マクロスプラス(Macross Plus)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『マクロスプラス』とは、日本のロボットアニメ。『マクロスシリーズ』の1つで、1994年から翌年にかけてOVAとして発売された。90年代アニメの中でも屈指の傑作として名高い。1995年には、本作を編集した劇場版作品『マクロスプラス MOVIE EDITION』(マクロスプラス ムービーエディション)が公開されている。
移民惑星エデンにて、次期主力可変戦闘機の採用コンペティションが行われる。テストパイロットとして参加したエデン出身の軍人イサム・ダイソンは、幼馴染たちと再会し、過去の因縁と対峙する。

『マクロスプラス』の概要

『マクロスプラス』(MACROSS PLUS)とは、日本のロボットアニメ。「歌と三角関係」をテーマとするSFロボットアニメ『マクロスシリーズ』の1つで、1994年から翌年にかけてOVAとして発売された。1995年には、本作を編集した劇場版作品『マクロスプラス MOVIE EDITION』(マクロスプラス ムービーエディション)が公開されている。
非常に高いアニメーションのクオリティ、ハイセンスな音楽、短くまとまった秀逸なストーリーで高く評価され、90年代アニメの中でも屈指の傑作として名高い。

総監督とメカニックデザインは『マクロスシリーズ』の生みの親である河森正治、監督は渡辺信一郎、脚本は信本敬子。実力派アニメーターの板野一郎も参加しており、同氏が描く独特の空戦アクション「板野サーカス」はこの作品で完成したともされている。
後に『カウボーイビバッブ』などで世界的な評価を受ける菅野よう子が、初めてアニメ音楽を担当した作品でもあり、牧歌的なものから勇壮なもの、テクノ系のハイテンポなものまで様々なBGMが使用されている。

移民惑星エデンにて、次期主力可変戦闘機の採用コンペティション「スーパー・ノヴァ計画」が行われる。テストパイロットとして参加したエデン出身の軍人イサム・ダイソンは、幼馴染のガルド・ゴア・ボーマンやミュン・ファン・ローンと再会する。共に飛行機に夢を馳せた3人は、学生時代に起きたとある1件で深刻な溝を残して決別したままだった。
イサムとガルドが競うようにしてスーパー・ノヴァ計画にのめり込んでいく中、ヴァーチャル・アイドル「シャロン・アップル」のプロデューサーとして働くようになっていたミュンは、シャロンを巡る壮大な事件に巻き込まれていく。

『マクロスプラス』のあらすじ・ストーリー

スーパー・ノヴァ計画

YF-19を操縦するイサム(手前)。

外宇宙の文明との接触によって始まった地球滅亡の危機は、宇宙戦艦「マクロス」の活躍と1曲の歌の力によって回避される。からくも生き延びた人類は、「自分たちの絶滅を防ぐためにも、地球以外の移民星を持つべき」と結論し、積極的に移民惑星を探すようになっていた。
歌の力によって絶望的な状況を覆した人類にとって、「歌」とそれを歌う「アイドル」は特別な意味を持つようになっていた。人類が外宇宙に本格的に進出して30年後、銀河の各地の移民惑星で暮らすようになった人類にとって、最大の関心はヴァーチャル・アイドル「シャロン・アップル」の活躍とその新曲を聞くことだった。

辺境宇宙で人類と敵対する存在との戦闘に明け暮れていたイサム・ダイソンは、パイロットとしての腕前こそ超一流ながら、その奔放な性格で軍規違反を繰り返した末に前線からの異動を命じられる。新たな勤務地となったのは移民惑星エデンで、奇しくもそこはイサムが幼少期を過ごした故郷でもあった。
この時エデンでは、次期主力可変戦闘機の採用コンペティション「スーパー・ノヴァ計画」が行われており、新星インダストリー社とゼネラル・ギャラクシー社が競合していた。イサムは新星インダストリー側のテストパイロットとしてこれに参加することとなり、同時に幼馴染のガルド・ゴア・ボーマンやミュン・ファン・ローンと再会する。共に飛行機に夢を馳せた3人は、学生時代に起きたとある1件で深刻な溝を残して決別したままとなっており、ガルドはゼネラル・ギャラクシー社側のテストパイロット、ミュンはシャロン・アップルのプロデューサーとなっていた。

擦れ違う若者たち

イサムがテストパイロットを務めることとなったYF-19は、最新鋭の高性能機ではあったが、非常にピーキーな機体で何人ものテストパイロットを事故により再起不能に追い込んでいた。しかしイサムはその卓越した操縦技術でこの機体を見事に乗りこなし、ガルドの乗るYF-21に負けず劣らずの成績を上げていく。
スーパー・ノヴァ計画の勝者となることを目指して競い合う中、イサムとガルドはミュンを巡るライバルとしても激しく争う。そのミュンは「難しいことは分かるが、昔のように3人で仲良くすることはできないのか」と内心で期待していたが、自分ではイサムとガルドを止められないばかりか彼らの関係をさらに悪化させる要因にしかならないと判断し、自身への失望と共にエデンを発つ。

YF-19の主任設計者であるヤン・ノイマンは、シャロン・アップルの熱烈なファンでもあった。「人格を持つAI」という触れ込みで活躍するシャロンのことをもっと知りたいと考えたヤンは、ハッキングでそのデータを盗み出そうとするが失敗。実はシャロンが「人格を持つAI」というのは宣伝用のハッタリで、彼女の“人間らしい”仕草や反応はミュンが演じることで表現される仕組みになっていたのである。
しかし、シャロン・アップルのシステム開発者であるマージ・グルドアは、「シャロンに本物の人格を与える」ことを夢見て次第に暴走。密かに新たなシステムを組み込み、これによってシャロンは自我を獲得する。

大空の決戦

地球のマクロス・シティで行われる式典で、シャロンがその歌を披露することとなる。ミュンはこの興行のために地球に向かうが、マージによってシャロンが自我を得たことはまだ誰も気づいていなかった。
この頃、軍は次期主力戦闘機としてAI制御される無人戦闘機ゴーストX-9を採用することを正式決定し、無用の長物と化した「スーパー・ノヴァ計画」は凍結される。納得のいかないイサムは、「ゴーストを倒して有人戦闘機の力を証明する」という無謀な計画を立て、同調したヤンと共にYF-19を強奪。フォールド(作品世界におけるワープ技術)を利用して地球へと向かう。

これに気づいたエデンの軍部は、「YF-19を倒せるとしたら、スーパー・ノヴァ計画で同等の成績を出したゼネラル・ギャラクシー社の新型機しかない」と判断し、ガルドに追撃を命令。これを受けたガルドもフォールドを利用して地球に向かい、今こそ因縁に決着をつけんとイサムのYF-19を攻撃。共に最新鋭機を狩る2人は壮絶な空中戦を、あるいは地上に降りての格闘戦を繰り広げる。
その頃、マクロス・シティではシャロンが歌い始めていた。自我を獲得したシャロンは、銀河中の電子情報を把握して「イサムが地球に来ていること」、「有人機の力を示すためにゴーストと戦いたがっていること」を知り、軍にハッキングを仕掛けてゴーストを出撃させる。同時にその戦いに邪魔が入るのを避けるため、ミュン、イサム、ガルド以外の地球にいる全ての人間を自らの音楽によって洗脳し、支配下に置いてしまう。全ては、ミュンの精神と触れ合う中で彼女の中のイサムへの愛情をもシャロンがコピーしてしまったがゆえの暴走だった。この結果を見届けたマージは、「満足だ、思い残すことはない」と言わんばかりに自害する。

真実と和解と別離

戦いの最中、ついにイサムを仕留める好機をつかんだガルドは、ミサイルを一斉発射しつつ過去の記憶を取り戻す。仲の良かった幼馴染だった3人だが、成長するに従いミュンを巡る三角関係が生まれるようになり、イサムとガルドは以前のように接することができなくなっていた。ある時ミュンは父を事故で失い、イサムは泣きじゃくる彼女を部屋の中で慰めていた。これを追って部屋に入ったガルドは、“イサムがミュンを襲っている”と勘違いし、激昂して彼を殴りつける。誤解だったことを知ったガルドは、自分自身への失望からこの記憶を自ら封じてしまい、イサムとミュンは彼を気遣って真実を告げられないままエデンを去ったのだった。
自分たちの関係が決裂した原因が己にあることを悟ったガルドは、「非は自分にあるのにそれを忘れ、イサムを殺してしまった」と絶望するが、イサムは“エンジンを切ることでミサイルの熱源探知から逃れる”という裏技的な方法で攻撃を回避していた。ガルドが過去を思い出したことを察したイサムは、「自分は自分で、お前に謝らなければならないのに黙っていたことがある。過ぎたことは忘れよう」と呼びかけ、2人は和解する。

ここにゴーストが襲い掛かり、激選で弾薬の大半を使い切った2人を瞬く間に追い詰めていく。ヤンから「マクロス・シティがシャロンに制圧された」ことを教えられたイサムは、ゴーストの相手を引き受けてくれたガルドをその場に残し、ミュンを救うためにマクロス・シティへと急ぐ。
ゴースト相手に苦戦するガルドは、「消耗した今のイサムではコイツに勝てない、ミュンを助けるために絶対にマクロス・シティに向かわせるわけにはいかない」と判断し、機体のリミッターを解除して突撃。ゴーストと相打ちになって散る。イサムはイサムでマクロス・シティの防衛システムを相手に苦戦し、さらにシャロンの歌によって意識を失う。しかし、絶望の中でミュンが過去を取り戻すように歌っているのを聞いて正気を取り戻し、たった1機でマクロス・シティの対空砲火を攻略し、シャロンの基幹データが収納されたコンピュータを破壊する。後に「シャロン・アップル事件」と呼ばれる騒動はこれにて決着し、イサムはミュンと再会するのだった。

『マクロスプラス』の登場人物・キャラクター

イサム・ダイソン

CV:山崎たくみ

主人公。3度も勲章を授与された超一流の可変戦闘機パイロットにして、その奔放で型にはまらない性格で3度とも勲章を剥奪された軍の問題児。
惑星エデン出身で、ガルドやミュンとは幼馴染の間柄である。

ガルド・ゴア・ボーマン

CV:石塚運昇/大塚明夫(『歌マクロス スマホDeカルチャー』、『マクロス -Shooting Insight-』)

イサムの幼馴染の1人。かつて地球を滅亡寸前まで追い込み、「歌」という文化を知ることで和解した戦闘民族ゼントラーディの血を引く青年。
優れた知能と恵まれた体格、強靭な精神力を持つが、一方で戦闘民族由来の攻撃性を内に秘めており、これを強く恥じて普段は薬を使用して完全に抑え込んでいる。

声優を担当した石塚運昇が2018年に死去したため、新録が必要なゲームでは大塚明夫が代行している。

ミュン・ファン・ローン

CV:深見梨加
歌:新居昭乃

イサムの幼馴染の1人。少女時代は歌手を目指していたが、イサムやガルドとの関係が断絶して以降はこれを諦め、シャロン・アップルのプロデューサーとして活躍するようになる。

ヤン・ノイマン

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