洗礼(楳図かずお)のネタバレ解説・考察まとめ

『洗礼』とは、楳図かずおによる漫画。『週刊少女コミック』誌上にて、1974年から1975年まで連載された。ホラー漫画の巨匠として有名な楳図かずおは、異形のものの怖さを直接的に表現する作風を得意としている。『洗礼』においてもそのようなシーンは見られるものの、人間の深層心理の不気味さを独特なストリーテリングで描かれていることが大きな特徴で、キャリア中期の代表作の1つとして高評価されている。かつて美貌を誇った大女優が、恐ろしい方法で実の娘に自分の人生を託す様子を描いたホラー作品である。

『洗礼』は、本編連載終了後の1996年2月24日に実写映画版が制作・公開された。楳図かずおの代表作『漂流教室』の実写映画版が失敗に終わったこともあり、楳図かずお作品は「実写に不向き」という評価がなされてきたと言われている。その中で『洗礼』の映画版は、「原作の世界を完全に再現することをあえて諦め、B級ホラーに徹した点が成功した」という論調が多く見受けられた。その結果、『おろち』や『猫目小僧』などが後に実写映画化されるなど、楳図作品のメディアミックスの先鞭をつけた映画とも評されている。なお、『洗礼』の実写映画版は過去にVHSソフトが発売されたものの、その後ブルーレイやDVDは未発売、また動画配信サービスなどにおいても未配信状態である。ちなみに、主人公の名前「上原さくら」について映画版では「若草さくら」に変更されているが、これは同名のタレントがいることからの配慮だと推察されている。

『洗礼』の主題歌・挿入歌

イメージソング:楳図かずお「洗礼」

楳図かずおは、『洗礼』連載中の1975年にアルバム「闇のアルバム」をリリースしてシンガーソングライターとしてデビューした。同アルバムの栄えある1曲目に選ばれたのが「洗礼」である。作詞と作曲を楳図かずお自身が担当した。教会音楽のような荘厳なサウンドのイントロから突如として歌謡曲のような曲調に変化するスタイルは唯一無二であり、独学で音楽を覚えた楳図かずおの個性が如実に出ている。また、歌詞には『洗礼』本編でさくらが教会で祈る妄想のシーンで書かれたモノローグがそのまま引用された部分もあり、同作品が「闇のアルバム」の重要な売りであったことが窺える。

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