子は休息後、アヤ・エイジアに相談し、人間の春川のことを調べることになった。そこにパスワードの答えがあると信じていた。
そして弥子は警視庁の協力を得ながら、とある脳障害を抱えた患者のデータをかつて春川がいた研究施設で発見する。加えて友人との何気ない会話から確証をつかみ、「パスワードはこれしかない」と弥子はネウロに言うのであった。

情報屋から買ったヘリコプター1機で無謀にも空母へ向かうネウロと弥子。HALの空母による圧倒的な火力にヘリは撃墜されるが、ネウロの魔界能力によりレーダーをすり抜け、空母に潜入する。洗脳された軍人の一瞬の隙を突き、ネウロは最後のセキュリティを破壊しコンピューター内に潜入し、HALと対峙する。しかし両者の間をパスワードが阻んでいた。「桂木弥子が解けるわけがない」と余裕を見せるHALだが、弥子はパスワード攻略に成功。ネウロはHALの中に張り巡らされた“謎”の迷路を進んでいく。
一方、パスワード入力を終えた弥子は現実世界でネウロの帰りを待っていたが、洗脳された軍人たちもまた、弥子とネウロに襲い掛かる準備をしていた。間一髪のところでネウロはコンピューター世界から戻ってきた。そしてこれまでにない量と質の”謎”を摂取したネウロは、フルパワーで軍人たちをねじ伏せていく。パソコンの画面にはネウロに敗北し身動きの取れないHALが映し出され、弥子にパスワードが解けた理由を聞く。すると弥子は「1/1000000000000000000(1の18乗分の1)」を入力したと明かす。それは日常ではまず使われることのない極小の単位『刹那(せつな)』を表し、同時に春川英輔の想い人の名前「本城刹那(ほんじょうせつな)」を指していた。電人HALが日本中を巻き込んだ事件は、その刹那という女性に関係していた。

春川が昔脳の研究のために出会った患者が刹那であり、弥子が見つけた脳障害のデータは彼女のものであった。春川は自身のプライドにかけて研究と治療を試みるが、その努力をあざ笑うかのように刹那は死亡したのである。
刹那の死後、春川は自らの記憶のみを頼りに、刹那を「1と0の世界」、つまりコンピューターの世界に作り上げ、永遠に彼女と生きていく計画を立てる。そのために春川はコンピューター内で生きられる電人HALを作り、スパコンを日本中から集め、刹那の構築に挑んでいたのだ。
HALから動機を聞き、同情の念を抱く弥子だが、HALは電子ドラッグのワクチンと自らを消すプログラムを提示する。弥子は躊躇いながらも消去プログラムを起動すると、画面には100%から値が下がっていくバーが表示された。数値が0に近づいていき、刹那の再現が実現しなかったことを悔やみながら自らの死を受け入れるHAL。しかしカウントが「0.000000000000000001」の「刹那」を瞬間的に表示した時、そこには確かにHALを腕に抱く彼女の姿があった。
そうしてHALは、いつも刹那が近くにいてくれたことに気づき、自らの計画が達成されたとして大きな充足感と共に消えていった。

新しい血族編(最終章)

電人HAL事件後、コンピューター世界にはHALの意志がわずかに残存していた。しかしそれは以前のHALではなく、破壊衝動だけを持った凶暴なものに変容していた。それに目をつけたのが怪盗Xだった。Xは得意の観察眼を駆使しHAL IIをくまなく見ることで、電子ドラッグによる洗脳と、洗脳者の能力を向上する力を会得する。早速、Xは配下の夜(よる)に電子ドラッグの力を試し、洗脳と能力向上に成功。ネウロを誘き出すことを計画する。

時同じくして笛吹の元に、アンドリュー・シクソンという刑事が訪れる。アンドリューはイギリスの国家警察に属し笛吹とは海外研修で出会っているため旧知の中である。アンドリューはXによる一連の事件の捜査協力のために来日したのだった。しかし筑紫は笛吹が持つX事件に関する膨大な情報を、アンドリューに扱えるのか疑問視していた。すると突然、アンドリューは資料の山を空中にぶちまけた。そして資料が床に落ちるまでのわずか数秒で全ての資料を記憶し、笛吹が適当に指定したページの情報を暗唱してみせた。筑紫はその様子を見てアンドリューを信頼することとなる。
アンドリューは「瞬間記憶能力」を持っており、かつ一度覚えた内容は忘れないという力も持ち合わせていたのだ。強力な味方を得た笛吹たちは、笹塚も交え捜査を共に行いX逮捕に向けて動き出していた。

ネウロと弥子は山深い村まで来ていた。一時は観光地として栄えたのだが、人間も少し吸うだけで致死量となる自然の毒ガスが発生したことにより衰退していた。ネウロは毒ガスから得られる瘴気を吸うために訪れていたが、“謎“の気配を察知したため瘴気吸入を早々に切り上げる。
翌日山中の毒ガス発生現場で人が死んでいるのが発見される。死んでいたのは昔観光地として栄えていた頃に、一帯の土地を所有し儲けていた地主だった。駆けつけた駐在所の警官は自殺と判断したがネウロがそれを遮った。ネウロはいつものように弥子を操り、自殺ではなく殺人事件として、犯人を指差させた。しかし犯人はXが差し向けた蛭(ヒル)という青年であり、ネウロを誘い出すためにわざと殺人事件を起こしていたのだ。山奥に逃げ出した蛭をネウロは追跡し、弥子は1人村に残っていた。その隙を突き、Xは弥子の誘拐に成功する。
Xは警視庁の地下に潜んでおり、そこにネウロを呼び出す。そしてXは誘拐し電子ドラッグの力で洗脳した弥子とともに、ネウロに襲い掛かった。Xも弥子に変装し、ネウロの反撃を弥子に向くよう仕向けていた。しかしネウロの作戦により失敗し攻撃を受け無力化してしまい、弥子の洗脳も解かれてしまった。

屋上に逃げたXを追ったネウロと弥子は、笹塚、笛吹、筑紫、アンドリューと合流し、Xと対峙することとなる。

Xは相棒のアイが操縦するヘリに乗り込み脱出を図るが、突然アンドリューがアイに発砲する。頭を撃ち抜かれたアイを見て愕然とするXと一同。
すると、アンドリューの顔面が突然歪み、その下から全く別の男が現れた。男はシックスと名乗り、自らの一族を人類の進化の先にいる「新しい血族」であると話し始める。そしてXの正体を、自らのクローンである「Ⅵ(シックス)」に改造を施して11番目に生まれた『験体11(けんたいじゅういち)』だと明かす。シックスは、Xが長年探し続けていた「自分の正体(なかみ)」は取るに足らない事実だと告げ、Xの腹部を腕で貫くのだった。
止めようとする一同だが、その場にいたほとんどの人間がシックスの持つ独特な覇気に圧倒され動けなくなってしまう。ネウロだけがそのプレッシャーに押し負けず立ち続け、その姿を見たシックスは今後自分達の邪魔になると直感する。シックスは瀕死のXを連れ、その場を離脱した。その後、シックスはネウロを茶会に誘い、今後敵対していくことを宣言した。

そしてシックスは特に自分が認めた幹部5人を「五本指」と名付け、ネウロの命を狙わせた。新しい血族にとって、地上を独占するためにはネウロは邪魔な存在であるためだ。五本指のメンバーはそれぞれ水流や地政学、また薬学などの得意分野を、「人間を殺す」という最悪の方向に進化させていた。敵の得意なフィールドでダメージを受け、さらに魔界能力を使い魔力を消耗してしまうネウロ。しかし偶然居合わせた笹塚刑事と連携をするなどして、五本指を倒すことに成功する。この時から笹塚はネウロの正体を知ることとなり、シックスを倒すために協力していくこととなる。

ネウロは魔力回復までの間を、笹塚や吾代に行動を任せ、大手製薬会社の強制捜査を行わせていた。そこでは人体実験が行われており、シックスを「犯罪者」として追い込むための情報を得ることに成功する。同じころ五本指が敗れ去ったことを知り、シックスは兵器会社の社長として日本に来ていた。そばにはXからさらに強化、進化をさせた「Ⅺ(イレブン)」を連れていた。

シックスとの最終決戦

笹塚は、自分の家族を殺した犯人がシックスであることを知り、単独で復讐計画を実行していた。しかしシックスによって強化された怪盗X、イレブンにより笹塚は命を奪われてしまう。その光景を目の当たりにした弥子は絶望する。更には偶然出会っていた春川の想い人である本城刹那の父親、本城二三男(ほんじょうふみお)までもシックスの信奉者だった事実にうちのめされてしまう。度重なる恐怖と絶望に、弥子は探偵を辞める事をネウロに宣言し、事務所を逃げるように出て行った。
弥子は事務所から逃げ出したことでネウロに失望され、二人の間に深い溝ができてしまった。しかしアヤやクラスメイトの励ましにより、弥子はもう一度探偵としてネウロのそばにいることを誓う。そしてネウロは弥子が二三男の段ボールハウスから持ち帰った情報をもとに、シックスのアジトへむかうのであった。

そのころシックスは癒着(ゆちゃく)のあった警察に裏切られ、指名手配犯として追われていた。それも笹塚の想いを受けた笛吹の尽力によるものだった。味方につけていたと思っていた警視総監の裏切りを悟り、隠れ家へと避難するシックスとイレブン。国外逃亡の策を練るが、ネウロの襲撃により戦いを余儀なくされる。ネウロはシックスと戦い、そして弥子にイレブンを割り当てる。ネウロから厚い信頼を感じた弥子は恐怖を感じながらもイレブンを待っていた。イレブンは弥子の記憶からネウロに変装し対峙するも、ネウロの言葉を信じる弥子には一瞬で見破られてしまう。弥子は変装を見破られたイレブンの動揺を突き、弥子自身の記憶をイレブンに見せる。それはイレブンが攻撃する際に変装することを避けた、怪盗Xの記憶だった。徐々にXの記憶を取り戻すイレブンだったが、記憶を見終わったあと弥子に対し攻撃を仕掛ける。弥子の意識はそこで途切れてしまう。

一方、シックスの猛攻に耐えていたネウロも、魔力が枯渇し限界を迎えていた。そこに首を貫かれた弥子を連れたイレブンが合流し、シックスは共にネウロへとどめを刺すよう指示する。しかしすでにイレブンは怪盗Xとしての記憶を取り戻しており、シックスを攻撃しダメージを与えることに成功する。死んだと思われていた弥子は無事であり、シックスの油断を誘うためにXが偽装していたのである。奇襲にあいながらもXに対し致命的な攻撃を返したシックス。しかし急所を突かれ能力が低下したため、シックスはステルス機に捕まり撤退を余儀なくされる。ネウロは最後の魔力を振り絞りそれを追う。戦いの結末を待つ弥子は、Xの最期を見守っていた。

シックスの乗るステルス機に追いついたネウロは、シックスの猛攻に耐えるだけであった。しかし枯渇寸前の魔力で最強の「魔帝7ツ兵器」である「二次元の刃(イビルメタル)」を発動し、シックスの体を分断する。それでもまだ息のあるシックスを、ネウロは空中に放り出した。そしてステルス機をシックスに差し向け粉々にした。ネウロはステルス機による攻撃を成功させるも、コントロールを失い海に墜落する。墜落によりネウロも死んだかと思われたが、昔春川が片手間に作っていたGPSシステムにより救助される。救助されたネウロは弥子や吾代と合流し、新しい血族との戦いを終えたのであった。

『魔人探偵脳噛ネウロ』の登場人物・キャラクター

魔界探偵事務所

脳噛ネウロ(のうがみねうろ)

CV:子安武人(アニメ/ドラマCD)
本作の主人公。魔界から人間界に良質な“謎“を求めて降り立ち、のちの相棒である桂木弥子と出逢う。唯一喰べることのできる食糧が“謎“であるため、その他の人間の食べ物は一切口にしない。そして魔界中の【謎】を喰べ尽くしたほどの恐ろしい食欲を持つ。人間界で生活するための姿と、魔人としての本来の姿を併せ持ち、人間界では魔人として目立った行動ができないため弥子を隠れみのにしている。そのため事件現場では弥子を「先生」と呼び助手役に徹しているが、実際の事件解決のための推理はネウロが行なっている。
時に【魔界777ツ能力(どうぐ)】を駆使し捜査に必要な情報を細かく拾いあげ、犯人に突きつけることもある。しかし推理の披露もあくまで『弥子の代弁』として行い、世間には事件解決は弥子の手腕だと思わせている。
性格はどS。作中では弥子を何度も拷問しており、拷問の最中は笑顔である。弥子に厳しい拷問をする反面、刑事の笹塚への対応は丁寧にし、人を選び応対をする。上質な“謎“を生成する人間独自の悪意を、『人間だけがその可能性を持っている』としているため、人間にという種族に一番期待している。弥子にもその可能性を見出しおり、自分が窮地の際は弥子に全てを任すこともいとわないほどである。普段は食欲以外の感情を表に出さないが、シックスの茶会で目の前で人間を殺された時、怒りの感情を露わにした。

桂木弥子(かつらぎやこ)

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暗殺教室の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

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「暗殺教室」は「週刊少年ジャンプ」に連載された松井優征による漫画作品。 椚ヶ丘中学校の底辺クラス3年E組の担任として謎の人外生物がやってくる。月の7割を破壊してきた上に「来年3月には地球を破壊する」と宣言するその超生物を殺してくれ、とE組は防衛省から依頼された。暗殺対象の先生と、暗殺者たる生徒達が織りなす、殺しと学びの物語。暗殺という非日常的側面がありながら、学校らしい教育的な名言が多い。

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【人気漫画】2007年~2018年の週刊少年ジャンプ打ち切り・終了マンガまとめ!

【人気漫画】2007年~2018年の週刊少年ジャンプ打ち切り・終了マンガまとめ!

週刊少年ジャンプ連載作品で、2007年1号以降に終了した作品をすべて順に紹介します。『週刊少年ジャンプ』は、集英社が発行する日本の週刊少年漫画雑誌。略称は『ジャンプ』『WJ』 。1968年に『少年ジャンプ』として月2回刊誌として創刊し、翌1969年より週刊となり『週刊少年ジャンプ』に改名した。

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【似てる!?】暗殺教室の実写キャストをアニメ・原作絵と比較【山田涼介ほか】

【似てる!?】暗殺教室の実写キャストをアニメ・原作絵と比較【山田涼介ほか】

月の七割を破壊した最強生物「殺せんせー」と、殺せんせー暗殺の任務を負った椚ヶ丘中学校の落ちこぼれ「3年E組」の生徒たちの交流を描いた『暗殺教室』。原作の大ヒットを受けてアニメ化・実写映画化されており、ファンからは「似てる!」との声も上がっている。本記事では『暗殺教室』の実写版キャストを、アニメ及び原作の画像と共に紹介する。

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【暗殺教室】クライマックスに向けておさらい!作中の伏線まとめ(ネタバレあり)

【暗殺教室】クライマックスに向けておさらい!作中の伏線まとめ(ネタバレあり)

大人気作品の『暗殺教室』。アニメ化や実写映画化もされたことで話題になりましたよね。漫画はコミックスで全21巻あり、作中には様々な伏線が登場します。この記事では、そんな伏線や殺せんせーの正体、ラスボスが誰かについてまとめました。重要なネタバレを含んでいるので、まだ作品を読んでいない方はくれぐれもご注意を!

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【中二半】「暗殺教室」3年E組の生徒たちの神がかったコードネームまとめ【ジャスティス】

【中二半】「暗殺教室」3年E組の生徒たちの神がかったコードネームまとめ【ジャスティス】

アニメ化、実写映画化されたことで大きな話題になった『暗殺教室』。その主要人物たちが集まる3年E組には、神がかったコードネームを持つ生徒がいます。この記事では、そんな彼ら/彼女らについてまとめました。これだけの登場人物のコードネームを1人1人考えるなんて、大変だっただろうなぁ…。

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深夜枠放送名作アニメの悲喜こもごも

深夜枠放送名作アニメの悲喜こもごも

「何で深夜枠…何ですぐ終わる…」そう思わせる名作漫画「アニメ化作品」の数々。規制のせいか!?などと短絡的に思ってしまいましたが、カンタンに録画で見られる時代です。それに名作はアニメになったって名作…とは限らないのが、原作ファンにとっては哀しいところ。せっかく色や音、動きがつくのだから原作並みのクオリティで突っ走ってほしいものです。

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実写映画『暗殺教室』で殺せんせー役を嵐・二宮和也が担当!声が似ていると以前から話題!

実写映画『暗殺教室』で殺せんせー役を嵐・二宮和也が担当!声が似ていると以前から話題!

実写映画版『暗殺教室』の殺せんせー役が誰であるかは初日舞台挨拶での発表となり、嵐の二宮和也が担当したことが明らかになるとキャスト陣、ファンともに驚きの表情を見せる結果となった。ファンの間では以前からニノの声に似ているとネット上で話題になっていた。アニメ版では声優の福山潤が担当している。

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ONE PIECEがV9達成!2016年漫画年間売上ランキング【「ワンピース」や「暗殺教室」など】

ONE PIECEがV9達成!2016年漫画年間売上ランキング【「ワンピース」や「暗殺教室」など】

オリコンが発表した年間"本"ランキングのコミック部門で、「ONE PIECE」80巻が1位を獲得!9年連続の快挙を成し遂げ、ファンを歓喜させました。「ONE PIECE」以外にも、「暗殺教室」や「東京喰種:re」など、話題作がランキング。シリーズごと、1巻ごとの2パターンで漫画年間売り上げランキングを紹介していきます。

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2015年に放送された冬アニメの情報まとめ!放送曜日ごとにわかりやすく紹介

2015年に放送された冬アニメの情報まとめ!放送曜日ごとにわかりやすく紹介

本記事では2015の冬に放送されていたアニメ作品の情報を、まとめて紹介している。記事中では『黒子のバスケ』、『暗殺教室』、『冴えない彼女の育てかた』、『Go!プリンセスプリキュア』、『艦隊これくしょん -艦これ-』など多数の作品の情報を掲載した。分かりやすいよう放送曜日ごとにまとめているので是非チェックしてみてほしい。

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