EMMA エマ(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『EMMA エマ』とは、田舎で暮らしている貴族たちの恋愛事情を描くイギリスの映画である。公開は2020年。オータム・デ・ワイルドが本作で初の映画監督を務め、主人公のエマをアニャ・テイラー=ジョイが演じた。エマは、容姿の整った大貴族のお嬢様。自分に絶対の自信があったが、勘違いから大切な人を傷つけてしまう。いくつかの失敗をきっかけに自分のことを見つめ直し、本当の幸せを考え、成長していく物語。美しいイギリスのロケ地、ドレスなどの色彩美やアニャ・テイラー=ジョイの演技力にも注目の作品だ。

顔を合わせれば、皮肉を言い合うエマとナイトリーの関係性に変化が生まれる名シーンだ。
舞踏会でエルトンにダンスを誘ってもらえず、孤独な思いをするハリエットに気付き、ナイトリーは手を差し伸べた。それを見ていたエマは、ナイトリーに感謝する。また、ナイトリーは、ハリエットと踊ることで、エマが気に入るハリエットの魅力に気付き、自分がハリエットを下に評価していたと謝罪。歩み寄った2人に、ダンスを始めるとの声が掛かる。ナイトリーはエマに誰と踊るのかを聞くと、エマは、「あなたと。申し込んでくれれば」と言う。ナイトリーはエマを誘い、2人は踊り始める。

ナイトリー「これほど君を愛していなければ、饒舌になれただろう」

告白をするナイトリー(右)とそれをかわそうとするエマ(左)。

物語の序盤から、会えば必ず皮肉を言い合い、喧嘩をしていたエマとナイトリーだが、次第にお互いの考えや優しさを知っていき、惹かれ合う。しかしエマは、一番の親友であるハリエットがナイトリーに思いを寄せていることを知り、自分が抱えるナイトリーへの想いをどうするべきか悩んでいた。そんなエマの前にナイトリーが現れ、エマに告白をしようとする。エマはそれに気付いたが、気持ちの整理が出来ていないまま、その言葉を聞くまいと話を逸らす。ナイトリーは自分がこれまで、エマに散々説教をしてきたことを気にして、強気に出られない。いつもの言い合いが嘘のように2人は言葉に詰まり、ナイトリーは「これほど君を愛していなければ、饒舌になれただろう」と言葉を絞り出す。それは愛の告白だったが、皮肉と不器用さ、滑稽さ、真摯な想いが詰まった、この物語を象徴するようなシーンであり、名セリフだ。

ミスター・ウッドハウス「隙間風を感じないか?」

お互いの想いを確かめ合うエマ(左)とナイトリー(右)。

ミスター・ウッドハウスは屋敷の隙間風に敏感だ。風を感じると、使用人たちを呼びつけ、衝立を用意させる。コメディとして楽しめるお決まりの展開になっていたが、物語の後半には名セリフに変わる。エマとナイトリーが良い雰囲気になっていることに気付いたミスター・ウッドハウスが気を利かせて、ナイトリーに「隙間風を感じないか?」と声をかける。ミスター・ウッドハウスとの間を衝立で遮られたエマとナイトリーが想いを確かめ合い、キスをするという名シーンだ。

『EMMA エマ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

最大の魅力は映像の色彩美

エマの屋敷でお茶を楽しむエルトン夫妻(奥)、ハリエット(手前左)、エマ(手前真ん中)、ミスター・ウッドハウス(手前右)。

この作品の最大の魅力の1つに色彩美が挙げられる。厳選されたイギリスのロケ地の風景、屋敷、ドレス、料理などの色彩が作品を彩る。衣装を担当したアレクサンドラ・バーンが、アカデミー賞の衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた。
作中には、結婚式や夕食会のシーンが数度出てくるが、色味の被らない登場人物たちのドレスに目を奪われる。また、ボックス・ヒルへ行き、ゆったり過ごす一同が描かれるシーンでは、女性陣はみんな白を基調とするドレスだが、袖や裾の形、フリル、帽子の飾りで個性を出している。また、ナイトリーがエマに告白するシーンでは、眩しいほどの緑の草原に、エマの白いドレスが映える。白のドレスに、ワンポイントでくっきりした緑が使われているのも見逃せない。
美しいロケ地をさらに美しく魅せる作品の美術は評価が高い。

絶賛されるアニャ・テイラー=ジョイの演技力

この作品の魅力は、主人公エマのキャラクターである。エマは自分に絶対の自信があり、自分のことが大好きという受け入れられにくいキャラクターでありながら、その真っ直ぐ故の思い込みが滑稽で、愛らしく思えるのだ。そんなエマを演じるのがアニャ・テイラー=ジョイ。アニャの手を揃える仕草、人と話す時の目つき、目線などの細かな所作からも、エマの人柄が窺える。この演技力のおかげもあり、この作品は映画批評家からも絶賛されているという。

尊敬しあうキャスト

エマを演じるアニャ・テイラー=ジョイ(左)とエルトンを演じるジョシュ・オコナー(右)。

エマを演じるアニャ・テイラー=ジョイとエルトンを演じるジョシュ・オコナーは、この作品のグループチャットなどを通して、連絡を取り合う仲。お互いに出演作を鑑賞し合っているという2人は、それぞれの演技力を絶賛している。オコナーはアニャの演技を、具体的で役に没頭していると表現。アニャはオコナーの演技を、全て信じられるし自然だ、と称えた。そんな2人の演技のぶつかり合いは視聴者を楽しませてくれる。

『EMMA エマ』の主題歌・挿入歌

主題歌:Johnny Flynn「Queen Bee」

挿入歌:Isobel Waller-Bridge・David Schweitzer「Emma Woodhouse」

挿入歌:Isobel Waller-Bridge ・ David Schweitzer「Emma And Mr. Knightley (A Kiss Before They Wed)」

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