それでも町は廻っている(それ町)のネタバレ解説・考察まとめ

『それでも町は廻っている(それ町)』とは、『ヤングキングアワーズ』にて2005年5月号から2016年12月号まで、石黒正数によって連載されたマンガ、およびそれを原作としたアニメ作品。
東京の下町を舞台に主人公である嵐山歩鳥を中心とした日常系ドタバタコメディ。そのほとんどが1話完結で、テンポがよくスピード感がある。
物語の舞台は東京の下町にある商店街。昔ながらの人情溢れる商店街をメインの舞台とした日常が、主人公の女子高生・嵐山歩鳥を中心としたコメディタッチのマンガで描かれている。

『それでも町は廻っている』の概要

『それでも町は廻っている』とは、『ヤングキングアワーズ』(少年画報社)にて2005年5月号から2016年12月号まで連載されたマンガ、およびそれを原作としたアニメ作品。作者は石黒正数(いしぐろまさかず)。単行本は全16巻。第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門(2013年)優秀賞、第49回星雲賞コミック部門(2018年)受賞。テレビアニメは2010年10月から12月にかけて放送された。
東京の下町で育った女子高生・嵐山歩鳥(あらしやまほとり)を中心に、商店街での日常を描いたコメディ作品。
何気ない日常をコメディタッチで描く中に、温かな人情や人とのコミュニケーションの取り方、人間関係の悩みなども描かれている。
基本的には何気ない日常を描いている作品だが、死後の世界や宇宙人など、非日常的な題材が登場する事もある。
一話完結の回がほとんどだが、続き物の回もある。
各話の掲載順序と時系列が一致しない時系列シャッフルが行われており、話数の順番に読んでも時間の流れはその通りに進んでいないという独特の手法を用いている。

『それでも町は廻っている』のあらすじ・ストーリー

メイド喫茶シーサイド

第1話、物語はメイドカフェらしき場所から始まる。
店員らしき女性たちがメイド服を着ているが、言葉遣いはメイド喫茶らしくなく、いたって自然体だ。
メイド喫茶で働いていた黒髪の少女は主人公・嵐山歩鳥である。
通っている高校で友達とバイト先のメイド喫茶の話になり、興味を持った友達が店に行くことになる。
しかしそのメイド喫茶らしからぬ内容に怒り出す友人の辰野トシ子。
実はこの店は元々は普通の商店街の喫茶店だった場所で、店主であるウキの思い付きでメイド喫茶になったのだ。

メイドとしての振る舞いがとても上手なトシ子にウキは「うちで働かないかい!?」とスカウトするが、クラブに入ることを決めているトシ子はその申し出を断る。
しかし代わりに、歩鳥にメイド喫茶の店員としての稽古をつけてくれる事に。
しかし来店したクリーニング屋に対して歩鳥は、「おっお帰りなさいっごすじん様ッ」と台詞を噛んでしまう。
この話の中の針原春江のセリフに「嵐山さんて放っておいてもドジじゃない?」というものがあり、歩鳥がドジをしたのはこの時ばかりだけではなく、普段からドジなキャラクターであることが分かる。
一度はバイトの誘いを断ったトシ子だが、同じ高校の真田広章がシーサイドに来店し、この店の常連だと知ると、態度を急変させる。
トシ子は真田の事が好きなのである。
トシ子はウキをメイド長と呼び、この店で雇ってくれるように頼む。
ウキはシーサイドがメイド喫茶に近づいたことを喜ぶが、真田は歩鳥の事が好きで歩鳥を目当てにシーサイドに通っていたので、至福の店に崩壊の危機を感じる。

小学校の七不思議を調査

基本的には、商店街や学校を舞台とした日常の出来事で、ドタバタしたコメディタッチの話が描かれている。
しかし現実に起こり得るような話だけではなく、普通の日常ではない不思議な設定(死後の世界、主人公が存在しないパラレルワールドのような世界など)の話も存在する。
謎解きや伏線も多く、時系列シャッフルというシステムも画期的で、ミステリの要素を多く含んでいるが、このマンガのジャンルは「日常系コメディ」がしっくりくる。
非日常的な生命体が登場する回があっても、それも日常に起こった出来事の一つ、というただそれだけに過ぎないのだ。
第42話「学校迷宮案内」には歩鳥も登場はするが、歩鳥の弟のタケルがメインの回となっている。
小学校で壁新聞を書く事になり、タケルの班は学校の七不思議のひとつを記事にする事にする。
それは、中庭の観察池に恐竜らしき生物が住んでいるらしいという、通称「メダカ池のメッシー!!」という七不思議である。

タケルとクラスメートは色々な人に話を聞き、調査を進めていく。
色々な人物に証言を聞いていくと、何もいないはずなのにコイがいたのを見た、行方不明になった生徒がおり、観察池の横には藻がからまった竹ぼうきが残されていた、メッシーではなく魚なら見た事があるが、見たのはコイではない、教師が観察池で水浴びをしていたなど、新たな噂話を聞くことが出来た。
しかしさらに他の人物に話を聞いていくと、行方不明になったと言われていた生徒はクラス替えがあり目立たない時期に転校したという事が分かる。
教師が池で水浴びをしていたという噂の真相は、教師が日なたぼっこをしていた時に脱いで池のへりに置いておいたジャージが風で池に落ちて沈み、それを探すのにひと苦労した、というものだった。その時に教師は沈んだジャージを手近な棒状の物で取ったのだが、それが竹ぼうきだったかも、と事であった。
タケルたちが調査を進めていく中でこうしていくつかウワサの謎が解けていく。しかし「ジャージってそんな簡単に風で動いたり沈んだりするもんかな…」とタケルはすっきりしない様子だ。消えたコイや魚の謎も残っている。

歩鳥と同じ学校の生徒からの証言で、タケルたちは、池に恐竜がいると言い出したのは用務員の国見だと知る。
話を聞きに行ったタケルたちに、バレちゃしょうがないな、と国見は正直に告白をする。
自宅で飼っている熱帯魚を一度でいいから広い所でのびのび泳がせてやりたいと思った国見は、夜中にこっそり学校を訪れ、熱帯魚を観察池に入れたのだ。
しかし翌日、熱帯魚が池のフナを全部食べてしまっていた事に驚く。
そこへ理科係の児童たちがフナへエサをやりに来てしまったため、とっさに恐竜がいると嘘をついたのだ。

メッシーの謎は解けたが、その話を記事にすると国見が悪者みたいになってしまうのでは、とタケルは心配する。
一方で、国見が作ったのはうわさだけなのに、その後10年もメッシーの目撃情報があり続けるのはなぜなのかとタケルは疑問に思う。そして、現れては消えるコイや魚。
このようにまだ納得いかない事もあるため、タケルは調査を続ける。

結局、メッシーの正体は観察池の藻、藻のような未知の生き物なのである、という記事になる。
謎が解けているか微妙な記事であるし、タケル自身も満足はいっていないようだったが、新聞は銅賞をもらうことが出来た。
これでめでたしめでたしと終わりそうなものなのだが、この話にはまだ続きがある。
なんと、タケルの書いた新聞の記事通りに藻のような未知の生き物は存在しており、用務員の国見がそれを育てていたのだ。
物語はここで唐突に終わる。
このように、不思議が不思議のまま残って次の話へ行ってしまう、というパターンもある。

死後の世界へ

コミックス2巻に収録されている第13話「それでも町は廻っている(前編)」と第14話「それでも町は廻っている(後編)」は、作品タイトルと同じサブタイトルが象徴的である。1話完結が多いこの作品には珍しく前後編となっている。
入学祝いに叔父からもらった万年筆を改造して虫眼鏡をくっつけた歩鳥だが、その万年筆が高価な物だと知り、さらに、ボールペンのキャップがルーぺになっている物が既に存在することを知り、ショックを受ける。
叔父から電話があり、「また夏休みにでも遊びにおいで」「その時インクを詰め替えてあげよう」と言われる。
叔父と会った時に誤魔化し通せるトリックを考えようとしていた歩鳥は、ミステリ画報の推理小説大賞の存在を思い出す。
歩鳥は推理小説を書いて賞金をもらうために、執筆を始める。

歩鳥は「ゼリー島殺人事件」という小説を書いて応募したが、第一次選考を通過出来なかった。
ショックを受けて道に突っ伏していると、走ってきたゴミ収集車が歩鳥の頭にぶつかってしまう。
歩鳥はその時死に、死後の世界へ連れて行かれてしまう。
死後の世界へ行っても歩鳥は相変わらずで、死後の世界がコメディタッチで描かれる。下界に干渉できる「遊技場」へ行き、先輩である紺の写真にいたずらをして、心霊写真を作ったりもした。
しかし現世が見えるという望遠鏡で両親や友人の様子を見ると、歩鳥が思っていた以上に悲しんでいた。歩鳥は思わず「これからはもう少し気を付けておっちょこちょいをなおすよ…」と言ったが、「これから」なんてもう無いのだと気付き涙する。
自分の状況を受け入れて天国で職探しをしようとしていた歩鳥だが、突然下界に帰れる事になる。
「下界の体がほぼ無傷で残っており、脳の状態が奇跡的に回復したので、希望するのであれば帰ってけっこうですよ」と言われたのだ。
天国での記憶は消えてしまうので、天国で下界の写真を心霊写真にした事も忘れてしまった歩鳥だった。

『それでも町は廻っている』の登場人物・キャラクター

メイド喫茶シーサイド

嵐山 歩鳥(あらしやま ほとり)

CV:小見川千明 / 藤田茜
本作の主人公。喫茶店シーサイドでアルバイトをしている女子高生。前向きで明るい性格をしている。行動力があり、快活な性格だが運動が得意なわけではない。
数学の成績が極端に悪い。天然ボケでドジっ子。
推理小説を読むのが好きで、将来探偵になりたいと思っている。
コミュニケーション能力が高く、人当たりが良い。地元の商店街の住人からかわいがられており、学校でも色々な生徒と会話しているシーンが登場する。
連載の途中で髪を短く切る回があるのだが、その回の後に登場する歩鳥の髪は、元の長いままの時もある。これはこのマンガの時系列が話数の順番通りではないためだ。

辰野 俊子(たつの としこ)

CV:悠木碧 / 松嵜麗
歩鳥の同級生。下の名前は作中でトシ子と表記されている。喫茶店シーサイドで歩鳥と一緒にアルバイトをしている。
弟が1人いる。
歩鳥がタッツンというあだ名を付けたが、本人はあまり気に入ってない。
眼鏡をかけておりオタク趣味もあるが地味キャラという訳では無く、美人でスタイルもよく料理も得意でしっかり者。何でもそつなくこなすキャラという位置付け。
歩鳥とは違い丸子商店街は地元ではないが、シーサイドでアルバイトをしているため常連の商店街の住人とも打ち解けている。商店街の慰安旅行にも参加している。
同じ高校の真田広章の事が好き。シーサイドでアルバイトを始めたのも、地元ではない商店街の慰安旅行に参加したのも、真田がいるからだった。

磯端 ウキ(いそはた うき)

CV:櫻井孝宏 / 一城みゆ希
喫茶店シーサイドの店長。シーサイドは元々は普通の喫茶店だったのだが、メイド喫茶が儲かると知ってメイド喫茶にした。自らもメイド服を着て働いている。俊子からはメイド長と呼ばれている。
歩鳥の祖母では無いのだが、小さい頃から孫のように面倒を見たり可愛がっている。

尾谷高校

真田 広章(さなだ ひろあき)

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