ミニチュア作家(ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ミニチュア作家』とはイギリスの作家兼俳優であるジェシー・バートンによって2014年発表された小説を原作としたBBC制作のドラマである。没落した名家の長女ネラは借金返済の肩代わりをする代わりに商人ヨハネスに嫁ぐ。夫から豪華なドールハウスを贈られたネラは、そこに飾る小物を町のミニチュア作家に注文すると、次第に頼んでもいない小物や人形が謎のメモと一緒に届き始める。17世紀のオランダを舞台に展開される重厚なストーリーに加え、美しい衣装や小道具、精密に再現されたミニチュア作品達も作品の見どころである。

『ミニチュア作家』の概要

『ミニチュア作家』とはイギリスの作家兼俳優であるジェシー・バートンによって2014年発表された小説を原作としたドラマである。原作は処女作にして全英図書賞を受賞した。舞台は17世紀オランダ、没落した名家の長女ネラは借金返済の肩代わりをする代わりに商人ヨハネスに嫁ぐ。新たな生活に胸踊らすネラを待っていたのは冷淡な義妹と使用人たち、そしてほとんど家にいない夫だった。ある日、夫から豪華なドールハウスを贈られたネラが、そこに飾る小物を街のミニチュア作家に注文すると、頼んでもいない小物や人形が謎のメモと一緒に届き始める。彼女は戸惑いながらも、ミニチュアを受け取るも次第にミニチュアと現実がリンクし始めていることに気付く。やがてそれは屋敷の人々の秘密を暴いていくこととなるのだった。
主人公・ネラが受け身な少女から、何とか辛い状況を打破しよう奮闘する女性へと成長を遂げる重厚なストーリーが注目ポイントである。美しい衣装と小道具、このドラマのためだけに作られた精巧なミニチュア達も見どころである。

『ミニチュア作家』のあらすじ・ストーリー

ドールハウスとの出会い

ネラに贈られたドールハウス

17世紀オランダ、10代のネラは、父親が亡くなった上、借金が膨らみ没落しかけた旧家で生まれ育つ。家を守ろうとする母親の計らいでネラは貿易を営む富豪ヨハネス・ブラントに嫁がされることとなる。
良き妻となるべく、胸を踊らせながら嫁ぎ先のアムステルダムへ赴いたネラは、到着早々ヨハネスの妹であるマーリンから兄は留守だと冷たくあしらわれる。貿易商を営むヨハネスは仕事のため家を空けがちで、屋敷の実権はマーリンが握っていたのだった。厳格で、何をするにも清貧を重んじるマーリン、冷たい使用人たちにネラは肩身の狭い思いをする。さらに多忙な夫とも禄に関係を築くことなく、数週間を過ぎても初夜を迎えられずにいた。ネラは新婚とは呼べない生活に心が沈むのであった。
ある日、ネラはヨハネスから結婚の記念としてドールハウスを贈られる。マーリンから職人リストを受け取ったネラは、リストの中からミニチュア作家を発見。弦の付いたリュート、インコの入った鳥カゴ、マジパン入りの菓子箱の3つを注文する。
後日、ネラは配達人・ジャックから注文したミニチュアを受け取る。精巧な作りのミニチュアに添えられていたのは「女性は皆 人生の設計士」と書かれた謎めいた手紙だった。注文した3つに加え、ゆりかごと犬そして椅子が同梱されており、ネラは首を傾げる。しかしその椅子が今まさに自分が座っているものだと気づくとネラは急いでカーテンを閉めるのであった。
注文外のものを贈られたことから、ネラはミニチュア職人に注文の打ち切りを手紙で伝える。

ヨハネスの秘密

早く砂糖を売るよう催促するメールマンス夫妻

貴重な砂糖の売上によって、メールマンス夫妻が地位と実権を握ることを恐れ、ヨハネスは砂糖を売ることを渋っていた。招待されたギルドのパーティーで古い知人であるメールマンス夫妻と対面したヨハネスは、粗悪品が横行する街で販売するよりも高く売れるベネチアでの取引に奔走していると説明する。
パーティー後、真の妻となるべく体の関係を迫るネラはヨハネスに明確に拒絶される。翌日落ち込むネラの元にミニチュア職人から再び荷物が届く。夫と義妹にそっくりな人形、欠けた食器そして鍵の入った箱だった。ネラは箱がヨハネスの部屋にあるものだと気づく。ミニチュアの箱には3つの鍵が入っていたが本物の箱には2つしか入っていなかった。
夜中に家を抜け出すヨハネスを目撃したネラは翌朝になっても夫が帰ってきていないことに気づく。屋敷の使用人コルネリアが引き止めるのも聞かず、ネラはヨハネスがいると思しき事務所へ突撃。箱から持ち出していた鍵で扉を開けたネラが目撃したのは、男と体を重ねるヨハネスの姿だった。
事務所を飛び出したネラはコルネリア達に屋敷へと連れ戻され、気を静めるために飲まされた薬の影響もあり3日寝込む。目覚めたネラは実家に帰ろうとするが、マーリンにヨハネスが男色家であることがバレると溺死刑に処されることを聞き、一先ず屋敷に留まることにする。
その後、ヨハネスと対面したネラは、ヨハネスから実家に帰り別の家に嫁ぐことを提案される。使用人たちや夫の行く末を案じたネラは屋敷に留まり続けることを決意。その代わり、これからは何でも話すようヨハネスに約束させる。
倉庫の湿気で砂糖が駄目になることを恐れたマーリンの説得でヨハネスは砂糖の売り先を求めてベネチアへと赴く。
ミニチュア作家から再び荷物が届く。「物事は動く」と記載された手紙と共に、精巧に作られた屋敷の使用人オットーとメールマンス夫妻、そして夫の愛人であるジャック・フィリップスの人形が添えられていた。ネラはお礼と共に、ゲーム盤を作るようミニチュア作家へ依頼の手紙を綴る。その手紙を投函する際、ネラは菓子店が市長団によって粛清されているのを目撃する。カトリック教に基づく締め付けが厳しくなっていたのだった。
屋敷に戻ったネラは勝手に家に入り込むヨハネスの愛人・ジャックと対面。ヨハネスが商売の盛んなミラノではなくベネチアに行ったのは売春が目的だと主張する。騒ぎを聞きつけたマーリンがやってきたことでジャックは更に激高。ヨハネスの愛犬を刺殺してしまう。ジャックを落ち着けようと説得するオットーと揉み合いの末、短剣はジャックに刺さってしまう。ジャックは血塗られた短剣を証拠として、屋敷を飛び出すのだった。
マーリンたちはジャックとヨハネスの愛人関係が表立つことを恐れる。そんな中ネラはドールハウスに置いてあった犬のミニチュアに先程亡くなった愛犬と全く同じ傷があることに気付く。ミニチュア作家の工房へ押しかけたネラは、不在の作家に苛立つも近所の者から預かり物としてコルネリアの人形と菓子のミニチュア、「甘い武器をうまく使え」という手紙を受け取る。
ヨハネスがベネチアから戻るも砂糖は時期が悪く、売れなかったと屋敷の者たちに報告。先行きが不安なマーリンは激怒。マーリンはヨハネスにヨハネスの留守中にジャックによってヨハネスの愛犬レゼキが殺されたこと、オットーがジャックを追い払ったことを打ち明けてしまう。ジャックの身を案じたヨハネスは彼を探すも見つからなかった。

マーリンの秘密

1つも売れずに残ってしまった砂糖

翌日、オットーが屋敷から姿を消してしまう。事故とはいえ、元黒人奴隷が白人を刺したとなれば、逮捕される可能性があり、彼の身を案じたマーリンが助言したからだった。
オットーを港へと探しに行ったヨハネスと入れ違いにフランス・メールマンスが屋敷を訪れる。フランスは砂糖が売れたか倉庫へ行き、そこで少しも売れずに傷んでしまった砂糖を発見。さらには倉庫で愛人と睦み合うヨハネスも目にしてしまったのだった。告発するというフランスをマーリンは兄だけでなく自分たちも破滅すると涙ながらに訴えるが、砂糖の件で激昂したフランスは聞く耳を持たず市長団へと赴くのだった。
その夜、ネラはドールハウスにあるメールマンス夫人が持つ砂糖が黒く傷んでいることに気づく。ちょうどオットー探しから戻ったヨハネスにネラは逃げるよう促す。逃げる際、妻を帯同していれば男色家であることを誤魔化せると、ネラは連れて行くよう懇願する。ヨハネスはマーリンを始め、屋敷の人間たちが頼りにしているネラに顧客リストと倉庫の鍵を手渡した。さみしくなるとネラが言うとヨハネスもまた、さみしくなると答え2人は固く抱擁するのだった。
翌朝ネラは自害しようとするマーリンを見つけ、なんとか阻止。ヨハネスから預かった顧客リストで何とかすると励ますネラを、何もわかっていないと泣くマーリンのお腹は大きく膨れていた。彼女は妊娠していたのだった。
ネラは子の父親が誰か、未だに贈り物を送ってくるフランスではないかとマーリンに尋ねる。砂糖の件で怒っているフランスも自分の子供が生まれるとなれば態度が和らぐかもしれないと考えるネラに、マーリンは「両親が犯した罪で生まれながら汚れている」と泣くだけだった。
ネラの自室で全てを聞かされたコネリアスは、ドールハウスにゆりかごがあること、マーリンの人形が赤ん坊を抱いていることを発見する。ミニチュア作家に覗かれているのではと怯えるコネリアスに、ネラは作家には見通す力があり事前に知らせることで助けようとしていると主張する。
時を同じくして、屋敷に市民警備隊が到着する。ジャックがヨハネスに襲われたと判事に訴えたことで捜索に来たのだった。ヨハネスは港を出航する前に捕縛されてしまう。

ヨハネスの裁判とミニチュア作家の秘密

ヨハネスの裁判を見守るネラ

ネラはマーリンに再度、フランスに妊娠していることを打ち明けるべきだと説得する。フランスの態度が軟化しヨハネスが助かるかもしれないからだ。またネラの子として出産すれば、ヨハネスが男色家ではない証明にもなると考えていた。マーリンはお腹の子はその思惑の役に立たないと一笑する。マーリンはネラにフランスの結婚を拒んだのはヨハネスではなく自分自身であることを打ち明ける。マーリンはヨハネスの留守中、屋敷を切り盛りしており、結婚するとその自由が失われることが耐えられず、兄を通して結婚を拒んだのだった。結果、フランス、ヨハネス、マーリンの関係は拗れてしまったのだった。
後に引けないネラは菓子屋のハンナに砂糖を小売にして販売することを決意。商売が見通せそうになった頃、ヨハネスの裁判が行われる。
ジャックを脅して暴力を振るい無理やり辱めたとする罪を無罪だと主張するも、ヨハネスの立場は厳しかった。1回目の裁判が閉幕するとネラはフランスに詰め寄り、砂糖が多少売れる見込みであることを報告する。しかしフランスからすれば、それは微々たるものだった。冷たくあしらうフランスにネラは関係が拗れたきっかけであるマーリンによる結婚拒絶の真相を打ち明けるも、フランスは聞く耳を持たなかった。
マーリンはついに破水。産婆を呼ぼうとするネラをマーリンは拒否。ネラとコネリアスの2人の協力のもと、マーリンは生まれた女の子をテアと名付ける。
出産の翌日、最後の裁判が行われ、ネラの説得も虚しく、フランスはヨハネスがジャックに暴力を振るったと虚偽の証言をする。参審官の評議が始まる前、ヨハネスは権利を主張し、発言を乞う。裁判を傍聴していた市民達に向けて、これまで街に命がけで尽くしてきた功績の結果が偽証に満ちたこの裁判であることを主張した。加えて、自分の性的指向は変えられず、ジャックのことも恐らく愛していたこと、過去の遺恨から嘘の証言をしたフランスのことも許すと宣言。そして処分は評議に任せると締めくくった。
マーリンは産後の肥立ちが悪く、彼女の忘れ形見である黒人の女の赤ちゃんを残して亡くなってしまう。
判決の日、ヨハネスは暴行罪などの謂れなき罪については無罪とされるが、男色の罪については有罪とされ、次の日曜に溺死刑を言い渡される。失意のうちに裁判所を後にしたネラはミニチュア作家の姿を目にする。後を追いかけたネラは店の奥に隠し部屋を発見、机に置かれた街中の地図上には各家に向けた精巧なミニチュアとネラと同じく困惑した顧客からの手紙が置かれていた。全てを予知していたかのようなミニチュア作家にネラは金はいくらでも出すので、夫ヨハネスを助けてほしいと懇願する。ミニチュア作家は、皆ネラのように解決方法を知っていると思い込み頼ってくるが、そんな力などないと言う。ミニチュア作家はネラにマーリンの妊娠は歩き方からわかったこと、砂糖の変色は本物を使ったため劣化したことなどをネタばらしする。それでもヨハネスの愛犬が刺殺されたことも当てたと言い張るネラに、時々見る予知夢のようなもので解決策はわからないとミニチュア作家は怯える。尚も食い下がるネラにミニチュア作家は、「あなたのしたことで物事は変わっている」と助言する。
看守に賄賂を渡し、ネラは処刑を待つだけのヨハネスに面会、最期の時を過ごした。日曜の朝ヨハネスは首に重しをつけられ、溺死刑に処される。大商人の死を悼む観衆の中にはオットーの姿もあった。
オットーと共に屋敷に帰ったネラは彼とテアを対面させる。マーリンからオットーとの子供を妊娠していることを聞かされていたため、オットーは危険を冒してまでも自分の子供の行く末を案じて戻ってきたのだった。
ネラに新しく生まれた娘のミニチュア人形を託してミニチュア作家は父親と共に街を去る。かつてヨハネスが座っていた執務室の椅子にネラは腰掛けて「私ならやれる」とつぶやくのだった。

『ミニチュア作家』の登場人物・キャラクター

主要登場人物

ペトロネラ・ブラント(演:アニャ・テイラー=ジョイ)

父の死後、家の借金を清算することと引き換えにヨハネスに嫁ぐ。きっかけはどうあれヨハネスとの結婚生活を夢見てやってきたが、冷たい小姑や、仕事を理由に家を空けがちな夫に失望する。ヨハネスから結婚の記念にと贈られたドールハウスに飾るミニチュアを注文することをきっかけに屋敷に潜む秘密を知ることとなる。

ヨハネス・ブラント(演:アレックス・ハッセル)

街の人々も認める大商人。旧知の友人であるメールマンス夫妻の砂糖を預かっているが、砂糖の売上金によって夫妻が権力を持つことを恐れ、わざと売っていない。度々夫妻から早く売るようせっつかれている。生まれながらの男色家で、ネラとの結婚も偽装だったことが判明。役者のジャックと事務所で頻繁に睦み合っている。

マーリン・ブラント(演:ロモーラ・ガライ)

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