次元大介（実写映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『次元大介』（実写映画）の概要

『次元大介』（実写映画）とは、モンキーパンチ原作の人気漫画『ルパン三世』のスピンオフ映画作品。
主演の玉山鉄二を始めに真木よう子や草笛光子といった豪華俳優陣をそろえ、監督は『探偵はBarにいる』や『相棒』シリーズで知られる橋本一が務める。2023年にAmazon Prime Videoで全世界同時公開された。

『ルパン三世』では“主人公の相棒”という立場である次元大介（じげん だいすけ）が主役の作品となっており、裏社会を生きるクールでニヒルな凄腕のガンマンという設定を活かしたハードボイルドな作風が特徴。ガンアクションにも力が入れられており、クライマックスではド派手な銃撃戦が繰り広げられる。

愛用しているコンバット・マグナムの照準に狂いが生じたことに気付いた次元は、これを直せる人物を探して世界最高のガンスミスがいるという日本の泥魚街へとやってくる。しかしツテを辿って見付けた噂のガンスミス矢口千春（やぐち ちはる）はすでに裏稼業から足を洗っており、次元は銃の修理依頼を断られてしまう。
そんなところに、オトという名のしゃべれない少女がやってくる。彼女はどういうわけか泥魚街のボスであるアデルから身柄を狙われており、身を守るために千春の拳銃を欲していた。子供に銃を渡すわけにはいかないと考えた千春は、「お前のコンバット・マグナムを修理するから、しばらくオトの面倒を見てくれ」と次元に依頼。これを引き受けて面倒を見る内にオトは次元に懐き、次元もまたその凄惨な過去を知ってオトを放っておけなくなっていく。新型麻薬精製の鍵を握るオトの身柄を狙うアデルは、そんな彼らを執拗に狡猾に追い詰めていく。

『次元大介』（実写映画）のあらすじ・ストーリー

ガンマンとガンスミスとしゃべれない少女

裏社会最高峰のガンマンとして名高い次元大介（じげん だいすけ）は、ある時愛用しているコンバット・マグナムの照準に狂いが生じたことに気付く。しかし自分で調べても高名なガンスミスに見せてもどこが悪いのか分からず、やがて次元は「世界最高のガンスミスがいる」という噂を頼りに日本の泥魚街（でいぎょがい）に赴く。
しかしツテを辿って見付けた噂のガンスミス矢口千春（やぐち ちはる）はすでに裏稼業から足を洗って時計店の主人に収まっており、次元は銃の修理依頼を断られてしまう。

そんなところに、水沢オト（みずさわ オト）という名の身寄りのない少女がやってくる。彼女は何者かに身柄を狙われており、身を守るために千春の拳銃を欲していた。子供に銃を渡すわけにはいかないと考えた千春は、「お前のコンバット・マグナムを修理するから、しばらくオトの面倒を見てくれ」と次元に依頼する。
渋々これを引き受ける次元だったが、オトを狙っているのが裏社会のプロであることを知り、「なんでこんなガキがあんな連中に狙われるのか」と首を傾げる。そのオトは共に行動する内に次第に次元に懐いていくが、次元もまた「夫婦喧嘩の末に両親が殺し合って天涯孤独となり、孤児となってから何者かに拉致されて拷問紛いの処置を受け、精神的なショックで言葉をしゃべれなくなってしまった」オトの境遇を知って彼女を放っておけなくなっていった。

アデルの野望

オトの身柄を狙っているのは、泥魚街の新しいボスであるアデルという女だった。彼女は東南アジアの貧村の生まれで、次元に負けず劣らずのガンマンにして軍が強行した人体実験の被験者でもあった。この中でアデルは「人の体内で作り出される特殊な物質を使って麻薬を精製する」技術を学び、通常の麻薬より遥かに効果の高いこの新型麻薬を用いて泥魚街を、そして世界をも牛耳ろうと画策していた。
新型麻薬を精製するための物質は誰からでも集められるわけではなく、“過去に深い心的外傷を負った子供”が必要だった。アデルがオトを捕まえようとしていたのは、誘拐して集めた身寄りのない子供たちの中で、彼女がこの条件をもっとも満たしているためだったのだ。

千春と協力しながらアデルの手の者たちを退け続ける次元だったが、アデルの腹心の部下である川島武（かわしま たけし）にオトを人質に取られ、抵抗できないまま敗北。千春の機転で命は拾うものの、オトを連れ去られてしまう。
すっかりオトに情が湧いていたた千春は、警察に行って全てを話すことで彼女を救おうとするが、それを次元が止める。警察に連絡したところで、アデルの犯罪行為が明らかになるだけで、オトの心が救われるわけではない。絶望と罪悪感でいつも悲しそうな顔をしていた彼女が笑っているところを見てみたい。たったそれだけの理由で、次元はただ1人泥魚街にあるアデルの拠点に乗り込んでいく。

希望と別離と新たな仕事

アデルは次元の人柄を調べ尽くし、「必ずオトを連れ戻しに現れる」と踏んでいた。果たして単身彼女のアジトに乗り込んできた次元は、千春がなんとか修理を間に合わせたコンバット・マグナムを手に、並み居る兵をことごとく撃ち抜き、叩きのめし、川島をも倒してアデルの下へと辿り着く。
この時点でコンバット・マグナムの残弾は尽き、次元は敵から奪った拳銃で戦っていた。アデルは自分の銃から1発分の銃弾を抜き取って次元に投げ渡し、「もし自分の村が人体実験の現場にされた時、お前のような男が現れていたら私には違う未来があったのかどうかを確かめたい」と早撃ち勝負を挑む。両者はほぼ同時に引き金を引くも、一瞬早くアデルの胸を銃弾が貫き、彼女はビルから転落。しかし「あの時あの場にはいなかっただけで、子供を救うために命懸けで戦ってくれるヒーローは本当にこの世にいるのだ」との確信を得たアデルは微笑みながら散っていく。

かくしてアデルとその一派は滅び、泥魚街は新たなボスの座を巡って諸勢力が衝突する状態となる。オトを救出した次元は、彼女を千春に預け、いつかまた会う約束を交わして2人の前から去っていく。
埠頭で時間を潰しつつ、「とんでもない休暇になった」とぼやく次元の下に、黄色いフィアット500がやってくる。それが相棒の愛車であることを知る次元は、どうやら彼が「日本にいる内にもう1仕事しよう」と考えていることを察して、今度はどんな面倒事だとばかり苦笑を浮かべるのだった。

『次元大介』（実写映画）の登場人物・キャラクター

次元大介（じげん だいすけ／演：玉山鉄二）

裏社会では知らない者がいない、百発百中の技量を持つ凄腕のガンマン。リボルバー式のコンバット・マグナムを愛用しており、これ以外のものはほとんど使おうとしない。
クールでニヒル、自身に殺意を向ける者にはいっさい容赦しない冷徹な性格。それでいて内面は意外とウェットにしてウィットなところがあり、コンバット・マグナムにこだわるのも「初めて握った銃だから」というのが理由である。

水沢オト（みずさわ オト／演：真木ことか）

アデルに追われる少女。夫婦仲の悪かった両親がケンカの末に殺し合うところを目撃してしまい、さらに新型麻薬精製のためにアデルによって拉致された上で拷問を受け、ショックで言葉が話せなくなっている。
泥魚街の娼婦に匿われて脱出した後、自らの身を守るために千春の下を訪れ、彼女の拳銃を手に入れようとする。

矢口千春（やぐち ちはる／演：草笛光子）

世界一と評する者も少なくない、並外れた腕前を持つガンスミス。現在は泥魚街からほど近い商店街で小さな時計店を営んでおり、銃や裏社会からは距離を置いている。
若かりし頃から時計職人を目指していたが、当時は「女性の職人」に対する風当たりが非常に強く、その技術を誰にも認められずにいた。ある時、気紛れと憂さ晴らしで作った偽のブランド時計が本物以上のクオリティだったことから、職人の世界の中で嫉妬交じりの猛烈なバッシングを受け、自分の技術を活かして食べていくためにやむなく裏社会のガンスミスになる。

ガンスミスとしての腕前は今も健在で、次元のコンバット・マグナムを手に持って作動音を確認しただけで「修理を重ね過ぎて微妙にクオリティの異なるパーツ同士で構成される状態になっており、これが原因で個々のパーツは問題ないが全体としては不具合が生じている」状態であることを見抜いた。

アデル（演：真木よう子）

泥魚街の新しいボス。東南アジアの某国出身で、幼い頃に軍の人体実験の被検体にされている。この時に逃げ出そうとして捕まり、実の親によって右足を切断された。現在は義足を使用している。
移動には車椅子を使っているが、次元にも匹敵する凄腕の銃使い。若々しく見えるが、これは老化を遅らせる効果を持つ新型麻薬を摂取しているためであり、実年齢は50代である。

川島武（かわしま たけし／演：永瀬正敏）