人類は衰退しました(人退)のネタバレ解説・考察まとめ

『人類は衰退しました』とは、田中ロミオによるライトノベル小説である。2012年7月から9月までテレビアニメが放送されるなど、様々なメディア展開がされている。ガガガ文庫オリジナル作品として初めてテレビアニメ化された作品である。人類がゆっくりと衰退した世界で、新人類である「妖精さん」と旧人類「人間」との日々を描いたファンタジーSFストーリー。随所にパロディやブラックユーモアを含み、人気を博している。略称は「人退」。

『人類は衰退しました』の概要

『人類は衰退しました』とは田中ロミオのライトノベル小説およびそれを原作としたメディアミックス作品である。テレビアニメは2012年7月から9月まで放送され、放送当時の人気はそこまで大きいものではなかったが今なお根強いファンが多くいる。原作者の田中ロミオは『CROSS†CHANNEL』や『Rewrite』等のゲームシナリオライターとしても活動しており、本作が小説家デビュー作品かつ初テレビアニメ化作品である。一見ほのぼのとした雰囲気のストーリーであるが、原作者独特のブラックユーモアやパロディが散りばめられている。SF小説として見なされる場合が多く、「SFが読みたい!ベストSF2007 国内編」や「第46回星雲賞」にもノミネートされている。イラストは当初、山﨑透が担当していたが、戸部淑に交代となった。

人類がゆるやかに衰退を続けて数世紀経た世界は、新人類である「妖精さん」のものになっていた。高い知能と技術を持ちながらも平均身長10cmで三頭身の彼らは、楽しいこととお菓子が大好きで、楽しいことを見つけるとすぐ集まってトラブルを巻き起こす。そんな「妖精さん」と旧人類の仲を取り持つ調停官となった「わたし」は、故郷のクスノキの里で日々トラブルに悩まされる。ほんわかした雰囲気とブラックユーモアやシニカルジョークが絡み合い、複雑でありながらも何故か受け入れられてしまう物語が続いていく。

『人類は衰退しました』のあらすじ・ストーリー

妖精さんの、ひみつのこうじょう

人類がゆるやかに衰退を続けた地球は、人類より遥かに優れた科学技術を有する新人類の「妖精」さんと旧人類が共存する世界だった。調停官の「わたし」は妖精さんと人間との間を取り持ちながらも、日々、妖精さんの起こすトラブルに巻き込まれていた。

ある日、物資不足で窮地に陥っていたクスノキの里に赴いた「わたし」は、鶏を食用に殺処分しようとしたが逃げられてしまった。
そのことを説明すると、妖精さんは落ち込んでしまう。
それから数日後、クスノキの里に「妖精社」と印のある商品が多数出回る。妖精社の物資はいつの間にか勝手に補充されているらしい。
一方、逃した鶏を捜索することになった「わたし」は動く加工済みの鶏肉を発見するも、結局逃がしてしまい、里には走る鶏肉の噂が広まる。「わたし」は鶏肉に押された焼印から、最近クスノキの里に多数の商品を出回らせている妖精社が怪しいと睨み、調査のため、祖父、助手さん、妖精の中田さんとともに妖精社の工場を訪れる。
工場では受付さんが中を案内してくれたが、気づくと祖父が居なくなっていた。受付さんが探しに行くも、受付さんも帰ってこなくなり、いつの間にか助手さんとも逸れてしまった。そこで「わたし」は、工場長を名乗る文化局長と出会う。彼の案内で経営陣の元へ赴くと、そこにいたのは知能を持った加工済み鶏肉だった。世界征服を企む鶏肉らに捕まってしまうも、助手さんが助けに現れる。助手さんから逃げ惑う鶏肉たちだったが、結局崖から身を投げてしまう。
祖父、受付さん、文化局長を助け出した「わたし」は、鶏肉たちにパックにされていた妖精さんたちを見つける。妖精さんたちを助け出し工場のことを聞くもよくわからない様子で、結局真相は闇に包まれる。

妖精さんたちの、さぶかる

同類誌を発見した「わたし」

「わたし」の学舎時代の旧友であり悪友でもあるYは、クスノキの里のはずれにある屋敷に来ていた。そこで亡くなった主人の遺品整理をしている途中、出版物データと書類を複写する機械を見つける。
それから1週間後、街に出回った男性同士の恋愛漫画雑誌の出所を探っていた「わたし」は、Yが屋敷で雑誌を発行していることを知る。Yが自ら「同類誌」と名付けたこの雑誌は全国に広く流通し、多くのファンレターが届くまでに至った。更にその流通は広がり、同類誌を真似た別の同類誌まで現れ派閥争いを繰り広げるなど、大いに盛り上がっていく。
そんな中、「わたし」とYは偶然見つけた謎の同類誌の中に吸い込まれてしまう。そこには漫画のコマのような世界が広がっていた。自分たちが漫画を描くと先に進めるという不思議な世界で、「わたし」とYは助手さんを発見するも、外に出る方法がわからず窮地に陥る。
途中で見つけた妖精さんたちに外へ出る方法をたずねると、「オチをつける」か「打ち切りになる」と答え、さらに打ち切りになると酷いことになると教えてくれた。紆余曲折を経てストーリーを進める「わたし」たちだったが、結局打ち切りとなってしまう。ただ、打ち切りの罰は家業を継ぐことだったため、既に家業を継いでいる「わたし」に問題はなかった。

妖精さんの、おさとがえり

謎のモノリスが発見された場所を訪れる「わたし」。モノリスは宇宙からの落下物のようにも見えたが、イタズラとして処理されてしまう。

町では、ヒト・モニュメント計画の一環として、都市遺跡調査の前線基地予定地で、衛星から充電アンテナへ供給した電力を使い「電気祭り」の準備をしていた。しかし、妖精さんはこれを嫌がり、「電磁波の奴が来る」と言い残したまま、お守りとマニュアルを置いて逃げてしまう。
電気祭りの日、「わたし」は、記憶喪失ならぬ記録喪失の女の子・ピオンと出会う。仲間を探しているという彼女に「わたし」はなぜか違和感を覚える。
都市遺跡調査に繰り出す「わたし」と助手さんは、迷路のような都市に迷い込んでしまい、スライムに襲われる。助手さんが見つけたモノリスでスライムを撃退するが、今度は犬型ロボットに襲われる。そこにピオンが現れ、助けてくれる。ピオンはどうやらモノリスが変化したロボットのようだ。
ピオンと共に遺跡を散策している「わたし」たちの前に、ピオンの同類で彼女が探し続けていた人物のオヤゲが現れる。何故か戦闘を始める二人だったが、記録を取り戻したピオンがオヤゲを倒し、ピオン同様記録喪失だったオヤゲの記録を回復させる。
ピオンの正体は「PIONEER」という過去に人類が打ち上げた深宇宙探査機であり、オヤゲも同様に「VOYAGER」という深宇宙探査機で、二人ともヒト・モニュメント計画により地球に戻るよう指令を受けていた。「わたし」は二人と電磁波を嫌う妖精さんのため、受電施設を破壊するが、すぐにバレてしまい責任を取らされる。結局、PIONEERとVOYAGERは充電ができなくなったため里に残ることとなった。

妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ

お菓子が大好きな妖精さんに「わたし」が「私がたくさんいたらよかったのですけどね」と話すと、妖精さんから「わたし」をクローンで増やすことが提案されるが却下する。
ある日、祖父の指示で初めて会う助手さんを町に迎えに行った「わたし」は、道中で妖精さんから味の無いバナナを貰う。町に着くも、助手さんが居なくなったことを知った「わたし」が林を探していると、自分に似た女性と出会う。そこで何故かバナナの皮で転んでしまい、意識が途絶える。
気が付くと、「わたし」は事務所に戻っており、犬を見ていた。祖父の指示で初めて会う助手さんを町に迎えに行く「わたし」は、道中で妖精さんから美味しいバナナを貰う。助手さんを探して林に入った「わたし」は、林の中で自分に似た女性と出会い、バナナの皮で転ぶ。
気が付くと、また犬を見ている「わたし」。妖精さんにバナナを貰い、助手さんを探して林に入ると、自分に似た女性たちがお菓子作りをしていた。また、バナナの皮で転ぶ。
いつの間にか林では多くの女性たちがお菓子を作りながら助手さんのうわさ話をし、町は何故か犬だらけになっていた。
繰り返されるループはたくさんの「わたし」にお菓子を作らせるため、妖精さんが引き起こしたものだった。そして、増え続ける犬はループによって起こる矛盾の産物「タイムパラドッグス」なるものであった。
「わたし」は助手さんとループの最後にやっと出会うことができた。それまで助手さんらしき人物とはループの中で度々出会ってはいたものの、本当の助手さんではなかった。自分というものの定義を持っていなかった助手さんはループの中で自分の噂話を集め自分を定義しようとしていた。そのため、林の中でたくさんの「わたし」が行うお茶会を利用していたのだ。

妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ

クスノキの里では妖精さんが大量に集まり、そのストレスによるいじめが妖精さんたちの中で発生する。「わたし」はいじめられている妖精さんたちを連れ、妖精さんがいない地域へ単身赴任することなった。途中、湖の桟橋が壊れ、島に流れ着く「わたし」と妖精さんたちは遭難生活を始める。
「わたし」が鬱状態の妖精さんたちに建国を提案すると、彼らは前向きに取り組み始め、「わたし」を女王に就任させる。
国は急激に発展してゆき、妖精さんの手によって女王である「わたし」のために家やベッドや発電施設などが作られた。それに対し、女王の「わたし」はお菓子を作り、妖精さんたちに分配した。
妖精さんたちは急激に増えていくが、島を発展させるため木を伐採し続け、モニュメントを作り続けていった結果、植物が育たなくなり、文明が崩壊する。
遂に島からの脱出を決意する「わたし」だったが、雨が止まず脱出ができない。雨の原因は妖精さんの鬱だった。結局、雨は降り続け、島は沈没してしまう。陸に流れ着いた「わたし」はまた国を作ろうとする妖精さんを止め、解散させる。助けに来た祖父と助手さんにこの失敗を知られ、怒られる。

妖精さんたちの、ちきゅう

「わたし」は人類最後の教育機関である「学舎」を卒業し、調停官として故郷のクスノキの里に帰ってくる。調停官の初仕事として妖精さんに挨拶に行くも、向かった先には無人のゴミ山があるだけだった。
後日改めてその場に出向いた「わたし」がゴミ山に金平糖を置いて姿を隠すと、沢山の妖精さんたちが現れる。ほとんどの妖精さんに逃げられるも、なんとか3人捕まえて家に連れて帰り、それぞれに名前を付けてあげる。すると、名前を貰った妖精さんから「他の妖精さんにも名前をつけてほしい」と頼まれてしまう。
妖精さんを山に返した次の日、妖精さんの手によってゴミ山がメトロポリスになっていた。「わたし」の元へ沢山の妖精さんが名前を付けてほしいと集まってくる。妖精さんが多く集まり過ぎて困った「わたし」は彼らに人名事典を渡し自分たちで名前をつけさせると、「神」と崇められてしまう。難を逃れるため、「わたし」が「次はあなたが神様」と妖精さんにタッチすると、そこから「神様」を嫌がる妖精さんたちの鬼ごっこが始まる。そのせいでメトロポリスは崩壊し、妖精さんたちはいなくなる。

妖精さんの、ひみつのおちゃかい

10歳になり周りから遅れて学舎に入学した「わたし」は、自分より年齢の低い学級に入ったことで、Yを筆頭とした同級生からいじめにあう。
ある日、男子学生から助けた妖精さんを部屋に連れ帰った「わたし」は、角砂糖を渡して話を聞いてもらう。その日の夜、妖精さんに「一人はいやです」と打ち明けると、妖精さんは「それは容易い」と答え、「わたし」はこの時の記憶をなくす。
その後、成績優秀だったため歳相応の学年飛び級した「わたし」はいじめられなくなる。そこへ、年下で前に同級生だった巻き毛も飛び級してくる。すると今度は巻き毛がいじめにあう。「わたし」が巻き毛を助けると、彼女は喜び、半ば強引に「のばらの会」というお茶の会に誘われる。
のばらの会に参加するようになった「わたし」は、ふとしたきっかけでかつて会に参加していたYの秘密を知る。Yは自身の隠し部屋に少年同士の行き過ぎた恋愛本を隠し持っていた。秘密をばらさないことを条件に、Yは自分の知るのばらの会のメンバーの情報を明かしてくれる。のばらの会のメンバーは全員が異常な趣味を持つ変態だった。Yとも和解した「わたし」はのばらの会から徐々に疎遠になり、そのまま学舎を卒業する。
時は過ぎ現在、調停官になった「わたし」のもとに現れたYは学舎時代の寮母ロボットを置いていく。妖精さんにお願いして修理してもらうと、中から「お勤め終了」と学舎時代に助けた妖精さんが飛び出してくる。それを見て「わたし」は涙してしまう。
その夜、夢の中に妖精さんが現れ、まだ寂しいかと「わたし」に問いかける。その問いに「わたし」は「いえ、頭の中でいつもお茶会が開かれているようなものですから」と答える。

『人類は衰退しました』の登場人物・キャラクター

主要人物

主人公(わたし)

CV:中原麻衣
本作の主人公。旧人類の女性で、新人類である「妖精さん」との間を取り持つ調停官として活動する。新しくクスノキの里の調停官に任命され、直属の上司である祖父から仕事を引き継ぐため、日々雑用や妖精さんの巻き起こすトラブル対応をこなしている。
呼ばれ方は様々で、妖精さんからは「かみさま」「にんげんさん」、両親からは「マーゴ」、クスノキの里の娘さんたちには「先生」、Kには「Mさん」と呼ばれている。
あまり仕事熱心ではなく、かなりの人見知りでおっとりとした性格。しかし、頭の回転は速く、内面はわかりやすいほど狡猾で腹黒。親しい人の前では毒舌になる傾向があり、友人のYには「歩く詐欺師」や「分かりやすい小悪党」と言われる。
本作の語り部であり、「わたし」が「妖精さん」の起こす騒動に巻き込まれていくことで物語が進行する。

妖精さん

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