ボディガード(1992年の映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ボディガード』とは、1992年にアメリカ合衆国で制作されたラブサスペンス映画である。脅迫状を送りつけられたスーパースターのレイチェル・マロンと彼女を命懸けで守る元シークレットサービスでプロのボディガードであるフランク・ファーマーとの甘くて切なく、ほろ苦い恋が描かれていく。主演は『ダンス・ウィズ・ウルブズ』でオスカーを獲得したケビン・コスナー、共演は本作が女優デビューとなった歌手ホイットニー・ヒューストンが務めた。監督は『ボルケーノ』、『理由なき発砲』などで知られるミック・ジャクソンが務めた。

『ボディガード』の概要

『ボディガード』とは、1992年にアメリカで制作されたラブサスペンス映画である。華やかな世界に生きるスーパースターと影の世界に生きるプロのボディガードの間に芽生えた甘く、切なく、ほろ苦い恋が描かれていく。
脅迫状を送りつけられてきたスーパースターのレイチェル・マロンに危険が迫ったことを感じた彼女のマネージャーは、かつてシークレットサービスとしてカーター大統領とレーガン大統領の警護を務めた経歴を持つプロのボディガード、フランク・ファーマーに警護を依頼する。しかし、レイチェルは自分が危険にさらされているという意識が全くなく、フランクを邪魔者扱いしていた。そのような彼女であったが、ナイトクラブで暴走したファンから身を挺して自分を救ってくれたフランクに感謝の気持ちを伝える。やがて2人は恋に落ちて一晩過ごすが、フランクは公私混同したことを悔やみ、レイチェルとの間に険悪な空気が流れてしまう。そのような時、レイチェルの身に危険が迫り、フランクの助けが必要であると必死に訴える。そしてフランクは命を懸けて彼女を守り抜くことを決めるのだった。
未だ多くの謎に包まれたケネディ大統領暗殺に独自の視点で迫る地方検事役として『JFK』に出演したケビン・コスナーがプロのボディガードを演じ、本作が女優デビューとなった歌手ホイットニー・ヒューストンが華やかな世界に生きるスーパースターを演じ、歌声も披露している。
コスナーは主演のみならず製作も務め、『L. A.ストーリー/恋が降る街』や『誘導尋問』、『ボルケーノ』などで知られるミック・ジャクソンが監督を務めた。

『ボディガード』のあらすじ・ストーリー

新しい警護の依頼

フランク・ファーマーはシークレットサービスとしてカーター大統領の警護を2年間、レーガン大統領の警護を4年間務めた経歴を持つ。しかし、非番でありながらもレーガンが狙撃された時にその場に居合わせなかったことを悔やみ続けていた。そのことに責任を感じてシークレットサービスを退職してからは個人でボディガードの仕事を行っていた。ある日、スーパースター、レイチェル・マロンのマネージャーであるビル・デバニーがフランクの自宅を訪ねてきた。彼女の元に脅迫状が送りつけられてきており、レイチェルの身に危険が迫っていると感じてフランクに警護を依頼をしてきたのだ。初めは有名人であるという理由で依頼を断ろうとしたが、ビルの説得によってまずは状況を確かめに行くことを伝える。もし警護を引き受けるなら、報酬は週に3千ドルと条件を提示した。
そしてスーパースターのレイチェル・マロンが住む邸宅に車で向かったフランクはインターホンに「アレクサンダー・グラハム・ベルがミス・マロンに会いに来ました」と伝えた。不審者が来たのかどうか何の疑いもなくゲートが開いたことにフランクは驚いた。そして邸宅のドアベルを鳴らし、彼は出てきた年配の女性に「ヘンリー・フォードがデバニー氏に会いに来ました」と伝える。ここでも全く疑われることなく中へ通された。

スーパースターとの対面

レイチェル・マロンの邸宅に通されたボディガードのフランク・ファーマーは警護を依頼してきた彼女のマネージャー、ビル・デバニーと再び会う。そして彼はレイチェルと対面するが、当のレイチェルは自身が命を狙われているという危機意識が欠けていた。彼女はこれまで通りの生活を変えていく気持ちは全くなかった。そのような彼女に対してフランクはあきれ果て、警護の依頼を断ろうとする。帰ろうとするフランクであったが、ビルに数か月の間に送られてきた脅迫状を見せられたこと、そして懇願されたことで仕方なく警護の依頼を引き受ける。
レイチェルの運転手であるヘンリー・アダムスに助手を依頼し、手薄であったレイチェル宅の警備を強化していくことを決める。しかし、急な生活の変化や工事に対してついにレイチェルの不満は爆発するのであった。
静かな生活が欲しいとレイチェルは訴える。マネージャーのビルは何かある度に呼び出されることに対して不満を口にした。警備強化の工事はもうすぐ終わるとフランクは言うものの、これまでの生活を変える気がないレイチェルと警護に協力を求めるフランクは何かと衝突するようになっていく。友人とブランチを食べたいと言うレイチェルに対し、フランクは「火曜日に行けばいい」と言い、レイチェルの広報担当者のサイ・スペクターはあきれ果てた。
ある日、買い物に行くことになったレイチェルにフランクがボディガードとして一緒に行く。洋服を買いに行った店で「試着室に一緒に入る?」と冗談なのか本気なのかわからない質問に対してフランクは、「君を守るためにいるのであって、買い物の手伝いでいるわけではない」と言葉を選びながら抵抗するのであった。

ナイトクラブでの出来事

レイチェルはある夜、クラブ「マヤン」へ行くことになった。夕食だけだと思っていたフランクは予定の変更が知らされておらず、サイに対して予定変更の件は知らせるように強く言う。そのようなフランクに対して「今伝えた」と言う始末だった。リムジンに乗る前にフランクに気付いたレイチェルは彼のスーツを誉める。彼はレイチェルに十字架の発信機を手渡し、使い方を教えた。
向かった先のクラブの周りには既に多くのファンが待ち構えており、レイチェルの名前を叫び続けていた。楽屋に入ったレイチェルはテーブルの上にあった封筒を開けた。しかし、その中に彼女への脅迫状が入っていた。マネージャーのビルは「また送ってきた」と言うが、レイチェル本人はそのことを知らされておらず、戸惑うのだった。サイはレイチェルを心配させたくないとの理由で黙っていたと言うが、息子フレッチャーが家にいる間に侵入者がいたことにレイチェルは動転してしまう。
彼女を狙う犯人が会場に来ている可能性があることを考え、ビルは出演をキャンセルしようと決める。反対するサイに対して、ビルは自分がファンに知らせると言った。しかし、レイチェルの出演を求めるファンの声は止まず、ステージに背を向けないことを決めたレイチェルはファンの前に姿を見せた。
新しいミュージックビデオの宣伝のためにクラブに来ていたレイチェルは音楽に合わせて歌い始める。心配そうに見守るフランクに対してステージに来ないような動作を見せた。大勢のファンが盛り上がりを見せていたが、突然、ファンが暴走を始めてしまう。危険と判断したフランクはすぐさまステージに上がり、押し寄せるファンから身を挺してレイチェルを救い出す。クラブの裏口に駐車させていたリムジンにレイチェルを乗せてその場を後にするのだった。

過ちを犯した夜

ナイトクラブで暴走したファンから身を挺して救ってくれたフランクに対してレイチェルはお礼を言う。そしてこれからはフランクに対して可能な限り協力していくことも伝える。フランクと並んで歩きながらレイチェルは彼をデートに誘う。守る男と守られる女の間に恋が芽生えていたのだ。そしてその日の夜、フランクが62回も観たというくらい好きな映画『用心棒』を観た後、2人は1970年代の音楽が流れるフランク好みの店に行く。
フランクの過去の恋愛話を聞きながら、レイチェルは彼と夜の時間を楽しんでいく。そしてジュークボックスから聞こえてきた歌を耳にしたレイチェルがダンスを申し込む。戸惑いながらもフランクは流れてくる歌に合わせてダンスをしていく。歌詞が悲しい気持ちにさせる内容だとお互いに言いながら2人はゆっくりとダンスを続けていく。その時、どこかでグラスが割れる音が聞こえ、フランクはすぐにレイチェルを守ろうとした。そんなフランクに対して、「私が守ってあげるから、心配しないで」と立場が逆転したセリフを言うのだった。
デートを終えたレイチェルはフランクの自宅にやってくる。大学時代にアメリカンフットボールでエンドのポジションにいた時の写真を見て微笑む。シークレットサービスに所属していたが、なぜ辞めたのかとレイチェルはフランクに尋ねる。「お金だよ」とフランクは答えた。高級な趣味を持っているからなのね、とレイチェルは部屋の中を見回しながらうなずくのだった。
そして2人はベッドに入り、一夜を共にする。「こんなに安心したのは初めて」とレイチェルはフランクと一緒にいることで安心感を得た。
翌朝、ベッドを出たフランクはスーツに身を包んでいた。ボディガートとして依頼者を守る立場でありながらも、レイチェルと一夜を過ごしてしまったことを強く悔やんでいた。仕事に対して一筋に取り組んできたフランクは自分の行動を恥じた。そしてレイチェルに対して突き放した態度を取り、2人の間には険悪な空気が流れ出した。

身に迫り始める危険

警護対象者であるレイチェルとの間に流れる険悪な空気を感じながらも、フランクはボディガードとしてレイチェルの警護に徹していた。マイアミのホテルで開かれるエイズチャリティーコンサートに出演した彼女の警護をしていたフランクはかつての同僚であるグレッグ・ポートマンと久しぶりに再会する。レーガン大統領が狙撃された際、その場に居合わせなかったことはフランクの責任ではない、とポートマンは言葉を掛けた。
2人が話しているところにレイチェルがやって来た。ポートマンに挨拶をして、フランクと同じボディガードをしていることを知る。そして彼女はフランクへの当て付けのようにポートマンを自分の部屋に連れ込んでキスを交わすが、そのまま彼を帰らせる。
翌日、レイチェルはボディガードのトニーと一緒に買い物に行く。マネージャーのビルから注意をされるが、自分がやりたいことをやりたい時にやると言う。その言葉を聞いたフランクは、勝手なことをすれば今度は警護しないと厳しく言った。
フランクが部屋を出た間、レイチェルに電話が掛かってきた。息子のフレッチャーからだと思ったが、全くの別人であった。一夜を共に過ごして険悪な関係になっていたフランクに対してレイチェルは、彼が必要であることを伝える。そしてフランクの言う通り、残りのコンサートはキャンセルし、ビルとトニーには休暇を取らせると約束した。

束の間の平穏

レイチェルの命を守るためにフランクは父親ハーブが住むオレゴン州に向かう。湖の近くにあるフランクの実家には父親のハーブが1人で住んでいる。フランクとの久々の再会をハーブは喜んだ。静かなこの家でフランクはレーガンが狙撃された後に半年間を過ごした。レーガンが狙撃された時、フランクの母親の葬儀があったために彼は非番であったのだ。そのことをフランクが未だに悔やみ続けていることを、ハーブは料理をしながらレイチェルに話した。
笑いにあふれた夕食の時間を過ごした後、フランクと父親ハーブは3年間続いているチェスの勝負をした。チェスの勝負が続く中、レイチェルが寝ると言った。フランクは彼女を寝室まで送っていった。フランクが家の戸締まりを確認していた時、レイチェルの姉ニッキーがフランクに、「用心深いのね」と言った。フランクとレイチェルの行動を探っていたことが自分の生き方であるとニッキーは言った。人生を変えようと思わないのかと言うフランクに対してニッキーは「人生を変えることは簡単なの?」と聞いた。
次の日、フランクはハーブと雪に残った足跡を見ていたが、不審な足跡をフランクは見つけた。フレッチャーがボートに乗っていることに気付いたフランクは全速力で駆け出して間一髪、彼をボートから降ろした。冷たい湖に落ちたフランクとフレッチャーはなんとか助かるが、ボートが突然爆発した。誰も知らないはずのフランクの実家にまで危険が迫ってきていたのだ。

衝撃の告白

レイチェルとは何の関係もないフランクの実家にまで危険が迫ってきたことを知ったフランクは明け方に実家を出ることに決めた。その夜、ウイスキーを飲みながら泣き崩れるニッキーにフランクは気付いた。彼女は昨夜の行動を反省しているとフランクは言った。今日起きた出来事について彼女から聞かれたフランクは全てがプロの仕業であると答えた。実はニッキーは妹のレイチェルがスターとして有名になっていくことに嫉妬し、あるバーに行ってレイチェルの殺害をアーマンドという見知らぬ男に依頼したと告白した。ひどく酔っていたのでバーの名前を覚えていないと言う。レイチェルが殺されるまで金を払い続けたとニッキーは涙ながらにフランクに告げた。脅迫状はニッキーがレイチェル殺害を依頼する前に送りつけられてきていたが、その内容はニッキーのレイチェルに対する思いを代弁していたというのだ。
その時、物音に気付いたフランクはニッキーにその場を動かないように言うと、部屋を出て行った。2階に上がったフランクはレイチェルが無事であることを知るが、1階にいたニッキーは侵入者に射殺されてしまう。
厳重な警備が敷かれる中、ニッキーの葬儀が行われた。レイチェルはこのことで非常に打ちひしがれていたと伝えられ、アカデミー賞授賞式への出席を危ぶまれていると伝えられた。
そのような中、レイチェルはフランクにアカデミー賞受賞式に出席することを伝える。授賞式に出席することは危険が伴うことだとフランクは言うが、レイチェルはボディガードであるフランクが守ってくれるから心配はないと言い、キスを交わすのだった。
そしてレイチェルはアカデミー賞授賞式に出席をした。彼女の横にはボディガードであるフランクがいた。アカデミー主題歌賞のプレゼンターを務めるレイチェルだったが、命を狙われる恐怖のあまり、ステージから降りてしまう。数十億人の視聴者が見ている前で恥をかいたことをレイチェルはフランクに当たり散らした。
フランクは舞台裏でかつての同僚ポートマンと再会する。ポートマンは授賞式の司会者の警護をしていると言うが、司会者本人はポートマンなど知らないと言った。レイチェルを狙う犯人はポートマンであるとフランクは確信した。
そしてアカデミー主演女優賞の発表が行われ、見事レイチェルが受賞した。スポットライトを浴びながらステージに上がっていくレイチェルをカメラマンに扮したポートマンが狙っていく。ステージ横に来たフランクは銃を取り出し、そのままステージに立つレイチェルに放たれた銃弾を自ら受けた。彼女の命を狙ったポートマンをフランクはすぐさま射殺した。

切ない別れと新しい出発

アカデミー賞授賞式の会場において、命懸けでレイチェルを守り抜いたフランクは空港に来ていた。彼はリムジンから降り立ったフレッチャー、レイチェル、そしてトニーを出迎えた。レイチェルの警護は白髪の男が務めている。空港に見送りに来たフランクに対してレイチェルは、「来なくてもよかったのに」と言った。新しいボディガードについて尋ねられたレイチェルは、「白髪の人ね。年老いた人を就ける必要があったの」と冗談交じりに言うレイチェルに対してフランクは、「君がボディガードを誘惑しないように」と言った。
そして別れを決めたフランクとレイチェルはキスを交わし、お互いに「さようなら」と言った。レイチェルが乗った飛行機がゆっくりと動き出し、外に立つフランクが遠くなっていく。その時彼女は飛行機を降り、フランクの胸に飛び込んでいった。ボディガードとスーパースターという立場ではなく、恋人同士であるかのようにキスを交わしていった。
それからレイチェルは歌手として活動を続けていき、フランクはボディガードとして新たな出発をしていた。彼は慈善団体ロータリークラブ会長のボディガードとなっていたのだ。夕食会に出席した神父が祈りの言葉を唱える中、ブランクはボディガードとしての職務に全力を尽くすのだった。

『ボディガード』の登場人物・キャラクター

主人公

フランク・ファーマー(演:ケビン・コスナー)

日本語吹き替え:津嘉山正種(ソフト版・フジテレビ版・テレビ朝日版)
シークレットサービスとしてカーター大統領とレーガン大統領の警護を務めた経歴を持つプロのボディガード。非番でありながらも、レーガン大統領が狙撃された際にその場に居合わせなかったことを悔やみ続けている。脅迫状を送りつけられてきたスーパースターのレイチェル・マロンの警護を担うことになるが、危機意識のないレイチェルにあきれ果てて依頼を断ろうとする。しかし、彼女のマネージャーの説得によって警護を引き受けることを決める。ナイトクラブで暴走したファンからレイチェルを救ったことをきっかけに彼女の信頼を得る。常に警護を務めることでレイチェルと次第に恋仲になっていくが、深い仲になったことを後悔する。やがてレイチェルの身に更なる危険が迫ったことを知り、彼女を守ることを決意する。そしてアカデミー賞授賞式でレイチェルを狙った銃弾を自ら受け止める。

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