天国大魔境(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『天国大魔境』(てんごくだいまきょう)とは、文明が崩壊した後の世界を生き抜く少年少女たちが世界の謎を解き明かしていく様を描いた、石黒正数による漫画作品。2019年には高名な漫画賞である「この漫画がすごい!」でオトコ編第1位に輝いている。
未曽有の大災害で人類文明が崩壊して15年。外界から閉ざされた施設で暮らすトキオは、「外の世界に行きたいか」とのメッセージを受け取り戸惑う。異形の怪物が徘徊する外の世界では、キルコという少女がトキオと同じ顔をしたマルと共に“天国”目指して旅を続けていた。

『天国大魔境』の概要

『天国大魔境』(てんごくだいまきょう)とは、文明が崩壊した後の世界を生き抜く少年少女たちが世界の謎を解き明かしていく様を描いた、石黒正数による漫画作品。
2018年に連載開始されるなり、その作り込まれた世界観と先の読めない展開で一気に注目作となる。各方面から高く評価され、2019年には高名な漫画賞である「この漫画がすごい!」でオトコ編第1位に輝いた。

未曽有の大災害で人類文明が崩壊して15年。外界から閉ざされた施設で暮らすトキオは、抜き打ちテストの最中に「外の世界に行きたいか」とのメッセージを受け取り、それが何を意味するのか分からずに戸惑う。クラスメイトのミミヒメに相談すると、彼女は「外から2人の人間が自分を助けに来る。その内の1人はトキオと同じ顔をしている」との予言を口にする。
その外の世界は、トキオたちが暮らす施設とは打って変わってどこまでも廃墟が広がり、異形の怪物が徘徊する危険な場所と化していた。そんな世界を生きる少女キルコは、時に怪物から逃げ回り、時に生き残った人々に襲われそうになりながら、トキオと同じ顔をしたマルと共に“天国”目指して旅を続けていた。

『天国大魔境』のあらすじ・ストーリー

天国を目指す旅

荒廃した世界を旅するマル(左)とキルコ(右)

未曽有の大災害で人類文明が崩壊して15年。外界から閉ざされた施設で暮らすトキオは、抜き打ちテストの最中に「外の世界に行きたいか」とのメッセージを受け取り、それが何を意味するのか分からずに戸惑う。クラスメイトのミミヒメに相談すると、彼女は「外から2人の人間が自分を助けに来る。その内の1人はトキオと同じ顔をしている」との予言を口にする。

その外の世界は、トキオたちが暮らす施設とは打って変わってどこまでも廃墟が広がり、異形の怪物が徘徊する危険な場所と化していた。そんな世界を生きる少女キルコは、時に怪物から逃げ回り、時に生き残った人々に襲われそうになりながら、トキオと同じ顔をしたマルと共に“天国”目指して旅を続けていた。運び屋をしているキルコは、そこにマルを届けるようミクラという人物から依頼されたはいいが、どこに天国があるのかは分からず手掛かりを求めて各地に足を延ばしていたのだった。
そのミクラから、マルは「自分と同じ顔をした人物に打て」と薬の入ったカプセルを渡されていた。そうすれば“多くの人が助かるかもしれない”とのことだったが、その真意までは分からない。雲をつかむような旅を続ける中、いつしかマルはキルコに想いを寄せるようになるが、彼女は「この体は女だが、脳みそは男のものなので、自分は実質男だ」と言って告白を断るのだった。

桐子と春希

5年前、東京で竹早桐子(たけはや きりこ)、竹早春希(はるき)という姉弟が暮らしていた。ある時春希はヒルコに襲われて胸から下を失い、駆け付けた桐子の胸の中で意識を手放す。しかし明らかに致命傷を負っていた春希は病院で目覚め、自分が姉の肉体を得ていることを知って驚愕。「姉にもなんらかの事態が起こった」、「姉が交流していた迫田という謎の医師によって自分の脳が桐子の肉体に移植された」と推理した春希は、自分が目覚める前に姿を消した迫田を探して運び屋を続けていたのだった。
東京に向かう船上で、そんな自分の身の上を明かすキルコだったが、マルは「いきなりそんなことを教えられても」と戸惑うばかりだった。そんな時、巨大な魚型のヒルコが船を襲撃する。どうにかこれを退治したキルコたちは、船長たちから気に入られ、彼らから天国のヒントとなる情報を受け取る。キルコにマルの護衛を依頼したミクラという女性が持っていた、今はキルコの持つ光線銃についているマークと同じものがとある町にあるというのだ。しかしその町にあったのは「よく似たマークのついた廃墟」でしかなく、2人は肩を落としつつ天国探しの旅を続けていく。

一方、施設ではトキオが学友のククに誘われて、“立ち入り禁止区域の中で見つけた赤ん坊”と対面していた。それらの赤ん坊は、外の世界で暴れ回るヒルコによく似た風貌を持っていたが、ヒルコを見たことのないトキオたちは「これが赤ん坊なのか」と感心するばかりだった。この時、立ち入り禁止区域に侵入者があったことを報せるアラームが鳴ってしまうも、どういうわけか教師たちは別の区画へと誘導され、トキオたちはなんとか逃げおおせる。
施設では性教育は行われていなかったが、年頃になったトキオたちは自然と異性を求めるようになる。トキオ自身はこれに戸惑うも、以前から好意を感じていたコナという少年に「もし誰かに触れられるなら君がいい」と伝え、彼から同じ気持ちだと伝えられて幸福を噛み締める。

トキオの異変

かつてマルはどこかの養護施設のような場所で、同年代の子供たちと一緒に暮らしていた。やがてそこは閉鎖されることとなり、ほとんどの子供たちが大人に引き取られて去った後、マルは残った子供たちと一緒に見知らぬ大人と行動を共にするようになる。自警団のような活動をしていた彼らは、別の組織と抗争してはトップが入れ替わって吸収され、いつしかマルはミクラという人物と旅をするようになっていた。通称“マルタッチ”ことヒルコを殺す技もミクラに教わったものだったが、その彼女も死に、マルはどこにあるかも分からない“天国”をキルコと共に探し続ける。
ある時、キルコと共にホテルに泊まったマルは、その主でもある少女に迫られ、慌てて彼女を組み伏せる。どういうわけか、ヒルコに対してしか使えないはずのマルタッチが彼女に対しては使えることに気付き、マルは驚く。少女は大災害の後に生まれた子供らしく、そのことが何か関係しているものと思われたが、キルコたちにはそれ以上のことは分からなかった。

一方の施設では、タラオという少年が謎の病により息を引き取っていた。学友たちと共にその死を悼むトキオだったが、自身も体に謎の変調をきたし、「自分もタラオのように死ぬのではないか」と恐怖する。タラオの遺体は火葬されるが、その体内からヒルコの核に酷似した物体が発見され、施設の大人たちは大騒ぎする。

不滅教団の依頼

旅を続けるキルコとマルは、心許無くなった旅費を稼ぐため、ヒルコ退治をしようと考える。看板を掲げて待つこと数日、2人はリヴューンという組織からの依頼を受ける。彼らは「不滅教団」という医療団体と敵対しており、彼らが拠点している病院の地下で飼育されているヒルコを退治してほしいというのだ。
不滅教団は、「人体実験をしている」、「ヒルコの肉体を移植することによって不死を得ようと画策している」といった怪しい噂の絶えない組織だった。リヴューンの手引きでキルコたちは不滅教団の拠点である病院の地下に侵入し、果たして情報通りに現れたヒルコを苦戦しながらも撃破。するとそこに宇佐美という男が現れ、キルコたちがヒルコを倒したことに驚きつつ、2人に「ヒルコの命を奪えるのなら、殺してほしいヤツがいる」と仕事を依頼してくる。

宇佐美によると、ヒルコとは特殊な病に感染した人間が死後に姿を変えたものであるらしい。不滅教団はもともとヒルコ化の病に侵されたとある人物をなんとか救おうとして宇佐美が作ったもので、リヴューンの言う“人体実験”とはヒルコ化の進行を遅らせるための処置を誤認したものだった。宇佐美に乞われるまま、マルはヒルコ化に苦しむ人物を手にかける。もはやそうやって命を奪う以外に救う方法のなかったその人物は、「人のまま死なせてくれてありがとう」とのメッセージをキルコたちと宇佐美に残していくのだった。
暴徒化したリヴューンが不滅教団に乗り込む中、宇佐美は「もっとも守るべきヒルコ化の患者が死んだ以上、ここを守る意味はない」と病棟を放棄。他の患者たちを別の場所へと移送する手筈を整え、自身はヒルコ化の患者の亡骸を抱き締めたまま自害する。2人がどのような関係にあったのかも分からないまま、キルコとマルは彼らの冥福を祈り、同時に不滅教団の構成員への聞き込みで天国とロビンに関する情報を手に入れるのだった。

高原学園の異変

天国とロビンにつながる手掛かりを得たキルコとマルは、さらなる調査の中で「高原学園」という施設の存在を知る。そこはキルコが譲り受けた高性能の光線銃の出所であり、文化が崩壊したこの世界において高度な技術を有する謎めいた組織でもあった。
その頃、施設ではトキオがコナの子を妊娠したことが確認され、経営者たちが上から下への大騒ぎを繰り広げていた。彼らはこれを「高原学園を揺るがす緊急事態」と捉え、対策を取るべく関係者を収拾。それから数か月、次期代表の座を巡って大人たちの暗闘が繰り広げられる中、トキオはコナの子を出産する。その後トキオたちには「学園の外に出るための試験」が課せられ、今まで夢物語だった“外の世界”の存在に彼らは興奮と困惑を抱く。

そんな折、学園を何者かが襲撃。大人たちが慌てふためく中、ミミヒメたち一部の子供たちが壊れた壁の隙間から外へと出てしまう。生まれて初めて“学園の外”を見たミミヒメたちは声も無いほどに驚くが、大人たちが自分たちを“ヒルコ”と呼んでいることはまだ知らなかった。
一方、高原学園を探す旅を続けるキルコとマルは、とある村でついにロビンと再会。複雑な想いを抱きつつ「積もる話もあるだろう」とマルに送り出されたキルコは、子供心に憧れていたロビンと5年ぶりの会話を楽しむ。しかしそのロビンは何を考えてかキルコを拘束し、彼女と強引に肉体関係を結ぶ。

旅の終わりと新たな旅立ち

あまりに帰りが遅いキルコを心配したマルは、様子を見に行った先で彼女が監禁されていた事実を知り、激昂してロビンを殴り倒す。トドメを刺そうとしたところでキルコが駆け付け、「ロビンを殺さないでくれ」と懇願したことでマルは拳を止めるも、惚れた相手を守れなかった自分自身に絶望する。
それでも2人はそれぞれに立ち直り、天国を目指す新たな旅に出立する。「ロビンに会う」という自身の旅の目的を叶えたキルコは彼のことを吹っ切り、マルは改めて彼女に告白。「これからも助けてほしい、その代わりいざという時は俺が守る」というマルの言葉に、「それじゃ護衛の立場が無い」とは言いつつ、キルコは嬉しそうな表情を浮かべるのだった。

一方、高原学園ではミミヒメたちが好奇心に駆られて学園の外に出てしまっていた。初めて見る外の世界に戸惑い、おびえ、いったん戻ろうとするも迷ってしまいそれも叶わない。学園の内部では内部で大いに混乱し、トキオは「これ以上学園の機能を維持できない」と判断した大人たちから、保護という形で彼らに奪われた自分の赤ん坊を手渡されていた。
その時、トキオの子を自身の計画に利用とする派閥の者たちがその場に現れ、彼女から赤ん坊を奪わんとする。トキオは咄嗟に不可思議な能力を発動し、赤ん坊を守ろうとする。

キルコたちが出発した後、ロビンもまた姿を消す。連絡が途絶えたことを不思議に思った彼の仲間たちが、ロビンがねぐらにしていた施設を訪れると、そこには生きたままヒルコとつながれて正気を失った女性がいた。ロビンの素性も目的も突き止められないまま、彼らはヒルコに驚いて撤退する。
どういった経緯の末か、ミミヒメたちもまた学園を離れることとなった。ボートに乗せられて海上を進む彼らの前には、文明崩壊後の世界には似つかわしくない、夜闇に光り輝く摩天楼がそびえ立っていた。

『天国大魔境』の登場人物・キャラクター

主要人物

マル

CV:佐藤元

キルコと共に旅をする15歳前後の少年。身体能力が並外れて高く、銃で撃っても死なないヒルコに素手で致命傷を与えられるなど謎の多い人物。
キルコのことは「ねーちゃん」と呼んで気安く接しているが、内心では異性として意識している。

キルコ

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