デイブレイカー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『デイブレイカー』とは、オーストラリア出身のスピエリッグ兄弟の監督・脚本によるSFアクション・ホラー。人口の9割以上がヴァンパイアと化した近未来を舞台に、人間の減少により血液不足に陥った状況を解決するために代用血液の開発を進めていたヴァンパイアの男が、人間とヴァンパイアの双方を救う新たな道を探ろうとする。09年・オーストラリア・アメリカ製作。

ブロムリー=マークス製薬会社の人間飼育場。

人間の血を吸い取るためのブロムリー=マークス製薬会社の中にある人間飼育場施設。数多くの人間が全裸で太いポールの周囲に固定され、体に差したチューブで血を吸い取られている。不気味で異様な、実にインパクトのあるSF的光景だ。
海外や日本のポスターにもこの場面が使用され、作品のイメージを象徴しているとも言える。

ヴァンパイアだったライオネルが人間に戻る

車から飛び出し太陽の光を浴びて燃えながら貯水湖に突っ込むライオネル

ライオネルが、自分がヴァンパイアから人間に戻った経緯をエドワードに話すが、その時の出来事が描写される場面。
まだヴァンパイアだった彼が、日中に車のウインドウに黒い幕を下ろす安全モードでドライブしていた時、誤って貯水湖の柵に激突し、太陽に焼かれながら湖に落ち沈んでいった。そして、水から上がると人間に戻っていた。
ヴァンパイアを焼き殺すのが太陽光なのに、その太陽光によってヴァンパイアを人間に戻すことも可能だという、従来のヴァンパイア映画にはない、スピエリッグ兄弟独自の斬新なアイデアに驚かされるシーンだ。

サブサイダーとなったアリソンが焼け焦げて塵と化す

サブサイダーとなったアリソンが陽に焼かれ焼け焦げる

ヴァンパイアにされたアリソンが、自らの自傷行為で醜い姿のサブサイダーとなり、陽の下に連れ出されて焼け焦げていく、なんとも切なく、かつ悲惨な場面。
焼け焦げるアリソンの姿を目にし、またそれをあざ笑う仲間のヴァンパイア兵士達を見て、同じヴァンパイア兵士であるフランキーの心が揺れ動く名シーンだ。

ヴァンパイア兵士に襲われ血肉を貪られるフランキー

人間に戻ったフランキーがヴァンパイア兵士に襲われる

兄のエドワードの応援にブロムリー=マークス製薬会社に車で突入してきた人間に戻ったフランキーが、大勢のヴァンパイア兵士に取り囲まれ、噛み付かれて血を吸い取られ肉を食い千切られる壮絶な場面。
ヴァンパイアから人間に戻ったフランキーの血肉を口にした兵士も人間に戻り、他のヴァンパイア兵士に次々と食われ、互いに食い食われる血みどろの光景が展開する凄惨なスプラッター・シーンだ。

人肉を貪るヴァンパイア兵士達

「この世は最悪だ。もう死ぬこともできない」

エドワードの10回目の35歳の誕生日にお祝いにやって来た弟のフランキーに向けて言うセリフ。
フランキーが兄の誕生日のプレゼントとして純度100パーセントの人血入りボトルを差し出すが、フランキーはそれを拒否する。自ら進んでヴァンパイアになったわけではないフランキーは、不老不死でいることを快く思っていない。まだ人間の時に重い病気にかかり余命わずかになったが、フランキーがヴァンパイアになれば生き延びれると言っても「ヴァンパイアになるより死を選ぶ」と人間としての死を選ぼうとした。だが、兄を失いたくないフランキーが彼をヴァンパイアにしてしまった。
それゆえ、人血を飲んでしまうと他のヴァンパイアと同等の生き物になってしまうと思い、飲もうとしないのだ。戻れるものなら人間に戻りたいと心の奥で願っていることが窺えるセリフでもある。

「戻ってこられたわね」

ワイナリーでの四度目の実験で人間に戻ることが出来たエドワードが、10年ぶりに太陽の日差しの下に出た時、オードリーがそばに寄り添い彼の手を握って言うセリフ。吹替では「お帰りなさい」のセリフになっている。
久しぶりに浴びた太陽の光を浴びて、まぶしそうな表情を浮かべるエドワードが印象的だ。

「プレスリーは言った。“真実は太陽と同じ”」

人間に戻ったエドワードが捕らわれたオードリー救出に向かった後、ガレージに残ったライオネルが独白のように語るセリフの一節。
「ヴァンパイアは世界を支配し、人間は隠れるべきだと思ってる。だが違う。毎日太陽が昇ってきたら、ヴァンパイアは隠れるんだ。ヴァンパイアは生き残れない。ヴァンパイアは永遠ではない。プレスリーは言った。“真実は太陽と同じ、少しの間遮(さえぎ)られても消し去れはしない”」
エルヴィス・プレスリー好きのライオネルらしく、プレスリーの歌の歌詞を引用するところがおもしろい。

『デイブレイカー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

イーサン・ホークが出演をOKしたことで、ウィレム・デフォーなど知名度のある俳優の出演が実現できた

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