The Beatles(ザ・ビートルズ)の徹底解説まとめ

The Beatles(ザ・ビートルズ)とは、1962年に英国でデビューした20世紀を代表する4人組ロック・バンド。その影響力は音楽のみならず、ファッション、言動、思想にまで及び、社会現象を巻き起こした。彼等の音楽を語るうえで特筆すべき点の一つは、彼等自身の音楽的成長がそのまま音楽界全体の、そして聴き手である我々ファンの音楽的成長を促したことだろう。1970年の解散後も彼等の影響力は引き継がれ、21世紀の現在でもそれは変わらない。

シングルのA面曲「She Loves You」と同様に、この曲のマスター・テープもステレオ・ミキシングがされる前に廃棄されてしまったため、リアル・ステレオ・ヴァージョンは存在しない。アメリカ・キャピトル盤「Beatles' Second Album」に収録されているステレオ・ヴァージョンは「疑似ステレオ」である。

*レコーディング詳細
1963年
・7月1日
レコーディングが行われる(テイク数不明)。
*この時点では「Get You In The End」というタイトルだった。
・7月4日
番号不明のテイクを元に、モノ・ミキシングが行われる。

● I Want To Hold Your Hand
イギリスでは5枚目、アメリカでは4枚目のシングルであり、シングル、アルバムを通してアメリカ・キャピトルからリリースされた初めての作品である。またアメリカのヒット・チャートで初めて1位になった曲でもある。この曲の大ヒットにより、アメリカでビートルズ人気に火が付いたことになる。「She Loves You」同様、大ヒット曲に関わらず、オリジナル・アルバムには収録されなかった。

ジョンとポールの共作で、リード・ヴォーカルも二人で分け合っている。
ジョン「僕らはかなりの曲を共作した。一対一で、ぴったり向き合ってね。例えば「I Want To Hold Your Hand」がそうだ。あの曲のコード進行を考え出した時のことはよく覚えている。僕らはジェーン・アッシャーの家にいて、地下室のピアノを二人いっぺんに弾いていた。まず『Oh, you-u-u got that something』というのがあり、そこでポールがあのコードをたたいた。僕は振り向きざまに『それだ! もういっぺんやってくれ!』と言った。あの頃は本当にこんな調子で、お互い、鼻面を突き合わせて作曲したんだ」
ポール「『睨み合わんばかりに』まさにそうだった。大切なNo.1ヒットだよ」

この曲はザ・ビートルズにとって初めて4トラックの機材を使用したレコーディングであった。

ボブ・ディランはこの曲はマリファナについて歌った歌だと思っていた。彼は「I can't hide(隠せない)」という歌詞を「I can high(ドラッグでハイになる)」と聞き間違えていた。1964年8月28日、ニュー・ヨークのデルモニコ・ホテルでボブとザ・ビートルズのメンバーは初めて対面した際に、ボブはマリファナを4人に勧めたが、ブライアン・エプスタインに、彼らは一度もマリファナを吸ったことがないと聞かされて、ショックを受けている。

アメリカの詩人、アレン・ギンズバーグは、ニュー・ヨークのナイトクラブで「I Want To Hold Your Hand」を初めて聞いた時、ある種の啓示を得た。ザ・ビートルズの音楽とその革新的なスタイルにすっかり心を奪われてしまい、それまで一度も人前で踊ったことがなかったにもかかわらず、思わず立ち上がって踊り始めた。

邦題の「抱きしめたい」は、当時の東芝音工の担当ディレクターであった、高嶋弘之氏が付けている。

本アルバムには1966年11月7日にアルバム「A Collection Of Beatles Oldies」用に作成されたステレオ・ヴァージョンが収録されているが、他に2種類のステレオ・ヴァージョンがアナログとして正式にリリースされている。一つは1963年10月17日に作成されたヴァージョンで、これは1974年にオーストラリアでシングル・リリースされている。もう一つは1964年1月29日に作成されたヴァージョンで、これはこの年にオーストラリア、西ドイツ、オランダがリリースした編集アルバムに収録されている。日本では1978年4月5日に「ザ・ビートルズ・ビート」というアルバムがリリースされているが、これがこの日のヴァージョンが収録されている西ドイツ編集盤である。他のステレオ・ヴァージョンでは聴くことができない、イントロに数か所ハイハットの音が収録されているヴァージョンと言われている。残念ながら私(著者)は聞いたことがないので、確認は取れなかった。

*レコーディング詳細
1963年
・10月17日
第1~第17テイクをレコーデイング。
・10月21日
第17テイクを元にモノ、及びステレオ・ミキシングが行われる。

1964年
・1月29日
第17テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。
*これは「Komm, Gib Mir Deine Hand(ドイツ語盤「I Want To Hold Your Hand)」のバック・トラックとなるリズム・トラック作成処理である。

1965年
・6月8日
第17テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。
*このミックスはこの年にオーストラリア、西ドイツ、オランダがリリースした編集アルバムに収録された。

1966年
・11月7日
アルバム「A Collection Of Beatles Oldies」用の作業。本アルバムに収録されているのはこの日のステレオ・ヴァージョン。

● This Boy
シングル「I Want To Hold Your Hand」のB面曲でオリジナル・アルバム未収録。

ジョンの作品でリード・ヴォーカルもジョン。
ジョン「3パートのハーモニーがあるスモーキー・ロビンソン風の曲を書いてみたかった。ただそれだけ。歌詞にはなんの意味もない。サウンドとハーモニーだけだ」「僕にはメロディなんて書けないと思い込んでいた時期があった。そういうのはポールが書き、僕はストレートにシャウトするロックン・ロールしか書けない、と。でも勿論、僕が書いたうちの何曲かを振り返ってみると…『In My Life』とか、初期の『This Boy』とか、僕はちゃんとメロディを、それも最高のやつを書いていたんだ」
ポール「To Know Him Is To Love Him」から3パートを習ったんだ」
ジョージ「『This Boy』のサビを聞けば、ジョンがスモーキー・ロビンソンをやろうとしているのがわかるはずだ」

*レコーディング詳細
1963年
・10月17日
第1~第17テイクをレコーデイング。
・10月21日
第15テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。

● Komm, Gib Mir Deine Hand
ドイツ語で歌われている「I Want To Hold Your Hand」。西ドイツEMIの「ドイツではドイツ語で歌わないとヒットしない」というゴリ押しに答えるためにドイツでシングル・リリースされている。ドイツ語のヴォーカルと新たな手拍子以外は既存の「I Want To Hold Your Hand」と同一。

*レコーディング詳細
1964年
・1月29日
第17テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。
*これは「Komm, Gib Mir Deine Hand(ドイツ語盤「I Want To Hold Your Hand)」のバック・トラックとなるリズム・トラック作成処理である。
上記リズム・トラックを元に第1~第11テイク、ヴォーカルをレコーディング。
・3月10日
第5及び第7テイクの編集ヴァージョンを元にモノ・ミキシングが行われる。
*第5テイクはヴォーカル入りのベスト・テイク、第7テイクはその第5テイクに手拍子をオーヴァー・ダブしたもの。
・3月12日
第5及び第7テイクの編集ヴァージョンを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● Sie Liebt Dich
ドイツ語で歌われている「She Loves You」。西ドイツEMIの「ドイツではドイツ語で歌わないとヒットしない」というゴリ押しに答えるためにドイツでシングル・リリースされている。この時点で「She Loves You」のマスター・テープは破棄されていたため、ドイツ語の歌とともに演奏も全て録り直している。

*レコーディング詳細
1964年
・1月29日
第1~第14テイクをレコーディング。
*この時点でマスター・テープはすでに破棄されていたので、リズム・トラックから新たにレコーディングし直している。
・3月10日
第14テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・3月12日
第14テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● Long Tall Sally
4曲入りのEPでのみリリースされており、オリジナル・アルバム未収録。

オリジナルはアメリカのロック・オリジネイターの一人であるリトル・リチャードが1956年3月12日にリリースしたシングル。

リード・ヴォーカルはポール。

ジョージ・マーティンがピアノを担当し、わずか1テイク、一発録りで完成させている。

アメリカ・キャピトル盤「The Beatles's Second Album」に収録されているのはモノ、ステレオ共に1964年3月10にミキシングされたヴァージョンであり、現在通常ヴァージョンとして流通しているモノ(1964年6月4日)及びステレオ(1964年6月22日)とはミックスが若干異なっている。

Long Tall Sally/Little Richard

*レコーディング詳細
1964年
・3月1日
第1テイクをレコーディング。
*まさに「一発録り」でレコーディングは終了している。
・3月10日
第1テイクを元にモノ、及びステレオ・ミキシングが行われる。
*本ミックスは、モノ、ステレオ共にアメリカ・キャピトル盤「The Beatles's Second Album」に収録されている。
・6月4日
第1テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・6月22日
第1テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● I Call Your Name
4曲入りのEPでのみリリースされており、オリジナル・アルバム未収録。

ジョンの作品でリード・ヴォーカルもジョン。
ジョン「あれは僕の曲だ。ビートルズもなければ、他のグループもなかったころ、元々はブルースっぽいのを狙って書いた曲だった。その後、何年かたってアルバムに入れることになったとき、収まりがいいようにミドル・エイトの部分を書き足した。初めて作曲にトライしてみたときに書いた曲のひとつだ」

この曲は元々、ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスに贈った曲であり、シングル「Bad To Me」のB面としてイギリスで1963年7月26日、アメリカで同年9月23日にリリースされている(A面の「Bad To Me」もジョンの作品)。

ジョンは後日、ブリッジの一風変わったギター・ソロはごく初期の段階でスカを取り入れたものだと語っている。

この曲にはモノとステレオでイントロに違いがある。またモノ、ステレオ共に2種類のミックスが存在する。
・1964年3月4日のモノラル(アメリカ・キャピトル盤「Beatles' Second Album」及びカナダ盤「Long Tall Sally」に使用される)。
・1964年3月10日のステレオ(アメリカ・キャピトル盤「Beatles' Second Album」に使用される)。
・1964年6月4日のモノラル(上記以外の盤に使用される)。
・1964年6月22日のステレオ(上記以外の盤に使用される)。
モノとステレオではイントロのカウベルの入り方が異なる。モノラルではイントロの最初から入ってくる。キャピトル盤のステレオでは最初の行の「I call your name」の「call」から入ってくるが、それ以外の盤では「I call your name」の次の「but」の手前から入ってくる。また、イントロのリード・ギターもモノとステレオではフレーズが異なる。また、キャピトル盤のステレオはエコーが深めにかかっている。
モノとステレオでは出だしの「I call your name」のヴォーカルも異なる。モノは出だしの「I call your name」の「I」だけがシングル・トラックで、それ以降はダブル・トラックだが、ステレオは出だしの「I call your name」がシングル・トラックで、それ以降がダブル・トラックになっている。また、アメリカ・キャピトル盤「Beatles' Second Album」はモノ、ステレオ共に出だしの「I call your name」の「I」だけがシングル・トラックで、それ以降はダブル・トラックになっている。

*レコーディング詳細
1964年
・3月1日
第1~第7テイクをレコーディング。
・3月3日
第7テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*映画「A Hard Day's Night」に使用される予定であったため、本ミックスは「United Artists」に送られたが、結局映画には使用されなかった。
・3月4日
第7テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*本ミックスは、アメリカ・キャピトル盤「Beatles' Second Album」及びカナダ盤「Long Tall Sally」に使用される。
・3月10日
第7テイクを元にステレオ・ミックスが行われる。
*本ミックスは、アメリカ・キャピトル盤「The Beatles's Second Album」に収録されている。
・6月4日
第5、及び第7テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・6月22日
第5、及び第7テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● Slow Down
4曲入りのEPでのみリリースされており、オリジナル・アルバム未収録。

オリジナルはアメリカのR&Bシンガー、ラリー・ウィリアムズが1958年2月24日にリリースしたシングル。
*ちなみにこのシングルのカップリング曲は、同じくザ・ビートルズがカヴァーした「Dizzy Miss Lizzy」。

リード・ヴォーカルはジョン。

モノとステレオではエンディングに違いがある。。
モノはエンディングの「Ow!」という叫び声が1回だけだが、ステレオは2回叫んでいる。

Slow Down/Larry Williams

*レコーディング詳細
1964年
・6月1日
第1~第6テイクをレコーディング。
・6月4日
第6テイクにジョージ・マーティンのピアノをオーヴァー・ダブ。
第6テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・6月22日
第6テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● Matchbox
4曲入りのEPでのみリリースされており、オリジナル・アルバム未収録。

オリジナルはアメリカのロック・オリジネイターの一人、カール・パーキンスで1957年2月11日にリリースされたシングル「Blue Suede Shoes」のカップリング曲。

リード・ヴォーカルはリンゴ。

モノとステレオでは間奏のリード・ギターに違いがある。
これはギターが(ステレオでいうところの)中央と右寄りの2本レコーディングされており、モノラルはしばらくして右寄りのギターが消えて中央だけが残り、ステレオでは中央が消えて右寄りのギターだけが残る。よって、フレーズに違いが出てきている。

Matchbox/Carl Perkins

*レコーディング詳細
1964年
・6月1日
第1~第5テイクをレコーディング。
*この日、この曲のオリジナル・アーティストであるカール・パーキンスがレコーディングを見学している。また、リンゴは歌いながら同時にドラムを叩いくという方法を取っている。
・6月4日
第5テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・6月22日
第5テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● I Feel Fine
8枚目のシングルでオリジナル・アルバム未収録。

ジョンの作品でリード・ヴォーカルもジョン。
ジョン「この曲はレコーディング・セッション中に書いた。出だしのギター・リフを中心にまとめた曲だ。フィードバックをレコードに使ったのはこれが最初だ。頭のところに入っている」
ポール「ドラムは『What'd I Say』スタイルだね」
*「What'd I Say」はアメリカのソウル・シンガー、レイ・チャールズの作品。ザ・ビートルズはデビュー前にトニー・シェルダンとともにこの楽曲をレコーディングしている。

What'd I Say/Ray Charles

ジョージによると、ギター・リフやリズム・パターンはBobby Parkerの「Watch Your Step」を引用しているとのこと。

Bobby Parker/Watch Your Step

アメリカ・キャピトル盤「Beatles 65」に収録されたヴァージョンには深いエコーが掛けられていた。また同アルバムのステレオ・ヴァージョンは疑似ステレオである。

イギリスでリリースされたシングル盤、編集アルバム「A Collection Of Beatles Oldies」「1962-1966」に収録されたヴァージョンのイントロには、メンバーの咳払いやリンゴのハイハットの音、軽いノイズが収録されていた。また、ステレオ・ヴァージョンのエンディングにはかすかに手拍子が入っているが、モノラル・ヴァージョンには入っていない。

*レコーディング詳細
1964年
・10月18日
第1~第9テイクをレコーディング。
・10月21日
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*計4つのミックスを作成。リミックス3がイギリス国内用、リミックス4がアメリカ用、残りは未使用に終わっている。
・10月22日
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このミックスは未使用に終わっている。
・11月4日
第9テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● She's A Woman
シングル「I Feel Fine」のB面曲でオリジナル・アルバム未収録。

ポールの作品でリード・ヴォーカルもポール。ジョンが歌詞を手伝っている。
ポール「ブルースを目指した曲。オフ・ビートを刻んだジョンはさすがだね」
ジョン「僕が歌詞を手助けして、ポールが描いた曲だ。歌詞に「turns me on (僕を目覚めさせる)」というフレーズを入れたのは、そのフレーズを使うだけでとても興奮したからさ。マリファナとかそういったもののことを、そう表現するだけでね」

A面曲「I Feel Fine」同様、アメリカ・キャピトル盤「Beatles 65」に収録されたヴァージョンには深いエコーが掛けられていた。また同アルバムのステレオ・ヴァージョンは疑似ステレオである。

1981年12月7日にリリースされた「The Beatles E.P. Collection」のボーナス・シングルに収録されている「She's A Woman」には、冒頭にポールの「one two three four」というカウントが付いている。

*レコーディング詳細
1964年
・10月8日
第1~第7テイクをレコーディング。
・10月12日
第6テイクを元にモノ、及びステレオ・ミキシングが行われる。
*この日のミックスはイギリス国内でのリリースに使用されている。
・10月21日
第6テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*この日のミックスはアメリカでのリリースに使用されている。

● Bad Boy
元々はアメリカ・キャピトルがアメリカ市場用に2曲用意して欲しいという要求に答えた楽曲で、1965年5月10日に「Dizzy Miss Lizzy」と共に1日でレコーディングからモノ及びステレオ・ミキシングまで終えている。「Dizzy Miss Lizzy」はアルバム「Help!」に収録され、この「Bad Boy」はアメリカでは1965年6月14日リリースのアルバム「Beatles VI」に収録されたが、イギリスでは翌年の12月10日リリースの編集アルバム「A Collection Of Beatles Oldies」に初めて収録された。オリジナル・アルバム未収録。

オリジナルはアメリカのR&Bシンガー、ラリー・ウィリアムズが1959年1月19日にリリースされたシングル。ちなみに同日にレコーディングされた「Dizzy Miss Lizzy」もオリジナルはラリー・ウィリアムズである。

Bad Boy/Lally Williams

*レコーディング詳細
1965年
・5月10日
第1~第4テイクをレコーディング。
第4テイクを元にモノ、及びステレオ・ミキシングが行われる。

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