天国大魔境の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『天国大魔境』とは、2018年3月から『月刊アフタヌーン』にて連載をしている、石黒正数による漫画作品。
閉鎖的な施設で暮らす子供たちと、崩壊した日本を旅する二人の少年少女、二つの視点で物語が進行していく。
物語が進むにつれ、二つの視点には時差があることが分かっていく。何気ない一言、なんてことない背景、それらが互いの視点の伏線となっている。作中にちりばめられた伏線回収の鮮やかさが魅力の作品である。

トキオは、テスト中に「外の外に行きたいですか」という謎の設問が出題されたと言う。先生や他の生徒たちには心当たりはなくみんな首を傾げる事態となった。テスト後、ミミヒメは「トキオは外がどうなっていると思う?」と問う。学園の子供たちにとって、世界は学園の建物と、壁に囲まれた園庭だけだ。それ以上の世界を子供たちは知らない。しかし、ミミヒメは「外の外はある」とハッキリトキオに言う。ミミヒメは他の子供たちよりも予知や予感の能力に優れている。ミミヒメは、ここ最近感じている予感をトキオに打ち明ける。「僕が外に出たいなー外に出たいなーと思ってると 外からふたりの人が僕をたすけに来てくれる そのひとりの顔が トキオにそっくりなんだ」と言った。このミミヒメの予知は、十数年後に現実となる。ミミヒメが病におかされ、死んで解放されたいと願っているところに、マルとキルコが現れるのだ。ミミヒメはこの出来事を、ずっと前に予知していたというエピソードになっている。

「い………痛い 痛いのはやめて」

オーマに幻覚を見せられ発狂するミミヒメ。無数の機械に身体を切り裂かれる幻覚は、未来予知に関係したものだった。

いつも一人で遊んでいるオーマが気になり、ミミヒメは声を掛ける。するとオーマは「ぼく……みんなの迷惑……」と言いながら涙をポツリと流す。ミミヒメがオーマの涙をぬぐうために黒いサングラスを外す。すると、オーマと目があった瞬間、何もない空間から突如無数の機械が出現する。機械たちはミミヒメをとらえ、メスやナイフなどのあらゆる刃物が突き刺さる。ミミヒメは「い………痛い 痛いのはやめて」と抵抗するが、機械は容赦がない。ついにはミミヒメは絶叫しながら気絶をしてしまった。これは、オーマが持っている「目が合うと相手の最も恐れているものを幻覚で見せる」という能力である。
ミミヒメが目を覚ますまでの数時間、医務室の外で待つオーマ。ミミヒメが自室に戻るために外に出ると、自分を待っていたオーマに驚いた。オーマはミミヒメが差し出してくれたハンカチを返すためにずっと一人で待っていたのだ。さらにオーマは泣きじゃくりながら「ミミヒメ……ごめんなさい……」と言う。ミミヒメはそんなオーマのサングラスを外し、あらためてオーマの目を見つめる。慌てるオーマだが、すでに幻覚が発動し、またも無数の刃物がミミヒメを襲う。しかしミミヒメは「消えろ 消えろ 消えろ」と心の中で唱え、自力で幻覚を克服する。そして、「オーマの迷惑ってやつ 僕には効かないから もう泣いたり謝ったりしなくていいよ」と優しくオーマの涙を拭うのだった。

「青く光ってる……きれい……」

初めて学園の外に出たミミヒメとシロは、空のあまりの綺麗さに呆然とする。

全校生徒が集められ、人工知能の先生から「これから長いテストが始まります」「外の外へ到達する事が’’ヒルコ‘‘である皆さんの役割です」と告げられる。誰も状況が理解できないまま、数日が経った。先生の言うテストらしきものが始まらない。
突如、すさまじい爆撃を受け、学園の周囲を囲う壁に穴が開いた。大人たちも状況が呑み込めず、すぐに子供たちの元へ向かうことが出来なかった。ミミヒメ、シロ、アンズ、タカは「これが先生の言うテストなのかもしれない」と考え、4人だけで壁の外へ向かう。壁の向こうへ足を踏み出し、「外の世界」に度肝を抜かれる4人。4人は壁と天井に囲まれた小さな空間しか知らない。はじめて目の当たりにした、途方もなく高い青空。ミミヒメは「てっ天井が 高いっ」と尻餅をつき、それをシロが受け止めるが二人で地面に倒れこんでしまった。はじめての空はあまりに美しく、ミミヒメは「青く光ってる…… きれい……」と、見とれるのだった。

最期の願いは「この目でもう一度空を見ること」

星尾(ミミヒメ)の目は、宇佐美(シロ)の目が移植されていた。星尾は一緒に空を見上げた宇佐美の目で、最期にもう一度空を見たいと望んだ。

宇佐美(シロ)の依頼で、星尾(ミミヒメ)の心臓を止めることになったマルとキルコ。星尾は、ヒルコになる病を発症していた。発症した部位を切断し、機械につなぎ、何とか人間として生きていた。これ以上症状をとどめておくことは難しく「人間のまま死ぬこと」を星尾も宇佐美も望んでいた。
星尾が死亡する話は第21話、ミミヒメたちがはじめて空を見た日の話は第36話のため、時系列が逆転している。マルとキルコと出会った二人は、宇佐美と星尾と名乗っており、読者からも二人がシロとミミヒメであることはわからないまま話が進んでいく。星尾の「この目でもう一度空を見たい」という願いが、どれだけ大切であるかは、本作を読み進めて行くと判明する仕掛けになっているのだ。ミミヒメが外の世界で見た「空」への感動が、ここでも描写されている。

シロ/宇佐美俊の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「ミミヒメを助けるために……僕の体が何回切り刻まれてもかまわないんだ……」

自分を犠牲にしてまで、ミミヒメを助けるシロ。その理由は純粋に「ミミヒメが好きだから」というものだった。

はじめて学園の外に出た、シロとミミヒメ。外の世界を散策していると、崖から足を踏み外してしまったミミヒメ。転落しそうになるミミヒメを庇い、シロが大けがを負う。ミミヒメは泣きながら「なんでそんなに僕を助けるの⁉」と問う。すると、シロはぽつりぽつりと、自分の心情を語る。「ミミヒメの事を考えると…… ……いや うーん……」と、自分で自分の心を整理するように話し始めるシロ。ぶつぶつと独り言のように喋っていたシロは、今はじめて自覚したかのように「僕はミミヒメが大好きなんだ……」とハッキリと感情を言葉にする。「ミミヒメを助けるために……僕の体が何回切り刻まれてもかまわないんだ……」と心情を吐露するシロに、ミミヒメは自分の制服のボタンを贈る。
しかし数年後、ミミヒメはヒルコの症状が発症してしまう。ミミヒメを人間として延命するため、シロは自らミミヒメの身体を切り落とさざる負えない運命となる。

「怪物になる病気を発症して死んだ 元・人間だ」

人喰いのヒルコが元々は人間だったことが判明するシーン。

キルコが探す医者の手がかりを掴むため、不滅教団に潜入したキルコとマル。教団の地下に巣くっていたヒルコを殺す様子を見ていた宇佐美は、マルに「どうかもう一人……殺し…………助けて欲しい人がいる……」と依頼を持ち掛ける。宇佐美に連れられてやってきたのはビルの中の一室。そこには全身を包帯に巻かれ、手足の無い人間・星尾が無数の機械に繋がれていた。宇佐美はマルに「星尾を殺してほしい」と言うのだ。マルは「死なせたいなら機械を止めりゃいいじゃねーか…」と言うが、宇佐美は「止めれば彼女は地下にいたような怪物になる」と衝撃の事実を告げる。これまで人々を襲っていたまがまがしい怪物は元・人間だったことが判明するエピソードである。

星尾(ミミヒメ)のあとを追い、自ら命を絶つ宇佐美(シロ)

星尾(ミミヒメ)のことが好きだった宇佐美(シロ)は生きる理由を失い、自殺する。

マルが持つ、ヒルコを殺す能力により、死亡した星尾。その星尾を埋葬すると言い残し、宇佐美はビルの中へ消えていく。マルとキルコは、いくら待っても戻ってこない宇佐美に異変を感じ、急いでビルの中へ駈け込んでいく。しかし、宇佐美は星尾の亡骸を抱きながら、すでに絶命していた。宇佐美の手には、ボタンが握られており、この時点では何を意味しているかは読者もわからない状況である。しかし、後に明からされるシロとミミヒメのエピソードにて、ボタンはミミヒメからシロへ贈られたものだと判明する。シロは、生涯ミミヒメからもらったボタンをお守りのように、肌身離さず持ち歩いていたのだった。
マルとキルコは、宇佐美が握っているボタンの紋章に目が留まった。紋章とキル光線に埋め込まれている紋章が同じものだったのだ。以降マルとキルコは、この紋章を旅のヒントにする。

コナの名言・名セリフ/名シーン・名場面

空想上の生物を描くコナ

第1話で不思議な生き物を描いているコナ。生き物たちはコナの予知により、将来ヒルコとなる学園の子供たちを描いている。しかし、この時点ではそのようなおぞましい未来が待っていることを読者はまだ知らない。

絵を描くことが得意なコナは、いつも空想上の生き物を描いている。キルコとマルが退治しているヒルコは、コナが描く生き物とそっくりに容姿である。そのため、コナは未来予知の能力があることが考えられる。

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