フリクリ(FLCL)のネタバレ解説・考察まとめ

『フリクリ(FLCL)』とは2000年から2001年にかけて展開された日本のOVA作品。小学6年生の主人公ナオ太が謎の「ベスパ女」ハル子との出会いをきっかけに、奇想天外な出来事に巻き込まれていくSF青春ドラマである。個性的な登場人物たちの掛け合いと実験的な演出が盛り込まれた作風は、ハイテンポでカオスな魅力に溢れている。多くの謎を持つ独創的な世界観は、海外を中心に高く支持を受け根強いファンを獲得した。

『フリクリ(FLCL)』の概要

『フリクリ(FLCL)』とは2000年の4月から2001年の3月にかけて制作された、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)作品。
『新世紀エヴァンゲリオン』のGAINAX、『攻殻機動隊』シリーズのProduction I.G.の共同で制作された。『新世紀エヴァンゲリオン』で副監督を務め、後に『エヴァンゲリヲン新劇場版』を手がける鶴巻和成の初監督アニメ作品。また脚本に榎戸洋司、キャラクターデザインに貞本義行が起用されるなど、『新世紀エヴァンゲリオン』の多くのスタッフが参加した。

本作の大きな特徴は、独創的かつ実験的な演出技法にある。引きの絵から人物に迫り、その後360度回転する実写で起用されるようなワンショット風のカメラワーク、わざと作画崩れを起こしたような絵のタッチの変化、コマと吹き出しが描かれそのコマを移動する漫画風の表現など、多岐に渡った演出が見られる作品となっている。
合わせて作品の世界観も独特の雰囲気をまとっており、謎が散りばめられつつもあえて全てを説明しない部分や、登場人物の不条理な行動をハイテンポかつポップな掛け合いで走るように成立させているなど、全体的に尖った一作に仕上がっていると言える。

またOVA作品ながらも、CMからDVD・ビデオパッケージで作品の内容に触れることなく展開する、これまた尖った戦略をとった。そんな『フリクリ(FLCL)』は、海外市場では大きな成功を収めた作品として、知名度と人気どちらも高い日本アニメの1つとされている。カナダモントリオールで開催されたファンタジア国際映画祭2003では、アニメーション部門で銅賞を受賞。
ED(エンディング)や挿入歌のほぼ全てを担当した日本のロックバンドthe pillowsも、作品の支持と共に知名度を上げ海外で人気を獲得することとなった。

アニメが原作である本作は、その他に本編を補完する小説(全3巻)とストーリーが多少異なる漫画(全2巻)が展開されている。また、2018年には劇場版2作品『フリクリ オルタナ』と『フリクリ プログレ』が公開。2023年には海外のカートゥーンネットワークの深夜時間帯アダルトスイムで『FLCL:Grunge』と『FLCL:Shoegaze』が放送された。

『フリクリ(FLCL)』のあらすじ・ストーリー

ハル子に轢かれ角が生えたナオ太

ハル子のせいでおでこから謎の角が生えるようになってしまったナオ太

巨大なアイロンを思わせる医療機器メーカー、メディカルメカニカのプラントがあるマバセ市。
小学6年生の少年ナンダバ・ナオ太は、女子高生のサメジマ・マミ美と河川敷で過ごす日々を送っていた。兄が野球留学でアメリカに行ってしまったことから、兄の元彼女であるマミ美の寂しさを埋め合わせるためにいるナオ太。そんなマミ美との関係に「すごいことなんてない」を信条とするナオ太は、子どもながら日常に冷め切った視点を持って生きている。

ある日、いつも通りに河川敷でマミ美と過ごしていたナオ太は、帰り途中に突如現れた黄色いベスパに轢かれてしまう。ベスパに乗っていたのはハルハラ・ハル子と名乗るピンク髪の女性。彼女は轢いたことを悪びれもせず気絶したナオ太にキス、意識の戻った彼の頭を持っていた青いベースで殴打するなどやりたい放題を尽くす。この出来事をきっかけにナオ太のおでこから謎の角のようなものが生える。

この角は彼の感情の高まりと共に膨れ上がり、謎のロボットとなって目の前に現れた。突如現れた二体のロボの争いに巻き込まれるナオ太。そこにハル子が現れ、事態を収束させる。

その後も角は再発し、新たに襲いかかるロボを出現させてしまう体質となってしまったナオ太。自身の身に何が起こっているかわからない彼を待たず、ナンダバ家の家政婦となったハル子、ナオ太を取り込みパワーアップする味方ロボのカンチとの共同生活が始まる。大人ぶったナオ太と彼を振り回す自由奔放な大人たちの物語が幕を開けた。

バット(ギター)を振るナオ太

敵との攻防に巻き込まれる中で、ナオ太は次第に兄タスクの代替として自分のことを「タッくん」と呼ぶマミ実や、傍若無人ながらも魅力的なハル子に認められたいという気持ちが募っていく。

そんな折、ナオ太の前に特殊入国管理官を名乗る政府の人間アマラオが現れ、ナオ太の角やハル子の正体が語られる。
ハル子が宇宙警察の捜査官である話が真実であったこと、ナオ太の頭は彼女と敵対する組織メディカルメカニカと繋がっており、ワープ機能が備わってしまっていたことが判明。
そして、これら2つの勢力に対抗するために作られた政府の爆弾衛星が制御不能となり、マバセ市に迫っていると告げられた。

ハル子にこの爆弾を打ち返すよう伝言を頼むアマラオだったが、彼女はナオ太の頭から新たなギター(フライングブイ)を取り出し、彼に危機を託してしまう。直前の野球の試合でバットを降らなかったナオ太へ、素振りの手解きをしていたハル子。ナオ太は、野球上手だった兄タスクを思い浮かべ、ギターをバットに見立て爆弾衛星を迎え打つ。これに感化されたハル子の追撃によってマバセの危機を救うことに成功。

その姿を見ていたマミ美は「タッくん バット振っちゃった…」と嘆いていた。

ハル子の目的を知るナオ太と新たな「タッくん」を育てるマミ美

マミ美は、ナオ太の兄に捨てられたことや、学校でいじめられていることでマバセがなくなればいいと考えていた。
一方で、自らの意思で動き始めたナオ太は自分に自信が芽生え始める。マミ美のためにもと、兄であるタスクのようにバットを振り街を救ったナオ太だが、正反対の考えであった彼女。二人のすれ違いは大きくなっていく。

そんな折にも、現れるメディカルメカニカからの刺客。ナオ太は以前とは違い、積極的にカンチやハル子と共闘し巨大な手型の敵に向かっていく。戦いの最中、ナオ太を取り込んだカンチが新たに赤いギブソンのSGギターを入手したことで、敵を撃破。このギターは、ハル子が救出しようとしている海賊王アトムスクの持ち物であった。

彼女の真の目的は、強大なワープ能力を持つアトムスクをメディカルメカニカから奪い返し手中に収めること。彼女の公私混同の悲願を聞いたナオ太は、そのために自分が利用されていたことも知る。しかし、マミ美に拒絶されたことや、いつしかハル子に惹かれるようになっていたことから、彼はハル子と行動を共にし始めた。

同時期、ナオ太と会わなくなったマミ美は、偶然河川敷でアトムスクの救出に必要なターミナルコアと出会う。子犬のようなターミナルコアを新たな「タッくん」と名付けたマミ美。彼女はこれまで自分を傷つけた人々の復讐として、彼らの持っている携帯やバイクなどの所有物を「タッくん」の餌として取り込ませていく。

ナオ太は1つ「大人」へと近づく

ターミナルコアの「タッくん」は様々な機器を取り込み大きく成長、マミ美の命令を聞かず暴走を始めた。「タッくん」は行方不明となっていたカンチを見つけ吸収。カンチは、ターミナルコアのパーツの一部であったことが明らかとなる。

前回の戦闘で静止していた巨大な手型の敵に迫るターミナルコアは、同化を試みるが失敗。しかし騒ぎを聞きつけたハル子と共に、もう1つの鍵となるナオ太が現れてしまう。ナオ太に利用されるなと呼びかけるアマラオの声虚しく、ハル子の手によってナオ太はターミナルコアへと吸収される。
再起動した巨大な手は、メディカルメカニカのプラントを握り世界を平らにしようとするも、すんでのところで吸収されたはずのカンチがそれを妨害。そして、カンチの頭からアトムスクの力を得たナオ太が現れる。

自らが欲していた力を奪われたハル子は、激昂してナオ太へと向かっていくも圧倒的なアトムスクの力に歯が立たない。追い詰められ焦るハル子にナオ太は力を解除して告白、彼女にキスをする。同時に自由の身となったアトムスクが出現し、街を半壊させながら地球を後にした。逃げられてしまったアトムスクを追うためベスパに乗るハル子は、ナオ太に別れの言葉を告げる。「一緒に行く? やっぱダメ タッくんはさ まだ子どもだから」

瓦礫の山から抜け出したマミ美は、ハル子が置いて行ったベースを握りしめるナオ太の後ろ姿を見つけカメラのシャッターを切る。
「さよなら ナオ太くん」
そう言って街を出て行くのであった。

時は流れ、中学生になったナオ太。彼の部屋にある雑誌には、マミ美の撮ったナオ太の写真が掲載されてる。題名には「Fooly Coolly」と書かれていた。

『フリクリ(FLCL)』の登場人物・キャラクター

主要人物

ナンダバ・ナオ太

出典: www.pinterest.jp

ナンダバ・ナオ太

CV:水樹洵

本作の主人公。後述する頭の角を隠すため、普段から帽子をかぶっていることが多い。
小学6年生にして、周囲の人々や物事を冷ややかな目でとらえ、斜め上に構える傾向がある。酸っぱいものや辛いものが苦手なことから小っ恥ずかしい青春を毛嫌いしつつも、大人にはなりきれていない人物として描かれている。その性格ゆえに、本編序盤は何事にも消極的で自ら行動を起こさない描写が目立つ。
マミ美やハル子といった年上の女性に振り回され辟易する一方、彼女らが時折みせる異性を意識させる言動や行動には弱い。

ハル子との出会いをきっかけに、頭に角が生える特異体質となってしまう。この角はメディカル・メカニカと繋がっており、ナオ太の感情の高ぶりやハル子の手によって、敵ロボットや武器として使用できるギターが出現する。

ハルハラ・ハル子

出典: flcl.fandom.com

ハルハラ・ハル子

CV:新谷真弓

本作の鍵を握る謎多き女性。ピンクの髪色と長いまつ毛、黄色の瞳が特徴である。黄色いベスパと青いベースを所持している。
ハイテンションでマイペースな性格。ナオ太との出会い頭にキス、その直後に所持しているベースで頭を殴りつけるなどやりたい放題を尽くす。その傍若無人っぷりにたびたびナオ太は振り回される。

正体は、フラタニティと呼ばれる光域宇宙警察官であり本名はハルハ・ラハル。その目的は、フラタニティと敵対するメディカルメカニカに囚われたアトムスクを自分のものにすることである。
アトムスクとは敵対関係にあったが、捜査の渦中で彼の能力に魅せられたことで、恋心を抱くようになった。ハル子がよく身につけている壊れた手錠は、一度彼を捕らえた際につけていたものであり、その存在に呼応するようになっている。彼を取り返すため、メディカルメカニカと繋がっているナオ太を利用していた。
しかし、悪とはいいづらい存在であり、利用しているナオ太を気にかける場面もあるキャラクターとなっている。

身体能力は高く好戦的。所持している青いベース(Rickenbacker 4001 Azureglo)を鈍器や銃、ホバーボードなど様々なものに応用して戦う。

サメジマ・マミ美

出典: 2.5jigen.com

サメジマ・マミ美

CV:笠木泉

ナオ太の兄タスクと付き合っていた17歳の女子高生。語尾に「〜っす」とつける話し方、常に制服でカメラをよく持ち歩いていることが特徴のキャラクターである。間の抜けた会話と異性を思わせる行動で、一緒に過ごすナオ太を振り回すマイペースな人物。破天荒なハル子のマイペースとは対照的と言える。

しかし、そういった行動の奥底には、留学で自分を置いていったタスクへの思いを捨てきれない執着心を抱えている。その気持ちを秘め、彼の代替えとしてナオ太や物語終盤に登場するターミナルコアを「タッくん」と名付けて呼んでいた。いじめられて学校に行っていないため、日常のほとんどを河川敷の高架下で過ごしている。好きだったタスクに置いて行かれたこと、そして居場所のない街から抜け出せない自分へのコンプレックスから、マバセがなくなればいいと思うようになっていく。

カンチ

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