ダンジョン飯(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

ダンジョン飯は年10刊漫画誌「ハルタ」にて2014年2月より連載が開始された、九井諒子初の長編連載作品。架空の魔物を現実にある方法で料理し、食す、新感覚のグルメ&ファンタジー漫画。
作者の持ち味である、架空と現実が融合した世界観が存分に発揮されている。

『ダンジョン飯』の概要

ファンタジーの名手である著者の初となる長編連載。
架空のモンスターを論理的に考察し、現実的な料理で食すという斬新な設定で評判を呼び人気作品となる。
世界観の設定にはRPGゲーム、ウィザードリィの影響が多くみられる。

2015年度コミックナタリー大賞・第1位
このマンガがすごい!2016(宝島社)・オトコ編1位
漫画大賞2016 第2位

『ダンジョン飯』のあらすじ・ストーリー

ある日、離島の小さな村で地鳴りと共に地下墓地の底が抜け中から朽ちかけた男があらわれる。
男は1千年前に滅びた王の名を名乗ると、かつて栄華を誇ったその国が狂乱の魔術師によって地下に囚われ続けており、その魔術師を倒したものには国のすべてを与えると言い残し、塵となって消えていった。
その言葉を信じた多くの冒険者がダンジョンに集い始める。

主人公のライオス一行はダンジョンの深部でレッドドラゴンと戦っていたが、迷宮に迷い、罠で食料を失ったことによる空腹で連携攻撃の精彩を欠き壊滅の危機に陥ってしまう。
レッドドラゴンがライオスを襲おうとした瞬間、妹のファリンが身を挺し脱出魔法で一行を地上に送り届ける。
しかし既にファリンはドラゴンの腹の中のため魔法が効かず、ファリン一人ダンジョンに取り残されてしまった。
地上で目を覚ましたライオスはすぐにファリンを助けに行こうとするが、ギルドメンバーである、エルフのマルシルから、迷宮に荷物を置いてきたため無一文になったこと、ギルドメンバーだったドワーフのナマリと、剣士のシュローの2人が抜けたことを聞かされる。
負けた原因は空腹にある、とりあえず何か食べようと提案するマルシルだが、1人でも潜ると言って聞かないライオス。
その姿を見て、残っていたギルドメンバーである、ハーフフットのチルチャックとマルシルの2人は自分たちも着いて行く決意をする
ライオスは喜びながらも再度2人に意思を確認、食料は迷宮内で自給自足すると告げる。
2人は抵抗するが、ライオスは迷宮内に食物連鎖があるのだから人間だって食っていけるはずだと屁理屈をこね始める。
やけに積極的で、手には読み古した迷宮グルメガイドの本。
「まさか…。」と疑う2人にライオスが告げる。
「魔物が好きで、味も知りたくなった。」

さっそく仕留めた大サソリと歩き茸を煮込みはじめるライオスだが、見知らぬドワーフにやり方が感心できないと話しかけらる。
ドワーフは持っていた高級食材の干しスライムも使い手際よく鍋の準備を始める。
恐縮するライオスだが、「魔物食に興味を持ってもらえて嬉しい。」と歓迎するドワーフだった。
出来あがった大サソリと歩き茸の水炊きにマルシルは抵抗するが、ライオス達の反応と空腹には勝てずひとくち食べると、「うまい!!」と夢中になる。
ドワーフの名前はセンシといい、一行の事情を聞くと旅への同行を申し出た。
喜ぶライオスにレッドドラゴンを調理するのが長年の夢だったと告げるセンシ。
ファリンを食べたドラゴン…それは食べてもいいものなのか?胸に秘めつつ4人での旅が始まった。

地下2階へ進み、人食い植物、バジリスク、マンドレイク、大蝙蝠、動く鎧とを倒し、食していく一行。
マルシル、チルチャックも魔物食への抵抗が徐々に少なくなっていく。

地下3階に着き、センシが普段拠点としているキャンプに連れていかれるライオス達。
そこでセンシがこの階にいるゴーレムを畑がわりに使用していることが判明する。
呆れたマルシルだったが、収穫を手伝い、久しぶりに新鮮な野菜のランチを満喫する。

その後、訪れた酒場でオーク達の襲撃に出くわす一行だが、センシの提案でオーク達の野営地に向かう。
そこでパンを作りながらいがみ合うマルシルとオークだったが最後は一緒に食卓を囲み和解する。
地上に現われた王の言い伝えが本当ならば、この迷宮を作った狂乱の魔術師を倒せば、城と国が手に入る。
「なぜこの迷宮の深部に潜る?国を手に入れたときお前はどうする」と問いかけるオークに、ライオスは悩みながらも、妹ファリンを捕食したドラゴンを追っていること、これからは迷宮を手に入れた後のことをよく考えて散策する、と答える。
「オークに捕まってパンを作るような奴が王になれるとは思えないが、まぁがんばれよ。」とオークは励ましの言葉を贈った。

宝虫、ダンジョンに潜む霊たちも撃破し、食べ進む一行は、襲い掛かる絵が飾られる広間にたどり着く。
絵に境界線はなく、ライオスたちも絵の中に入れる様になっていた。その絵には黄金の国の王デルガルの戴冠式と、それを祝う宴の様子が描かれていている。
中の食事が食べられるのではないかと、絵に侵入したライオスだったが、王の従者であるエルフの魔法使いに見つかってしまい、危機一髪抜け出した。
その日は空腹のまま休もうとしたが、チルチャックの頑張りによってミミックの塩茹でにあり付ける。

地下4階は岩盤から流れでた地下水で湖が形成される。
渡るにはマルシルの水上歩行が必要だが魔法を嫌うセンシはそれを拒否した。
自分に懐いているケルピーの背に乗って渡ると言うが、ライオスがケルピーは人を油断させて水中に引き込むと忠告する。
しかし、忠告を聞かずケルピーの背にまたがったセンシ、その瞬間ケルピーは豹変し、センシは水中に引き込まれてしまった。
水中でなだめようとするセンシだったが、ケルピーは襲い掛かってくることを辞めず、仕方なく仕留める。
落ち込みながらも、ケルピーを解体するセンシに、マルシルは馬油を分けてもらい石鹸を作った。
石鹸で髭を洗ってもらい水上歩行の魔法をかけられたセンシは、「魔法もいいものだ」と感謝を告げた。

センシがケルピーを解体しマルシルが石鹸を作る間、暇を持て余したライオスとチルチャックが湖の上を探索していると、水上に大麦が浮かんでいるのを発見した。持ち主は死亡し近くで沈みかかっている。
宝虫に全滅させられていたギルドだとチルチャックは気付くが、ライオスはコボルト以外覚えていないと言う。全員を岸にあげると、拾った大麦で昼食の雑炊を作った。

再び出発し湖の上を進む一行、仕留めたクラーケンはとても食べられる味ではなく、中から出てきた寄生虫を蒲焼にして食べる。魔物を倒す際に、魔法を使えば殺しすぎてダンジョンの生態を乱してしまうと心配していたセンシだが、魚たちに食べられていくクラーケンを見て最初から自分たちもダンジョンの生態に組み込まれていたのだと、考えを改める。

翌朝、不手際によってウンディーネを怒りを買ったマルシルが襲撃され重傷を負ってしまう。
体力を回復させるため、ケルピーで焼肉をしているとその匂いに元ギルドメンバーのナマリが気付く。
同行していたノームの学者タンス夫妻はマルシルの回復を依頼するライオスに対し、調査を手伝えば引き受けると条件を出す。
調査するために訪れた塔ではテンタクルスに襲われ、ライオスの顔は腫れあがってしまうが、ナマリとセンシの活躍で撃破する。
約束通り、回復魔法をかけてもらえたマルシルは魔力を取り戻すためにウンディーネを飲むと決意、またもやナマリとセンシの活躍で捉えてもらい、シチューにして、無事に魔力を取り戻した。
再会直後はいがみ合ってたマルシルとナマリだったが、お互いがファリンを心配する気持ちは同じだとわかり和解した。
その際、同時期に抜けたシュローも惚れていたファリンを救うため、独自に動き出していることを聞かされる。

オークに教えられた地下5階への道はテンタクルスの群生地でとても通れるものではなかったが、チルチャックの機転によって、大ガエルの皮で作ったスーツを着用し、無事に通過できた。

いよいよ5階に着いた一行は、レッドドラゴンが頻繁に活動しているであろう痕跡を見つけ、不安を募らせる。
通常はあまり活動をせず消化も遅いドラゴンがこれだけ動いていれば、ファリンはもう消化されてしまったのではないかと泣きそうになるマルシルに、まだわからないとライオスは落ち着かせる。
作戦を考えるにも前回とは状況が違う。悩んだ末に建物を破壊し、動きを封じ込めてから逆鱗を狙うという方法を思いつく。希望が見えさっそく準備に取り掛かる、ライオス、マルシル、チルチャックの3人。
その間センシはカツレツを用意する。前回と同じ轍は踏まないと決戦の前に腹ごしらえをする一行だった。

食事を終えたころ地鳴りと共にレッドドラゴンがやって来た。
4人は配置につきレッドドラゴン頭上の建物を破壊することに成功するが、ダメージは与えられない。
センシとチルチャックも意識を失いピンチの中、ライオスは決死の行動に出る。
ファリンの痛みに比べればたいしたことじゃないと、自らの左足を竜に食わせて口にぶら下がり、逆鱗に剣を突き立てた。そのまま竜は倒れ見事に勝利した。

マルシルの魔法で回復した一行は竜の体内からファリンを捜索し始める。
しかし消化器官のどこを探しても見つかない。ライオスは最後にレッドドラゴンの炎の燃料となる、未消化の骨や毛でできた塊の中を探す。
その中からワーグの骨に混ざったファリンの頭蓋骨が見つかる。
蘇生のためにファリンの骨をかき集め並べたが、魂と肉体の繋がりが脆くなっている今、ここから動かすのは危険だとマルシルは言う。
ファリンを救う方法はただ一つ、マルシルが密かに研究している禁忌とされる古代魔術だけであった。
それでも助けてくれというライオスに、マルシルは承諾し、レッドドラゴンの血肉を使い蘇生を始める。
提唱が進むにつれてファリンの骨格に血肉が集まってくる。マルシルは意識を失うが、目を覚ますと蘇生は成功していた。

ファリンとお風呂に入るマルシルは、無事に蘇生できているか全身をくまなくチェックしていた。
再会にはしゃぐマルシルだが、ファリンは自分の蘇生術に使われた魔法陣はよくないものだと不安がっている。後で消せば大丈夫だとマルシルは楽天的である。

ファリンとの再会を喜びレッドドラゴンの料理を満喫する5人。
倒した魔物を食べながらここまできたと聞いたファリンは「すごい!すごい!」と大はしゃぎする。

眠る前に声をかけに来たファリンに「二度と無茶をするな」と言い、抱きしめるライオス。
「もうしないよ。」とファリンは答えた。

夜中、ファリンは目を覚ますと何かに呼ばれるように姿を消してしまった。
気付いたライオス達が、レッドドラゴンの死体のそばでファリンを見つけるも、以前絵の中で襲ってきたエルフがあらわれた。
エルフがあらわれ、混濁したファリンによって攻撃を受けたライオスは気を失う。
残されたマルシルたちは抵抗するが、ファリンを残し4人とも地中の罠に落とされてしまった。
地上ではエルフがファリンを「竜」と呼び、魔法によって再び姿を変えてしまった。
罠に落とされた4人は迫りくる石壁によって潰される寸前に、突如現れた霊たちによって救われる。
マルシルも気絶してしまい、霊に囲まれ困惑するチルチャックとセンシだが霊たちは危害を加える様子はなく、急にオーク達が現われると姿を消してしまった。
オーク達によっていったん捉えられた4人だったが、センシがオーク達と顔見知りだったため解放される。
オーク達のリーダーは地下3階で共にパンを作ったオーク族長ゾンの妹であった。
ライオスとマルシルを手当してくれたゾン妹に、チルチャックが自分達を襲ったエルフの話をすると、そのエルフこそが「狂乱の魔術師」だと判明する。

一度地上に戻り、装備を整えなければ勝ち目はないが、ライオスとマルシルが納得するとは思えない。
騙してでも連れ帰ってしまおうかと考えるチルチャックだったが、ゾン妹の素直に言えばいいとの言葉を受け、「おまえ達を失いたくないと」目に涙を浮かべて訴えた。
ライオスもこれには観念し、一度地上に戻ると約束する。

地上を目指し始めて2日後、ライオス達は道に迷っていた。
狂乱の魔術師によって迷宮内の地形が変化し、魔物も活動も活発化し始めている。
2日間ろくに食事もできていないライオス達だったが、花粉に苦戦しながらもドライアドを倒し、ジャックオランタンや、マンドラゴラも見つけ食事をとることができた。
食事の席でマルシルは、これからの為ライオスに治療や回復魔法を教えると宣言する。

少し時間が戻って、地下4階。ライオスとチルチャックが水中から引き揚げたカブルー達をタンス夫妻が蘇生術によって蘇らせていた。
タンスから「引き上げてくれた誰かに感謝しておけ」と言われ自分たちが誰かに救われたのだと、気づいたカブルー達。
嗅覚の鋭いコボルトが調べたところ、自分たちを救ったのは宝虫の時と同じ人物だと判明した。
しかし、宝虫の正体に(宝虫は宝石に酷似しているモンスター)気付いていないカブルー達は、カバンの中から大麦がなくなっていることも併せて、宝石も食料も盗まれたのだと怒りだすのであった。

食料をなくし、仕方なく町に戻ろうと決めたカブルー達だったが、深い霧が包み、気が付くと魚人達に取り囲まれていた。
戦いながらもこれが幻術だと気づいたカブルーは、仲間たちを正気に戻し、幻術の術者を特定すると、その正体は死体回収屋であった。
深部の死体を回収すると金になるが故の行為だったが、冒険者同士の交戦は重罪。
カブルーがダンジョンの所有者である島主に報告すると伝えると、死体回収屋は今気絶している自分たちの仲間を殺して蘇生所に連れて行けば高い金になると取引を持ち掛けてきた。
提案を受け入れたように見せかけカブルーは、あっさりと死体回収屋を殺し、二度と蘇生できないように水に沈めた。

この死体回収屋のような者がいれば、ダンジョンに人が近づかなくなってしまう。
人がいなくなれば、いつかダンジョンから魔物が溢れ、周辺の集落を襲ってしまうのだとカブルーは懸念している。

死体回収屋から食料を確保したカブルー達は、食事をしながら自分たちを助けたギルドについて話し合うと、それぞれの情報からライオス達だと判断した。
コボルトはトールマンの匂いは一人しかいないと言う為、兄か妹どちらかを失い救うためにダンジョンに潜っているのではとカブルーは推測する。
ライオス兄妹を一方的に意識していたカブルーは「あいつらの化けの皮が剝がれるのを待っていた」と不気味に笑う。

食事を終え、町に戻るカブルー達はシーサーペントに襲われてしまう。
指示を出し戦いながらも苦戦していると、突如別のギルドがあらわれ、シーサーペントをあっさりと倒してしまった。
そのギルドの剣士が以前ライオス達といたシュローであると気づくいたカブルーは礼を言いながらも、「女性を探しているのではと」問いかける。
シュローの反応を見て、居なくなったのは妹のほうだと確信したカブルーは、シュローに対しファリン捜索の協力を申し出る。

ダンジョン

かつて栄華を極めていた黄金の国が、狂乱の魔術師により地下に囚われダンジョンと化した。
地下であるながら木が生えていたり、湖がある為空間が歪んでいるのではと推測されている。
タンスの調査により、迷宮全体にかかる魔法には巨大な設計図が存在すると判明した。

蘇生術

迷宮の中で死亡したものは状態によって蘇生することが可能である。
非常に強い術が張られており、肉体に魂を縛り付けているため、体の損傷さえ治せば元通りになってしまうのだ。
学者のタンスは死んだ者が生き返るのではなく、迷宮内では死自体が禁じられているのではと考える。
なお、肉体を13分の1失うか、炭化させると蘇生の確立はグンと下がってしまう。

100%蘇生できるわけではない。

迷宮の主

ダンジョンを創造した魔術師。
ライオスは忍び込んだ絵画の中で出会い、攻撃された。
現時点では、古代魔術を使うエルフということだけ判明している。

主な登場人物・キャラクター

ライオス

種族:トールマン
主人公でファリンの実兄。
ギルドのリーダーであり、冷静沈着、戦闘の経験も豊富な剣士である。
穏やかな性格で妹想いの兄であるが、過剰なまでに魔物を愛する一面もある。
「魔物が好きで、味も知りたくなった。」の発言でチルチャックからはサイコパス扱いされている。

魔物を愛するゆえに知識が豊富なライオス。戦わずして人魚に勝つ。

ケン助

動く鎧の一体である。ライオスが装備品としてこっそり所持していたが、レッドドラゴンとの対決の際に逃げ出すところをチルチャックに見つかってしまう。
チルチャックからは危険物、ファリンからは食物として扱われているが、宝虫にいち早く気づくなど役に立つ部分もある。

ファリン

種族:トールマン
ライオスの実妹である。回復魔法や補助魔法を得意とする。
霊の扱いが上手くマルシル曰くかなり高度な魔法を使用している。
穏やかな雰囲気で非戦闘員に見えるが、ライオスがケルピーに連れ去られそうになった時には、モーニングスターを振り回して救出に向かった。
レッドドラゴンによって骨になるま消化されるが、マルシルの魔法により蘇生する。

幼いころから霊術の才能があったファリン。村人には奇異の目で見られるが、そこから兄妹が旅をするきっかけが生まれた。

Kyazu0818t2
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