天国大魔境の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『天国大魔境』とは、2018年3月から『月刊アフタヌーン』にて連載をしている、石黒正数による漫画作品。
閉鎖的な施設で暮らす子供たちと、崩壊した日本を旅する二人の少年少女、二つの視点で物語が進行していく。
物語が進むにつれ、二つの視点には時差があることが分かっていく。何気ない一言、なんてことない背景、それらが互いの視点の伏線となっている。作中にちりばめられた伏線回収の鮮やかさが魅力の作品である。

『天国大魔境』の概要

『天国大魔境』とは、2018年3月から『月刊アフタヌーン』にて連載をしている、石黒正数による漫画作品。舞台は、何らかの理由で文明が崩壊した日本となっている。2019年「このマンガがすごい! オトコ編第一位」を受賞。2023年4月にはアニメが放送された。本作は、過去の石黒作品に登場していたキャラクターと同じ容姿のキャラクターを登場させる、スター・システム制を採用している。

謎の壁に囲まれ、閉鎖的な施設で暮らすトキオ。トキオは同世代の子供たちと共に、教育を受けながら何一つ不自由のない暮らしをしている。ある日、抜き打ちテストを回答中の電子画面から「外の外に行きたいですか」と問いかけられる。しかし、トキオ以外の回答者にはそのような問題は出題されず、トキオは疑問に思う。
一方、荒廃した日本を旅をマルとキルコ。マルはミクラという女性から「マルと同じ顔をした人間が『天国』という場所にいる」と教えられ、「天国」を目指していた。キルコはミクラの依頼で、マルのボディーガードとして旅に同行している。
本作は、崩壊した世界の残酷さと、それでも逞しく生きていく人々が時にシリアスに時にコミカルに描かれている。崩壊した世界にはびこる怪物・ヒルコの謎や、登場人物たちの関係性は物語が進むにつれて次々と明らかになっていく。登場人物の何気ない一言、何気ないシーンが後々伏線回収となり、数々の名場面を生んでいる。

マルの名言・名セリフ/名シーン・名場面

「ごめん あいつ殺してくる」

涙を堪えながら、人喰いを殺す戦略を考えるキルコ。崩壊した世界で自分が生き残るため必要な冷静さだった。

マルとキルコが宿泊していた宿に突如現れた、人食い怪物のヒルコ。宿のお女将さんを惨殺され、動揺するマルだが、キルコは冷静にヒルコの攻撃パターンを分析していた。無残な姿になったお女将さんを目の前にし、残酷なまで落ち着きを払っているキルコに対し、マルは感情的に掴み掛かる。しかし、キルコは「そうしないと生きていけないんだよ」と涙を堪えながら吐露した。その姿を見たマルは、冷静さを取り戻した。マルは「あいつ 殺してくる」と言い、ヒルコへと向かって行った。

「俺と同じ顔をしたやつが、どこかにもうひとりいる」

ミクラから託された「天国へのヒント」を話すマル。

漠然とした「天国」というキーワードだけでは旅が行き詰まりを見せていた。マルは「天国」を目指す目的を回想する。かつてマルは、ミクラという女性から「自身と同じ顔の人間を探せ」と言われていた。ミクラは正体不明の病におかされており、マルのボディーガードを任せるためキルコを訪ねて来た。キルコにマルを託したミクラは非常に衰弱していた。ミクラはキルコに「マルを天国に連れて行って」とささやいて息を引き取った。キルコはこの時、マルを守るための光線銃をミクラから譲り受ける。マル自身も「天国」とは何かわからない。自分と同じ顔の人間に、ミクラから託された薬を投与すれば、みんなが助かるかもしれないという言葉を信じて旅を続けている。

「俺、おねえちゃんが好きだ」

「天国を目指すよりも、キルコと共に穏やかに生きたい」と告白するマル。

旅の目的地である「天国」への手がかりが掴めないマルとキルコ。そんな中、「天国」かもしれない集落を訪れるも、自分たちが求めていた場所ではないことに落胆をしていた。マルは漠然とした「天国」というキーワードだけを頼りにした旅に、諦めを感じていた。ある日訪れた集落では、自給自足で食べ物には困らない生活をマルとキルコは見学した。マルはここで暮らすのも悪くはないと考えるようになる。神妙な顔で、集落での暮らしを考えているマルの様子に異変を感じたキルコは、マルに「どうしたのか」と尋ねる。キルコの問いに、マルは「俺 畑でおねえちゃんと暮らしたい」と答えた。キルコが「あんなアッパラパーの集まりと暮らすのは嫌だ」と言う。マルは「あの集落で暮らしたいのではなく、おねえちゃんとふたりで穏やかに暮らしていきたい」という心情を零した。ぽつぽつとまとまらない心情を口にしていくうちに、マルは自分の気持ちに確証を持ち、キルコに「俺 おねえちゃんが好きだ」と告白をするのだった。

「俺の手は 死しか生まねーな!」

自身の「人喰いを殺す能力」に絶望するマル。

マルは、宇佐美の依頼で、ヒルコの症状が発症した星尾の殺害を実行する。星尾の、空を見たいという最期の願いを叶えたのち、マルは星尾の心臓を停止させた。宇佐美が「星尾を埋葬する」と告げ、マルやキルコたちの傍から離されたすきに、宇佐美は拳銃で自殺をしてしまった。星尾を抱きしめたまま、死んでいる宇佐美を見つけたマルは愕然とする。ヒルコを殺すことのできるマルの能力により、宇佐美は星尾を追って死んだのだった。その事実に、マルは「俺の手は死しか生まねーな!!」と絶望するのだった。

「俺はあんたが好きなんだ」

ロビンに酷く傷つけられたキルコは自分が何者なのかもわからないと弱音を吐く。マルは「今目の前にいるキルコが好きなんだ」と思いを伝える。

5年もの間、探し求めていた憧れの男、稲崎露敏(いなざきろびん)から性的暴行を受けたキルコは失意のどん底にいた。自分は、姉「桐子」の身体に、脳を移植された「春希」なのだと打ち明けたにも関わらず、ロビンはキルコをレイプしたのだった。また、レイプをされながら「鏡で自分の顔を見ろ」「鏡に映っているのは誰だ」と強要されたキルコのショックはさらに大きなものになった。キルコは朦朧とした意識の中で、自分ではない別の人間の記憶がよみがえる。それは姉である「桐子」の身体が覚えていた記憶なのだろうとキルコは解釈した。マルから助け出されたキルコだが「僕が見ていたものはウソばっかりだ」「もう…自分が誰なのかもよくわからない」と涙をこぼす。そんなキルコにマルは「桐子だろうと、春希だろうと関係ない。今目の前にいるキルコが好きなのだ」と伝える。マルはこの先どんなことがあってもキルコを守ることを宣言する。また、心の中で、自分の前に稲崎露敏が姿を現したらその時は殺すと心に決めたのだった。

「やめろ……そういうの確認するの性格悪いぞ」

真面目に話しているマルを茶化すキルコ。

マルとキルコは、旅の途中、ある神社に暮らす大家族と出会う。世界の崩壊後、村人のほとんどは避難をしたが、この一族だけはその地で暮らし続けていた。夜間、微弱ではあるが、ヒルコの気配を感じ取ったマル。キルコとマルは神社内を散策していると、洞窟を発見する。洞窟の奥には、怪物のような姿の生き物が、幾重にも鎖に巻き付けられていた。マルが怪物に触れると、衰弱しているヒルコであることが判明した。すると、一族の長であるおばあさんに、洞窟の中で見つかってしまった。そして、おばあさんからは「この鬼のミイラは400年も前から、縄や鎖を使って祀っている」と告げられる。マルはおばあさんの「鎖」という言葉になぞらえて「だったらその鎖を断ち切ってやろうか?」と申し出る。マルの言葉に、キルコが「鎖になぞらえて上手いこと言っちゃった?」とからかい、真面目に話していたにも関わらずコミカルなシーンとなっている。

竹塚ミチカとの戦闘

自分と同じ、ヒルコとの戦闘に歓喜するミチカ。

高原学園奈良施設を目指していたマルとキルコは、奈良にある「復興省」に到着する。「復興省」は崩壊した世界の治安を守るため活動している組織である。この「復興省」の事務所がある建物が、崩壊前の高原学園奈良施設なのだ。茨城にあった「復興省」で、ロビンが行方不明になったことに関与していると思われているマルとキルコは、茨城の「復興省」から捜索されていた。捜索のために派遣された隊員の中には、ヒルコである竹塚ミチカが参加していた。ミチカは異常な戦闘狂であり、マルと同じように、ヒルコの気配を察知できる能力を持っている。この能力を使い、ミチカはマルとキルコの居場所を突き止めたのだ。ミチカはマルを見つけた途端、戦闘を申し出る。理由も無く戦ういわれはないマルだが、ミチカからは勝負に乗らないとキルコを傷つけると煽られ、マルを逆なでする。ミチカの思惑により、殴り合いの喧嘩をはじめた二人だが、力はほぼ互角であった。マルは、はじめて自分と対等な力を持つ人間との戦闘に、楽しさを見いだしていた。そしてついに、ほぼ互角と思われた戦いだが、マルの勝利に終わる。敗北したにも関わらず、ミチカは満足気に死んでいったのである。

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