AKIRA(アキラ)のネタバレ解説・考察まとめ

AKIRAとは1982年~1990年に連載された大友克洋によるマンガ作品、および1988年劇場アニメ版作品のことである。新型爆弾により崩壊した東京地区に住む主人公・金田は、事故をきっかけに超能力に目覚めた親友の鉄雄と共に軍が秘密裏に研究する超能力者を巡る抗争に巻き込まれる。軍が極秘に封印していた最強の超能力者「アキラ」の封印を解き世界征服を試みる鉄雄の暴走を止めるため、金田は仲間たちと協力し戦う。

原作コミック版AKIRAのあらすじ・ストーリー

超能力の覚醒…暴走する鉄雄と対抗する金田

舞台は2019年。
1982年に関東地方に「新型爆弾」が炸裂し、東京は完全に崩壊してしまう。それをきっかけに第三次世界大戦が勃発し、世界は荒廃していった。
その後、東京湾上に新たな都市「ネオ東京」を建設し、首都機能はそちらへ移行した。
繁栄するネオ東京においても反政府ゲリラと軍は敵対し合い、デモ隊と警察は日々衝突しあっており決して平和で治安のよい状態とは言えなかった。

職業訓練校に通う青年・金田は暴走族グループのリーダーを務めており、友人の山形や甲斐、そして親友でもある鉄雄と共にバイクに乗り暴走行為をしていた。
ある日、閉鎖されている旧市街(爆心地である東京)へと向かうため遺棄されたハイウェイを走る金田たちの前に、白髪の少年が突然姿を現した。

この白髪の少年こそが、軍の極秘機関「超能力研究機関」から反政府ゲリラのメンバーによって連れ出された超能力者の一人、タカシ(26号)だった。

突然鉄雄の乗るバイクの目の前に姿を現したタカシを避けきれず、衝突し重傷を負ってしまう。鉄雄とタカシは駆けつけた軍(アーミー)により入院させられるのだが、この事故をきっかけに鉄雄の中に超能力が覚醒する。
退院後の鉄雄はまるで人が変わったように高圧的で乱暴になり、以前のような大人しい様子は一切なくなってしまっていた。
超能力に目覚めた鉄雄を「研究材料」として取り込みたい軍と、その鉄雄にただならぬ影響を与えている金田を捉えるため軍が動き出すが、その中で金田は反政府ゲリラメンバーである竜とケイに出会い、一時的に協力関係となった。

鉄雄は自分の中に目覚めた超能力を自覚すると、今まで内向的な性格ゆえに何かと金田に上から目線でモノを言われていたことに対する不満や鬱憤が爆発し、自分の力を見せ付け金田を屈服させることを考えた。
その第一歩として金田たちと敵対する暴走族グループ「クラウン」のジョーカーを屈服させ、自らがリーダーの座についた。それからクラウンの所持するドラッグ(薬物)を過剰に使用しながら超能力を使い、他の暴走族グループのメンバーを襲撃した。
その事実を知った金田は周辺の暴走族グループと協力し合い、鉄雄を含めクラウンを倒すことを決意する。

クラウンの下っ端の襲撃に次々と成功する金田たちだったが、最終的に鉄雄の超能力の前に惨敗してしまう。
鉄雄と対峙した山形は超能力により惨殺され、激情に駆られた金田は鉄雄へ向けた銃の引き金を引く。鉄雄もまた、以前から劣等感を抱いていた金田に対し敵対心をむき出しにし、両者は衝突した。
そこへ軍(アーミー)の部隊と敷島大佐が現れ、超能力覚醒に伴い激しい頭痛に悩まされている鉄雄に対しある提案をした。
それは、その頭痛を抑えるための薬物(超能力研究機関で開発された、超能力を覚醒・安定させるための薬物。一般に出回っているドラッグの何百倍もの刺激があるため常人が使うと死ぬほどの効力がある)を提供する代わりに、超能力研究機関の研究に「41号」として協力する、というものだった。
鉄雄はその条件を飲み、暴走族の抗争は軍によって制圧されたのだった。

「アキラ」覚醒の予言…災厄再び

軍によって金田、鉄雄、ケイは敷島大佐により軍の研究機関「ラボ」に連行される。
この「ラボ」には、鉄雄と衝突事故を起こしたタカシをはじめとした、「ナンバーズ」と呼ばれる超能力を持った者たち(キヨコ(25号)とマサル(27号))が住んでいた。
彼らは軍が以前から極秘に研究してきた、超能力を開発・育成された子供たちの生き残りである。多くの子供たちが実験の途中段階で命を落とす中最終的に生き残った数少ないメンバーである。

鉄雄は薬物を投与されながら様々な実験と研究により徐々に能力を開花させていった。その中で、研究者たちの口から聞かされた「アキラ」と呼ばれる存在に興味を持ち始めた。
アキラ(28号)というのはかつて「ナンバーズ」の仲間として共に過ごしていたのだが、軍が30年以上にわたり巨額の資金を投じて封印し続けている謎の存在であった。
予知能力を持つキヨコは、アキラが間もなく目覚めることとネオ東京が崩壊することを予知するのだった。この時、アキラに強い関心を抱いていた鉄雄がアキラ覚醒の鍵を握ることを察していたキヨコは、自らの超能力でケイを操り鉄雄を殺害しようと試みるが、鉄雄の超能力が思った以上に強かったため逃げられてしまった。
この時ナンバーズの三人は、ケイに「超能力を媒介させる能力」に秀でていることを見出す。

鉄雄はラボを脱走し、軍研究施設に封印されていたアキラのもとへ行く。
絶対零度に封印されていたアキラは鉄雄の力に共鳴し、覚醒してしまう。

アキラ覚醒に取り乱した敷島大佐をはじめとする軍関係者はネオ東京に第七級警報(非常事態宣言)を発令し、軍事衛星「SOL」を使って鉄雄とアキラを攻撃しようと試みる。
しかし鉄雄は片腕を失ったってだけで、そのまま行方不明になってしまう。「SOL」の攻撃の中、意識を失い倒れていたアキラを金田とケイが発見し保護、そのままゲリラメンバーの一人であるチヨコの家へとかくまうことにした。

爆心地の地下にあった軍研究施設、その中に絶対零度で封印されていたアキラ。
東京を無に帰した新型爆弾は実はアキラの力だったことを金田らは知ることになった。

ケイたちはゲリラの支援者である野党政治家・根津の元へアキラを引き渡すが、根津は自らの政治的権力を勝ち得るためアキラを個人的に利用すべく、根津を支援していたミヤコやゲリラメンバーも裏切ってしまう。しかし生き延びた竜やケイ、チヨコ、そして金田たちがアキラを根津の元から奪還する。
一方で第七警報の発令による混乱の責任を問われていた敷島大佐は、いつまでも責任不在の醜い言い争いをやめない政府に見切りをつけ、自らクーデターを起こしアキラの捜索に当たる。

根津の部下、アキラを特別な存在として崇めるミヤコ教の超能力を持った信者、敷島大佐率いる軍、そして金田たち、彼らによるアキラ争奪戦が繰り広げられた。
その中で大佐が連れてきたナンバーズの子どもたちは念願かなってやっとかつての仲間であったアキラとの再会を果たした。
ところが、物陰からアキラを射殺しようと根津が銃口を向け発砲する。その弾はタカシの頭に命中し、その瞬間ナンバーズの子どもたちとアキラの脳内にショックが走り、アキラが37年前に東京を壊滅させた力が発動し始めた。
巨大な爆発によって全ての建物、地盤が海中へと崩れ落ち、ネオ東京は吹き飛ばされた。
ナンバーズの子どもたちによってケイや大佐らは瞬間移動により一命を取り留めたが、金田は爆発の光に飲み込まれ行方不明となる。

新たな爆心地の中心に佇むアキラの元へ、片腕を失った鉄雄が現れるのだった。

ネオ東京崩壊…大東京帝国とミヤコ教

ネオ東京崩壊後の世界には、アキラを「大覚様」として崇め奉り鉄雄が実質支配をする「大東京帝国」、ミヤコを教祖とする「ミヤコ教」が主な勢力として君臨していた。竜は酒におぼれ街をさまよう中、ワシントンからの工作員ジョージと出会い行動を共にしており、敷島大佐は一人さまよっていた。

ケイと反政府ゲリラであったチヨコ(おばさん)は、ナンバーズのキヨコとマサルをかくまいながら生き延びていたが、薬なしでは長く生きられない二人を延命させることが難しくなってきていた。そこへミヤコの教団へ行けというキヨコのお告げに従い、ケイとチヨコはミヤコの元を訪れる。
ミヤコはキヨコとマサルを連れてくるよう二人に提案する。弱った二人を決死の覚悟でミヤコの元へ移送するケイとチヨコだが、途中大東京帝国の手下に襲撃され、ケイはマサルだけを連れて単独でミヤコの元へ急ぐ。
キヨコを連れたチヨコは、負傷しているところを敷島大佐に助けられる。

一方、鉄雄は被災者に薬物を混ぜた食事を与え、ひそかに能力者を開発しようとしていた。
適性のない者は薬物を飲んだ途端にその場で死んでしまったが、中にはその刺激に耐え超能力の覚醒にいたる者が数人いた。
また鉄雄は側近に女を連れてこさせ薬物を投与させては退廃的な性行為に溺れた。少女たちの肉体に薬物の刺激は強すぎ、行為後に全員が死に至っていた。
ところが、連れてこられた女の中に薬物を飲まずに死を免れた少女、カオリがいた。鉄雄はカオリを自らの侍女としてそばに置き、薬物による不安定な自らの精神をカオリに依存することで補おうとするのだった。

大東京帝国の隊長は鉄雄には内密でミヤコ教の総本山の襲撃をする。激しい戦闘が繰り広げられる一方、敷島大佐が鉄雄を抹殺するためSOLを使用した。
その衝撃により過去のトラウマを刺激された鉄雄は爆発的な覚醒を起こす。その衝撃で崩壊したネオ東京の残骸が空中に浮かびあがり、その中で眠っていた金田が目を覚ますのだった。
ミヤコ教襲撃の中でケイはかつての金田の仲間であった甲斐、そして復活した金田とも再会を果たすのだった。

金田復活…反撃の狼煙、上がる

ネオ東京崩壊後に甲斐はジョーカーら暴走族グループの生き残りたちと合流していた。
甲斐はその一団に金田を会わせ合流。鉄雄に落とし前をつけよう、という思いをお互いに確かめあう。

一方ケイは、超能力を媒介する能力(触媒の力)を見出され、キヨコ・マサル・ミヤコの力を束ねて鉄雄の力をアキラにぶつけるよう誘導しアキラをこの世から抹殺するというミヤコらの計画に乗ることを決心しようとしていた。
敷島大佐は独自にSOLを使って鉄雄とアキラを抹殺しようと追い、工作員ジョージは生物兵器を使って鉄雄を葬ろうとしていた。

大東京帝国が被災民の統率を図るため行った集会で、鉄雄は月の一部を崩壊させる力を見せつける。
月の一部が崩壊したことにより地球の潮流に影響が出始める。混乱の中、ケイはミヤコの計画に乗り自らの命を投げうってでも鉄雄とアキラを止めることを決意する。
その意思を固め、精神集中と共により「触媒」としての力を高めるため、身体を清める等の形式的な禊を行う。しかし金田はそれを全力で止める。

鉄雄を止めるのは自分…そう決めた金田は、自らの力が制御不能になり異形の姿になった鉄雄の前に現れ決戦を挑む。
鉄雄の中に飲み込まれた金田、その鉄雄の覚醒を引き受けるため命をなげうったミヤコ、アキラがまだ人間として「心」を保っていた頃の状態へ導くために寄り添ったナンバーズ…やがて覚醒した鉄雄とアキラの巨大な力が融合し大きな渦となる。
その渦の中で金田はかつての孤独だった鉄雄の幼少期のビジョンの中をさまよう。あの時手を差し伸べていたら、鉄雄との友情をやり直したい、鉄雄の手を取ろうとする金田の耳にケイの呼び声が届く。
金田は鉄雄に別れを告げ、ケイの手を取り、現実の世界へ戻るのだった。

鉄雄とアキラの消滅…その後の世界

何もかもが崩壊した世界に取り残された、僅かに生き残る被災民たちと金田、ケイ、甲斐。
そこにアメリカ軍をはじめとした国連からの派遣団が上陸し、難民救済の名目の元制圧しようとするが、そこへ「大東京帝国」を引き継いだ金田らが現れ反旗を翻す。
「救援物資は頂くが、それ以上のことは内政干渉とみなす。アキラはまだ俺たちの中に生きている」
そういい残し、ケイを乗せたバイクに乗った金田は、仲間と共に崩壊した街を駆け抜けていくのだった。

※上記のシーンは連載では描かれず、その後出版されたコミック版で追記されたシーンである。
そのため、どういった経緯で金田が新たな「大東京帝国」を治めることになったのかまでは描かれておらず、あくまでエピローグ的な表現にとどまっている。

『AKIRA』の登場人物・キャラクター

金田正太郎(CV:岩田光央)

ネオ東京の職業訓練校に通う学生。暴走族のリーダー的存在で人望も厚い。
明るく前向き、度胸があり、女好き。悪運が強く、高い運動能力を持ち合わせており逃げ足が速い。
幼馴染の鉄雄とは対照的な性格で、大人しい彼を庇護するような立場にいた。薬物に溺れた鉄雄がリーダーとなった暴走族チーム「クラウン」との抗争で、鉄雄を追い込み銃口を突きつけるも幼馴染へ引き金を引くことが出来ず、目の前で山形は殺害され、これがきっかけで鉄雄への復讐に走るが、幼馴染である彼に捨てきれない情がある。

盗んだバイクを改造して走っており、興奮剤のようなものを摂取しながら暴走行為にあけくれている。
自称「健康優良不良少年」。

アキラ覚醒後の能力発揮によりネオ東京が崩壊した時、光に飲まれ瓦礫の中で眠っていたが、その後鉄雄の覚醒による衝撃で瓦礫の中から生還する。
最終決戦後、鉄雄たちの残した大東京帝国を引き継ぎ、上陸したアメリカ軍らに反旗を翻す。

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島鉄雄(CV:佐々木望)

金田の幼馴染。大人しく引っ込み思案な性格のせいか、金田をはじめとした仲間たちにいつも庇護される立場にいた。
ところが本人はこれに対し強い劣等感を抱いていた。
バイクでの走行中、ナンバーズの一人タカシとの接触事故を機に超能力が覚醒し、軍のラボにおいて「41号」とナンバリングされていた。
超能力の覚醒後は凶暴な性格になり、今まで感じていた劣等感が金田への憎悪に変貌する。
彼の得た超能力は最終的に月を破壊するほどに至るが、その時には肉体と精神がバラバラになり自らの力を制御することができなくなってしまっていた。

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アキラ

かつてナンバーズとして超能力の才能を見出され軍の研究機関で能力を育成されていたうちの一人。この作品の核心に位置している。28号とも呼ばれる。
アキラの能力は桁違いだったため、1982年に覚醒と同時にその能力が暴走してしまい、結果東京が破壊されてしまう。
その後アキラは冷凍状態で封印されていたが、鉄雄の手により封印が解かれる。その後タカシの死を目の当たりにすることで再び能力が暴走し、ネオ東京崩壊を招く。
ネオ東京崩壊後は「大覚様」として崇められ「大東京帝国」のシンボルとなるが、実際は夢遊病のような半覚醒状態でいつまた能力が暴走してもおかしくない状態であった。
作中では言葉を喋ることはなく、精神的ショックを受けた時(タカシの死を目の当たりにした時)や後半の鉄雄の暴走時などに雄たけびをあげるにとどまる。

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