ボディガード(1992年の映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ボディガード』とは、1992年にアメリカ合衆国で制作されたラブサスペンス映画である。脅迫状を送りつけられたスーパースターのレイチェル・マロンと彼女を命懸けで守る元シークレットサービスでプロのボディガードであるフランク・ファーマーとの甘くて切なく、ほろ苦い恋が描かれていく。主演は『ダンス・ウィズ・ウルブズ』でオスカーを獲得したケビン・コスナー、共演は本作が女優デビューとなった歌手ホイットニー・ヒューストンが務めた。監督は『ボルケーノ』、『理由なき発砲』などで知られるミック・ジャクソンが務めた。
レイチェル・マロンを尋ねるために車で彼女の邸宅に来たボディガードのフランク・ファーマーはインターホンに向かって「アレクサンダー・グラハム・ベルですが、ミス・マロンにお会いしたい」と伝えるシーンがある。アレクサンダー・グラハム・ベルはスコットランド生まれの科学者、発明家、工学者である。電話の発明者として知られている。
『ボディガード』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
レイチェル・マロン 「撃つかと思ったわ」
スーパースターのレイチェル・マロンの警護を引き受けたボディガードのフランク・ファーマーは彼女の警護に徹していく。ある日、高級レストランから出てきた所を母親と娘がレイチェルの前にやって来る。レイチェルのファンであるその親子は彼女にサインを頼み、そして写真撮影もお願いする。フランクは女の子に対してサインも写真撮影もできないと伝えるが、レイチェルは承諾する。喜ぶ親子がその場から離れていった後、レイチェルは「撃つかと思ったわ」と皮肉を込めて言う。危機意識のないレイチェルがフランクを邪魔者扱いしている気持ちが伝わってくる。
レイチェル・マロン 「心配しないで。私が守ってあげる」
ナイトクラブで暴走したファンからフランクに助けられたレイチェルは翌朝、フランクと並んで歩きながら恥ずかしい気持ちを抑えて一緒にデートに行きたいと伝える。1970年代の音楽が流れる店に行き、2人は楽しい時間を過ごしていく。ジュークボックスから流れる歌に合わせながら2人はダンスをしていく。気が滅入る歌詞だと2人は口にして、さらにダンスを続けていく。その時、どこかでグラスが割れる音がして、フランクはレイチェルを守ろうとする。そのようなフランクに対して、「心配しないで。私が守ってあげる」と彼女が言う。守る男と守られる女の立場が逆転したこと、そしてレイチェルの余裕ある気持ちが伝わってくる。
フランク・ファーマー 「これじゃ君を守れない」
ナイトクラブで暴走したファンから身を挺して自分を守ったフランクに対してレイチェルは感謝の気持ちを示した。そしてある夜、2人はデートに行く。そして2人はボディガードと警護対象者という関係を越えて恋人同士の関係になり、一晩過ごした。しかし、フランクはボディガードという立場で警護対象者と一晩過ごしたことを後悔する。そしてレイチェルに「これじゃ君を守れない」と感情を露わにして言う。仕事柄、自身の感情を出さずに警護対象者を守り抜く仕事をしているフランクだからこそ、心の奥底に秘めた後悔の念が強く伝わってくる。
『ボディガード』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
デートで鑑賞した映画は『用心棒』
フランク・ファーマーとレイチェル・マロンの2人がデートで鑑賞していた映画は『用心棒』だ。日本映画界の巨匠である黒澤明が監督を務めた作品であり、俳優の三船敏郎が主演を務めた。宿場町で対立するヤクザ同士を衝突させて壊滅させるという内容である。『ボディガード』の脚本を執筆したローレンス・カスダンは熱烈な黒澤明監督のファンであり、オマージュとして映画の中に『用心棒』のワンシーンが挿入された。
スティーブ・マックイーン主演を想定して書かれた脚本
映画『ボディガード』の脚本は当初、スティーブ・マックイーンが主演、ダイアナ・ロス共演を想定して執筆されていた。マックイーンは『大脱走』や『ブリット』などで知られるアクションスターであり、ダイアナ・ロスは歌手として「恋はあせらず」などのヒットソングで知られ、女優として『ビリー・ホリデイ物語/奇妙な果実』などの映画に出演していた。しかし、マックイーンが降板した後に『ある愛の詩』で知られるライアン・オニール主演で映画化の企画が進行するが、実現には至らなかった。白人と黒人のロマンスを本格的に描くには困難な時代背景があったという説がある。後にケビン・コスナーが製作を務め、共演にホイットニー・ヒューストンを指名したことで映画化が実現されて公開となり、アメリカのみならず日本でもヒットを記録した。
続編が企画されていた
ハリウッドの有名俳優ケビン・コスナーと歌謡界のスーパースターであるホイットニー・ヒューストンが出演した映画が『ボディガード』であるが、実は続編が企画されていた。共演は1997年8月31日にフランスのパリで交通事故死したイギリスのダイアナ元皇太子妃だった。続編の映画は香港が舞台となっており、コスナー演じるボディガードが元皇太子妃を警護していく過程で次第に恋仲になっていくという内容だった。しかし、彼女が交通事故死したことによって続編の企画は実現に至らなかった。ちなみに、コスナーの手元に続編の脚本が届けられたのは元皇太子妃が亡くなる前日だったという。
主題歌はカバーソング
映画『ボディガード』と言えばホイットニー・ヒューストンが歌う主題歌「オールウェイズ・ラブ・ユー」が有名であるが、実はカバーソングである。オリジナルはアメリカ人歌手兼女優であるドリー・パートンが作詞と作曲を手掛けた同名の歌で、パートン自身が歌っている。パートン版は鼻にかかった独特の歌声が特徴であるが、ヒューストン版は力強い歌声が特徴である。
映画のポスターに写る女性はホイットニー・ヒューストンとは別人
映画『ボディガード』といえば、ケビン・コスナー演じるボディガードに抱かれているホイットニー・ヒューストン演じるスーパースターが映るポスターが印象的である。『エンターテインメント・ウィークリー』というテレビ番組のインタビューでケビン・コスナーが、このポスターに映る女性はホイットニー・ヒューストンではなく、別の女性であることを暴露した。コスナーの肩に顔を埋めていて問題はないし、怯えているという設定だから、とコスナーは語った。
映画のワンシーンが切り取られていて、これをポスターにしたいとコスナーは言った。映画の配給元であるワーナーブラザースは反対したが、ヒロインの顔が見えないポスターは今までにないからこそ、インパクトが強いポスターになったと語っている。
『ボディガード』の主題歌・挿入歌
主題歌:ホイットニー・ヒューストン 「I Will Always Love You」
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目次 - Contents
- 『ボディガード』の概要
- 『ボディガード』のあらすじ・ストーリー
- 新しい警護の依頼
- スーパースターとの対面
- ナイトクラブでの出来事
- 過ちを犯した夜
- 身に迫り始める危険
- 束の間の平穏
- 衝撃の告白
- 切ない別れと新しい出発
- 『ボディガード』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- フランク・ファーマー(演:ケビン・コスナー)
- フランク・ファーマーの警護対象者
- レイチェル・マロン(演:ホイットニー・ヒューストン)
- レイチェル・マロンの家族
- ニッキー・マロン(演:ミシェル・ラマー・リチャーズ)
- フレッチャー・マロン(演:デボーン・ニクソン)
- レイチェル・マロンの関係者
- ビル・デバニー(演:ビル・コッブス)
- サイ・スペクター(演:ゲイリー・ケンプ)
- トニー・シペリ(演:マイク・スター)
- ヘンリー・アダムス(演:クリストファー・バート)
- フランク・ファーマーの家族
- ハーブ・ファーマー(演:ラルフ・ウェイト)
- フランク・ファーマーの関係者
- グレッグ・ポートマン(演:トーマス・アラナ)
- レイ・コート(演:ジェリー・バマン)
- ミネラ(演:ジョー・ユーラ)
- 脅迫状を送りつけた男
- ダン(演:トニー・ピアース)
- アカデミー賞授賞式の関係者
- スキップ・トーマス(演:リチャード・シフ)
- 大御所女優(演:デビー・レイノルズ)
- ロバート・レアドン(演:ロバート・ウール)
- 音響賞プレゼンター(演:ロブ・サリバン)
- 音響賞受賞者(演:パトリシア・ヒーリー)
- クライヴ・ヒーリー(演:ナサニエル・パーカー)
- その他の人物
- ロータリークラブ会長(演:バート・レムゼン)
- 少女(演:エイミー・ルー・デンプシー)
- 少女の母親(演:シェリー・A・ヒル)
- エマ(演:エセル・アイヤー)
- 『ボディガード』の用語
- シークレットサービス
- ヘンリー・フォード
- アレクサンダー・グラハム・ベル
- 『ボディガード』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- レイチェル・マロン 「撃つかと思ったわ」
- レイチェル・マロン 「心配しないで。私が守ってあげる」
- フランク・ファーマー 「これじゃ君を守れない」
- 『ボディガード』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- デートで鑑賞した映画は『用心棒』
- スティーブ・マックイーン主演を想定して書かれた脚本
- 続編が企画されていた
- 主題歌はカバーソング
- 映画のポスターに写る女性はホイットニー・ヒューストンとは別人
- 『ボディガード』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:ホイットニー・ヒューストン 「I Will Always Love You」
- 挿入歌:ホイットニー・ヒューストン 「Run To You」