洗礼(楳図かずお)のネタバレ解説・考察まとめ
『洗礼』とは、楳図かずおによる漫画。『週刊少女コミック』誌上にて、1974年から1975年まで連載された。ホラー漫画の巨匠として有名な楳図かずおは、異形のものの怖さを直接的に表現する作風を得意としている。『洗礼』においてもそのようなシーンは見られるものの、人間の深層心理の不気味さを独特なストリーテリングで描かれていることが大きな特徴で、キャリア中期の代表作の1つとして高評価されている。かつて美貌を誇った大女優が、恐ろしい方法で実の娘に自分の人生を託す様子を描いたホラー作品である。
曙小学校の生徒で、さくらたちのクラスメイト。さくらのボーイフレンドだったが、脳手術後のさくらから「子供なんて相手にしないわ。私の欲しいのは大人の愛よ」と言われてこっぴどく振られてしまう。その後、さくらたちと谷川家に招かれてパーティーに参加したが、さくらが腐ったものを混入させた料理を食べて腹痛を起こして寝込んでしまった。
その他(そのた)
村上先生(むらかみせんせい)
若草いずみの幼少期からの主治医で、彼女の相談相手でもある。いずみの美醜に対する苦悩を解決する手段として、女の子を産んで年頃になった際に脳を移植するという恐ろしいアドバイスを行った。いずみの女優引退後は、上原家が住む洋館の2階で脳手術の研究をしている。さくらが予定よりも早く脳手術の存在に気づいてしまったことで、強引に手術を敢行した。その後はしばらく姿を消すが、さくらの顔にアザができたことで再度戻って来ることになる。実際には数十年前に亡くなっていることが明らかにされており、さくらといずみ親子が脳内で作り上げた架空の存在に過ぎなかった。
ばあや
女優時代の若草いずみの家政婦をしていた老婆。赤ん坊時代のさくらの世話をしていたこともあるが、いずみが突然姿を消したことで生き別れた状態になっていた。成長したさくらとの再会を喜ぶが、ばあやはルポライターの波多あきみの策略の駒に過ぎなかった。
田中絹子(たなかきぬこ)
若草いずみよりも世代が上の大女優。いずみと同様に美貌と演技力の持ち主で、多くの大ヒット作品に出演した。大津安二郎監督の『にごり竹』では成長したヒロイン役を演じ、幼少期のヒロイン役のいずみと共演した。しかし、いずみは老け始めていた田中絹子のことを認めておらず、自分の大人になった姿を田中絹子が演じることに泣いて抵抗した。それでも田中絹子は、大人の態度でいずみに接している。
波多あきみ(はたあきみ)
フリーのルポライター。若草いずみの失踪の真相を突きとめて近況を暴くことを目的としており、さくらに接触した。取材中に上原家で人外の行為が行われていたのではないかと推理し、ばあやとさくらを再会させたり、中島から事情を訊くなどさくらへのつきまといの度合いが激しくなっていく。その結果、さくらの排除対象となり惨殺されてしまった。
『洗礼』の用語
針(はり)
『洗礼』に登場する針は、いわゆる鍼灸に用いられる針を意味している。松子の脳をさくらの身体へ移植するおぞましい手術の際に、村上先生が麻酔で何本もの針を両者の肉体へ打ち込んだ。この時、さくらは意識を失わなかったため、グロテスクな手術シーンを最後まで目撃することとなってしまう。また、ルポライターの波多あきみにさくらがつきまとわれた際、彼女は針であきみの動きを止めて最終的に殺害することに成功した。
曙小学校(あけぼのしょうがっこう)
『洗礼』に登場する曙小学校(あけぼのしょうがっこう)とは、上原さくらや良子たちが通っている学校のことである。同作品において学校が舞台の際は、様子が変わったさくらと彼女の謎を暴こうとするクラスメイト(特に中島)の姿が中心に描かれていた。また、大人びたさくらを強調するためにボーイフレンド島が彼女に失恋したエピソードも展開されている。
にごり竹(にごりだけ)
『にごり竹』(にごりだけ)とは、『洗礼』の劇中に登場する日本映画である。監督を大津安二郎(おおつやすじろう)が務め、ヒロインの大人時代を稀代の女優田中絹子が演じた。子役時代の若草いずみがヒロインの少女時代を演じている。この映画が大ヒットしたことでいずみは子役から女優としての地位を確立した。しかしながら、少女の時点でいずみは美醜についてひどい拘りを持っており、「自分の成長した姿をおばさん(田中絹子)が演じるのは嫌だ」と駄々をこねるなど、制作に難航を極めた様子も窺える。
『洗礼』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
Related Articles関連記事
漂流教室(楳図かずお)のネタバレ解説・考察まとめ
『漂流教室』とは、1972年から1974年まで『週刊少年サンデー』にて連載された楳図かずおによるSF漫画作品。公害と「時間を越えた母子の愛」がテーマになっている。小学6年生の高松翔が通う大和小学校が、ある日大きな爆音と揺れに襲われる。揺れが収まり門の外を見てみると、荒廃した大地が広がっていた。生徒のみならず教師までもパニックに陥り次々と死んでいく。環境破壊によって滅びた未来の世界に放り込まれた子供たちは、なんとか生き延びようと様々な困難に立ち向かう。
Read Article
まことちゃん(楳図かずお)のネタバレ解説・考察まとめ
『まことちゃん』とは、楳図かずおによる漫画。『週刊少年サンデー』にて1976年から1981年まで連載された。続編的な位置付けの『超!まことちゃん』も存在する。恐怖漫画家の楳図かずおが、ホラーの手法を用いつつもハイテンションのギャグを生み出したことで大ヒットを収め、『がきデカ』と共に1970年代を代表するギャグ漫画として認知されている作品である。幼稚園児の主人公沢田まことが、通っている聖秀幼稚園や沢田家などで大騒動を巻き起こす様子と、それに巻き込まれた人々が描かれている。
Read Article
わたしは真悟(楳図かずお)のネタバレ解説・考察まとめ
『わたしは真悟』とは、楳図かずおによる漫画。1982年から1986年まで『ビッグコミックスピリッツ』誌上にて連載された。恐怖漫画の第一人者楳図かずおが、来るべき近未来を描いた長編SF作品であり、連載終了後もラジオドラマ化やミュージカル化されるなどの大ヒットを記録した。また、楳図かずおの1980年代の代表作としても知られている。ともに小学6年生である近藤悟と山本真鈴の淡い初恋と、2人の行動の影響で自我を持つに至った産業用ロボットを中心にしてストーリーが展開される。
Read Article
タグ - Tags
目次 - Contents
- 『洗礼』の概要
- 『洗礼』のあらすじ・ストーリー
- プロローグ
- ある母娘
- 恐ろしい手術
- さくらの生きる目的と凄惨ないじめ
- さくらの綻び
- 本当に狂っているのか誰か
- 『洗礼』の登場人物・キャラクター
- 上原家(うえはらけ)
- 上原さくら(うえはらさくら/演:今村理恵)
- 若草いずみ(わかくさいずみ/演:吉田美江)、上原松子(うえはらまつこ/演:秋川リサ)
- 若草いずみの母親(わかくさいずみのははおや)
- 若草いずみの父親(わかくさいずみのちちおや)
- 谷川家(たにがわけ)
- 谷川先生(たにがわせんせい/演:田子千尋)
- 谷川和代(たにがわかずよ/演:網浜直子)
- 谷川貢(たにがわみつぐ)
- さくらのクラスメイト
- 良子(りょうこ)
- 中島(なかじま)
- 島(しま)
- その他(そのた)
- 村上先生(むらかみせんせい)
- ばあや
- 田中絹子(たなかきぬこ)
- 波多あきみ(はたあきみ)
- 『洗礼』の用語
- 針(はり)
- 曙小学校(あけぼのしょうがっこう)
- にごり竹(にごりだけ)
- 『洗礼』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 脳移植手術シーン
- 大人の男性を口説くさくら
- 和代への凄惨ないじめ
- 谷川先生「私が愛しているのは残念ながらお前だっ!!」
- 『洗礼』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 楳図かずおから見た芸能界
- 美醜への拘り
- 「脳は移植されていなかった」という衝撃のラスト
- 『洗礼』の実写映画版
- 『洗礼』の主題歌・挿入歌
- イメージソング:楳図かずお「洗礼」