禪院真依（呪術廻戦）の徹底解説・考察まとめ

姉妹校交流会で真希と一騎打ちをして敗北した真依は、真希に「……なんで家を出たの？」と問う。呪術師になるためだと言う真希に、真依は初めて自分の心の奥底に沈めていた気持ちを吐露した。
自分は呪術師になんてなりたくなかったのに、真希が頑張るからやらざるを得なかった。痛いのも、怖いのも嫌いな真依は、なりたくもない呪術師になるための努力にうんざりしたいたのだ。真依は虐げられても、適当に禪院家で雑用をこなしながら適当に生きていければそれでよかった。そしてそこには大好きな双子の姉である真希にもいてほしかった。

「なんで一緒に落ちぶれてくれなかったの？」

このセリフは本当は真希と一緒いたかったという真依の愛情と、「お姉ちゃん、手、離さないでよ。」という約束を破った真希への憎悪が入り混じったセリフになっている。

「全部壊して。全部だからね、お姉ちゃん。」

真依が真希に残したセリフ。

真希の命を救うため、そして真希を本当の意味で強くするために、真依は自身の術式「構築術式」を限界以上に使用して命を落とす。最後に意識の表層下なのか、どこかの海辺で話をする真依と真希。真希の持つ呪力もなにもかもを持ってその場を去ろうとする真依を引き止めたくて真希は手をのばす。しかしその手を握ることは叶わず、幼いころの、仲の良かったころの姿に戻った真依は屈託のない笑顔を浮かべ、「全部壊して。全部だからね、お姉ちゃん。」と言い残して消えた。それは真依が死んだ後も真希が強く生きていけるようにと残した希望の約束だったのか、それとも大好きな姉である真希を助けるために死を選んだ自分を覚えておいてほしいとかけた絶望の呪いだったのか。どちらにせよ、重く苦しい、そして切ない真依の最後のセリフになっている。

禪院真依の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

真希と真依の名前の由来

名前にはたいてい由来というものがある。
双子に限らず、兄弟・姉妹の名前に同じ漢字が入っていることは少なくはない。真依と真希も「真」という漢字は同じものが使われている。さらに公式ファンブックにて、真依と真希の名前の由来についてのコメントが掲載された。読者からの「名前の由来を教えて下さい。」という真依への質問に対して、作者の芥見下々は「漢字の意味まんまです。真希との対比。」と答えている。具体的にどういう思いで真依と真希の名前をつけたかは明かされていない。だが漢字の意味を調べてみると次のような意味を持つことがわかった。

姉の真希の名前に入っている「希」という漢字には、二つの大きな意味がある。一つは「めったにない」、「まれ」。「希少」や「希有（けう）」という熟語で使う場合の「希」が持つ意味だ。もう一つは「のぞむ」、「こいねがう」という意味があり、これは「希望」という熟語で使う場合の「希」が持つ意味だ。真希は「天与呪縛」という特異な能力を持っており、その能力はまさに「希少」だ。また「強く願う＝のぞむ」というほうの意味は、しっかりとした目標を持ち、その目標の達成を望み、努力をする真希の姿勢そのものだ。

妹の真依の名前に入っている「依」という漢字には、「よりすがる」、「頼る」、「従う」という意味がある。「依」の漢字の部首であるにんべんと、ツクリである「衣」から形成されている漢字だ。「衣」は「身にまとう服」を意味しており、人を表す部首・にんべんと合わさることで「人にまとわりつく衣服」という意味を持っている。転じて「よりすがる」、「頼る」、「従う」といった「依存」を連想させるようになったとされているようだ。一方で人は衣服を身につけることで安らぎを得るという点から、「安心する」という意味にも使われる。そしてこの「安心する」ということが「大きな変化がない」へと変化し、「そのまま」という意味や、体を包み込む様子から「助ける」という意味を持つようになったそうだ。

真依は姉である真希を頼りに思っており、真希がいればどんな境遇でもかまわないと依存的な側面を見せている。そして変化を望まず、真希と「そのまま」禪院家で適当に雑用をして、適当に生きていくことを望んでいた。また「安心する」という点において、真希にとって真依は安心できる存在であったのではないかとも考えられている。

葦を啣む（あしをふくむ）

『呪術廻戦』の漫画第148話から真依と真希の禪院本家でのエピソードが始まる。そのエピソードの劇中タイトルが「葦を啣む（あしをふくむ）」となっており、この劇中タイトルが読者の間でいろいろな考察を呼んでいる。

「葦を啣む」というこの劇中タイトルは、『葦を啣む雁（あしをふくむかり）』ということわざからきているのではないかと多くの読者が予想している。漫画第149話で真依が真希のもとを去るときに何かの植物を握らせているが、それは葦という水辺に生えているススキに似た植物の穂先だ。そして同じく第149話の最後のページで複数の鳥が飛びだっているコマがあるが、ここに描かれているのは雁という渡り鳥だ。この二つの要素から劇中タイトルの「葦を啣む」は、『葦を啣む雁』ということわざからきているのではないかと言われいている。

『葦を啣む雁』の意味は以下の通りだ。

「準備が完全なこと」を意味することわざとのことだが、劇中タイトルでは最後の「雁」が省かれている。この「雁」、「誰が」ということが省かれているため、読者の間では、「誰が」準備万端の「雁」だったのかという考察が行われているのだ。

一つ目の考察は、「禪院家」。真希が禪院本家の忌庫に到着したときに待ち構えていた禪院扇が、「オマエ達の動向を見越して空にしておいた。」と言ったことも大きく影響している。やってくるであろう真依や真希に対して、目的である呪具を持ち去り、さらに殺害の計画を立てていた禪院家は、まさに準備万端だったと言える。

二つ目の考察は、「真依」。真依は真希がなぜ強くなれないのか、呪術界における双子という存在の意味を理解しており、自分がいる限り真希が強くなれないことをわかっていた。そこで真依は真希を強くするために自分の命を差し出す準備（覚悟）をしていたのではないかという考察だ。

三つ目の考察は、「真希」。真依が呪力もなにもかもを持っていってくれたおかげで、真希の「天与呪縛」フィジカルギフテッドが本当の意味で完成する。雁は葦を持つことによって準備万端になる。真希も真依から渡された葦の穂先（一振りの剣）を持つことによって準備万端整った形になる。また『葦を啣む雁』では、「雁」は目的地に「向かう」存在だ。今回忌庫で待ち受けていた禪院家のように「迎える」立場ではない。真希は「雁」のように「向かう」存在だった。このことからも準備万端の「雁」は真希なのではと推測されている。

真依と真希の繋がり

一卵性双生児にはタイプが三種類ある。一つは「DDツイン」、もう一つは「MDツイン」、そして最後は「MMツイン」だ。真依と真希は双子の中でも珍しい「MMツイン」なのではないかと言われている。

一番多い双子のタイプは「DDツイン」（二絨毛膜二羊膜双胎）で、双子の中では最も予後が良好なタイプだそうだ。母親から栄養をもらうための胎盤をそれぞれ持ち、母親のお腹の中での居場所を形勢している羊膜と絨毛膜もそれぞれ持っている。母親のお腹の中に二つ部屋があり、赤ちゃんがそれぞれ部屋にいて、それぞれ栄養を与えられている状態だ。

対して真依と真希がそうでないかと言われている「MMツイン」（一絨毛膜一羊膜双胎）は、母親のお腹の中で二人の赤ちゃんが胎盤・絨毛膜・羊膜を共有していている状態のことをいう。一つの部屋の中で二人の赤ちゃんが一緒にいて、同じところから栄養を与えられている状態になる。これは双子の赤ちゃんのうち約1％にしか見られない極めて珍しいタイプだそうだ。

何故真依と真希がこの「MMツイン」だと言われているか、その答えは漫画第148話「葦を啣む」の扉絵にある。

第148話の扉絵には丸まって目を閉じる二人の赤ちゃんが描かれており、まだへその緒が繋がっていることから母親のお腹の中にいたときの様子であることがうかがえる。一つの部屋に赤ちゃんが入っているのは「MMツイン」の特徴と一致しており、また二人の赤ん坊のお互いのへその緒が絡まっているのも決め手になっている。「MMツイン」の双子は、二人が一つの部屋にいるためへその緒が絡み合ってしまうリスクがあるらしく、扉絵のような状態は、まさに「MMツイン」の特徴そのものなのだ。

「MMツイン」の双子はリスクが高く、出産に至ったとしても片方の赤ちゃんが死んでしまったり、またそのことによって生きている赤ちゃんにも何かしら障害が残ることがあるようだ。真依と真希は無事に健康に産まれてきただけで奇跡といえる。

また「MMツイン」の双子は、二人の体の一部が結合している「結合双胎」という症状が稀に発生するそうだ。真依と真希は体の一部が結合しているということはなかったが、そのぶん心の結びつき・繋がりが強いのではないかと考える読者も多い。

「お姉ちゃん、手、離さないでよ。」

幼いころにした真依と真希の約束の手は、真希が禪院家を出ることで離されてしまった。心が繋がっていても、真希にそばにいて手をつないでいてほしかった真依にとってそれは辛く、苦しいものだった。しかし真依は死後、真希と再び繋がることができる。真依が死に際に精製した剣。剣は柄を握らなければ扱えない武器だ。真希は真依に託されたこの剣を離すことなく戦いを続ける。真依を守ってやりたかった真希にとっては、不本意甚だしい形だが、真依は死してやっと真希と再び手を繋ぐことができたのだ。

真依の愛銃はコルト・パイソン

戦闘でリボルバー型の銃を愛用している真依だが、その真依の銃に関して、「使用している拳銃はなんという拳銃？」という質問が読者から寄せられており、公式ファンブックにて作者の芥見下々は、「普段のは多分、冴羽遼（さえばりょう）が使ってるやつ。」と答えている。この冴羽獠が使っている銃というのが「コルト・パイソン」だ。

冴羽獠とは北条司の『シティーハンター （CITY HUNTER）』というハードボイルド・アクション漫画の主人公だ。『シティーハンター』は1985年から1991年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載をしており、アニメ化もされた人気漫画。2020年12月時点で単行本の累計発行部数は5000万部を突破しており、2019年には映画『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』が公開されて話題にもなった。

東京の新宿で殺しやボディーガード、探偵などを請け負うスイーパー（始末屋）を生業とする冴羽遼は、裏の世界でNo.1と呼ばれるほどの腕を持つと言われるほどの男だ。そしてそんな冴羽獠の愛銃が「コルト・パイソン357（4インチ）」と呼ばれるリボルバー型の銃である。「コルト・パイソン」という銃は1955年にアメリカのコルト社が開発した実在する銃で、ファンもたくさんいる。また『あぶない刑事』や『GTO』、『バトルロワイアル』などの映画やテレビドラマ、『ゴルゴ13』、『魔人探偵脳噛ネウロ』、『遊戯王』などのアニメ作品でも登場する有名な銃でもある。

真依の初恋

真依には初恋の相手がいる。そのことは姉妹校交流会で真依の真希に対してのセリフで判明している。

「だから初恋も、術式も、アンタに教えたことはない。」

この言葉から真依には初恋の相手がいることがわかる。だが肝心の初恋の相手が誰なのかは作中では語られていない。だが公式ファンブックに寄せられた「初恋の相手を教えて下さい！」という真依への質問に対し、作者の芥見下々は「多分伏黒、次点で知らない人、大穴で真希」と答えている。

実際に真依は伏黒恵に対してなにかしら好感を持っているような素振りを見せていた。初登場時に伏黒恵に「嫌だなぁ、伏黒君。それじゃあ真希と区別がつかないわ。真依って呼んで。」と言ったのも、「真希との区別がつかないから」とは別に、好きな男子には名前で呼んでほしいという乙女心が現れているようにも見える。

真依はスレンダー美人なので、呪術高専ではなく一般の高校に行っていたらモテていただろうことは、こちらも公式ファンブックで語られている。『「告られてオッケーしたけど、翌日フッた。」みたいなエピソードがあるといいなあ。』と作者の芥見下々も望んでいるようだ。一般の高校に行っていないが、次点の「知らない人」というのも大いに有り得る。

「大穴で真希」というのもありえない話ではない。禪院本家での最後のとき、真依が意識を失っている真希にキスをする描写がある。それを見て、ネット上では「やっぱり真依の初恋の相手は伏黒恵ではなく、真希なのでは？」と盛り上がりを見せていた。

しかし結局のところ、真依はその答えを出す前に死亡したので、真依の初恋相手は謎のまま『呪術廻戦』の物語は続いていくことになった。

ころころ変わる真依の髪型

真依は初登場時の髪型はボブヘアだった。しかし姉妹校交流会のときに姿を見せた真依の髪型はショートヘアになっている。このことに「心境の変化か？」、「失恋か？」と違和感・興味を持った読者も多い。実際に真依の髪型について「真依の髪型が変わりましたが、何か特別な理由があるのでしょうか？」という質問が作者に寄せられた。質問について、作者・芥見下々は『ジャンプGIGA 2019 京都交流会編キャラブック』でこう返答している。

「芥見がしっくりきていないからです。また変えそう。」

真依の髪型がコロコロと変わるのは、作者・芥見下々に「これだ！」というものがないからのようだ。「また変えそう。」とあるように、真依は登場するたびに微妙に髪型が異なっている。

高田ちゃんの隠れファンに

真依は東堂葵の影響で、アイドル・高田ちゃんの魅力にどっぷりハマってしまった。そのエピソードがTVアニメ『呪術廻戦』の第8話の「じゅじゅさんぽ」（ED終了後に流れるギャグテイストのショートムービー）で見ることができる。

真依の先輩である東堂葵は高田ちゃんという愛称で親しまれているアイドルの大ファンで、姉妹校交流会の前に呪術高専東京校にやってきたのは、東京である高田ちゃんの個別握手会に参加するためだった。

真依は仕方なく東堂葵に着いて個別握手会の会場に入り、そこらを埋め尽くす高田ちゃんのファンたちをまるでゴミを見るような目で見ていた。しかし東堂葵から「お前も高田ちゃんのすばらしさを肌で感じて来い。」とチケットを渡される。全く興味のなかった真依だが、断ったほうが面倒なことになりそうなので、真依は握手券を持って列に並ぶ。真依の番が来て高田ちゃんのいるブースに通されると、真依を見た高田ちゃんは「わぁ～！女の子！」と喜んだ。高田ちゃんは真依の手をしっかり握り、「何ちゃん？」、「真依ちゃん、おつかれ？」と親しげに話しかけてくる。そして最後に「じゃあ元気になったらまた来てね、覚えてるよ。真依ちゃん♪」と高田ちゃんは真依の耳元で囁いた。

戻ってきた真依を見て、東堂葵は「どうだった？」と尋ねる。それに対して真依はぶっきら棒に「べつに。」と返事をした。しかしそんなことはなく、真依は体験した高田ちゃんの個別握手会に対してむしろ良い印象を持ったようだ。その証拠に高田ちゃんの個別握手会の帰り道、真依は夕空を見上げながら「悪くねぇ～～～～～！」と心の中で叫んでいた。