ルパン三世 ルパンVS複製人間（映画）のネタバレ解説・考察まとめ

「またつまらんものを斬ったか…」

街のカフェテラスにいたルパン一味を、突如上空からヘリが機銃掃射で攻撃して来た。ルパンと次元は何とか愛車に飛び乗りその場を脱出。散々街中を逃げ回った末、「もう逃げ場は無いのと違うか?」と諦めかける次元の言葉に「地の底にでも潜るさ」と言葉通りに下水道に逃げ込んだルパンだったが、ヘリはしつこく狭い下水道まで追いかけてくる。だが、五ェ門はこのピンチを予め予期していたかのように、下水道に先回りしていた。「五ェ門カッコいい！」と冷やかすルパンの声と同時に、追って来るヘリに正面から飛び上がり斬鉄剣で一撃を加える。その手応えを感じて言った五ェ門のセリフ。

居合の達人が見せる見事なアクションにピッタリの名セリフである。このセリフは後の映画やTVシリーズで五ェ門の決め台詞となるが、最初に言ったのが本作のこのセリフだった。

「俺ぁ、夢ぇ、盗まれたからな… 取り返しに行かにゃぁ」

滞在中のコロンビアで巨大な地震が起こり、町は崩壊。「もう逃げよう、コリゴリだ」という次元に、ルパンは考えがあるといい敵の本拠地に乗り込む準備をする。「マモーが神様とは言わんが、並みの人間にはかないっこない、今度こそは絶対に行かない」と言い切る次元に、「いいよ、信心深い奴には向かない仕事だ」と言い、一人で廃墟になった町を歩き始めるルパン。追いかける次元はルパンの足元の空き缶を撃ち抜くと、「行くなルパン！！」と力の限り叫ぶ。それに対してルパンが言った言葉。

不二子のおかげで散々な目にあった次元にしてみれば、もうマモーに関わりたくないと思うのは当然の事。だが、本気で愛している不二子がマモーにさらわれた事がルパンにとっては一大事。不二子を「夢」と例えた名セリフである。二人の意見は真っ向から対立しているが、二人の確かな友情を感じさせてくれる名シーンでもある。

「返してもらいに来たぜぇ いろいろとなぁ」

地下の原子力発電所に設置された大量の核ミサイル。マモーは不二子を説得して核ミサイルの発射ボタンを押させる。世界に向けて核ミサイルが発射されようとしたその時、二人の目の前にルパンが現れ、マモーに向かって言ったセリフ。

「賢者の石」をめぐって、これまで散々争奪戦を展開してきたマモーとルパン。ここまでは窮地に追い込まれていたルパンだが、マモーの正体が明らかになった今、ルパンの反撃が始まる名シーン。いつもはお調子者のルパンが、本気モードに入ったときは誰よりも「カッコいい！」と思わせる名言である。

「（次元）どこまで行っても、追われる身か」「（五ェ門）それが奴の宿命！」

マモーが死んでホッと一息も束の間、またも不二子の裏切りにより、やって来た銭形に逮捕されるルパン。だがその瞬間、米国空軍による爆撃に巻き込まれる。そこへセスナで助けに来た次元は、ルパンに縄ばしごを垂らすのだが、銭形と足を手錠で繋がれたルパンを差し置いて、ちゃっかり自分だけ掴まる不二子。 「あららひでぇなぁ」と呟くルパンに、「馬鹿め女とはああいうもんだ」と高笑いする銭形。相変わらず爆撃が続き、ひとまず逃げようとルパンと銭形は二人三脚のように走り出す。その光景を見て、次元と五ェ門がそれぞれ呟いたセリフ。

それぞれ本作のラストを締めくくるにふさわしい名言である。

男心をそそる不二子のシャワーシーン

全裸でベットに横たわっている謎の美女、峰不二子。正体不明の男と話をした彼女は、そのまま浴室でシャワーを浴びる。足元からカメラは不二子の曲線を舐めるように美しい顔へと上がっていく。不二子がカメラをチラッと見た瞬間、不二子はシャワーホースを浴室の大きな鏡に投げつける。すると割れた鏡の裏には隠しカメラがあった。

不二子のファーストシーンはドキドキする色っぽさに魅了されるも、物語の波乱を予感させる名シーンとなっている。

折れた斬鉄剣が見事な複線となった

地下の原子力発電所に設置された大量の核ミサイルを全て破壊してしまったルパン。すぐに不二子を連れて逃げるマモー。追い掛けてくるルパンにレーザービームで攻撃を仕掛ける。ひっきりなしに放たれるレーザービームに悪戦苦闘するルパン。そのときルパンはふとポケットに手を入れると指先が切れて出血する。それは次元から渡された五ェ門の折れた斬鉄剣の破片だった。そこでルパンは敢えて自分を囮にして、レーザービームを自分に集中させた。ルパンは待ってましたとばかりに破片を顔の前に翳すとレーザービームを反射させ、マモーに直撃させたのだ。マモーの身体は燃え盛り、やがて絶命する。

五ェ門は斬鉄剣が折れたことでかなりのショックを受けていたが、その破片がまさか絶体絶命のルパンを救うとは。予想もしなかった見事な複線であり、本作の最高の見せ場となった名シーンである。

『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

クローン技術をテーマにした背景とは

本作は、クローン技術をテーマにしたSF作品となっているが、劇場公開された1978年は、イギリスの生理学者ロバート・G・エドワーズが「試験管ベビー」と呼ばれる世界初の体外受精児誕生に成功した年である。それによりクローンはこの年の旬のテーマだった。本作以外にもクローン人間をテーマとした小説『ブラジルから来た少年』の映画化（小説は1976年に発表）、ノンフィクションという触れこみのデービッド・ロービック著『複製人間の誕生（In His Image：the Cloning of a Man）』の刊行があった。
本作中に、細胞分裂の限界などクローンに関する見解を盛り込む一方で、現在のクローン技術では達成不可能な「複製人間」を登場させている。また、その「複製人間」であるマモーが「クローンによる世代交代を続けた結果、コピーを繰り返せば像がぼやけるようにゲノム（遺伝子情報）の劣化が生じ、不死は130代目で限界に達する」という件があるが、科学ライターの金子隆一氏によれば、「コピーを重ねるとゲノムが劣化する」という問題を扱った作品は、日本のメジャー作品では珍しいと評価している。

銭形が警察官を退職するシーンがあった