3月のライオン(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『3月のライオン』とは、『ヤングアニマル』(白泉社)にて2007年から連載している羽海野チカの漫画作品。将棋を題材としており、現代の東京や架空の下町「三月町」「六月町」などを舞台に、中学生でプロ棋士になった少年・桐山零が奮闘する姿を描く。同時に、彼と彼を取り巻く様々な人々が失った何かを取り戻していくラブストーリーでもある。将棋の監修は棋士・先崎学が行っている。2016年にアニメ化、2017年に実写映画化、2015年にスピンオフ作品がメディア展開され、ファンブック2冊が出ている。

『3月のライオン』の用語

日本将棋連盟(にほんしょうぎれんめい)

正式名称は公益社団法人日本将棋連盟(にほんしょうぎれんめい)。
『3月のライオン』に出てくる法人だが、実際に存在する歴史ある法人である。

日本将棋連盟は、将棋の棋士活動を運営する公益社団法人である
四段以上のプロ棋士、女流棋士および指導棋士によって組織される。
「将棋の普及発展と技術向上を図り、我が国の文化の向上、伝承に資するとともに、将棋を通じて諸外国との交流親善を図り、もって伝統文化の向上発展に寄与すること」を目的としている。

従来、将棋は 「家元制度」だった。大橋家・大橋分家・伊藤家の三家より世襲の名人が輩出していたが、江戸幕府崩壊により家元制度が廃止される。
混沌の時代を経て、1924年に「東京将棋連盟」が設立。1927年には関西の棋士も合流し、「日本将棋連盟」が設立される。
1949年に社団法人、2011年に公益社団法人となり、今の形となる。(『3月のライオン』コミック3巻の時点では、社団法人)

奨励会(しょうれいかい)

日本将棋連盟のプロ棋士養成機関。
三段から6級までで構成されており、奨励会に加入後、三段まで上がり、さらに四段に昇段すると、プロ入りとなる。

こちらは漫画の設定ではなく、実際に存在する機関である。
正式名称は「新進棋士奨励会(しんしんきししょうれいかい)」で、略して「奨励会」である。
実際には関東奨励会と関西奨励会の2つに分かれている。
二段までは東西にわかれて対局し、規定の成績を上げると昇級・昇段となる。
三段になると東西をあわせてのリーグ戦になり、半年単位で対局する。
このうち、戦果上位二名が四段に昇段でき、正式にプロ棋士となる。

師弟制度

将棋の世界では、奨励会に入会する際に、四段以上のプロ棋士を師匠とし、入門する事が必須となっている。
逆に、師匠がいない状態で奨励会に入会する事は原則できない。

しかし一般的な師弟関係とは意味合いが異なり、身元引受人のような役割がある。
その為、師匠が弟子に直接技術指導や稽古をしないケースもある。また、師匠と弟子でも棋士戦で対局する。

零の師匠は幸田柾近であり、『3月のライオン』でもこの師弟関係を踏襲している。

島田と二階堂は兄弟弟子だが、同じ師匠を持つと「兄弟子」「弟弟子」となる。
女性の場合は、「姉弟子」「妹弟子」となる。

内弟子

将棋の師弟関係のひとつ。
師匠の自宅に住み、雑用や修行をこなす制度。
現在は将棋での内弟子制度は廃れている。

『3月のライオン』では、零は内弟子兼養子として幸田家の世話になっていた。

将棋会館(しょうぎかいかん)

日本将棋連盟の本部のある建物を一般的に指し、他将棋会館と区別して「東京・将棋会館」とも言われる。
「東京・将棋会館」の他に、「関西将棋会館」「北海道将棋会館」もある。

所在地は、東京都渋谷区千駄ヶ谷2-39-9。作中の架空の建物ではなく、既存の建物である。
日本将棋連盟の事務室だけではなく、対局室や販売部、中継室などもある。
申し込めば見学だけでなく、対局も可能。

感想戦(かんそうせん)

相手が「負けました」と投了し 対局が終了した後に行う、対局を反省・改善する為の共同作業。
対局開始から終局まで 又はその一部を対局相手と共に盤上で再現する。
そして、対局中に行った手が善いのか悪いのか敗因を探り、その局面における最善手は何だったのか、実戦では現れなかった指し手があったのか、などを検討する場を言う。

順位戦

フリークラスを除いた棋士をA級からC級2組の5つの組に分けてリーグ戦を行う、毎日新聞社・朝日新聞社主催の将棋の棋戦を指す。

A級・B級1組・B級2組・C級1組・C級2組の5つのピラミッド状のクラスからなっている。
A級リーグを戦う棋士は10人で、このうち1位となった棋士が名人戦へ挑戦できる。

各クラスごとに、6月から翌年の3月までにわたってリーグ戦を行い、時期の順位を決める。
また、A級の優勝者は、名人と4月から7月にかけて七番勝負の対局をする。
名人は別格なので、順位戦を指すことはない。

奨励会から新規のプロとなった棋士は、C級2組から始める。
飛び級はできない。その為、どんなに才能ある棋士でも、A級になる為には5年かかる。

順位戦の昇級・降級により、段位や対局料、他棋戦のシード権が変わるため、棋士にとって重要な試合と言える。

研究会

多くのプロ棋士や奨励会員が取り入れている研究と実践練習の一つが、「研究会」と呼ばれる多人数での実戦形式の練習対局。
月に1回程度4~6人で集まり対局する。対局後は、参加メンバーと対局の反省・改善の検討をする。
自分だけではなく他棋士の意見を聞ける事から、将棋の視野を広げる。
複数の研究会に参加して問題なく、掛け持ちしている棋士もいる。

『3月のライオン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

幸田 柾近「プロになるのがゴールなんじゃない なってからの方が気が遠くなる程長いんだ 進めば進む程道はけわしく まわりに人はいなくなる 自分で自分を調整・修理(メンテナンス)できる人間しか どのみち先へは進めなくなるんだよ」

プロ棋士の厳しさを語る幸田柾近

幸田柾近の息子・歩が、零に将棋で追い抜かれ、将棋を辞めると言い出した。
零は、歩に将棋を再び指してほしい、辞めないよう説得してほしいと、柾近に懇願する。
しかし、柾近は「プロになるのがゴールなんじゃない なってからの方が気が遠くなる程長いんだ 進めば進む程道はけわしく まわりに人はいなくなる 自分で自分を調整・修理(メンテナンス)できる人間しか どのみち先へは進めなくなるんだよ」とプロ棋士の厳しさを伝え、自分で自分を調整・修理できないのなら未来はない、と突き放した。

桐山 零「ずっと足のつかない夜の海に浮かんでいるような日々だった」

長野だけでなく、引き取られた東京の学校や家でも孤独を抱えてきた桐山。「友達なんて1回も持ったことがなかったからこれが普通のことだった」と思おうとしていた。しかしこれからずっとこのままなのか不安で、夜は息もできない状態になってしまう。その時の気持ちを「ずっと足のつかない夜の海に浮かんでいるような日々だった」と例えた桐山。何も考えなくても済むように将棋の盤に向かい、指して指して指しまくっていた時の心情が表れている。

林田 高志「そうやって力をかりたら 次は相手が困ってる時 お前が力をかしてやればいい 世界って そうやってまわってるんだ」

Sonochy
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@Sonochy

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