アムロ・レイ(機動戦士ガンダム)の徹底解説・考察まとめ

アムロ・レイとは『機動戦士ガンダム』の主人公であり、作中ではRX-78-2 ガンダムのパイロットを務めた。人類革新の姿「ニュータイプ」であるとされ、非常に強い感受性を持っている。
作中最強のパイロットであるともされ、そのモビルスーツ操縦技術は非常に高い。
劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でも大人となったアムロが主役を務めた。
また、1979年より続くガンダムシリーズにおける最初の主人公でもあり、そのため「ガンダムといえばアムロ」というほどに高い知名度を誇っている。

ザクIIの砲撃から命からがら逃げまどい、ガンダムのコクピットへ収まったアムロ。
内部では計器類に光が灯っている。機体は、すでに火が入っていたのだ。
それを確認すると、アムロは思わずつぶやいた。
「こいつ……動くぞ!」と。
アムロとガンダム、運命の出会いであった。

アムロ「人は、同じ過ちを繰り返す……まったく! 」

カミーユとフォウを救えなかったアムロ。

かつての自分と重なる姿の少年、カミーユ・ビダン。
ガンダムと名の付くモビルスーツを操縦する境遇も自身と重なった。そんな彼にだけは、かつて自分が味わったのと同じ辛酸はなめてほしくないと願って戦いに参加するのだが、運命は残酷だった。

カミーユもまた自身と解り合えたかもしれない少女、フォウ・ムラサメを救う事ができず、彼女を失ってしまったのだ。
しかも、フォウはカミーユをかばうという形で命を失った。
アムロにしてみれば、かつてのララァ殺害の悪夢を、第三者の立場で見せつけられながらも何もできなかったという形である。

嘆き絶望に沈むカミーユを見たアムロは、もはやカミーユにかけられる言葉が出ず、また、それを探る余裕もなかった。
代わりに出てきた言葉は「人は、同じ過ちを繰り返す……まったく! 」という、自身と人の世そのものへの呪詛であった。

アムロ「たかが石ころひとつ、ガンダムで押し出してやる!」

νガンダムでアクシズを押す決意を見せるアムロ。

ロンド・ベルはアクシズ爆破作戦に失敗した。
地球への落下ルートへ、小惑星アクシズの一部が入ってしまったのだ。
後は小惑星という巨大質量が地球を押しつぶし、緑の大地を死の世界へ変えるのを待つだけだろう。

誰もが絶望せざるを得なかった瞬間である。
だが、アムロだけは諦めなかった。
決着をつけたシャアのモビルスーツ、サザビーの脱出ポッドを道連れに、アクシズへ向けてνガンダムのスラスターを噴かす。

アムロ「たかが石ころひとつ、ガンダムで押し出してやる!」
シャア「バカなことはやめろ!」
アムロ「やってみなければ分からん!」
シャア「正気か!?」
アムロ「貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない」
シャア「アクシズの落下は始まっているんだぞ」
アムロ「νガンダムは伊達じゃない!」

と続く、一連のシャアとのやり取りのはじまりとなるセリフである。
なお、アムロのCVを担当した古谷徹は、元々『巨人の星』の星飛雄馬や『鋼鉄ジーグ』司馬宙といった熱血キャラを演じており、絶望的な状況下でもキャラクターが激情を絶やさないガンダムシリーズ原作者、富野由悠季の演出にぴったり当てはまっていたシーンだといえる。

アムロ・レイの裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

アムロ・レイの名は旧日本軍の「ゼロ戦」由来

アムロの名前由来となった三菱・零式艦上戦闘機(手前)。

ガンダムシリーズの原作者、富野由悠季の造詣が深い分野のひとつとして第二次世界大戦期の歴史があり、その中には兵器類も含まれてくる。
そこに使われていた兵器名の一部はガンダムシリーズに流用されたが、単純に兵器から兵器へ流用ではなく、兵器の名前が人名に使われた例もある。

その代表例がアムロ・レイである。
これはゼロ戦こと「零式艦上戦闘機(れいしきかんじょうせんとうき)」が由来となっている。
具体的にはゼロ戦の開発コードであるA6M(艦戦・6番目・三菱製を意味する)を「えーろくえむ=アロム」と読み、これをアナグラムで「アムロ」と入れ替えて名とし、性は「零(れい)」をそのままカタカナにした。

他にも「カイ・シデン=紫電改(しでんかい)」や「ハヤト・コバヤシ=一式戦・通称"隼"」や「リュウ・ホセイ=流星」や「キッカ・キタモト=菊花」などがある。

小説版アムロは戦死する

『機動戦士ガンダム』はテレビアニメ作品を原作として、いくつものメディアミックス作品に恵まれたシリーズである。その中でもっともテレビアニメ版との差異の大きいものが原作者、 富野由悠季自身の手がけた小説版『機動戦士ガンダム』である。

内容はテレビアニメ版をベースにしているが、物語・登場人物・登場兵器など細部が異なっており、その差異は主人公アムロ・レイにも及ぶ。
テレビアニメ版と決定的に異なるのは戦死するという事である。
劇中では、小説版オリジナルキャラクターである、ルロイ・ギリアムというパイロットにガンダムを撃墜されてしまう、というくだりがあるのだ。
以下はそのワンシーンにある、ミライとブライトの会話シーンである。

「アムロ! アムロが!」
ミライ中尉の叫びに、
「アムロが墜されたのか!?」
ブライトは息をのんだ。
「直撃です!」

テレビアニメ版では無敵を誇ったアムロも、小説版ではこのように簡単に命を落としてしまう。
この事により、小説版『機動戦士ガンダム』は『Ζガンダム』に続く事なく、その世界のみで完結している作品という位置づけになっている(つまり、小説版の『Ζガンダム』にも続かない)。

この他にも細かい差がいくつかあり、以下の通りとなっている。

・民間人でなく元々軍属であった。
・当初はガンダムよりも、ガンキャノンに(装甲の厚さに安全性を感じて)搭乗を希望する。
・物語の途中でRX-78-2 ガンダムが大破し、G-3ガンダムに乗り換える。
・ララァ死後、新たなるニュータイプの少女クスコ・アルと交流するも、またしても死に別れる。
・セイラと肉体関係を結び、彼女からシャア殺害を依頼される。

さらに上記小説版に加え、さらに中根真明による小説版も存在する。
こちらはアムロを含めて人物設定・物語共にテレビアニメ版とほぼ同一であり、純粋な『機動戦士ガンダム』のノベライズ作品として触れられる内容となっている。

再構成された『THE ORIGIN』版アムロ

OVA『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』より、アムロ・レイ。

『機動戦士ガンダム』のメディアミックス作品のひとつとして、キャラクターデザインおよび作画監督を務めた安彦良和による漫画、およびその漫画を原作としたOVA『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』がある。
これはテレビアニメ版の設定・物語をベースに、安彦良和がそれらを独自解釈して再構築したもの。

作品の基本的な構造はテレビアニメ版から大きく逸脱はしないが、 安彦良和が『機動戦士ガンダム』制作時に「これはおかしい」とか「こうした方がいいんじゃないのか」などと感じていた部分を、そうなるように変更しているのが特徴である。

例えば『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でのアムロは『機動戦士Ζガンダム』におけるカミーユのように、父テムのコンピューターから連邦の最高機密ガンダムの情報を得て、その設計図や仕様、操縦方法などを知っていたなどとされ、いきなりガンダムに乗って戦う流れに無理がないように配慮されている。

また、搭乗するガンダムはRX-78-2 ガンダムではなく、RX-78-02 ガンダム2号機となっている(こちらも、安彦良和の解釈で再構築されたRX-78-2 ガンダムである)。
さらに一年戦争後の姿も描写されており『機動戦士Ζガンダム』で描かれたほどには連邦から、ニュータイプの力を危険視はされておらず、そのまま連邦兵として作戦に従事している様子が見られる(ただし、まったく無害だと思われているわけではなく、ある程度の自由が保障されているだけ)。

別人格の岡崎版アムロ

テレビ画面をたたき割るアムロ(髪が白色の人物。テレビに映っているのはジオン総帥ギレン)

ガンダムファンに恒例のネタとして、岡崎漫画版アムロという存在がある。
これは、まだガンダムシリーズがリアリティを売りにした作品である事が世に浸透していなかった時代の話だ。この当時はビデオデッキすら高級品であり、ネット動画など影も形もなく、庶民が易々と映像を繰り返し見られなかった。

そんな時代のメディアミックス作品には、作者が原作の設定を把握できなかったがゆえに独自設定となってしまったものがあり、漫画雑誌『冒険王』に掲載されていた岡崎優による漫画『機動戦士ガンダム』も、これにあたる。

原作のガンダムシリーズにおけるアムロはナイーブで戦いを好まず、やや自閉症気味な少年という、1979年当時のロボットアニメ主人公としては異端児ともいえる設定だったが、岡崎漫画版ではこの設定が把握されなかった。
その結果、岡崎漫画版のアムロは、1979年当時のロボットアニメとしてまっさきにイメージされる作品『マジンガーZ』における兜甲児のような「少々粗野だが、心優しく熱い闘魂を持った主人公」として描かれてしまった。

もっともそれを印象づけるのが、岡崎漫画版の最終回におけるアムロの台詞「来るなら来いジオン軍! ガンダムがある限り、平和な宇宙をお前達の勝手にはさせんぞ!!」というもの。
原作のアムロであれば、まず言わないようなセリフを吐く迷キャラと化した事が、返ってガンダムファンから面白がられ、その熱意で漫画も復刻され、この熱血アムロの設定も「岡崎版アムロ」という形で後世に残されてしまった。

もう一人のアムロ「騎士アムロ」

騎士アムロのカードダス。

『機動戦士ガンダム』から続く本編シリーズとはまったく世界観の異なるガンダムシリーズとして『SDガンダム』と名の付く、一連の作品がある。
この『SDガンダム』とは、本編シリーズのキャラクターデザインのみを流用し、ファンタジー時代劇や、西洋の中世ファンタジー等、より非現実的な世界観を構築しているもの。

基本的に2頭身~3頭身にデフォルメされたキャラクターが登場し、人間のみならず、モビルスーツが意志を持った生き物として存在するのが特長で、1990年代に人気を博したガンダムシリーズである。

この内のひとつ『SDガンダム外伝』という作品にも、主要人物としてアムロが登場する(本編シリーズのアムロとは無関係)。
ただし主役ではなく、脇役。
「騎士(ナイト)」の職業に就いており、英雄である「騎士ガンダム」に憧れる新米の騎士、という設定である。

騎士アムロは、騎士ガンダム達に比べれば弱く、そして彼らの赴いた最終決戦に連れて行ってもらえなかったが、その活躍を語り継ぐ存在となった。

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