3月のライオン(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『3月のライオン』とは、『ヤングアニマル』(白泉社)にて2007年から連載している羽海野チカの漫画作品。将棋を題材としており、現代の東京や架空の下町「三月町」「六月町」などを舞台に、中学生でプロ棋士になった少年・桐山零が奮闘する姿を描く。同時に、彼と彼を取り巻く様々な人々が失った何かを取り戻していくラブストーリーでもある。将棋の監修は棋士・先崎学が行っている。2016年にアニメ化、2017年に実写映画化、2015年にスピンオフ作品がメディア展開され、ファンブック2冊が出ている。

人を頼っていいんだ、と零(画面中央)に語り掛ける林田高志(画面左)

将棋の試合に出ていた為、高校の出席日数が足りない零。
担任の林田の協力で、大量のレポートで穴埋めをする。しかし、実験の感想レポートがひとつも終わらない。
そこで、放科部に頼み、実験の手伝いをしてもらう。

何とか実験を終わらせた零だが、担任の林田は「そうやって力をかりたら 次は相手が困ってる時 お前が力をかしてやればいい。世界ってそうやってまわってるんだ」「1人じゃどうにもならなくなったら誰かに頼れ。でないと実は誰もお前にも頼れないんだ」と説いた。
誰かに頼ることも大切だということを、例に気付かせた言葉である。

恥をかくことも大切だと語る相米二

会いに来ない零を心配するひなた。そんなひなたに、零の気持ちを推測する相米二。

香子の不倫相手・後藤と対局し、勝利する事だけを考えていた零。
しかし、実際には後藤との対局前に 島田との対局で完敗する。
自分の経験不足・相手の力量を読み誤った恥ずかしさに打ちひしがれる零。
必ず勝つ、と川本姉妹に大口を叩いてしまった零は、その羞恥から川本姉妹に会いに行けずにいた。

心配するひなたに対し、相米二は「恥なんてかいてナンボだ 『失敗した』ってことは『挑戦した』ってことだからな」そのうち大人になりゃあ いやでも気付くさ どんなヤツでも一線でやっている人間で 恥をかいた事 無いヤツなんていねぇってコトにな」と話した。プロとして一線で活躍するのなら恥をかく場面は必要になってくると言う、相米二の言葉が胸に響く。

桐山 零「オレ部活やってる」

名人戦の対局合間のおやつタイムで宗谷が摂取していたブドウ糖を見て、野口はラムネが作れると言い、将棋部と放科部を合体させた「将科部」で手づくりラムネを作ることとなる。桐山は最初野口が作るのを見ているだけだったが、次第にやってみたい気持ちが強くなり、みんなと作りはじめる。「オレ部活やってる」と独白する桐山。
子どもの頃からずっと1人だった桐山が、高校生らしく同じ部の仲間と一緒に楽しく活動しているのを実感する言葉である。

桐山 零 「強くなってももっと強い人と当れば負けます」

野口や顧問の林田先生から「勝つにはどうしたらいいのか、負けに慣れなければいけないのか」という問いかけをされた桐山。負けた時に感じた悔しさを語る彼に対し、野口と林田先生は思わず「将棋やってて楽しい?」と聞いてしまう。しかし桐山は「強くなってももっと強い人と当れば負けます」と答えた。
負けに慣れることはないのだが、悔しくても強くなるためには勝っては負けを繰り返して、あきらめることなく継続していく必要がある。そんな桐山の胸の内が伝わってくる。

川本 相米二「よく友達を助けた、胸を張れ」

相米二はあかりから、ひなたの友達であるちほがいじめられ引っ越しをしてしまったこと、そしていじめの矛先が自分に向けられてしまっていることを聞いた。それを受けて、桐山と2人で家に帰ってきたひなたへ「よく友達を助けた、胸を張れ」と伝えた。
自慢の孫だと褒めると、ひなたの背中を押すように、彼女の行動に誇りを持つよう言った相米二。彼の優しさや孫への想いが伝わる名セリフである。

川本 ひなた「でも、後悔なんてしない。しちゃだめだ。私のしたことは絶対間違ってなんかない」

ちほがいじめを苦にし転校したことで、ひなたが標的に。泣いて家に帰ってあかりたちに事の次第を話して聞かせたが、モモまで泣き始めたため家を出る。そして、追いかけてきてくれた桐山に、自分の胸の内を号泣しながら「でも、後悔なんてしない。しちゃだめ だ。私のしたことは絶対間違ってなんかない」と告げた。
ちほを救えなかった悔しさ、自分にも降りかかってきたいじめへの恐怖。1人になることは怖いが、何があっても大丈夫、いじめには負けないのだと自分自身にも言い聞かせているのだった。

桐山 零「昔の人たちが、この 小さな可愛い生き物が太陽に向かって飛ぶところを指して付けた名前だ 」

ひなたは桐山に案内されて図書館を訪れるのだが、小さい頃にちほと図書館に来ていた時のことを思い出す。桐山とは違う本を見ていたが、「子供のころ見ていたテントウムシの本当の名前はこれだったのか」という彼の言葉で、ひなたも興味を持つ。なぜ天道虫というのか疑問に思い、桐山に問いかけた際、「昔の人たちが、この 小さな可愛い生き物が太陽に向かって飛ぶところを指して付けた名前だ 」と教えられた。それを知ったひなたは、引っ越していってしまったちほのことを思い涙するのだった。
桐山はそんなひなたを見て、自分の恩人であるひなたやちほをいじめた人物たちを八つ裂きにしてやりたいが、それでは何も解決できないのだと思い悩むのだった。

林田 高志「お前はお前に出来る事を まずいっこいっこ やるしかないんだよ と」

川本3姉妹の為に奔走する零。その姿を林田は優しく支える。

「悩んで悩んで、そしていっこいっこ解決していく。それが大事」「お前はお前に出来る事を まずいっこいっこ やるしかないんだよ」は、担任の林田が零にかけた言葉。
学校でいじめられるひなたに何かしてあげたい、でも何もできない。自分の無力さを嘆く零の心をそっと支えた名セリフである。

国分「自分のことが分かってくれば、やりたいこともだんだんぼんやり見えてくる」

新担任が決まるまでの臨時担任をしていた国分が、いじめを行なった高木にどんなことをすれば罪になるのか教えるために、高城に対して最後のアドバイスをしたときのセリフが、「自分のことが分かってくれば、やりたいこともだんだんぼんやり見えてくる」である。
高城がいつまでも罪の意識そのものを理解するまいという態度であるため、自分が引き起こしたことに責任を持たねばならないと、新担任は内申書には真実を書くつもりだと国分に話す。国分は高城に対していずれわかる時が来るであろうという一縷の望みを込めて、自分が他人に与える影響や、自分自身何をやりたいのかどれだけのことができるのか分からず不安だろうが、その不安感から抜け出ることはできるから大丈夫だと最後にアドバイスをするのだった。

山崎 順慶「『信じれば夢は叶う』 それは多分 本当だ 但し 一文が抜けている 『信じて努力を続ければ夢を叶う』 -これが 正解だ さらに言えば 信じて『他のライバルよりも1時間長く 毎日努力を続ければ ある程度迄の夢はかなりの確率で』叶う ーだ」

山崎順慶が二階堂との新人戦対局時に、心で繰り返していた言葉。

山崎順慶が二階堂との新人戦対局時に、心で繰り返していた言葉が「『信じれば夢は叶う』 それは多分 本当だ 但し 一文が抜けている 『信じて努力を続ければ夢を叶う』ーこれが 正解だ さらに言えば 信じて『他のライバルよりも1時間長く 毎日努力を続ければ ある程度迄の夢はかなりの確率で』叶うーだ」である。

努力しても報われないし、周囲の理解は薄い。それでも勝ちたい。
その厳しい環境から生まれた言葉でもある。

名人戦の対局合間のおやつタイムシーン

Sonochy
Sonochy
@Sonochy

Related Articles関連記事

桐山零が抱える問題と成し遂げた成長【3月のライオン】

桐山零が抱える問題と成し遂げた成長【3月のライオン】

羽海野チカの漫画『3月のライオン』は『ヤングアニマル』で連載されている。アニメ、実写映画、外伝漫画、などさまざまなメディア展開が行われる。主人公の桐山零は、事故で家族を失い天涯孤独の身となる。将棋に縋って生きてきた零は、川本家と出会い、数多くの棋士との対局し、さまざまな事を経験しながら、自分の居場所を模索する。大きな孤独を抱え、もがきながらも成長していく桐山零を徹底解説する。

Read Article

3月のライオンの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

3月のライオンの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『3月のライオン』とは、羽海野チカによる将棋を題材とする漫画、および漫画を原作とするテレビアニメや実写映画などのメディアミックス作品である。 15歳でプロ棋士になった孤独な青年・桐山零が、川本三姉妹や個性豊かなライバル棋士たちとの交流を通じて、棋士として、人間として成長していく姿が描かれる。 プロ棋士・先崎学監修による臨場感あふれる棋士たちの熱い対局に加え、彼らの生き様を表す様々な名言が注目を集めている。

Read Article

東のエデン(Eden of the East)のネタバレ解説・考察まとめ

東のエデン(Eden of the East)のネタバレ解説・考察まとめ

『東のエデン』とは、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」にて放送されたテレビアニメである。同枠初のオリジナルストーリーであり、原作・脚本・監督は神山健治、キャラクター原作は羽海野チカ。アニメーション制作はProductionI.G。記憶喪失の青年が謎の携帯電話によって、日本全国を賭けたゲームに巻き込まれるサスペンス・アクション。テレビアニメ放送後、映画化もされており、「ノイタミナ」初の映画化作品となる。

Read Article

ハチミツとクローバー(ハチクロ)のネタバレ解説・考察まとめ

ハチミツとクローバー(ハチクロ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ハチミツとクローバー』は羽海野チカにより宝島社、集英社に2000年から2006年にかけて連載された漫画作品。及びそこから派生するテレビアニメ、実写映画、テレビドラマである。「ハチクロ」という略称で親しまれる。 テレビアニメ第一期が2005年、第二期が2006年に放送された。 美術大学を舞台に、大学生達の報われない片思いや芸術への想いが描かれている。

Read Article

ハチミツとクローバー(ハチクロ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

ハチミツとクローバー(ハチクロ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『ハチミツとクローバー』は羽海野チカにより宝島社、集英社に2000年から2006年にかけて連載された漫画作品、及びそこから派生するテレビアニメ、実写映画、テレビドラマである。「ハチクロ」という略称で親しまれる。 テレビアニメ第一期が2005年、第二期が2006年に放送された。 美術大学を舞台に、不器用な大学生達の報われない恋や自分の才能や生き方について迷う若者達の姿を描いた青春群像劇

Read Article

【3月のライオン】史上最高に面白い漫画ベスト100!【夏目友人帳】

【3月のライオン】史上最高に面白い漫画ベスト100!【夏目友人帳】

今や漫画は日本を代表する文化となり、世代・性別・国籍などのあらゆる差異を超えて親しまれるようになりました。この記事では、世の中に溢れ返っている漫画作品の中から、史上最高に面白いと思うものを100個厳選してまとめています。どれも一読の価値があるものばかり!時間ができたら、ぜひゆっくり読んでみてください。

Read Article

【アニメ】化物語から始まる西尾維新の「物語シリーズ」視聴順まとめ

【アニメ】化物語から始まる西尾維新の「物語シリーズ」視聴順まとめ

西尾維新プロジェクトと称されるアニメ化真っ最中の【物語シリーズ】は、現代の怪異に出会った少年少女の姿を描いた作品です。その多さ故、視聴前は混乱必至ですが各シリーズの放送順を知ることでスムーズに楽しむことができます。今回は各シリーズの大まかなあらすじ/放送順/時系列順でご紹介。

Read Article

美人漫画家・羽海野チカのイラストや原画展の感想まとめ!『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』など

美人漫画家・羽海野チカのイラストや原画展の感想まとめ!『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』など

ここでは人気少女漫画家・羽海野チカのイラストや、原画展に参加したファンの感想などをまとめた。美術大学を舞台とした青春群像劇『ハチミツとクローバー』、孤独な人生を送る少年プロ棋士と3姉妹の交流を描く『3月のライオン』などが代表作だ。

Read Article

あまり知られていないおすすめの名作アニメまとめ!『氷菓』『東のエデン』など

あまり知られていないおすすめの名作アニメまとめ!『氷菓』『東のエデン』など

日本の文化として世界から注目されているアニメ・漫画業界。日本だけではなく世界中で親しまれ、多くのファンを獲得している名作アニメは多い。しかし一方であまり世間からは知られていないが、細やかな色彩・個性的なキャラクター・秀逸なストーリー設定などで地道にファンを獲得している良作アニメが、たくさん存在しているのだ。本記事では世間ではあまり知られていない、おすすめのアニメ作品を厳選して紹介する。

Read Article

斬新な設定が魅力のアニメまとめ!『東のエデン』や『TIGER & BUNNY』などの衝撃作を観て楽しもう!

斬新な設定が魅力のアニメまとめ!『東のエデン』や『TIGER & BUNNY』などの衝撃作を観て楽しもう!

ここでは、数あるアニメ作品の中でも特に設定やストーリーが斬新なものについてまとめている。それぞれの作品のあらすじ・ストーリーの他に、画像や視聴者がSNSに投稿した感想も掲載した。 紹介している作品の中には、記憶喪失の青年と謎の携帯電話を巡るサスペンス・アクションアニメ『東のエデン』や、個性豊かな特殊能力者が平和を守っている近未来的な街を舞台にしたアニメ『TIGER & BUNNY』などがある。

Read Article

実写映画の評判が意外と高かった少女漫画まとめ!『花より男子』『ハチミツとクローバー』など

実写映画の評判が意外と高かった少女漫画まとめ!『花より男子』『ハチミツとクローバー』など

漫画が実写化されると聞くと、「やめてくれ!」と思う方はきっと多いことでしょう。実写化ってだいたい原作と内容を変えてきたりするし、配役を見たときに「この人は違う…」といった幻滅を抱いたりしがちですものね。そんな中、いざ実写化されてみると意外に高評価だった少女漫画があるので、この記事でまとめてみました。原作しか読んだことがない方は、ぜひ映画も一度観てみてください。評価が変わるかもしれませんよ。

Read Article

目次 - Contents