超時空要塞マクロス(MACROSS)のネタバレ解説・考察まとめ

『超時空要塞マクロス』とは、タツノコプロ・アニメフレンド制作の日本のロボットアニメ。 1982年10月から毎日放送(MBS)製作、TBS系列で放送された「超時空シリーズ」および「マクロスシリーズ」の第1作目である。飛行機好きのごく普通の少年・一条輝が、突如襲来してきた異星人との戦いの中でリン・ミンメイと早瀬未沙という2人の女性との恋をし、友情に生き、成長していく物語である。歌と文化と異星人との戦いを軸に、輝、ミンメイ、未沙の三角関係など、様々な人間模様が描かれている。

戦力を補充したカムジンたちは、ミンメイとカイフンを人質にして戦艦と交換しようとした。
カイフンは「一度は文化にあこがれたじゃないか」と説得をするが、カムジンは一笑に付した。
「もう文化はお前らだけのものじゃない」と言い切るカムジンはラプラミズを呼びつけて「これが文化だ!」といってラプラミズにキスをした。
文化とは、異星人の行為や技術そのものだけとカムジンは思っているので説得は不可能だとカイフンは愕然とするのだった。

この時文化=キスされたラプラミズは今まではカムジンを利用していただけなのが、マックスにキスされたミリア同様この時から本気でカムジンに惚れたようだ。 しかしミリアと違う点は、闘争本能を押さえきれなかった点と、文化的教育をうけなかった点であろうか。 カムジンたちの覚えた修理や改善の文化は、すべて戦闘に関するものばかりだったのだ。

蛇の襲来におびえるひな鳥

マクロスという作品はメカと美少女と三角関係がメインに上げられる中、冒頭からジャングル風景が登場し、ストーリーや登場人物とは無関係の動物が出てくる異質な回である。

画像のひな鳥は、カムジンたちが潜伏するジャングルに不時着した戦艦に巣をかけた鳥のひなである。 その巣を蛇が襲いにきたのを親鳥が必死に抵抗しており、ひな鳥はただおびえて鳴くだけである。 結果、鳥の親子はみな蛇に食べられ巣は占領されてしまった。この鳥と蛇は、蛇がカムジンたちで鳥が市民たちのメタファーであろうと思われる。 しかし、この次の最終回ではカムジンたちの方がぼろぼろのマクロスと、マクロスを信じる市民たちに負けるという展開になっている。 カムジンたちがマクロスを襲撃するのは、文化の象徴であるマクロスをぶち壊さないと気が済まないからという幼稚な考えであった。 か弱い親鳥が蛇に突っかかるようなものである。

それに、仮に蛇が襲ってこなかったとしても、カムジンの戦艦は間もなく発信したので巣は確実に吹き飛ばされ、親鳥はともかく空を飛べないひな鳥は死んでいたであろう。 それは、かつてボドル基幹艦隊になすすべなく蹂躙された地球人であり、戦いがないと生きていけないカムジンたち自身の姿であった。 つまりひな鳥は、カムジンたちと市民たちは同じだというダブルミーニングと思われる。
そして鳥の親子を襲って巣を支配した蛇は地球を蹂躙したボドルザーであろうが、そのボドルザーはマクロスに負けている。 それにカムジンの戦艦が発進して蛇が振り落とされたとしても、柔軟性のある体なので森に落ちるだけで蛇は死なないであろう。 ボドルザーが死んでも地球の脅威はなくならないという含みもあるかもしれない。
地球への脅威に関しては、最終回でグローバルが移民団を結成した理由を「地球にとどまっていては新たな敵に滅ぼされるかもしれないから」と言っているが、その新たな敵のメタファーが蛇なのかもしれない。

物語とは全くかかわりのない動物が、物語の主要人物の今後や隠された設定のメタファーになっているという点において優れた演出である。

教会に集う民衆

カムジンの襲来におびえ教会に集った人々は、不安を振り切るように「きよしこの夜」を歌った。

星間戦争を生き残った市民たちはクリスマスを楽しんでいた。 市街地もマクロスにも飾りつけをして盛り上げていたのをカムジンたちの襲撃によって破壊され、おびえながらも教会に集まった。 この時、人々はミンメイの歌ではなく「きよしこの夜」を歌いながら戦火に耐えている姿も印象深い。
この頃、ミンメイは落ちぶれて輝の元に身を寄せているので、この時人々に求められているのはぽっと出のアイドルではなく人類の歴史とともに受け継がれた古典だというメタファーである。 そして名もない、力もない人々が最後に頼みにするのは、どこかからやってきた英雄ではなく、自分たちが昔からつないできた心の絆やごく普通の生活、古くからの風習だというメタファーでもある。
カムジンたちが輝たちによって撃退された後、人々は争いの影を忘れるかのようにそれぞれクリスマスを祝った。 来年はクリスマスを祝えないかもしれないという不安を隠すためにも。

余談だがこの回の絵コンテ、演出は後に「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」の監督を務める高山文彦である。
一見穏やかな日常の風景の隣には残酷な戦争の爪痕が残っており、戦争がいつ日常を破壊するかわからないという恐怖を感じながらも人は生きている。 そして緊急事態に対する判断をするのは最終的には自分だという現実の描写は、マクロスにもガンダムにも投影されている。

『超時空要塞マクロス』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ミンメイの楽曲提供者名の秘密

作詞を担当した阿佐茜(あさあかね)はチーフディレクター・石黒昇、脚本家・松崎健一、プロデューサー・岩田弘の 共同ペンネーム。 楽曲の作曲者、ケント・フライヤーは作曲家羽田健太郎の英語読み。
小白竜の監督、ショー・ブラクストーン(写真の人物)は石黒昇監督の英語読み。 しかも第21話ではクレジットされてないが、石黒監督本人がアフレコをしている。

本当はアニメの予定だったエンディング

未沙が輝とミンメイの写ったアルバムを複雑な思いでめくっている姿、という裏設定がある。
本来はアニメで作る予定だったが、締め切りに間に合わなかったので実写になった。
アルバムと一緒に置いてあるヘルメットは、それっぽいものを見つけて置いたそうで、アルバムをめくっているのはアートランドの女性スタッフである。

諸事情に振り回された制作現場

本作でデビューした若手の作画陣は当時学生で、動画の経験もないような素人ばかりだった。 しかもプロのアニメーターからすれば素人同然の美樹本晴彦のキャラクターデザインへの抜擢が他スタッフの離反の原因となり、重大な人手不足となった。 人手不足の穴埋めとして韓国のスタープロに作画を発注するもその出来栄えはあまりにもひどく、素人扱いされた美樹本や学生たちの方がうまいといわざるを得ないレベルだった。 その出来栄えに怒ったメカ担当の河森正治が1人で1話分の作画を手直しして、体調を崩したこともあった。

その上、シリーズ構成は当初は39話だったが、製作側から23話への短縮が要請された。そのため、スケジュールの大幅な修正を制作と同時に進行せねばならなくなった上に、放送直後から玩具セールスが好調だったため、今度はスポンサー側から23話から36話に延長するよう要請が来た。 再々構成するには時間がなかったため27話でいったん区切りをつけ、28話から36話までは制作側からも「付け焼刃」といわざるを得ない出来栄えの延長話を無理やり付け足した形となった。

いつ破綻してもおかしくない制作スケジュールの中、第11話「ファースト・コンタクト」で限界に達し、原画だけを撮影したフィルム(原撮)がそのままオンエアされてしまいのちに「テレビ紙芝居」と呼ばれる結果となった。
さらに第14話「グローバル・レポート」では、苦肉の策として今までのエピソードをまとめた「総集編」を放送。 そして第17話「ファンタズム」では、シナリオも出来てないのに納品まであと2週間という絶体絶命な状況に追い込まれてしまった。 ここでは総集編ではなく、既存のフィルムを再編集して新しいストーリーを作り出すという力業を披露した。

28話以降の作画は「付け焼刃」と評されたが、なくてもいいという意味ではない。 作画レベルはともかく、テレビアニメで戦後処理の重要性を描いたことは画期的である。 テレビアニメ業界に若さと情熱と無謀さがあふれていた時代だからこそ可能だったかもしれない。

ファンから顰蹙を買ったスタープロのクオリティ

スタープロは韓国のアニメ下請け会社。 マクロスに於いて作画崩壊の代名詞ともいえる品質の作画を提供し続け、悪い意味の伝説を築いた会社である。

最初にクレジットされたのは第3話だったが、第25話「バージン・ロード」は、マックスとミリアという異星人同士、しかも当時の人気キャラ同士が結ばれるという重要な回であるにもかかわらず作画崩壊甚だしく、しかもマックスがミリアとキスをするときのミュージカル調の意味不明な動きもあったため、ファンの顰蹙を買った。
ちなみに、テレビ紙芝居と揶揄された第11話「ファースト・コンタクト」にはスタープロは参加していない。

同時期に下請けをしていた『未来警察ウラシマン』や『黄金戦士ゴールドライタン』ではマクロスほどの作画崩壊はなかった。 だが、スタープロがほかの作画をやっていたから日本人スタッフはハードスケジュールの中『パイン・サラダ』『愛は流れる』に集中でき、当時最高品質の作品を生み出せたともいえる。

「ヤマト」に酷似したダイダロスとプロメテウスの配色

ただのお遊びと思われるが、濃いグレーと赤い配色は、石黒昇がアニメーションディレクターとして参加した『宇宙戦艦ヤマト』のヤマト色に酷似している。

マクロスとは「ドラマ」である

マクロスの物語は、実際にマクロス世界で起こった出来事を基にしたフィクションであるという設定がある。 つまり、マクロスの物語は事実上「ドラマ」であり、フィクションであるというのだ。 なので作中で起こった出来事や、登場人物の性格やエピソードが実際にあったかどうかは不明である。
アニメだから最初からフィクションじゃないかという意見はあるが、アニメの世界をフィクションだと思わない人々がいることもまた事実である。
そして、現実の話を基にして作られたのだからまるっきりのフィクションではないという意見もある。
近代史を知っている人ならば、ヒロインが日本育ちの中国人であること、敵が「文化」を破壊し、戦いしか知らない大国であることから、何かしらのサインを感じることができるかもしれない。

マクロスとは、アニメファン(いわゆるオタク)とそうでない人が、異星人と地球人がファーストコンタクトをするかのように交流を始めるための媒体であるかもしれない。

一部地域でしか見られなかった幻のオープニングアニメ

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