クワイエット・プレイス 破られた沈黙(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』とは、2021年に公開されたアメリカ合衆国のホラー映画である。2018年に公開されたホラー映画『クワイエット・プレイス』の続編である。監督・脚本は、前作で父親役も演じたジョン・クラシンスキー。
前作同様、音を立てると襲ってくるクリーチャーに立ち向かうアボット一家を描く。今作では今までいた家の外に舞台を移し、耳の不自由な娘リーガン、息子マーカスの冒険と成長にフォーカスを当て、より緊迫感のある「音のない世界の恐怖」を楽しむことができる。
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の概要
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙(原題:A Quiet Place: Part II)』とは、2021年5月28日に公開されたアメリカ合衆国のホラー映画である。全米累計興収1億8800万ドル以上を叩き出し、2018年度ナンバーワンヒットホラー映画(「BoxOfficeMojo」調べ)となった作品『クワイエット・プレイス』の続編として制作された。
音で脅かすことが多いサスペンスホラージャンルの中でも、あえて沈黙にフォーカスするという新境地を切り開いた作品として、高い評価を受けた。日本では、キャッチコピー「音を立てたら、即死。」が話題となり、アメリカに負けず劣らずのヒット作品となった。
製作は、マイケル・ベイが設立した映画製作会社プラチナム・デューンズ、そしてサンデー・ナイト・プロダクションズ。
配給はパラマウント・ピクチャーズ。
監督・脚本は、前作で父親役も演じたジョン・クラシンスキーが引き続き担当。人物設定は前作の脚本のブライアン・ウッズとスコット・ベックが担当した。
監督のジョン・クラシンスキーは、1979年10月20日生まれで、アメリカ合衆国ボストン出身の映画監督、俳優である。
ジョン・クラシンスキーの主な作品としては『最高の家族の見つけかた』(2016年)、『ブルー きみは大丈夫』(2024年)などが挙げられ、俳優としても多くの作品に出演している。
主要キャストとして、エミリー・ブラント、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュープ、キリアン・マーフィー、ジャイモン・フンスーなどが出演している。
主役を演じるエミリー・ブラントはイギリス出身の俳優で、『プラダを着た悪魔』で主人公の先輩役として注目を集めた。近年では『オッペンハイマー』でオッペンハイマーの妻キャサリン役にてアカデミー賞助演女優賞にノミネートを果たしたことも記憶に新しく、現在ハリウッドで活躍を広げる俳優のひとりである。
前作で、音を立てると襲ってくるクリーチャーによって最愛の夫・リーと住む家をなくしたエヴリン・アボット。産まれたばかりの赤ちゃんに加え、耳の不自由な娘のリーガン、息子のマーカスを連れ、家族四人で新たな安寧の地を探していた。
そんな中、亡き夫の知り合いである生存者に遭遇し、匿ってもらうことになったものの、彼らをさらなる未知の脅威が待ち受けていた。
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』のあらすじ・ストーリー
全てのはじまり、そしてエメットとの出会い
前作『クワイエット・プレイス』でクリーチャーが襲ってくる世界線から時間は巻き戻り、静かな田舎町リトル・フォールズの大通りから物語ははじまる。
長男マーカス・アボットが出場する野球のリトルリーグの試合の日、公園の野球場には、アボット家の大黒柱であるリー・アボット、妻エヴリン・アボット、耳の聞こえない長女のリーガン・アボット、次男のボー・アボットが観戦に訪れていた。夫の友人であるエメット、彼の息子とも観戦席で遭遇し、リーガンと手話でやりとりをするなど、雑談に興じていた。
試合が始まって少ししたとき、突如、空から巨大な隕石が飛来。人々は一斉に避難を始めた。リーガンはリーの車で、マーカスとボーはエヴリンの車でそれぞれ家を目指すことになった。リーが近くにいた警察官に声をかけようとした瞬間、見たこともない不気味なクリーチャーが現れ、パトカーを跳ね飛ばした。エヴリンもまた、クリーチャーに乗っ取られたバスと正面衝突しそうになる。
一方、車のエンジンがきかなくなったリーとリーガンは近くのレストランに逃げ込み、店内の人々と共に息を殺し、クリーチャーが過ぎ去るのを待っていた。ところが、誰かの携帯電話が鳴ったことで、音に反応したクリーチャーが店内に乱入し、ほとんどの客を殺してしまった。リーとリーガンは、命からがら店の裏口から逃げ出すことができた。
警察官がショットガンでクリーチャーを撃つものの全く効かず、なすすべもなく街は大混乱に陥っていった。
それがすべてのはじまりだった。場面は現在に移り、エヴリン、リーガン、マーカス、生まれたばかりの赤ん坊の四人は、行く当てもなく安全な場所を求めてさまよっていた。もともとは六人家族だったアボット家だったが、前作『クワイエット・プレイス』で、次男のボー、夫のリーはクリーチャーに襲われ、亡くなってしまっていた。大黒柱を失った今、エヴリンが家族の中心としてみんなを率いていた。
一家は途中で見つけた農家で、生活物資や酸素ボンベを手に入れることができた。エヴリンは赤ん坊の泣き声をかき消すための手段として、赤ん坊に酸素ボンベをつないだマスクを装着し、防音トランクケースに横たわらせて運んでいた。
一家は裸足で静かに歩みを進め、廃工場にたどり着いたものの、エヴリンは足元のワイヤーに引っかかり、侵入者警報を発動させてしまう。クリーチャーの襲来を恐れて逃げようとするが、次にマーカスが罠にかかり、足に歩けないほどの怪我を負ってしまった。マーカスの叫び声を聞いたクリーチャーが近づいてきたが、前作で見つけた弱点である高周波をリーガンのラジオから発信することで、クリーチャーを弱らせ、ショットガンで撃ち抜くことで難を逃れた。それを見ていた正体不明の男が、一家を工場の中に案内し、地下通路の奥のボイラー室へと匿ってくれた。
その男はリーの友人であるエメットだった。エメットは息子をクリーチャーに殺され、妻も病気で亡くしていた。エメットは、エヴリンたちが「高周波」という怪物の弱点を突き止めていることに驚き、関心を持った。リーの状況を知っていたかどうか問い詰められたエメットは、リーが生前、生存を知らせる炎を焚いていたことに気付いてはいたものの、このような世界で誰も信じられないと思っていたエメットはそれを無視してしまい、一家を目の前にして後悔の表情を見せた。
クリーチャーを倒す計画を遂行するリーガン、赤ん坊を守るマーカス
ボイラー室で時を過ごす中で、リーガンはとあることに気が付いた。ラジオから聞こえてきた『ビヨンド・ザ・シー』という曲から、「海の向こう」にある波止場に近い孤島に放送局があるのではと予測し、その局からクリーチャーの弱点である高周波を発信する計画を立てた。耳の聞こえないリーガンがそれを遂行するのは危険すぎるため、マーカスは反対したが、リーガンは「パパが生きていたらやっていた」と説得しようとする。
翌朝、マーカスが目を覚ますと、リーガンの姿はなく、「ラジオを聴き続けるように」と書かれた置手紙だけが残っていた。
エヴリンはリーガンの身を案じ、エメットにリーガンを連れ戻すよう頼み込んだ。最初は断るエメットだったが、亡きリーのことを思い、引き受けることにした。
一方リーガンは無線機とショットガンを持ってひとりで歩いており、その中で廃墟になった列車を発見する。列車内には襲われた人々の死体が散乱していた。歩き回るうちに倒れてきた車掌の死体に驚き、リーガンは悲鳴を上げてしまった。
即座に現れたクリーチャーに対し、リーガンは高周波音を浴びせてショットガンで攻撃しようとするが、上手くいかない。ギリギリのタイミングで駆けつけたエメットが怪物を撃退してくれた。エメットはリーガンを隠れ家に連れ戻そうとしたが、リーガンの固い決意をエメットも理解し、目的達成までは同行することに決めた。
翌朝、エヴリンはマーカスに赤ん坊を託し、酸素ボンベなどの必要な物資を調達するために外出した。薬局で痛み止めと包帯、酸素ボンベ2本を手に入れることに成功した
隠れ家に残ったマーカスは赤ん坊をあやしながら、中を散策する。そこでエメットの妻の遺体を見つけてしまい、驚いたマーカスはうっかり音を立ててしまった。クリーチャーが襲ってくる前にボイラー室に逃げ込んだが、ダクトを破壊されたことでボイラー内に閉じ込められてしまい、酸素ボンベに頼らないと呼吸できない状況に陥ってしまった。
その夜、リーガンとエメットのふたりは波止場に到着した。移動手段としてボートを奪おうとしたところ、生存者と思われる少女を見つけたが、そこで待ち構えていた港町のゴロツキたちが現れ、エメットたちを襲った。逃げ場を失ったエメットはリーガンに手話で「飛び込め」と伝え、リーガンは海に飛び込んだ。闘いの中でクリーチャーはその声を聞きつけ、男たちを襲い始めた。海に飛び込んだリーガンは、怪物が泳げないということに気が付いた。
リーガンは小型船を見つけてエメットを助け、命からがら逃げ出すことに成功した。男たちは壊滅したが、クリーチャーを乗せたボートは海に漂流し続けた。
翌日、隠れ家に舞い戻ったエヴリンは、ダクトが失われていること、マーカスと赤ん坊が危ないことに気が付いた。エヴリンは酸素ボンベを油が溜まっている場所に置き、銃で撃つことで爆発させてクリーチャーを倒した。
次々出てくるクリーチャーだったが、エヴリンはスプリンクラーを作動させてクリーチャーの混乱を招き、その隙にマーカスと赤ん坊のいるボイラー室に向かい、換気口を開けることができた。残された酸素ボンベのおかげで、マーカスと赤ん坊はギリギリのところで生き延びていた。
ラジオ局でのラストバトル
島に辿り着いたエメットとリーガンは、自分たち以外の生存者がいることを知った。島の長である男は彼らを歓迎した。
穏やかな空気が流れる島での生活だったが、メエットは波止場で流されたはずのボートが漂着していることに気が付く。エメットは急いで集落に戻り、人々に避難するよう呼びかけたが、すでにクリーチャーはボートから島に乗り込んでおり、人々を襲ってしまっていた。
島の長はリーガンとエメットを車に乗せ、高周波作戦のためにラジオの放送局へと向かった。彼はクリーチャーに襲われてしまうが、リーガンとエメットはなんとか放送室にたどり着くことができた。
エメットがおとりになり、リーガンは放送室に入った。クリーチャーに襲われるすんでのところで、補聴器を取りつけたマイクに高音波を流すことに成功し、クリーチャーに鉄パイプを突き刺して殺害した。
同時に、隠れ家に潜んでいたエヴリン、マーカス、赤ん坊にも、次なるクリーチャーが襲い掛かろうとしていた。しかし、間一髪のところでラジオからの高周波が流れ始め、苦しみ出したクリーチャーの頭部をエヴリンが銃で撃ち、倒すことができたのだった。
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の登場人物・キャラクター
主要人物
エヴリン・アボット(演:エミリー・ブラント)
日本語吹替:園崎未恵
主人公であり、アボット家の妻であり母。前作で最愛の夫リーをクリーチャーに殺されて失うが、残された赤ん坊と、長女、長男を連れて、諦めずに生き残りの道を探す。リーの友人エメットに頼ることで新しい隠れ家を見つけるが、常に泣き声をあげる赤ん坊をなんとかコントロールすべく必死に努力している。自我の強い長女と長男に振り回され、またもや数多くの危険にさらされることに。
エメット(演:キリアン・マーフィ)
日本語吹替:内田夕夜
本作で新キャラクターとして登場したキーパーソン。アボット一家が廃工場で出会った男だが、実は亡き夫リーの知り合いで、息子と妻を失って意気消沈しながらひとりで暮らしている。このままひとりで生き延びていくことに意義を見出せずにいたが、リーガンの前向きな姿勢に救われていく。
リーガン・アボット(演:ミリセント・シモンズ)
日本語吹替:石井未紗
聴覚障害を持つ、アボット家の長女。前作で父リーを失うこととなり、本作でも引き続き自分の行動を後悔し続けている。その悲しみをバネに、多くの人を救うため、本作では補聴器を使ってクリーチャーを倒す手段を思いつく。
マーカス・アボット(演:ノア・ジュープ)
日本語吹替:宇山玲加
アボット家の長男。リーガンと比べると臆病な性格だが、本作ではまだ赤ん坊の弟を守ろうと必死に行動する。エメットの隠れ家で足をトラバサミに挟まれ動けない怪我を負ったり、酸素のないボイラー室で赤ん坊と一緒に閉じ込められたりと、危機に陥ることが多かったが、なんとか乗り越える運の強さを持つ。
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目次 - Contents
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の概要
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』のあらすじ・ストーリー
- 全てのはじまり、そしてエメットとの出会い
- クリーチャーを倒す計画を遂行するリーガン、赤ん坊を守るマーカス
- ラジオ局でのラストバトル
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- エヴリン・アボット(演:エミリー・ブラント)
- エメット(演:キリアン・マーフィ)
- リーガン・アボット(演:ミリセント・シモンズ)
- マーカス・アボット(演:ノア・ジュープ)
- リー・アボット(演:ジョン・クラシンスキー)
- その他の登場人物
- 島の長(演:ジャイモン・フンスー)
- ボー・アボット(演: ディーン・ウッドワード)
- マリーナ・マン(演:スクート・マクネイリー)
- 少女(演:アリス・ソフィー・マリコワ)
- 警察官(演:オキエリエテ・オナオドワン)
- ロジャー(演:ウェイン・デュヴァル)
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の用語
- 補聴器
- リトル・フォールズ
- ダクト
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- エメットが「飛び込め」の手話をするシーン
- リーガン・アボット「お父さんならそうする」
- エメット「すまなかった、君を疑って。僕が間違ってた。君が言ったとおり、僕は君のお父さんとは大違い。君はお父さんと同じ」
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 元々は存在しなかったはずの続編
- 当初不参加を表明していたエミリー・ブラント
- ピザ屋の看板で登場する『ジョーズ』のオマージュ
- 『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の主題歌・挿入歌
- 挿入歌:ボビー・ダリン「ビヨンド・ザ・シー」
- 挿入歌:ジミー・デイヴィス「ユー・アー・マイ・サンシャイン」