トリニティ・ブラッド(トリブラ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『トリニティ・ブラッド』とは、著者・吉田直/キャラクター原案・THORES柴本による長編ダークファンタジー小説、及びそれを原作としたドラマCD、コミックス、アニメ作品である。
舞台は、中世のヨーロッパの啓蒙時代を彷彿とさせる世界観の遠未来。突如現れたヴァンパイアと人間は、互いの生存権をかけて戦いを続けていた。そんな中、ある神父がイシュトバーンと呼ばれる地に訪れ、レジスタンスとして活動するシスター見習いに出会う事から物語は大きく動き始める。

エステルを助けてくれたセスこそが、真人類帝国不変の女帝だったのだ。
しかし、事は女帝の手のひらの上で起こっていたことに過ぎなかった。
イオンが帝国に帰国する前よりモルトヴァ公と女帝は入れ替わり、モルトヴァ公は女帝として、女帝はセスとして市中に降りていたのだ。
全てを知ったスレイマンは、罪を認めセスに抱かれながら死を迎える。
こうして、長かったイオン、エステル、アベルの3人の旅は終焉を迎えることになる。
事後処理に追われながらも、落ち着きを取り戻しつつある帝国を後にしようとする次兄であるアベルにセスが語りかける。

「彼は(01)は生きている。宇宙から落とすだけでは足りなかったのだ」

2人の兄でありナノマシン・クルースニク01を宿し、秘密結社薔薇十字騎士団の首魁でもある長兄のカイン。
彼が生きていると聞き憎しみに顔を歪めるアベル。
彼の脳裏には、リリスの首を片手に微笑みながら語りかけてくるカインの姿が浮かんでいた。
想い人を無惨な形で殺したカインに対する憎しみと怒りに震えるアベル。
そんなアベルを見ながら、セスは「生きにくいヴァチカン側にいるより、一緒に帝国で暮らさないか」と告げる。
誘ってくれたセスの気持ちを受け取りつつ、背を向けたアベル。
過去に残した大敵の存在を必ず破壊することを誓い、セスの誘いに答えることはなかった。

聖女の烙印〜薔薇の王冠編

イシュトバーンに1年ぶりに帰郷したエステル。
そんなエステルは、ヴァンパイアからイシュトバーンを守った聖女として祭り上げられていた。

エステルをモデルにしたオペラが開かれ、それを観劇するために教皇を筆頭にさまざまなヴァチカンの要職が集っていた。
自分が聖女と讃えられる事に違和感を感じながら、エステルは故郷で時を過ごしていく。
オペラの開演に際してエステルが祝辞を述べる中、新たな事件が巻き起こる。
突如現れた長生種の少女シェラザート・アル・ラフマン/通称シェラは、エステルの命を狙い連れ去ったのだ。
しかしそれは彼女の本意ではなく、エステルを死に追いやることで伝説にしようとした大司教エマヌエーレ・ダヌンツィオの差金であった。
大司教はエステルの誘拐と殺害を実行させるため、シェラの家族とも言える士民を人質に取ったのだった。

全ての事情を知ったエステルは、シェラとともに大司教を討つため行動を共にする。
この為、エステルもヴァチカンに反旗を翻したと見なされシェラと共に追われる身となった。
一方、ヴァチカンの面々もそれぞれ己の覇権をめぐり思惑を走らせていた。
そして、エステルとシェラが大司教の元に訪れた時、すでに人質は拷問され見るも無惨な姿で殺されていた。
その事実を知った瞬間、シェラはある行動を起こす。
その場にいた大司教の手下達を殺し始めたのだ。
大司教が逃げ出そうとしたその先には、教皇とミラノ公と異端審問局の面々が行き先を塞いでいた。

突如、教皇を人質に取ったシェラに驚きが隠せないエステル

そんな中、唐突に教皇を人質にとったシェラの行動に困惑するエステル。
そんなエステルに対して、シェラは近くに来るように促す。
シェラは、自分の心臓部分にエステルの持っている銃をあてがいながらこういうのだった。
「私を殺して、あなたは聖女になるのです。」
激しく動揺するエステルに、さらにシェラは語りかける。

「ありがとう、我が友よ。」

その言葉と共にエステルの持つ銃にシェラは指をかけ弾丸を放った。
シェラは自分の命を犠牲にし、エステルが教皇を人質にとった凶悪な吸血鬼を殺して教皇を助けたという事実を作ったのだ。
こうして、エステルは反逆者ではなく聖女として生きていくことになった。
後日、ひっそりと建てられた彼女の墓前でエステルはこう誓う。
「私は聖女になる」
その後、聖女としてアルビオンの地を訪れたエステルは、己の運命に立ち向かうことになる。

アルビオンの地へ聖女として訪れたエステルは、何者かに襲われ長生種の住む隔離地区/ゲットーへと逃れる。
その直後、教皇庁とアルビオン王国海軍大佐メアリ・スペンサーの策略による隔離地区壊滅作戦に巻き込まれてしまう。
さらには、エステルを暗殺せんとする刺客たちにも囲まれる事になり、危機を迎えていた。
その時、エステルの危機を救ったのは秘密結社薔薇十字騎士団首魁にして、アベルの宿敵であるカイン・ナイトロードであった。
カインに救われたエステルはアベルの許へと向かうのだが、アベルはエステルの目の前でカインに殺されてしまう。
悲しみに暮れるエステルを叱咤激励したのは、他でもないメアリだった。
その際、メアリはエステルと腹違いの姉である事を告白する。
エステルは、自身が故王太子の実子/レディ・エスター・ブランシェットである事と異母姉メアリ・スペンサーの存在を知ることになる。

一方その頃、アルビオン女王は危篤となり、次期王位継承者についての密談が行われていた。
教皇庁の受けが良くなく民衆に人気のないメアリより、正当な王位継承者であるエステルを私利私欲のために王位につけようとする二十六貴族である公爵家の当主達。
しかし、メアリがかつて率い全滅したはずの海兵四十四連隊に二十六貴族はほとんどが殺されてしまう。
生き残った二十六貴族は、メアリになぜこんなことをするのかと問いただす。
「歴代の王が吸血鬼を匿い続けた事実をあなた方に被っていただく」とメアリが告げたことで、当主達は反発し怒りをあらわにする。
メアリは自らの手で生き残った3人の二十六貴族を1人、また1人と射殺していく。
メアリが最後の1人を手にかけようとしたまさにその瞬間、背後からエステルの声が聞こえてきた。
何故ここに居るのかと問いかけるメアリに、エステルは昏睡状態であった女王が逝去されたことを告げる。
そして、今何をしようとしていたのかと問いかけるエステル。
メアリはアルビオンに真の平和をもたらすため害悪を一掃し、2人で綺麗な王冠を掴もうと告げたのだ。
しかし、エステルはメアリの考えを否定し、2人は真っ向から対立することとなる。
その後、メアリは後から訪れたトレスと、ジェーン・ジョディス・ジョスリン海軍中将/エリン公に囲まれ窮地を迎える。
祖母である女王が自分を憎んでいると思い、少しづつ毒を盛って殺害したと告げるメアリに、エステルはどうしてそんなことをしたのかと声を荒げた。
そして、祖母はメアリの事を愛していた事、自慢の孫であり次期女王はメアリが相応しいと思っていたことを伝えたのだ。
祖母の本当の思いを知り愕然とし、その場を逃れるも味方もいないメアリ。
メアリが自死しようとした時、薔薇十字騎士団最高幹部であるイザーク・フェルナンド・フォン・ケンプファーが救いの手を差し伸べる。
ケンプファーは、メアリに霧上のフィールド内部をマイクロ波で焼き尽くす都市破壊兵器「湖の剣/エクスカリバー・システム」を授けるのだった。

暴徒化した群衆を止めに入るエステル

湖の剣が発動し、霧に覆われたアルビオン王都ロンドンは混乱を極めていた。
この非常事態に立ち向かうためには、隔離地区の長生種の協力が不可欠である。
しかし、いきなり現れた霧の原因は長生種のせいだと信じる民衆の一部が暴徒化し隔離地区へと向かい始めたのだ。
一触即発の中、エステルが民衆の前に姿を現しこう告げたのだ。
「たくさんの憎しみを見てきたわ。」そう語るエステルに耳を傾け民衆は武器を捨てていく。
一方その頃アベルの遺体が安置されているウィンザー城では、ミラノ公の最重要任務をトレスがこなしていた。
カテリーナより託されたナノマシンクルースニク02が入っている液体をアベルの棺にかけ終えた時、装甲歩兵に乗ったメアリが襲いかかる。
激闘を繰り広げるメアリとトレス。
トレスがメアリを押し始めると、助けるようにケンプファーが助太刀に入る。
そこへ小型飛行機に乗ったエステルが乱入してきた。
ウィンザー城で再び対峙したメアリとエステル。
「他人であればあなたの事が好きになれたのに」と言いながら、メアリがエステルに向けた銃の引き金を引こうとした時、ケンプファーが止めに入る。
ケンプファーはメアリに、「私の主人はエステルのファンである為、あなたに殺されては困る」と言う。そこにアベルを殺したカインが現れた。
カインに恭しく首を垂れるケンプファー。そしてメアリはエステルの前に立ちカインに銃口を向ける。
しかしカインに銃を取り上げられてしまい、メアリは持っていた長剣で切りかかるのだが返り討ちにされ、利き腕をもがれてしまう。
メアリには目もくれずエステルに近づいてくるカイン。
エステルがカインの体内に飲み込まれそうになったその時、メアリはエステルを突き飛ばし身代わりとなった。
尚もエステルを取り込もうとするカインの身体が突如崩れ始める。
その部分から、カインの体内に取り込まれていたアベルが分離し襲いかかる。
そしてカインの本当の目的が明らかとなる。
アベルとセスとの戦いで、宇宙から地球に落とされたカイン。
その後、数百年掛け再生したカインの体はもろく完全ではなかった。
カインは体を完全な物にするために、アベルの体を取り込んだのだが失敗してしまったのだった。
アベルは駆けつけたエステルにより自我を取り戻し、カインから分離することに成功しカインを追い詰めた。
だが、エステルを盾にされ止めを指すことはできずカインを取り逃してしまう。
そして、物語は新たな局面を迎える。

別々の道を歩み始めるアベルとエステル

エステルは、還俗しアルビオンの女王として戴冠式に臨む。
今まで仲間として戦ったAxの面々、そしてエリン侯が彼女に首をたれる。
戴冠式を終えたエステルは、アルビオンの女王として新たな薔薇の道を歩み始めたのだった。
一方、アベルは一人遅れて戴冠式後のエステルの居室に訪れ祝福を済ませた後、また新たな任務へと向かうのだった。

『トリニティ・ブラッド』の登場人物・キャラクター

教皇庁国務聖省特務分室/Ax

アベル・ナイトロード

CV:東地宏樹 /少年時代 日野聡(アニメ版)/一条和矢(ドラマCD版)

教皇庁国務政務省特務分室/Ax派遣執行官/コードネーム・クルースニク02
普段はボケボケしているが、昔はとんがっていた一面もあったようだ。
通常戦闘は、パーカッション・リボルバー式拳銃「ピースキーパー」で行い、人並み以上の射撃能力を有している。
ヴァンパイア相手の戦闘の際は、ナノマシン・クルースニク02を起動率40%で限定起動し、戦闘を行うことが多い。
また、大厄災前は、国連宇宙軍中佐・レッドマーズ計画保安課責任者であった。
その為、ロストテクノロジーと呼ばれる兵器や装置に、ほぼ全てアクセスする権限を持っている。
作中では、紅茶には砂糖を13杯入れるという極度の甘党として描かれている。
コミックス版巻末にある作者コメントには、給料は基本的に寄付や募金などにあてがってしまう為、常に金欠の状態が続いていると書かれている。
なんと財布には日本円にして100円程度の金額しか残っていない。

エステル・ブランシェ/レディ・エスター・ブランシェット

CV:能登麻美子(アニメ版・ドラマCD版)

見習いシスターの頃、ヴァンパイアとの戦いで教会と仲間を失ったが、アベルと共にローマに向かった。
その後正シスターになった彼女は、故郷イシュトバーンの聖女として崇められられるようになった。
物語後半で出生について明るみになり、アルビオン帝国の故王太子の嫡子(アルビオン女王の孫)であることがわかる。
即位に当たって、庶子である姉のメアリと不本意ながら対立する事となり勝利。
彼女は還俗しアルビオンの女王として即位する。
小説版では、強かな面が見られ少女から大人の女性として成長していく表現で描かれている。
コミックス版では、ツッコミ役の面も見られる。

トレス・イクス

CV:中井和哉(アニメ版)/緑川光(ドラマCD版)

教皇庁国務政務省特務分室/AX派遣執行官/コードネーム ・ガンスリンガー
人ではなく、脳の一部意外を機械化された人型戦闘マシーン。
全てを機械的に処理するが、人のように振る舞う場面も見られる。
トレス・イクスは名前ではなく、製造ナンバーHC-ⅢⅩをラテン読みしたものである。
ミラノ公に絶対の忠誠を誓っている。

カテリーナ・フォルツァ

CV:本田貴子 /少女時代 川澄綾子(アニメ版)/深見梨加(ドラマCD版)

バチカン教皇庁国務政省長官
アベル達執行官の上官であり、Axを発足させた本人。
ミラノの領主であり、ミラノ公と呼ばれることもある。
先代教皇が、先代ミラノ公公爵夫人に産ませた隠し子の為、現教皇とは異母姉弟になる。
弟を大切に思っているのだが、兄であるフランチェスコとの政争中では駒のように弟を扱う様子も描かれている。
短生種と長生種との和平を願い、帝国の上層部と接触を試みている。
10年前の薔薇十字騎士団に義父と母を殺された事件で、アベルと出会い命を助けられる。
作中内でも、薔薇十字騎士団の存在を知る数少ない人物であり膠原病を患っているため体は丈夫ではない設定になっている。

ウィリアム・ウォルター・ワーズワース

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