劇場版 呪術廻戦 0（東京都立呪術高等専門学校）のネタバレ解説・考察まとめ

五条悟 vs ミゲル

虎杖と伏黒が出会う一年前、夏油傑と彼に与する呪詛師たちが起こした同時多発呪霊襲撃事件「百鬼夜行」。その真の目的は、呪霊への対応で呪術高専東京校を手薄にさせ、夏油本人がそこに乗り込むことにあった。
誘導に引っ掛かるも夏油の狙いを看破した五条だったが、彼を呪術高専に向かわすまいと立ちはだかった者がいた。夏油の仲間のミゲルである。
どれほどの窮地にあるかも分からない生徒たちの下に駆けつけるため、本気で障害を排除せんとする五条。それに“呪術を乱す”という稀有な呪術を編み込んだ黒縄で対抗するミゲル。「キレてる」と仲間を恐怖させるほどの殺気を振り撒く“現代最強の術師”を相手に、ミゲルは冷や汗を流しながらも食い下がる。

これだけならただの戦闘シーンだが、五条の恐るべき強さが明らかになっていくに従い、「ミゲルはとんでもない実力者だったのでは」という声がファンから上がるようになっていった。
地続きの物語である『呪術廻戦』において、屈指の実力者である漏瑚を含む特級呪霊たちが力を合わせ、さらに無数の人質を取ってそれを盾にしてもなお、五条を一か所に留めることすら犠牲無しには成し得ない仕事だった。ミゲルは対五条のための準備をしてはいたようだが、漏瑚が無理難題だと逆ギレまでしたこの任務をたった一人で成し遂げた上で、五体満足で逃げおおせている。そればかりか、かすり傷程度とはいえ五条にダメージすら与えているのだ。

五条の実力からすればまさに驚異的な戦果であり、作者自身「百鬼夜行の夏油側のMVPはミゲル」だと公言している。その後ミゲルは“五条に目をつけられた”とのことで、彼から押し付けられる形で乙骨の海外留学に付き合っている。地味にとんでもない実力者であることを示したミゲルが次はどんな立場で物語に現れるのか、楽しみにしているファンは多い。

乙骨憂太「失礼だな 純愛だよ」

0巻にて描かれた、乙骨と夏油の壮絶なる呪術合戦。自身の命を里香に捧げ、それを代償にさらなる呪力を得ようとする乙骨を、夏油は焦燥と戦慄と共に「女誑し」と揶揄する。それに対して乙骨が返したのが見出しのセリフである。
自分のために倒れていった友人たちのため、孤独の中で葛藤していた自分を“生きていていい”と認めてくれた仲間たちのためなら、命を捧げても惜しくはない。そんな「自分の選択は間違っていない」という乙骨の絶大な自信と、恐怖の対象でしかなかった里香にそれでも愛情を抱いていたことが見て取れる。紛れもなく0巻のクライマックスであり、乙骨というキャラクターが真の成長を遂げた瞬間である。

0巻のラストにて、乙骨は里香と交わした指輪をそのまま身に着け続けていることが描写されている。彼の里香への想いは夏油が言っていたような表面的なものではなく、自身が語ったように心からのものだったことがここでも描かれている。

夏油傑「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」

乙骨に敗れ、路地裏で力尽きんとしていた夏油の前に、ようやくミゲルらを退けた五条が現れる。命運尽きたと悟った夏油は抵抗せず、旧友たる五条と最後の語らいに望む。
「別に高専の連中まで憎かったわけじゃない。ただこの世界では、私は心の底から笑えなかった」
非術師のために報われることなく呪術師が死んでいく世の構造を嘆き、それを正すために凶行に走った夏油。そんな夏油の親友でありながら彼の苦悩を見抜けず、道を違えていく様を見ていることしかできなかった五条。それぞれの選択に後悔は無くとも、明確に敵対する立場になったとしても、互いに友情を完全に捨て去ることだけはできなかった。

最後に五条が夏油にどんな言葉をかけたのかは意図的に伏せられているが、彼は呆れたような顔をしてから苦笑を浮かべ、見出しのセリフを返している。少なくともそれが夏油を苦しめるようなものでなかったことだけは確かである。

五条悟「僕の親友だよ たった一人のね」

夏油一派が起こした百鬼夜行を鎮圧し、以前どこかで無くした乙骨の学生証を本人に渡す五条。先生が拾ってくれたのかと感謝する乙骨に、五条は見出しの言葉を返す。
実際に学生証を拾ったのは夏油であり、彼は死ぬ前にそれを五条に預けている。拾い主の名前は挙げず、敵として相対し、自らトドメを刺した夏油をそれでも親友と称する。道を違え、敵味方の間柄になってもなお断ち切れない二人の強い友情と、それほどの存在を手にかけるしかなかった五条の空虚な心境を感じさせるシーン。その上で夏油を「親友」だと言い切る五条の姿は、痛ましくもどこか清々しいものを感じさせる。

『呪術廻戦 0（東京都立呪術高等専門学校）』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

乙骨と狗巻の髪型変更

本作『呪術廻戦 0（東京都立呪術高等専門学校）』と、作者を同じくする『呪術廻戦』は世界観を共有している。キャラクターの多くも続投しているが、少なからず読者が面食らうのが、「乙骨と狗巻が双方の作品で髪型がまるで変っている」ことである。
乙骨も狗巻も本作ではツンツン頭だったのだが、『呪術廻戦』では下ろした髪型になっている。これは『呪術廻戦』の主人公・虎杖悠仁（いたどり ゆうじ）とその相棒である（ふしぐろ めぐみ）の髪型として、少年漫画の主要人物のアイコンともなっているツンツン頭を改めて採用したため、重複することを避けるための処置である。

五条が夏油に最後に告げた言葉

かつて強い友情で結ばれ、共に幾多の事件を駆け抜けてきた五条と夏油。袂を分かった後も互いに友情を捨て切れず、ついに二人の関係が決着するとなったその時、五条は夏油になんらかの言葉をかけている。
その内容がどのようなものであったかは意図的に伏せられているものの、『呪術廻戦 0（東京都立呪術高等専門学校）』の中で五条が同じセリフを発していることを作者である芥見下々は明言している。
ファンの間では、本記事で名言として取り上げた「僕の親友だよ たった一人のね」がそれに該当するのではないかと考えられているものの、それ以上の情報は明かされておらず、真相は闇の中となっている。

乙骨憂太の声優はスタッフ満場一致で緒方恵美に決定

2021年7月30日に乙骨憂太の声優が緒方恵美に決定したと発表があった。YouTubeに公開された「『劇場版 呪術廻戦 0』特報」動画では、乙骨憂太が実際に喋っている場面もおり、インターネット上は大いに盛り上がりを見せた。

乙骨憂太の声優に関しては、原作者の芥見下々に思い描くイメージがあり、「中性的で、柔らかさ、優しさがあった上で、大きな感情の振れ幅・落差もある」という説明があったとのこと。そのイメージに近い声優として緒方恵美の名前があがった。

緒方恵美は1992年から活動しているベテラン声優。アニメの声優だけでなく、吹き替えやテレビ番組のナレーションまでこなすパワフルな役者だ。また声優業界で初めて高校生以上の男子に声を当てた女性声優でもある。
主な出演作品としては、『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公・碇シンジ、『美少女戦士セーラームーン』の天王はるか、『カードキャプターさくら』の月城雪兎 / ユエなどがあり、有名な作品への出演も数多くこなしている。

それを聞いたスタッフは「なるほど！」と声をあげ、本作の監督、アニメスタッフ満場一致で緒方恵美に決定した。

『呪術廻戦 0（東京都立呪術高等専門学校）』の主題歌・挿入歌

主題歌：King Gnu「一途」

2021年11月にKing Nuが『呪術廻戦 0』の主題歌を担当することが発表され、それと同時に本楽曲を使用した90秒の予告動画も公開され大いに話題となった。

King Nuらしい溢れ出る疾走感と、『呪術廻戦』という作品の持つヒリヒリとした緊張感が合わさった楽曲に仕上がっている。またタイトルの「一途」から連想できるように、本作の主人公・乙骨憂太と幼馴染で婚約者の祈本里香の互いを思う一途な思いやその関係性を示す歌詞が印象的だ。King Nuの常田大希（Gt／Vo）は本楽曲の製作に当たり、「大勢の人々が待ち望んでいる名作の映画化ということでプレッシャーたっぷりでしたが、呪術廻戦の世界観にピッタリの、ヒリヒリとパンチのある何処迄も真っ直ぐな楽曲に仕上がったと思います。里香ちゃんと乙骨憂太君の関係は羨ましいほどに、そして呪わしいほどに一途ですね。」とコメントした。

「一途」は2021年12月10日から音源配信が開始された。またCDは2021年12月29日に発売。エンディングテーマの「逆夢」と共に『一途／逆夢』に収録されている。

ED（エンディング）：一途「逆夢」