クワイエット・プレイス 破られた沈黙(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』とは、2021年に公開されたアメリカ合衆国のホラー映画である。2018年に公開されたホラー映画『クワイエット・プレイス』の続編である。監督・脚本は、前作で父親役も演じたジョン・クラシンスキー。
前作同様、音を立てると襲ってくるクリーチャーに立ち向かうアボット一家を描く。今作では今までいた家の外に舞台を移し、耳の不自由な娘リーガン、息子マーカスの冒険と成長にフォーカスを当て、より緊迫感のある「音のない世界の恐怖」を楽しむことができる。
補聴器は、「会話や周りの音がはっきり聴きとれない」という状態の耳に対し、音の聴き取りを改善するために使用する医療機器。その補聴器からピーピーと高い高周波音が出る現象をハウリングと呼ぶ。ハウリングは、補聴器で増幅された音が、再び補聴器のマイクに入ることで発生する。この作用を利用して、リーガンは補聴器でハウリングを起こして、クリーチャーに高周波の音を聴かせた。
リトル・フォールズ
リトル・フォールズは、米国ニュージャージー州にある郡区。アボット家がもともと暮らしていた田舎町がある。ラジオ局のあるロング・アイランド湾の近くであり、地図でそれに気づいたリーガンが歩いてラジオ局に向かうことを提案することになる。
ダクト
ダクトとは、空気を運ぶための管のことを指す。 建物内に換気、排煙などのために配管されるダクトが代表的。マーカスと赤ん坊は、ボイラー室でこのダクトを破壊されたために、酸素不足に陥った。
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
エメットが「飛び込め」の手話をするシーン
波止場に到着したリーガンとエメットが、港のゴロツキたちに襲われるシーン。逃げ場を失ったエメットはリーガンに手話で「飛び込め」と伝え、リーガンは海に飛び込み、難を逃れた。これは作品の冒頭の少年野球のシーンで、エメットとリーガンが初めて会話するシーンでエメットが覚えた唯一の手話。音を出さずにリーガンに意思を伝えるための手段として、その手話が伏線として見事に回収された。
リーガン・アボット「お父さんならそうする」
リーガンは、手持ちのラジオから流れてきた曲が「ビハインド・ザ・シー」であること、そして生き残った人たちが発するメッセージだと気づく。ラジオの発信源を特定し、そこに行ってみんなを助けないと、と主張するリーガン。あまりに危ない計画に、姉を必死に止めようとするマーカスだったが、そこでリーガンは「お父さんならそうする」と言った。どんなに危険でも反対されても、絶対に自分がみんなを助けるんだという強い意思を貫いたリーガンの勇ましい名シーン。
エメット「すまなかった、君を疑って。僕が間違ってた。君が言ったとおり、僕は君のお父さんとは大違い。君はお父さんと同じ」
列車、波止場の連戦を乗り越え、リーガンの勇気ある行動を何度も目にしたエメットが、今まで彼女をまったく信じていなかったことや、彼女への言動について謝る場面で、彼は「すまなかった、君を疑って。僕が間違ってた。君が言ったとおり、僕は君のお父さんとは大違い。君はお父さんと同じ」と話した。誰よりも勇気のあった亡き父をいまだに慕い、彼のように周りを救える人間になりたいと願って、危険を省みずに行動するリーガンにとっては、彼女の努力が報われ、認められたと思える感動的なシーン。
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
元々は存在しなかったはずの続編
実はもともとは続編が作られる予定はなく、一作で完結する予定だった。前作『クワイエット・プレイス』の大ヒットを受け、配給会社のパラマウント・ピクチャーズより、監督であるジョン・クラシンスキーに続編の話が来たのだが、ジョンはその申し出を一度は断った。前作があまりにも完璧に完結した作品だったため、無闇に続編を作りたくなかったのである。
そこで、制作担当の一人アンドリュー・フォームから、たとえばジョン以外に他の脚本家を雇い、続編を作るとしたらどんな感じになるかを見てみるのは面白いのでは、という提案を受けた。悪くないと思ったジョンは、下準備として、細かな設定資料を制作するうち、結果としてそれをもとにもっと話を広げた続編を作りたくなったのだそう。
当初不参加を表明していたエミリー・ブラント
エヴリン・アボットを演じるエミリー・ブラントは、当初続編が1作目を超えることができるとは思えなかったため、夫であるジョン・クラシンスキー同様プロジェクトに対しては前向きではなく、制作が決まってからもプロジェクトへの参加をためらっていたと語っている。しかしながら、冒頭のバスのアクションシーンについてジョンから聞き、魅力を感じた彼女は最終的に参加を決めた。
ピザ屋の看板で登場する『ジョーズ』のオマージュ
スティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(1975年)の大ファンである、ジョン・クラシンスキー。彼が冒頭の街のシーンで通るピザ屋、「Brody's Pizzeria」の看板。この店名は、『ジョーズ』に登場するキャラクター「ブロディ署長」の名前にちなんでいる。
本作はジョンにとっての『ジョーズ』にあたる映画で、その中でも特にお気に入りのキャラクター「ブロディ署長」からオマージュすることにしたのだそう。
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の主題歌・挿入歌
挿入歌:ボビー・ダリン「ビヨンド・ザ・シー」
エヴリンとマーカスが、ラジオから流れる音楽を聴くシーンで流れてくる曲。リーガンはこの曲のタイトル「海の向こう」から、ラジオ局を使ってクリーチャーを倒す計画を立てた。
挿入歌:ジミー・デイヴィス「ユー・アー・マイ・サンシャイン」
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目次 - Contents
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の概要
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』のあらすじ・ストーリー
- 全てのはじまり、そしてエメットとの出会い
- クリーチャーを倒す計画を遂行するリーガン、赤ん坊を守るマーカス
- ラジオ局でのラストバトル
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- エヴリン・アボット(演:エミリー・ブラント)
- エメット(演:キリアン・マーフィ)
- リーガン・アボット(演:ミリセント・シモンズ)
- マーカス・アボット(演:ノア・ジュープ)
- リー・アボット(演:ジョン・クラシンスキー)
- その他の登場人物
- 島の長(演:ジャイモン・フンスー)
- ボー・アボット(演: ディーン・ウッドワード)
- マリーナ・マン(演:スクート・マクネイリー)
- 少女(演:アリス・ソフィー・マリコワ)
- 警察官(演:オキエリエテ・オナオドワン)
- ロジャー(演:ウェイン・デュヴァル)
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の用語
- 補聴器
- リトル・フォールズ
- ダクト
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- エメットが「飛び込め」の手話をするシーン
- リーガン・アボット「お父さんならそうする」
- エメット「すまなかった、君を疑って。僕が間違ってた。君が言ったとおり、僕は君のお父さんとは大違い。君はお父さんと同じ」
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 元々は存在しなかったはずの続編
- 当初不参加を表明していたエミリー・ブラント
- ピザ屋の看板で登場する『ジョーズ』のオマージュ
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の主題歌・挿入歌
- 挿入歌:ボビー・ダリン「ビヨンド・ザ・シー」
- 挿入歌:ジミー・デイヴィス「ユー・アー・マイ・サンシャイン」