萌えカレ!!（漫画）のネタバレ解説・考察まとめ

『萌えカレ!!』の概要

『萌えカレ!!』とは、小学館が発行する少女漫画雑誌『Sho-Comi』（旧誌名は『少女コミック』）で2005年3.4合併号から2006年14号まで掲載された池山田剛による日本の人気少女漫画作品。単行本は全7巻。そして、連載2作品目『萌えカレ!!』発売当時、看板作品としての期待を背に、単行本1巻から4巻までの初回特典としてドラマCDが付けられた。また、デジタルコミックとしてDVD付の単行本が発売された。
桜華女子中学3年生の主人公若宮ひかる（わかみや ひかる）は、ある日道端でトラブルに巻き込まれそうになった矢先、通り掛けに助けてくれた壱川新（いちかわ あらた）に突然ファーストキスを奪われてしまい、最悪なアクシデントから始まった。しかし、物語はやがて切なくて甘酸っぱい恋物語へと展開していく。何故か見た目がそっくりな美形男子、壱川新と本田宝の2人による若宮ひかるを巡る三角関係のトラブルや、本田宝（ほんだ たから）の幼馴染の小早川亜美（こばやかわ あみ）が登場したことによって複雑に絡まる恋愛模様が描かれる青春学園恋愛漫画。少し過激な描写や笑い要素があるため高校生らしさを感じられるシーンと共に、恋愛を通して人を好きになる尊さや慈しむ心を養いつつ、日々もがき苦しみながら成長していく高校生達の姿を描いた作品である。

『萌えカレ!!』のあらすじ・ストーリー

ひかると新の出会い

桜華女子中学3年生の若宮ひかる（わかみや ひかる）は、少女漫画やアニメをこよなく愛する、ロマンチックなオタク女子。
理想の恋人との出会いに憧れながら平凡な日々を送っていたひかるは、ある日、道端の乱闘騒ぎに巻き込まれ、青い瞳をした美形の男子に助けられるも、その男に突然ファーストキスを奪われてしまう。
粗暴で下品な男に大切にしてきたファーストキスを奪われ、激しくショックを受けるひかるだが、合コンでその男に瓜二つの高校生、本田宝（ほんだ たから）と出会い、彼に惹かれていく。
宝と同じ明星高校を目指して勉強に励むようになったひかるは、街で再びキスの相手と遭遇。彼は宝の「別人格」であると名乗り、ひかるは宝が粗暴で女たらしな人格を持つことに動揺するが、一度自覚したその恋心が揺らぐことはなかった。
その後、無事に明星高校に合格したひかると同じクラスにはその青い目の男がいた。ひかるは驚くが、彼が宝の別人格というのは嘘であり、彼の名は壱川新（いちかわ あらた）という別人で、宝とは義兄弟でもあるということが発覚する。新はなぜか宝に強い敵意を抱いている様子だった。
高校入学後、ひかるは宝と同じ空手部に入り、距離を縮めていく。誠実で優しい宝への恋心を深めていくひかるだが、同時に、突如現れた新という存在に戸惑いを覚えていた。

恋人になったひかると宝

ひかるは、空手部の歓迎会の場で誤って酒を口にして泥酔してしまう。泥酔してもなお、宝への好意を口にするひかるに苛立った新は、彼女を襲ってしまおうと一人暮らしの家に連れ帰る。しかし、ひかるが悲しむ顔を想像してしまい、結局何もすることができずに朝を迎えていた。
一方、いなくなったひかるを探して一晩中走り回り、新の家まで汗だくで迎えにきた宝は、彼女への想いを自覚して告白。2人は付き合い始める。
その裏でひかるへの想いを募らせていた新は、宝への嫉妬心から強引にキスして告白する。しかし、ひかるがそれを受け入れることはなかった。
空手部の合宿に参加することになったひかるは、宝からもらった携帯電話をなくしてしまう。必死に無くしものを探すひかるに新が協力し、やがて嵐で足止めを喰らった2人は、山小屋で一夜を過ごすことになる。
必死に携帯電話を探してくれた新に少し心を開くひかるだが、翌朝二人を迎えに来た宝に駆け寄る彼女を見て、新が傷ついた顔をしていることに気づくことはなかった。

ライバル登場と新との進展

そんなある日、明星高校に宝の幼馴染である小早川亜美（こばやかわ あみ）が転校してきて空手部に入部する。
容姿も美しく才色兼備な亜美だったが、宝と交際しているひかるに嫉妬して嫌がらせを始めるようになった。宝との仲を裂こうとする亜美の策略によって一時すれ違ってしまうひかると宝だが、誤解を乗り越え、クリスマスに一泊2日のデートを計画する。
しかし、その計画を知った亜美は何とかそれを阻止しようと、一世一代の告白に踏み切り、宝を引き留めようと動いていた。そして迎えたデート当日、車に轢かれそうになった宝を庇った亜美が交通事故に遭い負傷。罪悪感に苛まれた宝は亜美と付き合うことを決め、ひかるに別れを告げるのであった。
亜美に宝を奪われる形となり、傷ついたひかるをデートに誘い、献身的に支える新。ひかるも粗暴な態度の裏に隠された新の優しさや過去を知り、ついに心が動き始める。
雨に打たれて発熱した新は、自分を介抱してくれたひかるに「自分が母親から疎まれ、愛情を受けずに育った過去を持っていたことから、自分とは逆に母親に愛されてきた義兄の宝に対して憎しみを覚えてしまっている」と複雑な胸中を打ち明ける。そんな新の見た目ではわからない繊細さに触れたひかるは、徐々に彼を守りたいという気持ちを持つようになっていった。
ひかるはその素直な気持ちを新に告白し、二人は恋人同士として関係をスタートさせる。

たどり着いた真実の恋

亜美は無事に退院し、休部していた宝と共に空手部に復帰していた。いざ二人の仲を目の当たりにしたひかるは心を痛めるが、常に自分を尊重し、寄り添ってくれる新の存在に救われる。
しかし、ようやく幸せな日々を送れると思った矢先、宝は彼女と新が寄り添い合っていることに激しく嫉妬し、自分がまだひかるに対して強い未練を持っていることを自覚する。
宝が亜美と別れ、ひかるに復縁を申し出たことで、ひかるは再び迷いを抱えるようになる。
そこで新は宝に対して「空手で試合をし、負けた方がひかるを諦める」という条件を提示した。そして運命の試合当日、足を負傷しながらも勝利したのは宝だった。
ひかるは同じく「好きな人の幸せのために身を引いた」という立場にある亜美と新が会話しているのを偶然耳にしたことで、その試合で彼がわざと負けていた事実を知り、常に自分の幸せを願ってくれていた新の不器用な優しさに激しく心を打たれる。
悩みぬいた末、ひかるが選んだのは新と共にいることだった。ひかるは新に再び想いを告げ、二人は本当の意味で結ばれることになる。こうして恋の痛みと葛藤を乗り越えたひかると新は、互いに自分らしい幸せを手に入れることができたのであった。
宝はひかると別れた日に渡せなかった指輪を握りしめ、彼女の幸せを願いながら二人を見送る。そして新もまた、今までにない幸福を噛みしめながら、ひかるを抱きしめる。
新とひかるの関係性はいつの間にか、互いの弱さを受け入れて、支え合う絆へと成長していたのだった。

『萌えカレ!!』の登場人物・キャラクター

主要人物

※担当CVは、ドラマCD版・デジタルコミック版で担当した者。

若宮ひかる（わかみや ひかる）

CV： 山本麻里安
本作のヒロイン、初登場時は中学3年生。恋愛漫画のような恋に憧れるオタク女子。
宝と出会い恋に落ちたことでオタクを卒業。大好きな宝のいる高校へ進学することを決意し、無事合格した。新からの嫌がらせを受けながらも宝と無事結ばれて幸せな日々を過ごした。亜美の事故をきっかけに宝と別れることになって落ち込んでいたが、そんな状況でもずっと傍で支えてくれていた新に惹かれていくようになった。だが、宝に復縁することを望まれたひかるは、初恋の人と辛い時傍で支えてくれた人のどちらかを選択しなければならなくなった。

本田宝（ほんだ たから）

CV： 森田成一
ひかるより1つ年上の美形であり、硬派で真面目な空手部に所属する高校生。新とは異母兄弟で、父は亡くなっている。無理やり連れていかれた合コンに行った矢先、ファーストキスを奪った相手だと勘違いでひかるに強く非難され2人は最悪な出会いとなった。しかし、誤解と知ったひかるは謝るべく改めて宝の高校に出向くことをきかっけに2人は親しくなっていき、やがて付き合うことになった。だが、亜美の事故をきっかけにひかると別れることになるが、新と結ばれたこと知ってもひかるへの想いが消えていなかったことに気づいた。そして、新と空手試合でひかるをかけて勝負することになった。

壱川新（いちかわ あらた）

CV： 立花慎之介
ひかると同じ年で、母親がイギリス人と日本人のハーフ。宝とは異母兄弟であり、宝と容姿がそっくりであるが、瞳は青色。幼い頃父親似であるがゆえに自分だけが煙たがられてしまったトラウマにより、宝を物凄く嫌う。ひかるとは最悪な出会い方をしたが、初対面の時からひかるが気になっていた。高校に入るまでは宝のふりをして女遊びをしたり、喧嘩をよくするような生活を送っていたが、ひかるに惹かれていくことをきっかけにだんだんと更生していった。宝と結ばれた後も、ずっと一途にひかるを想い続けていた。やがて念願叶ってひかると付き合うことになるが、好きな人の幸せは何かと考えるようなり、自ら別れるよう仕向けた。