ファーザー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ファーザー』とは、2012年に発表されたゼレールの戯曲『Le Père 父』を基にした、2020年イギリス・フランス・アメリカのヒューマンドラマ映画である。一人暮らしをしている81歳の父が認知症によってだんだんと老いてゆく姿を名優アンソニー・ホプキンスが演じ、父を見守る献身的な娘をオリヴィア・コールマンが熱演。娘の夫や介護人の判別がつかなくなり、記憶と理解力が衰える父を娘の目線で描かれている。老いとはなにか、親子の深い関係を訴える感動作。
日に日に老いて行く父の介護に疲れ果てたアン。暗い台所に立ち、1人で洗い終わったコップを置く際に謝ってコップを落として割ってしまう。割れたコップを拾いながら泣き出してしまう。疲労と先行きへの不安を抱える苦しさがひしひしと伝わってくるシーン。
アンがアンソニーの首を絞める自分を想像しているシーン
父親想いで根気強く介護するアンも、アンソニーの言動で徐々に追い詰められ、心が不安定になっていく様がわかる衝撃的なシーン。アンはすぐに我に返ったが、動揺を隠せなかった。
アンソニーが介護施設で「ママ、ママ」と繰り返すシーン
介護スタッフと話をしている内に、だんだんと子供のようになっていくアンソニー。「ママに来て欲しい」と介護スタッフに、駄々をこねるように伝えるシーン。認知症により老いた姿がリアルに描かれ、アンソニーの認知症の重症度がよくわかる。
ビル「順調ですか?」
アンソニーが、リビングにやって来ると椅子に座っている見知らぬ男が「順調ですか?」と声をかけてきた。「誰だ?」と不審がるアンソニーに、アンの夫のポールだと男が答える。アンソニーは、困惑しているが、実は男は介護施設のスタッフのビルであることが、映画のラストで判明する。アンソニーの認知症による記憶や理解力、判断力の衰えが、様々なシーンで描かれている。
ポール「いつまで我々をイラつかせる気なんです?」
アンの献身的な支えにも関わらず、父アンソニーの認知症の症状は日々、進行していく。夫婦で行くはずだった旅行をキャンセルしたり、腕時計を盗んだと思われるなど不満を抱えていたポールが、「いつまで我々をイラつかせる気なんです?」と、義父であるアンソニーに言ったセリフ。
一見、認知症患者に対して冷たいセリフのようであるが、介護に疲れた家族の辛い状況が暴言を吐かせてしまったことが伺える。妻アンを気づかい、義父に同情しながらも苛立ちを感じるポールの苦悩は、誰にでも起こりえることだ。
アンソニー「すべての葉を失っていくようだ」
認知症が進行したことにより、自分が誰なのか、なぜ施設にいるのかすらわからなくなってしまったアンソニーが、どうしようもない不安な気持ちを「すべての葉を失っていくようだ」と表現している。介護人が、子どものように怯えて泣きじゃくるアンソニーをなだめているラストシーンが丁寧に描かれている。
『ファーザー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
主人公の名前がアンソニーである理由
劇作家フローリアン・ゼレールが、アンソニー・ホプキンスを主演と想定して『ファーザー』を脚色し、監督も務めたため主人公の名前もアンソニーとなった。また映画でアンソニーが、窓から外を眺めるシーンで、階下に見える通りで遊んでいる男の子は監督の息子であるロマン・ゼレール。原作はゼレールが発表した戯曲『Le Père 父』(2012年)。2012年9月にパリのエベルト劇場で初演され、この10年間で最も評価の高い新作戯曲として高い評価を受けた。
アンソニーのモデルはアンソニー・ホプキンスの父親
アンソニー・ホプキンス自身が父を思い浮かべながら演じたという『ファーザー』。父親の姿をそのまま演じたので、簡単だったと語るアンソニー・ホプキンス。衰えていく父の姿を目の当たりにした経験が、本作で認知症によって老いていく姿を自然でありながらも迫真の演技で人々を引き付けた。認知症の症状が進むほど、家族の絶望が深くなっていく様子が描かれているが、アンソニー・ホプキンス自身もまた老いた父親に同じような感情を持っていたと語る。
アンソニー・ホプキンスとの共演を喜ぶオリヴィア・コールマン
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目次 - Contents
- 『ファーザー』の概要
- 『ファーザー』のあらすじ・ストーリー
- 認知症の父と娘
- 父の姿にショックを受けるアン
- 夫ポールの苦悩
- 進行する認知症
- ママと呼びながら泣きじゃくるアンソニー
- 『ファーザー』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- アンソニー(演:アンソニー・ホプキンス)
- 家族
- アン(演:オリヴィア・コールマン)
- ポール(演:ルーファス・シーウェル)
- ルーシー
- 介護スタッフ
- サライ医師(演:アイーシャー・ダルカール)
- ビル(演:マーク・ゲイティス)
- ローラ(演:イモージェン・プーツ)
- キャサリン(演:オリヴィア・ウィリアムズ)
- 『ファーザー』の用語
- 認知症
- 介護人
- 『ファーザー』の名シーン・名場面
- 疲れたアンがコップを落としてしまうシーン
- アンがアンソニーの首を絞める自分を想像しているシーン
- アンソニーが介護施設で「ママ、ママ」と繰り返すシーン
- ビル「順調ですか?」
- ポール「いつまで我々をイラつかせる気なんです?」
- アンソニー「すべての葉を失っていくようだ」
- 『ファーザー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 主人公の名前がアンソニーである理由
- アンソニーのモデルはアンソニー・ホプキンスの父親
- アンソニー・ホプキンスとの共演を喜ぶオリヴィア・コールマン
- 『ファーザー』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:ルドヴィコ・エイナウディ『The Father』